育成担当者必見|1年後に結果を出す新入社員の目標例と設定のための7ステップ

更新日:

作成日:2023.2.8

 目標設定

この記事に辿り着いた方の多くは「新入社員が一年後にどんな目標を持っているべきか知りたい」と強く感じているのではないでしょうか。

目標設定は非常に重要であり、掲げる目標によって、一年後「成果が出せる新入社員」か「成果を出せない新入社員」の分かれ道になるといっても過言ではありません。

そこで今回は、一年後に結果を出す新入社員の目標の具体例、目標設定のための7ステップをご紹介します。新入社員の目標設定のポイントを押さえ、新入社員のさらなる成長にお役立ていただければ幸いです。 

このコラムで分かること

  • 一年後に結果を出す新入社員の目標OK例
  • 一年後に結果を出す新入社員の目標NG例
  • 効果的な目標設定を行うための手順
執筆者プロフィール
山下 絢加
2013年にアーティエンスに入社。組織開発・人材育成のコンサルタントとして、大手企業から中小企業まで、幅広く研修プログラムの企画・開発・運営を実施。子育てを機に、現在は主にマーケティングプランニングを担当。

専門性:新入社員若手社員組織開発・組織変革



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1)【職種別】一年後に結果を出す新入社員の目標OK例

一年後に結果を出す新入社員の目標例を、配属部署別にあげていきます。

営業系の場合

【目標例】
先輩の力を借りながら9月末までに一人で新規の相談から提案、受注までできる状態になり、3月末までに既存顧客との信頼関係を構築しながら継続案件で300万、新規顧客から200万、商品を販売している

【OKポイント】
達成したい内容とそのための期間が具体的です。また、「信頼関係の構築」という数値的な目標だけでない内容も含まれており、ただ数字だけを達成すればいいのではなく、関係性を大切にする必要があるということの理解にも繋がります。

営業職の中には、数字に追われて、とにかく目標数字を達成したいという思いから、いつの間にかクライアントとの関係性が疎かになってしまうことがありがちです。組織として、クライアントとどのような関係を築いて欲しいかという内容が予め目標の中に含まれていることで、おのずから関係性を意識していくようになるでしょう。

事務系の場合

【目標例】
毎月の経費処理、振り込み対応、振り込み確認、給与振り込み対応は1人でできるようになり、決算資料の作成の流れを理解できるようになっている

【OKポイント】
具体的に何をできるようになっていればいいかが明確で、誰が見ても同じように解釈ができる内容になっています。この目標があると、新入社員自身で、自分ができていない作業に気づき、学ぼうとする行動も起きやすいでしょう。

エンジニア系の場合

【目標例】
保守運用ができるようになっており、○レベル(〇〇会社)の内容は仕様書をみてコーディングすることができる

【OKポイント】
社内で共通認識がある「レベル」や「具体的に担当している会社の案件」など、どの程度のスキルを求められているのか、新入社員でも理解できる内容になっています。技術的なスキルの目標について「仕様書をみてコーディングができる」だけだと、案件により難易度が変ってしまうため、どの程度のレベルかを明確にしておくことが大切です。

製造系の場合

【目標例】
〇〇の製造に必要な3つの機械の使い方をマスターし、製品の製造において納期を守ることができる

【OKポイント】
この目標も、これまで見てきた目標同様、何ができるようになればいいかが明確です。製造関係の仕事では、ミスなく行うことがあたり前という考え方を持つ組織も多くありますが、目標として「ミスなく行うようにする」というようなネガティブ要素をなくすための内容だと、達成感は感じづらいです。そのため、ポジティブな要素が増える「何かができるようになったと思える目標」を設定することをおすすめします。

小売販売系の場合

【目標例】
準備、接客、片付けまでの流れをマスターし、お客様の要望を伺った上で、それぞれが得意なスタイルで提案を行い、毎月の店舗の売上目標をクリアできる

※ 自身のスタイルの確立に関しては、上司やトレーナーと相談をしていくこと

【OKポイント】
具体的に何をできるようになっていればいいかが明確な部分と、それぞれに合わせた余白があることが重要です。販売職は店舗や販売者個人によって、それぞれ得意な販売の仕方があり、それが売上に直結しています。「それぞれが得意なスタイルで提案」という新入社員自身で決めて良い余白を作ることで。組織から具体的な接客のやり方を設定し、そのやり方が合わない場合の意味のない苦労をさせてしまうことになります。どこまでを明確にして、どこからを個人のやり方に任せるのかのバランスが重要です。

接客サービス系の場合

【目標例】
準備、接客、片付けまでの流れをマスターし、お客様が快適に過ごしていただけるためのサポートをすることでリピート率を20%にする

【OKポイント】
接客サービスの特徴として、成果が数字として見えにくいところが挙げられます。そのため、リピート率や口コミなど【何かしら数値として確認】することのできる内容を目標に含めると、達成したか・していないかを判断することができ、行動に繋げやすいでしょう。

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2)【職種別】一年後に結果を出せない新入社員の目標NG例

次に、一年後に結果を出せない、新入社員の目標のNG例を記載します。先ほどのOK例と比較し、どの点がよろしくないのかご理解いただければ幸いです。

営業系の場合

【目標例】
売上500万を達成する

【NGポイント】
営業は「お客様の課題解決に寄与すること」が本質的な目的であり、その結果として売上がついてきます。上記目標例では、営業としての本質的な目的の要素が抜けてしまっています。
売上目標はわかりやすく、目指しやすい内容ではありますが、営業としてどのような気持ちで相手と接するかも目標の中に入れ込むことが大切です。

事務系の場合

【目標例】
一年間の仕事の流れを理解して、基本的な作業は一人でできるようになる

【NGポイント】
この目標には具体性が欠けています。何となくの理解はできますが、具体的に「何ができるようになっていればいいか」明確になってはいません。このような目標を設定すると、一人一人の解釈が異なり、目標を設定した人の意図とは異なる解釈で理解してしまう可能性があります。

そのため、具体的に何ができたら1年間の仕事の流れを理解したと言えるのか、そして基本的な作業とは具体的に何かを明確にすると良いでしょう。

エンジニア系の場合

【目標例】
先輩に教えてもらいながらも、一人でコーディングができるようになっている

【NGポイント】
一概にコーディングと言っても、内容によってその難易度のレベルには幅があると思います。一人でコーディングできるものもあれば、そうでないものもあるため、レベルを明確にする必要があります。もし既に担当のクライアントが決まっている場合は、○社のコーディングは一人でできるようになっているというような書き方でも良いでしょう。

製造系の場合

【目標例】
事故やトラブルなく行い、需要に合わせた製造を行える

【NGポイント】
事故やトラブルが無いようにすることはとても大切です。ただ、目標は、新入社員自身が目指したいと思える内容の方が達成しやすい傾向があります。

「事故」や「トラブル」というワードはネガティブな要素が強く、目標に対してワクワク感を持つことが難しいです。また、「事故」や「トラブル」をなくすために、新入社員自身が何に取り組むのかも不明瞭です。
例えば、「事故やトラブルなく行い」を「毎日丁寧な点検作業をすることでトラブルを回避し」といった内容に言い換えて、自身が前向きにとり向ける目標にすると良いでしょう。

小売販売系の場合

【目標例】
お客様が喜んでくれるよう商品知識を深め、また流行やトレンドをおさえて、毎月の売上を達成できるようにする

【NGポイント】
何を以て喜んでくれたかは人によって判断が異なり、またお客さんの本心を知ることはできません。そのため、お客様が喜んでくれたかどうかを基準とすることは目標設定として相応しくありません。

接客サービス系の場合

【目標】
お客様がリラックスしていただけるよう丁寧な言葉使いを心掛け、また来店したくなるような接客をする

【NGポイント】
お客様にリラックスしていただくために必要なことは、丁寧な言葉使いだけでは無いはずです。目標を達成するために必要な要素に抜け漏れがあると、その目標を達成することは難しいため、ヌケモレダブりなくを意識したロジカルシンキングで整理するとよいでしょう。

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

ここまで、一年後に結果を出せない新入社員の目標の具体例を職種別にご紹介しました。1章の内容と比較すると、具体性に欠けていたり、新入社員自身が目標に対して納得感を持って取り組める内容となっていないものが多かったのではないでしょうか。

一年後に新入社員が結果を出す目標を設定するためには、新入社員が自律自走できる状態になっていることが必要です。そのためにも、本コラムで紹介する例を参考に新入社員が1年後の自分にワクワクできるようなイメージを持てる目標を、作成していただければ幸いです。

参考:新入社員の育成計画に必要な5ステップ│【サンプルあり】迷いを無くし、いち早く一人前の社会人へ

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3)【実例で解説】 結果を出す新入社員の目標設定7ステップ

本章では、目標設定の7ステップを、実例を交えながら解説していきます。

一年後に結果を出す新入社員の目標設定は、次の7ステップで行います。
自然に成長を遂げてくれる目標の作り方
上記を見ると、目標設定が3ステップ目にあり、前段階としてコンセプトの作成を行っていることが分かります。

「目標を設定したいだけなのに…」と思うかもしれませんが、コンセプトを明確にしないと、新入社員が成果を出し、自然と頑張りたいと思える目標を作ることは出来ません。

もし、育成のコンセプトが定まっていない場合は、きちんと育成コンセプトを考えることから始めましょう。一つひとつ順に説明していきます。

① 育成コンセプトを考える

会社の中長期的な目的・目標を踏まえて、そこから育成のコンセプトを決めていきます。会社を目的に向かって推し進めていくのは社員の役割のため、会社の目的・方向性と育成コンセプトがズレていると、お互いのゴールを達成しきれなくなります。

アーティエンスでご支援させて頂いた企業様の例を紹介します。
この企業様は、老舗食品メーカーで、社員数 200 名程度です。
100年程度続く企業ということもあり、強い年功序列や、コロナ禍であっても受け身の姿勢が強かったり、正しくやることが正義のため、失敗を過度に恐れ、チャレンジして来なかったという背景がありました。

しかし、このままでは時代に置いていかれてしまうという危機感から、変わらないといけないという想いが強くなり、弊社と一緒に対話を行う中で、最終的に下記育成コンセプトを創りました。(コンセプトは言い回しを一部変更しています)

【育成コンセプト】
共に変わるために、一歩を踏み出す

会社の育成コンセプトは、大きく2つの方法で考えます。

・「解決したい組織課題」から考える方法
・特に今抱えている課題はなく、「ありたい組織の姿」から考える方法

先ほどの例の場合は、チャレンジできない組織からの脱却という組織課題から、そのために必要な人材として、一歩を踏み出すというコンセプトを考えていきました。このように解決したい課題や、ありたい姿に必要な人材はどんな人なのか、ということを言語化していく作業を行います。

育成コンセプトは、会社の中長期的なビジョンとの関連性が強くなるため、人事のみで作成するのではなく、経営層にも働きかけて、認識のズレが無いように作成することが大切なポイントです。
※ 経営者と共に創るのが難しい場合は、人事部門や現場で組織の方針や課題などを踏まえて考えていくのも一つの方法です。

会社が目指す姿に合わせて、どのような人材が必要なのかを判断し、その内容に沿った育成コンセプトを設定することを始めに行いましょう。

(参考)課題とありたい姿は、コインの裏表
課題とありたい姿は、コインの裏表と表現することもあります。課題の背景にはありたい姿が隠れていることがありますし、ありたい姿を達成するには課題を解決していく必要があるからです。
例えば、「新入社員が意見を言わない」という課題があったときに、「新入社員が活き活きと意見を言って、やりがいを持って働いてほしい」というありたい姿ががあるかもしれません。ありたい姿が見つからない場合は、課題を紐解き、ありたい姿を言語化していくという方法もあります。

② コンセプトを各階層ごとに設定する

コンセプトとして育成の方向性が決まったら、育成コンセプトを各階層ごとに設定します。 育成コンセプトに対して、新入社員と管理職が同じように進められるわけはありません。そのため、育成コンセプトを各階層ごとに設定するという段階を踏む必要があります。

例えば、先ほど例として提示した企業では、育成コンセプトから、下記のような階層ごとのコンセプトを作成しました。(言い回しは一部加工しています)

各階層のコンセプト
経営陣 「共に変わるために、一歩を踏み出す」を育むための風土・文化を創る
管理職 「共に変わるために、一歩を踏み出す」に対して、ポジティブな影響を与えるチームを創る
中堅社員 「共に変わるために、一歩を踏み出す」に対して、ポジティブな影響を与える
若手社員
(2・3年目)
「共に変わるために、一歩を踏み出す」に対して、あきらめず向き合う
新入社員 「共に変わるために、一歩を踏み出す」に対して、自分ができることを考える

コンセプトは概念的な内容となっているため、ここで設定したコンセプトを達成するために具体的な目標設定を行っていきます。

③ 新入社員用のコンセプトに基づいた目標を設定する

目標はコンセプトとは違い、実施することがより明確になっている必要があります。
曖昧なままでは結局何をしたらいいかが分からないですし、人によって解釈が変わる場合もあるためです。
コンセプトから目標に落とす時は、2つのポイントを意識してみてください。

・SMARTの法則になっているか
・新入社員が自身の活躍をイメージでき、納得感を持てているか

順番に説明します。

SMARTの法則になっているか

SMARTの法則というのは、ジョージ・T・ドラン氏が提唱した理論で、5つの成功因子によって構成されています。目標を設定する際には、このすべての要素が含まれているかを、チェックします。
SMARTの法則

新入社員が自身の活躍をイメージでき、納得感を持てているか

目標に対して新入社員自身が、目標を達成できたらなりたい姿に一歩近づけると思えたり、活躍できているイメージを持てなければ、目標に対して動き出すことはできません。

そのため、社会人未経験の新入社員でもイメージを持てるような言葉になっているか」、「新入社員自身が目標に対して納得して、自らの目標として捉えてもらえそうか」という点は意識して言葉を選んでください。 意味合いとしては同じでも、言葉によってイメージは大きく変わるため、目標は何度もブラッシュアップして言葉を磨いていく必要があります。

これらのポイントを踏まえた例をお伝えします。

【営業担当になった新入社員の目標の一例】
3月末までに〇〇サービスに関して、初回訪問(会社説明・ヒアリング)から提案・受注・納品プロセスを、一人で遂行できるようになる

誰が見ても同じ理解ができる明確な定義がされている内容で、納品まで一人で遂行するという基準も明確になっています。新入社員1年目でも頑張れば達成できる程度の目標で、営業の仕事と結びついていますし、3月末までという期限も設定されています。

社会人になって間もない新入社員もイメージしやすい内容になっています。
このようなイメージできる目標を設定できると、認識のズレが起きることがないため、今後各所に展開していくときにスムーズな連携を取れるようになります。

④ 目標を達成するまでの年間成長ストーリーを現場と一緒に創る

年間目標が決まったら、次により具体的に、一年間の中でいつどのスキルを渡していくかを現場と一緒に考えます。人事だけでなく現場と一緒につくる必要がある理由は、人事と現場で協力態勢をとれるようにするためです。

人事の方からよく伺うお悩みとして、現場が育成に協力的ではないという話をよく伺います。一方、現場からは、現場の課題にあっていない育成プランを人事から押し付けられる、という話が多くあります。 これらは、人事と現場でコミュニケーションを取り合えておらず、人事で取り決めた育成プランを一方的に現場に渡して終わりになってしまっていることが原因です

そのようなことにならないよう、現場と一緒に年間の成長ストーリーを考えることで育成への共創を行います。目標設定をした後の育成をスムーズに行えるようにすることが一緒に創ることの目的です

現場は、自分たちの業務で忙しいため、育成が後回しになってしまいがちです。その状態のままでは新入社員の育成は難しくなってしまいます。 人事としては、現場をどう新入社員の育成に巻き込むかが大きなポイントになるのです。

巻き込む方法を、下記で詳しく説明していきます。

■年間成長ストーリーを描くまでの流れ
年間成長ストーリーを描くまでの流れとしては、人事で設定した目標を現場にも確認してもらい、違和感や想いの違いがないかを確認します。この時点で現場の意見と異なるときは、それぞれの想いを伝えて、対話をしながら目標をアップデートします。

目標に対して、人事も現場も合意ができたら、人事が改めて目標達成のために必要なスキルを洗い出して、現場に確認します。必要なスキルが明確になったら、現場とともに、どのタイミングでどんなスキルを持っている必要があるかを対話を通しながら決めていくことを行います。

現場との対話が難しい場合は、現場にテンプレートを渡して現場に作成してもらい、その内容を人事で確認・フィードバックを行うという作業を繰り返しながら目標を創っていくのもいいでしょう。参考として、育成計画表の例をお見せします。

■年間成長ストーリーを描く際のポイント
年間の成長ストーリーを描く際のポイントは3つあります。

・スキルの抜け漏れがないこと
・オンボーディングを丁寧に行う
・新入社員に任せきることを意識する

それぞれ説明していきます。

①スキルの抜け漏れがないこと
目標に対して必要なスキルが抜けていると、目標を達成することは出来なくなります。そのため、目標に対して必要な要素が抜けていないかは十分に確認します。 もし抜け漏れに気が付いたときは、成長ストーリーの見直しを行い、漏れていたスキルを含めた内容にアップデートすることを忘れずに行います。

②オンボーディングを丁寧に行う
入社してすぐの新入社員は、目標に対してどのように行動すればいいのか分かりません。そのため、初めの1~3か月は目標に対して丁寧にフォローを行い、目標を目指すための土台づくりをしましょう。
この段階で新入社員が目標に対してネガティブな気持ちになったり、諦めの気持ちが強くなってしまうと、目標達成が難しくなります。 新入社員が目標に対してモチベーションを持って行動してもらえるためのフォローを丁寧に行うことを意識してください。

オンボーディングに関して詳しく知りたい方は、新入社員のオンボーディングで必要な3つのポイントと、効果的なツールの活用法をご参考ください。

③新入社員に任せきることを意識する
新入社員の育成にかけられる時間は限られているため、目標はやがて、新入社員自身で管理してもらう必要があります。
目標に対して、会社からOJT1on1などの支援を行うことも必要です。ただし、原則としては、新入社員自身に目標を達成するために行動してもらう必要があります。それが自律自走にもつながっていきます。

⑤ 目標を新入社員へ展開する

成長ストーリーが完成したら、いよいよ新入社員に目標を展開します。
新入社員に展開する際は、次の3つのポイントを意識して伝えてみましょう。

①内容を明確かつ具体的に伝える(SMARTの法則)
②相手が知らないような専門用語を使うときは、きちんと意味を伝える
例:アポイント、ロープレ、成果数、コンバージョン等
③相手が理解を深めるための機会を持つ
例:確認させる、質問させる、反芻させる等

目標をただ一方的に伝えても、新入社員が理解できていないと、それは伝わってはいないため、新入社員が目標へコミットすることは出来ません。
伝え方には次の図のように3段階あると言われています。

目標を展開する、という内容で考えると

1段階目が、育成計画を渡すだけ
2段階目が、育成計画を渡し、新入社員に不安なところを聞いてフォローする
3段階目は、目標を渡す人が大切にしている考え方や想いを言語化して伝えることで、新入社員の共感レベルが上がり、関係性を強くできる

というようなイメージです。

せっかく良い目標を作っても、新入社員がその目標をしっかり受け止めることができなければ、目標達成に向けたモチベーションも高められず、意味のないものとなってしまいます。 新入社員が自分と同等の納得や理解があって初めて成り立つということを十分に理解しておきましょう。

⑥ 目標に新入社員自身で決めてもらう余白を作る

目標に余白をつくっておき、新入社員自身で決めてもらうポイントをつくっておきます。
一方的に渡された目標だと、受け身の姿勢になってしまい、言われたからやるという意識醸成を生み出しかねません。そうならないためにも、目標に新入社員自身の想いを乗せるポイントをつくっておくことが効果的です。

余白の作り方としては、例えば、目標に対して自身で学びたい内容を考えてもらうとか、アポイントを3か月で〇件獲得するための方法を自分なりに考えてもらうなどが挙げられます。

先程の育成計画表の学習機会について、10月以降からeラーニングとなっており、その中で何を学ぶかを個人で選べるようにするのも一つの方法です。

自分で設定できる内容があると、目標をより自分ごと化してとらえられるようになります。

⑦ 目標をアップデートし続ける

仕事を進める中で、さまざまな仕事への出会いや、尊敬する先輩が出てきたなどの理由で、どのように活躍していきたいかが変わる人も出てくると思います。また、会社の方向性が変わるということも起こりえるでしょう。

そのような場合は、目標を達成することを優先するのではなく、進む方向に合わせて適宜目標をアップデートしていくということも必要です。(目標をアップデートする際は、上司・トレーナーの承認が必要です。組織・チーム目標と連動している必要があります。)

ここまで目標設定の方法について説明しました。
目標設定が大変だと思われるかもしれませんが、良い目標を設定することが出来れば、新入社員が自然と成長を遂げてくれるため、その後の育成はスムーズになります。

4) 新入社員の目標設定を行う際の2つの注意点

最後に目標設定するときの注意点を2つお伝えします。

・競争をあおり、孤独感を持たせない
・一方的な決めつけはせず、インサイド・アウトを促す

それぞれ説明していきます。

競争をあおり、孤独感を持たせない

競争をあおり孤独感を持たせる目標設定は、やめましょう。 特に、Z世代と言われる新入社員に対しては、適切ではありません。競争よりも協力を大切にしてきた世代です。競争と孤独感を持たせる目標設定というのは、例えば、アポイントの数で競わせて協力関係ではなく個人プレーで評価するようなものです。一部の人を評価して、他の人を落とすようなやり方です。

Z世代である新入社員は精神的に沈みやすい傾向もあるため、会社全体で支援しながら目標を達成していくイメージを持ってもらえるように意識することが必要です。

新入社員にとって、社会人としての仕事は未知の世界です。その状態で一人で達成しないといけない目標を渡されても、私はこの目標を達成することができるのだろうかという不安が大きくなってしまいます。始めは先輩・トレーナーと一緒に進めていける、という安心感を持ってもらえるようにしましょう。

(参考)新入社員にとっても、競争も必要
新入社員に対しても、もちろん
競争も必要です。市場・顧客に選ばれるには、共創だけではなく競争も必要になるためです。ただし、Z世代である新入社員にとって、始めから競争環境に身を置くのは、お勧めはしません。ただし、昨日の自分と競争させるのは、一つの方法です。その競争も成長に繋がりますし、顧客に選ばれる確率が上がります。競争という文脈を変えて、新入社員の成長を促しましょう。

一方的な決めつけはせず、インサイド・アウトを促す

最近の新入社員は、「~すべき」など自分以外の人からの価値観を押し付けられることに抵抗がある人が多くいます。SNSを通して様々な価値観を知っているからこそ、価値観に共感できないということも起こりえます。

これらの理由から、余白の部分を作って、自分の価値観を入れられるようにすることが求められています。

なお、意図していない部分で、新入社員にとって価値観を否定するような言葉に受け止められてしまう場合もあります。最近の人の傾向を知って、琴線に触れるポイントを知っておくことも必要です。価値観を決めるけるような言葉に注意した目標や展開の仕方を心がけましょう。

最近の若手社員の特徴とは?効果的に育成を行う4つのポイントも詳しく解説の記事では、若手社員の傾向や特徴、育成のコツなどもご紹介しています。ぜひご参考にしてください。

5) まとめ

本コラムでは、一年後に結果を出す新入社員の目標の職種別のOK例・NG例、目標設定の7ステップについてお伝えいたしました。

総じて、一年後に結果を出す新入社員の目標とは、新入社員が自律自走できる状態になっていることです。自律自走できる状態とは、自分で考え、自ら上司・トレーナーに確認ができ、仕事を進められる状態です。いつまでも上司・トレーナーの指示のもと、言われたことしかやらない受け身の新入社員では、期待した結果を出すことはできません。

目標を立てることは、新入社員の自律自走を支援するためにもとても重要であり、始めの一歩でもあります。この一歩の方向を間違えてしまうと、成長の道のりは遠くなります。

新入社員にとっても、会社にとってもよい影響を与え合うことができるように、第一歩として、このコラムを見ながら目標設定をしてもらえたら嬉しく思います。

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