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【即効性あり】事前・事後課題で管理職研修が変わる!
更新日:
「管理職研修での学びが現場に活かしきれていない気がする…」
このような悩みを抱えている人事・経営者の方も多いのではないでしょうか。
管理職研修の効果を現場で感じられない原因として、次のことが考えられます。
・受講する管理職の学ぶ意欲が低く、学びの吸収力が弱い
・管理職研修で学んだことを現場に落とし込めない
これらが原因の場合、現場と研修を繋げるための課題を研修前後に設けることで解決できるかもしれません。
本コラムでは、管理職に負担をかけすぎず、即効性のある事前課題と事後課題を4つずつ紹介します。課題を実施することで研修と現場が繋がり、研修での学びを現場で活かせるようになります。
管理職研修での学びを最大化するために、取り入れやすい課題から実践してみましょう。
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。
目次
1)管理職研修で扱うべき事前課題・事後課題とは
「普段のマネジメント業務」と「管理職研修」とをブリッジさせる
管理職研修で扱うべき事前課題・事後課題とは、「普段行っているマネジメント業務」と「管理職研修で学ぶ内容」をブリッジさせるものであるべきです。
管理職が行うマネジメントは、「○○という理論・考えをそのまま使えば絶対にうまくいく!」という分野ではありません。
研修で学んだ理論・考えをそのまま現場に展開しても、上手くいかないことが多々発生します。そのため、研修で学んだ理論・考えと、管理職自身やチームを取り巻く現状とを融合させていくことが重要です。
そうした融合に効果的なのが、事前課題・事後課題です。事前課題・事後課題を上手く活用することで、普段行っているマネジメント業務と、研修で学ぶ内容との紐づけを強化することができます。
【参考コラム】管理職研修の必要性を経営者・管理職に理解してもらうためのアプローチ
2)【事前課題】管理職研修でよく実施される内容とポイント
まず、管理職研修でよく実施される事前課題の内容とポイントについて、具体的に解説します。
【事前課題】
・本人の意識・知識の整理や棚卸し
・前提知識・基礎知識のインプット
・研修内容に関する課題を課す
・参加者と上司との認識共有
事前課題①:本人の意識・知識の整理や棚卸し
研修テーマに関して、現時点での意識や知識を棚卸しする課題です。参加者が現時点での習得度や習熟度を自分で把握するために行うことが多いです。また、研修への意識付けや準備として行うこともあります。
具体的には「普段のマネジメントにおいて意識していることや心掛けていること」は何ですか?などの問いかけを元にレポートを書いてきてもらうなどです。
【管理職研修の事前課題│レポート例】
ポイント
なぜその問いかけをしているのか?この課題が研修とどう繋がるのか?を明示して課題を出すことです。そうしないと、取り組み姿勢にバラつきが出て、結果として研修のスタート地点で、意欲や姿勢にもバラつきが出てしまうことにもなります。
事前課題②:前提知識・基礎知識のインプット
研修テキストや関連動画、課題図書などを用いて、研修に関する前提知識や基礎知識をインプットする課題です。研修時間の短縮や効率化、研修参加姿勢を醸成するために行うことが多いです。
具体的には、研修テキストや動画、課題図書などの指定箇所を読んで来てもらうなどです。場合によっては学んだことの気づきや感想などのアウトプットも課題に含めることがあります。
ポイント
どのぐらいの水準でインプットしてきてほしいのか?を明確に伝えることです。さっと読んできてもらえればいいのか、それとも研修当日にテストを行うぐらいじっくり読み込んできてほしいのかを明示しないと、参加者によってバラつきが出てしまいます。
この課題に限りませんが、事前課題を課す場合には、何をどの程度やってきてほしいのか?を正確に伝えることが重要です。
事前課題③:研修内容に関する課題を課す
こちらは、例えばケーススタディなど、研修内容で扱う課題を課すことです。研修時間の効率化や、参加者に対して研修内容を一部理解した上で研修に参加してもらう準備としての意味合いもあります。
例えば、個人ワーク→グループワークという形式で進む研修の場合、事前に個人ワークの部分はやってきてもらう、などがこの例にあたります。グーグルドキュメントでシェアをしておくなどもいいでしょう。
【管理職研修の事前課題│個人ワーク例】
ポイント
適切な分量や負担を考慮しながら課題を課すことです。単純に知識をインプットすることと比較すると、負荷が大きくなる場合が発生するため、注意が大切です。また、当然ですが、研修内容と関連のある課題を課すことが大切です。
事前課題④:参加者と上司との認識共有
研修参加自体や研修内容について、管理職自身とその上司・部下との認識共有を促すことを目的とした事前課題です。研修効果には、本人の努力に加えて、周囲の協力・サポート、さらには直属の上司・部下からのサポートが得られるか否かが大きく影響します。よって、上司にも理解と協力を促す意図で、事前課題を通して管理職自身とその上司・部下とがコミュニケーショを取り、研修参加自体や研修内容について伝える場合があります。
具体的には、研修に参加するにあたり上司・部下からは「管理職本人に期待すること」を伝え、管理職からは「上司・部下にサポートしてほしいこと」を伝える、などです。インタビュー形式などを行うのも一つの方法です。
【管理職研修の事前課題│インタビュー形式例】
ポイント
上司の協力を仰ぐ際には研修効果に上司の影響が大きいことなどを伝えるなど、なぜ上司が関わることが重要なのか?を伝えた上で行うです。
3)【事後課題】管理職研修でよく実施される内容とポイント
次に、管理職研修でよく実施される事後課題の内容とポイントについて、具体的に解説します。
【事後課題】
・知識確認テスト
・ケーススタディや課題を課す
・上司やチームへの報告とレポート
・アクションプラン実践とレポート
事後課題①:知識確認テスト
研修で学んだことが知識として身についているかを確認するテストです。コンプライアンス研修やハラスメント研修、セキュリティ研修など、知識が身についているかが重要な指標である研修で行われることが多いです。知識をインプットする研修は、つい「インプットして終わり」になりやすいですが、事後課題としてテストを行うことで、参加姿勢を高めること、研修の定着を促すことができます。
具体的には、研修直後ないし一定期間後にテストを行い、所定の得点以上でないと研修修了とみなさないなどの運用が多いです。
ポイント
研修にきちんと参加していれば合格できるものとすることです。あまりに理不尽であったり、ひっかけ問題などを多く入れてしまうと、研修にはきちんと参加したのにテストには合格できないという事象が発生してしまい、参加者の意欲を下げてしまうことにもなりかねません。
事後課題②:ケーススタディや課題を課す
研修で学んだことを活用するケーススタディを課す事後課題です。ケーススタディを行う理由としては、研修内容の定着や他の場面での応用を目的に行うことが多いです。
具体的には、研修で扱ったケースを一部改変した内容を作成し、そのケースが解決されるまでの流れの中で、研修の学びが適切に活用されているかを確認するといったものです。
ポイント
確認テストと同じく、研修で学んだことを活用すれば解けるレベルにすることです。研修で扱ったものとあまりかけ離れたケースを設定してしまうと、「せっかく研修で学んでも意味がなかった」という認知になり、研修の意義が低下してしまいます。
事後課題③:上司やチームへの報告とレポート
研修で学んだことや気づき、研修後のアクションプランを上司やチームへ報告する事後課題です。学んできたことやアクションプランを共有することで、上司やチームの理解・協力を得られやすくする狙いと、研修参加をサポートしてくれた仲間への感謝を伝える意味合いがあります。
具体的には、定例ミーティングなどの場で、研修報告などと題して、参加者から研修概要や学んだこと、アクションプランなどの共有を行うといったものです。
ポイント
作成時の負担軽減を意識することと、報告時には上司・チームとのコミュニケーションに集中できる形にするです。レポート自体はフォーマットや流れをあらかじめ企画側が考え、管理職はその流れに沿って作成できる形が望ましいでしょう。多忙な管理職にとってレポートの流れを考えることは、作業負担を大きくする一つの要因ともなってしまいます。また、レポートの項目や分量は、チームメンバーとの会話ややり取りをより多く実施できる適切な量であることも大切です。レポートに記載すべき情報も詰め込み過ぎず、精査する等があげられます。
事後課題④:アクションプラン実践とレポート
アクションプランを実践した結果についてレポートにまとめる事後課題です。研修の後にアクションプランを書く場合がありますが、書いただけではやりっぱなしになってしまう可能性があるので、結果をレポートにまとめる課題を課すことで、アクションプランの実践を促す目的で行われることが多いです。
具体的には、アクションプランシートなどに、実践報告の欄を設け、「具体的に何に取り組んだか」「取り組んで周囲や自分にどんな変化があったか」などを記すものです。当社で開発したバトンメール🄬というアクションの実践とレポートを受講者同士で報告する内容なども、お勧めしています。
バトンメール🄬とは、一定期間の間に管理職がお互いの現場での活動を、一人ずつ交代で報告していきます。
具体的には、4~5名程度で編成されたグループ内でメールを送り合う方法です。トップバッターをきめ、他のメンバーにメールを送ってもらいます。その際に、次にメールを送る人を指定してもらいます。タイミングは週に1度程度が適切です。4~5名で実施した場合は、管理職本人は一ヶ月に一度テンプレートメールに沿ってメールを送るだけなので、そこまで負担はありません。同時に一週間に一度は、他の管理職の現場での活動報告のレポートが送られてくるので、自身の内省にもつながります。
そして、基本受講者同士で進めるため、企画側の負担も少なくなるという利点もあります。
【管理職研修の事後課題│バトンメール例】
ポイント
できれば提出されたレポートに簡単でも良いのでコメントを返すこと、他の人の取り組みも含めて集計して、その結果を共有するなどすると良いでしょう。提出不要とするケースもありますが、よほどの場合でない限り、やりっぱなしに終わってしまいます。バトンメール🄬の場合は、こちらの解消も可能です。
研修効果を高めるには、単発の研修で終わらせるのではなく、事前課題・事後課題を効果的に用いて学びの実践をサポートすることが効果的です。とはいえ、参加者に一定の負荷や負担となる面もありますので、研修参加者が課題に取り組んでよかった、と思えるようなものにしていきましょう。
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4)管理職研修で事前課題・事後課題を行う場合のメリットとデメリット
事前課題・事後課題を行う上では、メリットとデメリットがあります。本章では、事前課題・事後課題を行う上でのメリット・デメリットを紹介します。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
事前課題 | 【4-1.事前課題のメリット】 ・参加意欲を高めることができる ・研修時間の効率化が図れる ・参加者の情報収集を行うことができる |
【4-2.事前課題のデメリット】 ・参加者にとって負荷となって参加意欲が下がる ・取り組む度合いによっては知識の差が開く可能性がある |
事後課題 | 【4-3.事後課題のメリット】 ・学びを実践するまでのハードルを下げやすくなる ・研修効果の定着を図ることができる ・参加者の状況確認ができる |
【4-4.事後課題のデメリット】 ・参加者の負荷となる ・やりっぱなしで終わってしまう |
4-1.事前課題のメリット
①参加意欲を高めることができる
当日になっていきなり研修内容について学ぶのではなく、事前課題を通して心の準備を行うことができるため、管理職研修に参加する意欲が高まります。
参加意欲が高まる理由は、あらかじめ「研修で何を行うのか?」「何が求められるのか?」「何が得られるのか?」を事前に把握することができ、研修で扱われる内容に対して当事者意識が高まるためです。こうした、研修前段階で研修への意識を高めていくことをレディネスとも呼びます。
例えば、事前課題を通して、研修内容が部下育成であることを理解できたとします。すると、「研修で何を教えてくれるんだ」という意識から「自分は部下育成の中でも○○が苦手なので、特に○○について集中的に学ぼう」などの意識に変わることなどが挙げられます。
参加意欲を高める事前課題の例は、
・研修テーマに関連する職場での悩みや課題・研修に何を期待しているか、何を得たいか
を書いてきてもらうなどです。事前に研修のことをイメージするので、研修に参加する意欲が高まります。
②研修時間の効率化が図れる
事前にテキストや書籍で知識をインプットしてもらう事前課題があります。この課題を課す理由としては、事前にインプットをしておくことで研修当日の講義・レクチャーに当てる時間を短縮化できることが挙げられます。研修時間の短縮化は管理職からすると喜ばれます。また、講師からの一方的に話を聴くのではなく、事前に得た知識を基に、自分のペースで学ぶこともできるメリットもあります。
例えば、テキストの一部を読んできてもらう、研修テーマに関連する書籍を読んできてもらう、最近では動画を観てきてもらうこともあります。
事前に知識のインプットができると、研修は演習やワークを中心に行うことができ、時間の効率化と参加者の満足度も上がります。
③参加者の情報収集を行うことができる
企画側の視点のメリットとして、事前課題の実施状況や提出状況を把握することで、参加者の情報収集を行うことができます。参加者の情報や状態を事前に把握し、当日の研修内容を参加者の状況に合わせてアレンジする、事前課題から理解が不足していそうだと思っていた点を補足するなど、より参加者に合わせた研修にできる場合もあります。
例えば、事前アンケートの結果を元に、特に興味関心のあるポイントを厚めに研修を行う、逆に、あまり困っていなかったり、悩みが薄かったポイントはボリュームを減らすなどの対応があげられます。
また、事前課題の情報を元に研修をアレンジすると、研修内容がより濃くなることも効果として挙げられますが、参加者も「自分たちの意見が反映されている」と感じることができ、研修への参加意欲が高まります。
完全に反映しきれなくとも「事前課題に目を通しています」ということが伝わるだけでも、参加者の参加意欲を高める効果がありますので、ぜひ取り入れてみてください。
【参考コラム】管理職の悩みとは?│解決するための有効な対処方法も説明
4-2.事前課題のデメリット
①参加者にとって負荷となって参加意欲が下がる
事前課題を行うことのデメリットの一つは、参加者が負荷に感じて、研修への参加意欲が下がることです。あまりに負荷が大きすぎると「業務も忙しいのに、やっている時間がない」「適当にやっておけばいいだろう」などの意識に繋がり、研修への参加意欲が低下してしまいます。
例えば、事前課題の書籍を出した場合、まるまる1冊を事前課題の範囲としてしまうなどです。分量が少ない書籍であれば、さほど問題ありませんが、数百ページに渡る書籍を読んできてください、とすると多いと感じられる可能性があります。その際は1章だけ読んできてください、など読む箇所を指定するなどすると良いでしょう。
事前課題の負担が重すぎると、かえって研修への参加意欲を下げてしまいます。参加者の視点に立って事前課題を出すようにしましょう。
②取り組む度合いによっては知識の差が開く可能性がある
事前課題の取り組み度合いによっては、知識の差が開いてしまうことがあります。意欲を持って事前課題をすべて読んで来る人と、研修の当日にさっと読むだけでは、理解度に差が出てくるなどのことが起こりえるからです。
管理職研修で実施されるテーマについてこれまで勉強してこなかった人は、そのテーマに触れる機会がなかったりその分野への興味・関心が低く、結果として「ざっと把握しておけばいいか」となりやすくなります。また、取り扱うテーマへの理解度が高い人と低い人が混在していた場合、理解度が高く得意な人ほど、容易に事前課題を理解し、知識として習得できるでしょう。逆に苦手意識があれば「どうせ研修で教えてもらえるんだし・・・」と前日にパラパラと目を通すくらいになる場合もあります。
このように事前課題をただ出すだけでは、かえって、参加姿勢や事前知識にギャップが出ることも考えられます。これを防ぐためには、多すぎると感じさせない適切な分量の事前課題を出す、事前課題をどの水準まで取り組んでほしいのかを正確に伝えることが必要です。
4-3.事後課題のメリット
①学びを実践するまでのハードルを下げやすくなる
事後課題を行うことで、研修内容を実践するハードルを下げることができます。研修で学んだことをいきなり失敗のできない仕事で試すのは勇気がいりますが「事後課題として、ひとまずやってみる」という意識で管理職本人やメンバーに取り組んでもらうことで、研修で学んだことを実践しやすくなります。
例えば「メンバーとの面談の中で5分だけは反論せずに部下の話にただ耳を傾けてください。事前にそれをメンバーにも伝えた上で試してみてください。」といったものが、あげられます。いきなり面談の中でこれを行うと上司・メンバーともに違和感を感じるかもしれませんが「事後課題なので」と前置きすれば、やりやすくなります。
普段の仕事や業務と違ったことを行うには、意外と勇気がいるものです。特に管理職層にもなると、失敗したくないという気持ちがより一層強くなることもあります。適切に事後課題を課すことで実践までのハードルを下げることができます。
②研修効果の定着を図ることができる
事後課題として、研修の学びを現場で実践する機会を課題として設定すると、現場展開して得た手ごたえと共に、調整していくべき点も見えてくるはずです。こうした調整によって、研修の効果は定着していきます。研修はあくまで安全な環境の中で行うもので、職場の環境とは異なることがあります。実際に研修で学んだことをアレンジする必要が生じることも多くあります。事後課題への取り組みを通じて、研修での学びをどのように応用し、現場にフィットさせていけば良いのかイメージがもてるようになります。
例えば「研修で学んだファシリテーションの手法を会議で実践してみて、会議に参加したメンバーからフィードバックをもらう」などの事後課題があげられます。職場での実践を促すことで、学びをどのように応用させればいいのかが明確になり、定着を図ることができます。
③参加者の状況確認ができる
事後課題の取り組み内容から、参加者がどの程度研修内容を理解し実践できているのかを把握することができます。
例えば「研修で学んだ傾聴のスキルを使って部下と面談してください。面談後、感想を部下から聞いてください」という事後課題を出した場合「部下からよく話を聞いてくれたと言ってもらえた」との感想をもらう場合もあれば「部下から普段と違って、やりにくそうにしていたと言われた」との感想をもらうケースもあります。これらの感想から、どのような面談だったのかを伺い知ることができ、フォローが必要なのか、それとも次の内容に進んでしまってよいのかを把握することができます。
このように、実践課題を通じて、行動変容の効果測定や、次回の研修企画に役に立つ情報を入手することができます。
4-4.事後課題のデメリット
①参加者の負荷となる
事後課題は参加者の負荷となる可能性があります。負荷を考慮しないままに事後課題を課すと、参加者のモチベーションが低下したり、研修での学びが思うように定着しないといったことが起こります。なぜなら事後課題の負荷が重すぎると、事後課題に十分に取り組めない、取り組んだものの取り組みが中途半端に終わり成果が思うように出ない、といった状況が起こるからです。
例えば、課題において、あまりに難易度の高いゴールを設定したり、研修で扱わなかった課題を出すなどすると参加者の負担になります。
事後課題を出す場合には、参加者の負担を考慮するようにしましょう。事後課題で初めて扱う課題ではなく、研修で行った演習を職場でもやってみるという課題や、負担感を考慮して複数の課題の中で自分で選択してもらう、などが有効です。
②やりっぱなしで終わってしまう
事後課題はやりっぱなしになりやすいので注意が必要です。提出までは課すことが多いですが、提出後の事後課題に対してフィードバックまで行っているところは意外と多くありません。
フィードバックがないと、結局やって良かったのか、改善点があったのかがわからず、行動の変化が起こりにくくなり、結果としてやりっぱなしになりやすいです。また、フィードバックが無いと「事後課題、やってどうなるのだろう?」と参加者が不安や不満を感じることとなり、以後の事後課題への取り組み意欲が高まらないなども起こります。
事後課題はやりっぱなしにしないことが大切です。フィードバックを行うこと、また、ひとり一人フィードバックを行うことが難しい場合には、事後課題を共有するフォローアップ研修を行うなどすることをお勧めします。フォローアップ研修で扱うという必要性ができることで、事後課題への取り組み意欲が高まります。
5)管理職研修で事前課題・事後課題を行う際の3つのポイント
実際に管理職研修で事前課題・事後課題を行う際の押さえたいポイントを3つ紹介します。
・管理職研修の内容と課題との接続をもたせる。研修では接続を実感できる場を設ける
・負荷をかけすぎないこと
・やりっばなしにせず、フォローすること
それぞれ説明します。
5-1.管理職研修の内容と課題との接続をもたせる。研修では接続を実感できる場を設ける
管理職研修で事前課題・事後課題を行う際の押さえたい一つ目のポイントは、研修内容と接続をもたせることと、研修内で事前課題を扱う場を持つことです。当たり前ですが研修内容と接続がないと、何のための事前課題、事後課題であったのか理解できず、不満を招きます。また、企画側としては接続していたとしても、受講者側に上手く伝わっていない場合もあります。そのため、接続を理解できるように伝えることが大切です。
例えば、部下育成に関して、課題図書を出しても、その本の内容と研修内容が関連がなかったり、研修中に課題図書に対して言及がないと、参加者からすれば「なぜその課題が課されたかわからない」となってしまいます。具体的に研修内容と接続をもたせるためには、研修冒頭に課題図書と研修内容の繋がりについて言及したり、課題図書を読んでの感想や気づきをシェアする場を研修内に設けるなど、事前課題と研修を接続させる場を設けることが必要です。
5-2.負荷をかけすぎない
負荷が大きすぎると、そもそも課題に取り組む意欲が失せて、管理職研修へのモチベーションも下がります。また、取り組んで来た人と取り組んでいない人の差が生まれやすくなり、研修中にフォローが必要になることもあるためです。
負荷を掛け過ぎの例としては、事前に課題図書を数冊課した上で、レポートを書いてくるなどのケースです。選抜研修など、よほど参加者のモチベーションが高い場合には問題ない場合もありますが、あまりに負荷が多すぎると、参加者のモチベーションが下がってしまいます。
事前課題・事後課題共に、1時間程度で終わるものとしておくのがちょうど良いでしょう。企画者の立場だと、つい負荷を掛けてしまう傾向があるため、可能であれば事前に研修参加者にもヒアリングしつつ、調整するのが良いでしょう。
5-3.やりっばなしにせず、フォローすること
せっかく事前課題・事後課題を課しても、やりっぱなしになってしまうと、期待していた効果が得られない可能性が高まります。また、やりっぱなしでいいんだ、という雰囲気が生まれてしまうと、全体的な参加意欲も下がってしまう場合があります。
例えば、研修後にアクションプランの実践レポートなどを課すことがありますが、そのレポートに対してフィードバックがないと、やって終わりになってしまい、参加者するとやってもやらなくても対して変化がないなどの印象が生まれやすくなります。
理想はひとり一人に対してフィードバックを行うことですが、難しければ、事務局でレポートを集約・集計し、他の人はこんなことにも取り組んでいました、と参加者全体にフィードバックするだけでも、参加者の反応は変わってきます。
6)まとめ ~管理職研修ならアーティエンスにお任せ!~
以上、管理職研修における事前課題・事後課題について紹介しました。本コラムではお伝えした内容は
・管理職研修で扱うべき事前課題・事後課題とは、普段行っているマネジメント業務と研修で学ぶ内容をブリッジさせるものであるべき
・管理職研修で事前課題・事後課題を行う場合のメリットとデメリット・管理職研修で事前課題・事後課題を行う際の押さえたいポイント
です。
事前課題・事後課題は、ただ行えば効果が出るというものではなく、丁寧に企画し扱う必要があります。これらの点を把握しないまま進めると、期待していた効果が得られない、そもそも参加者のモチベーションを下げてしまうなどで、管理職研修のクオリティが下がってしまいます。
逆に考えれば、このコラムにあるポイントを押さえて管理職研修を実施すれば、参加者の意欲を高める、研修での学びを実践しやすくする、などの効果や変化をもたらすことができるようになります。管理職研修の事前課題・事後課題を実施する際には、このコラムを参考に検討や企画を行ってみてください。管理職研修でご相談がある場合は、お気軽にご連絡ください。