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[ 研修・セミナーレポート ]
2023年5月11日 巻き込み力研修ー公開講座研修レポート
- 2023/5/18作成ー本内容は、2023年5月11日に開催した「巻き込み力研修」の公開講座研修レポートです。受講内容や、受講前と後の変化などをレポートとしてまとめていますので、ぜひご覧ください。(参加企業数:4社、参加人数:18名、集合型
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新入社員研修でグループワークを活用!効果的なやり方と注意点
更新日:
「新入社員研修でグループワークを取り入れた方がいいのだろうか」
「新入社員研修のグループワークってどうやって作ればいいのだろうか」
「新入社員研修のグループワークで気を付けるべきことはあるのだろうか」
新入社員研修でのグループワークの作り方や扱い方にお悩みの方も多いのではないでしょうか。
特に、研修を社内で内製化している場合、座学が中心になりがちで、グループワークが十分に取り入れられていないケースも見受けられます。
しかし、学んだ知識や自分で考えたことは、実際にアウトプットすることで初めて深まり、定着していきます。
そこで今回は、新入社員研修でのグループワークに焦点を当て、グループワークの目的や、事例、グループワークの作り方をお伝えします。
グループワークの基本的なポイントを理解し、研修の効果を高めるグループワークを実施できるようにしましょう。
※ 本コラムは、あくまで研修内のグループワークに特化したコラムです。研修の作り方ではありません。人事のみなさんが、グループワークを作る際の参考になれば嬉しいです。
【参考】より深く知るための
『オススメ』コラム
目次
1)新入社員研修でグループワークを実施する目的は2つ
新入社員研修でグループワークを行う目的は下記の2つです
・新入社員の成長を促進するため
・人事が新入社員を適切に観察するため
具体的には、次のようなことです。
・グループワークを通して、新入社員が学びや仕事の楽しさ・厳しさを知る
・グループワークを通して、新入社員が実業務の疑似体験をする
・グループワークを通して、新入社員が自身の成長を実感する
・グループワークを通して、新入社員が同期とのつながりを強化する
・グループワークの中で、新入社員の強み・弱みを知る
・グループワークの中で、新入社員の適性を知り、配属先の決定の参考にする
・グループワークの中で、新入社員の状況を把握し、配属先の上司に伝える
講義を受ける形式だと、スキルや知識を新入社員へ渡すことはできますが、新入社員は教えてもらったスキルや知識をどのように仕事の現場で活用していけばいいのかをイメージすることは難しいです。また、参加者同士での関わりがないため、同期との関係性を築くことも、人事が新入社員の適切に観察することも難しいです。
例えば、当社では新入社員研修の内容の約8割ほどをグループワークの時間としていて、仕事と同じようにグループのメンバー同士で助け合い、学び合える設計にしています。
グループワークの中で、新入社員の特徴を知るためにも、新入社員がどのような動きをしているのかを観察して、人事の方にフィードバックすることも行っています。グループワークの中での動きは、採用面接や普段の会話の中では見えてこない部分も多く、配属先の検討などに活用して頂いています。
当社では、新入社員研修にご利用、下記のようなフィードバック内容(有償サポート)をお伝えしています。
新入社員研修でグループワークを行うことは、新入社員を適切に観察し新入社員の成長を促すための重要な取り組みです。
2)新入社員研修でグループワークを実施するメリット・難しさ
新入社員研修でグループワークを行うにあたり、メリットと難しさを確認します。
① 新入社員研修でグループワークを実施するメリット
新入社員研修でグループワークを実施するメリットは、次の通りです。
【新入社員にとってのメリット】
①学習機会に主体的に関わることを経験できる
②周りの人と協力しながら答えを生み出す経験ができる
【人事にとってのメリット】
①新入社員の言動・行動を詳細に観ることができる
②フォローや指導が必要な場合、すぐに対応ができる
それぞれ詳しく説明します。
新入社員にとってのメリット①:主体的に関わることを経験できる
グループワークは、座学と異なり、自ら発言や行動をすることが求められるため、新入社員が主体的に関わりやすくなります。
過去の新入社員研修の参加者の方で、研修が始まってから序盤は消極的で講義も聞き流すような方がいました。研修の始めに行ったグループでの対話では、人から振られないと話さないような状態でした。しかし研修が進み、中盤に行った課題解決のグループワークでは、自分も参加しないと解決できない状態になり、発言が増えていったことがありました。
このように、グループワークでは、新入社員が参加者の一員である自覚と責任を持つことで、主体的に参加できる状態を創れます。新入社員に主体性を促したい時に効果的です。
新入社員にとってのメリット②:周りの人と協力しながら答えを生み出す経験ができる
グループワークでは、答えが1つで無いことについて同じメンバーとコミュニケーションを取りながら考えます。そのため、仕事に必要な周りの人と協力しながら、答えを生み出す経験ができます。
周りの人とコミュニケーションを取りながら課題解決をするのは、最近の新入社員にとっては難しさを感じることがあるようで、課題解決のグループワークを実施した研修後のアンケートで、次のようなコメントを記載している方がいました。
「もっと他者を理解しようという気持ちが生まれた。これまで友人や同期と接してきて、理解が追いつかない人がいることがあまりなかったので、もっと他者に関心を持ちたいと思った。どんな人とでもやっていける力を磨きたい。」
学校生活の中では、自分で付き合う人を選んでおり、好きな人としかコミュニケーションしないことが多くあります。社会では利害関係が働くため、自身と相性が合わなくても仕事を進める必要が出てきます。そのことを研修のグループワークで実感して頂いたようでした。
このように、グループワークでは周りと一緒に答えを生み出す面白さと難しさを経験ができます。
人事にとってのメリット①:新入社員の言動・行動を詳細に観ることができる
新入社員のことを採用から見ていたとしても、新入社員の性格や特性をすべて把握することは難しいです。しかしグループワークの様子を見ていると、性格や特性を知れます。
例えばグループワークの様子を見ていると、
・発言数が多く前に進める力が強い
・皆と平等にコミュニケーションを取っている
・積極的にメモを取っている
・周りとのコミュニケーションをあまり取らずに一人で作業していることが多い
というようなことが見て取れます。
また、メンバーを変えると言動が変わる新入社員もいるため、その観点からも新入社員の特徴を知る良い機会となります。グループワークの姿から見て取れたことを、配属先の検討材料とする企業も多いです。
グループワークは、採用面接などでは見ることのできなかった新入社員の性格や特性を知る機会にもなります。
人事にとってのメリット②:フォローや指導が必要な場合、すぐに対応ができる
座学の中で指導をすることは、タイミングなどの兼ね合いで難しいことが多いです。しかしグループワークは対話の共有やアウトプットの際にフィードバックを伝えられます。
例えば、当社の上司との協働体感研修のグループワークでは、上司役である講師に何度も報連相に行きます。そのため、何度もフィードバックをする機会があり、方向性がズレていたり、報連相の仕方がわかりづらいとその時々でフォローできます。
このように、グループワークでは、講師が個人もしくはグループに対して、都度フォローや指導を行うことで成長を促せます。
② 新入社員研修でグループワークを実施する難しさ
新入社員研修でグループワークを実施する難しさは、次の通りです。
【新入社員にとっての難しさ】
グループワークの質や講師の質が低いと、学びが低くなる
【人事(講師)にとっての難しさ】
質の高いグループワークの作成には、専門知識も必要で、時間がかかる
新入社員にとっての難しさ:グループワークの質や講師の質が低いと、学びが低くなる
グループワークが始まったらグループメンバーで進めてもらうため、そもそものワークの質や講師の質が低いと、新入社員の学びも低くなります。
例えば、グループワークで何を学ぶかが明確ではなく、何となく開発したグループワークだったり、テストを行わないで実施した場合は、学びが落ちなくなります。
※フリーで研修講師をされている方は、テストをしないでお客様に納品されることがよく見られます。
また、グループワーク後のアウトプットの発表後に、講師からの新入社員へのフィードバックが必要以上に厳しく高圧的な場合は、学ぶべき内容は入っていかないでしょう。
このように、グループワークや講師の質が低いと新入社員の学びが低くなってしまう難しさがあります。
人事(講師)にとっての難しさ:質の高いグループワークの作成には、専門知識も必要で、時間がかかる
グループワークを作成するには、新入社員の傾向などを調査し、その上で要件定義を決め、学術的な背景を踏まえて作成する必要があります。
例えば、マナー研修の服装に関してのワークを作る際に、下記のような進め方が必要です。
1. 時代背景に基づいた市場調査として、どのような服装の観点を持ったほうがいいのか調べる
例えば、「性別による縛りを無くしていくこと」や、「多様性という言葉で、服装の縛りがあると最近の若手は嫌がる」などの特徴が見えてきます。
2. 要件定義として、グループワークを行うことで、どのような変化を起こしたいのかを考える
例えば、「会社の代表として、顧客や外部パートナーから、服装に関して不快に思われない」や、「既存社員が違和感を感じるような服装は避けてほしい」、「服装に関して新入社員が、堅苦しさを感じることなく、自組織にあった服装をしてほしい」などが考えられます。
3. 学術的な背景などを踏まえて、ラーニングポイントに落として、グループワークを作成する
例えば、自組織にあった服装とは何かを対話をした後に、孔子の「礼(挨拶やマナー)は秩序を守るため」という話を伝えるなどです。このような流れで行うと、自身の好きな服装ではなく、自組織にあった服装が必要だと認識できます。
下記は当社のビジネスマナー研修で活用している身だしなみのチェックシートです。昔は性別ごとにチェックシートを入れていましたが、現在は性別で分けて記載しないようにしています
※ 当社ビジネスマナー研修テキストより抜粋
質の高いグループワークの作成には、専門知識を用いてアップデートすることが必要です。
グループワークは、新入社員が社会人の基礎力を身に付け、関係性を創り、仕事への理解を深めるため、また人事が新入社員の特徴を知るためには良い手段です。しかし、質の良いワークを生み出す開発には難しさもあるため、研修会社などの専門家にサポートしてもらうことも手段の一つです。
3)新入社員研修でよく行われるグループワークの種類・事例
新入社員研修でよく行われるグループワークの種類は大きく分けて4つです。
これらの特徴と事例をお伝えします。
① 対話
グループのメンバーで対話を行い、学びを深めます。グループで対話を行うことで、自分とは異なる意見を聞くことができ、認知の幅を広げられることが特徴です。
当社の社会人の自覚研修では、次のような問いについてグループで対話を行ってもらっています。
・学生と社会人の違いとは何だろう?
・私たちの未来と今を豊かにするために、社会人のスタートをどのように切るといいのだろう?
答えが明確にあるものではない問いに対して、さまざま人の意見を聞くことで、自分だけの考えではなく他にもいろんな考え方があることを知り、認知(自身の世界)の幅が広がっていきます。
1つの問いについて約15分程、グループでの対話の時間を設け、その後、クラス全体でいくつかの対話の内容を共有します。するとより認知の幅が広がります。
対話のポイントは、新入社員が感じていることを素直に発言できる環境を整えることです。対話をすることに慣れていない人もいるため、当社では対話をする前に必ず下記のルールを伝えています。
※ 当社社会人の自覚研修のテキストより抜粋
このようなルールを設けることで、誰かの発言によって傷つくことが起きないようにしています。
グループワークとして対話を行うことで、さまざまな考え方があることを知り、認知の幅を広げられます。
② 課題解決
課題解決は提示された課題をグループで解決していくグループワークです。実際の仕事で起こり得るシチュエーションをイメージした課題を設定し、実業務の疑似体験します。
当社のロジカルシンキング研修では、CS向上のための企画を作成する課題に対して、次のような具体的なシチュエーションを設定しています。
※ 当社ロジカルシンキング研修より抜粋
このように実際の仕事をイメージできるように具体的なシチュエーションを設定した上で、グループで課題に取り組むことで、新入社員はリアルな仕事をイメージしながら学べます。
課題解決のワークのポイントは、実務を想定して進める設定にすることです。
例えば、当社では講師が上司役になり、課題を解決していく中で、現場さながらに不明点があれば相談し、方向性が合っているかを確認するように設計しています。すると、どのように上司や先輩を巻き込めばいいのかを体験できます。
実際の仕事で起こり得るシチュエーションを元に課題を設定し解決していくグループワークは、現場の疑似体験の時間となり、すぐに活用できるスキルを身に付けることが可能です。
③ ディベート(その後対話)
一つのテーマに対して、対立する2つの意見を用意し、本人の思いとは関係なく振り分けられた意見を持っている人として、ディベートをしてもらうグループワークです。仕事を行う中で意見が対立したときに、どう乗り越えていけばいいのかを体験します。
例えば、上司との飲み会について、
A:仕事で成果を出すために積極的に行くべき
B:自分のプライベートを大切にした方がいいので、断るべき
という対立する意見があったとしましょう。この対立する2つの意見でディベートをしてもらいます。
※ 当社資料より一部抜粋
ディベートのポイントとしては、新入社員が自分の考えとは異なっていても、思いっきり設定になりきることです。異なる意見をぶつけ合う経験をできます。
この時、事前にグループごとの作戦タイムを設けることがポイントです。自身の立場を正当化するものと、相手から出るであろう意見の反論などをあらかじめ考えて議論できる状態にします。
ディベートを終えた後、同じメンバーで対話をしてもらうと、相手の意見を聞きながらお互いが納得できるポイントを探せることに気が付きます。
※ 当社資料より一部抜粋
日々の業務の中で、例えば、クライアントからの「値下げして欲しい」という意見と、上司からの「値下げはできない」という意見の狭間になってしまうことがあります。その時に、ディベートのグループワークを思い出し、クライアントと上司それぞれと対話をしてみよう、と意識を向けると解決策が見えてきます。
仕事を行う中で、表面には出てこないけど水面下で、顧客と上司や、部署間で対立していることはよくあります。お互いの意見を言い合うだけでは解決しないことがグループワークを通して分かっていると、対立関係になったときに乗り越えられます。
④ ゲーム
グループメンバーとの関係性を創ったり、実感することが難しい会社の仕組みを分かりやすく知ることができるのが、ゲームのグループワークです。
ゲームということもあり、楽しみながら行うことができることが大きな特徴です。
例えば、当社の目標達成・コスト意識研修では、学びの一つとして、新入社員が「自分はコストである」ということに新入社員が気がつけるゲームとなっています。
※ 当社研修資料と受講生のグループワークの様子
ゲームのグループワークを開発するときのポイントとしては、学んでほしいことを意識し続けることです。ゲームを通して新入社員に学んで欲しいことは何なのかを明確にしておかないと、目的がブレてしまい、楽しい時間は過ごせても学びが少なくなってしまいます。
先ほど紹介した例以外にも、関係性の構築にフォーカスした「ペーパータワー」というゲームもあります。ペーパータワーは、A4用紙30枚を使ってできるだけ高いタワーを作るゲームです。使えるものはA4用紙のみと非常にシンプルだからこそ、チームで知恵を出し合い、工夫することが試されます。
<ペーパータワーの実施方法>
1チーム4~5人のグループを作り、各グループに30枚ずつA4用紙を配布します。配られた用紙は、切ったり折ったりしても問題ありません。しかし、紙以外の材料を使用してはいけません。ゲームの準備ができたら、5分間作戦タイムをとり、タワーのイメージや手順、役割を話し合います。作戦タイムで触れてもよい用紙は、1枚に限ることもルールの一つです。
作戦タイムが終了したら、組み立てを開始します。時間は5分間です。組み立てタイムが終了したら、参加者はタワーに触れてはいけません。手を触れない状態で10秒数え、その時点のタワーの高さで競い、一番高いタワーを作ったグループが優勝です。ゲームを一度終えたら、振り返りを行い、反省と改善を話あった上で再度同じゲームを行うと、仕事で大切なPDCAを回す経験にもなります。
関係性が創れていない新入社員の状態で、協力し合うゲームのグループワークを行うと、関係性を深めることに繋がります。
4)新入社員研修でグループワークを実施するための手順
新入社員研修でグループワークを実施するための手順は次の通りです。
①研修の目的と連動を踏まえて、グループワークの目的(=ラーニングポイント)を設定
②グループワークの種類と、タイムラインスケジュール(研修の流れと時間配分)作成
③グループワークのコンテンツ開発
④テストプレイ・アップデート
⑤実施
詳しく説明します。
①研修の目的と連動を踏まえて、グループワークの目的(=ラーニングポイント)を設定
研修の目的と、何のためのグループワークなのかを明確に言語化します。
目的(=新入社員に学んでほしいポイント)がブレてしまうと、効果が期待できないグループワークになってしまう可能性が大きいためです。
例えば、次のような目的が考えられます。
このように研修の目的と連動したグループワークの目的(=新入社員に学んでほしいポイント)を作成し、明確にしておくことが大切です。
②グループワークの種類と、タイムラインスケジュール(研修の流れと時間配分)作成
グループワークの目的に最も適した内容を決めます。その後、そのグループワークの効果が最大限高まるタイムラインを考えます。
グループワークの目的を達成できる内容とタイムラインになっているかは、新入社員がどれだけ学べるかに関わってくるため、アップデートを重ねて作っていきましょう。そのようなポイントを踏まえて考えて作成した、当社ビジネスマナー研修のグループワークの一部のスケジュールがこちらです。
この例の場合、挨拶を学ぶために、グループワークの目的を「挨拶のマナーが正しくないことによるネガティブな影響を知り、挨拶のマナーの重要さを知ること」としていました。そのため、そのグループワークの目的に最も適した内容として、グループワークでマナーができていない人の動画を見て間違い探しをし、グループワークで確認し合う内容にしています。
グループワークで間違いを確認し合ってもらった後に、正しい例と解説を行うことで、新入社員の学びを深め、関係性を築くためにマナーが必要であると理解できるようにしています。
このように、グループワークの目的に最も適した内容を決め、それに合わせたタイムラインスケジュール(研修の流れと時間配分)作成を行うことが大切です。
1日の研修スケジュールについてより詳しく知りたい方は下記のコラムもご覧ください。
【新入社員研修のスケジュール】新入社員が最大限の学びを得るために
③グループワークのコンテンツ開発
グループワークの開発では、新入社員が主体的に取り組む仕掛けがあることが重要です。グループワークは、新入社員がどれだけ主体的に取り組めるかで学びの深さも変わってくるためです。
例えば、当社のビジネスマナー研修では、新入社員が何度もマナーを研修内で実践します。
※ 当社ビジネスマナー研修テキストより抜粋
新入社員が主体的に取り組むための方法として、当社では初めから型を教えることはしません。
まず何も言わずやらせてみて、そのあと型を教えて、実践する流れを作っています。するとできない自分を理解した上で、正しいものを学ぼうとするため、理解が深まり、習得度合いが高くなります。
当社のマナー動画をご覧になりたい方は、下記フォームからダウンロードできます。
このように、目的と合致した内容且つ、新入社員が主体的に取り組める仕掛けを意識してグループワークを開発することがポイントです。
グループワークのコンテンツ開発を行う中で、前の段階で作成したタイムラインスケジュール(研修の流れと時間配分)に変更が必要な場合も出てきます。その際は、行き来しながらアップデートしていきましょう。
④テストプレイ・アップデート
コンテンツを開発したら、テストプレイを行います。実際に行ってみないと見えてこないこともあるためです。
当社では、実際に想定しているグループワークの人数を集めて実施しています。テストプレイの中で、時間や伝える内容などを最終調整できると良いでしょう。
また、テストプレイを実施してもらった方から、フィードバックをもらうことも重要です。その中には、心が痛む内容もあるかもしれませんが、グループワークをより良くすることができるというマインドを持って受け止めましょう。
フィードバックの観点としては、
・グループワークの目的とズレがないか
・研修の流れに違和感がないか
・新入社員が実施できるレベルか
・説明で分かりづらいところがないか
・その他、気になったこと
を意識してもらうようにしましょう。
新入社員にとって、より学びのあるグループワークにするためにも、アップデートを重ねていくことが大切です。
⑤実施
いよいよ実施です。今まで準備してきたものはありますが、一旦それを脇に置いて、その日の新入社員の様子を良く見て、柔軟に対応することが必要です。
グループワークを開発した通りに行うことが目的ではなく、新入社員にとって学びとなるかが重要な目的だからです。実際にグループワークを行う中で予期せぬ事態が起こる可能性もありますが、その時は、グループワークの目的を思い出して、目的を達成するためにはどうしたらいいかを軸に判断してもらえると良いでしょう。
実際にあった例としては、2時間以内に日報の提出率改善の提案書を作成するワークで、新入社員から時間の延長の依頼があったため、時間を延長したことがありました。
グループワークの発表後、納期を守らなかったことは良くないですが、バッドニュースをしっかり伝えていたことは良いというフィードバックをお伝えしました。また、納期ギリギリに時間延長の依頼があったため、実際の現場では納期を守ることが基本で、延長を依頼する場合はもっと早い段階で伝える必要があることもフィードバックしました。
受講生の状況を見て柔軟に対応すると、より学びが深くなるため、当日の新入社員の状態を良く見て、ベストなグループワークを実施できるようにしましょう。
このような流れでグループワークのコンテンツ開発を行えると、新入社員が社会人の基礎力を身に付け、関係性を創り、仕事への理解を深める意味のあるグループワークを実施することができます。
5)新入社員研修でグループワークを実施する際に押さえておきたいポイント
新入社員研修で、グループワークを実施する際に押さえておきたいポイントを4つお伝えします。
① グループワークのメンバー構成を目的に合わせて調整する
② 意図的に新入社員が想像できる余白を作る
③ 講師が場をホールドする
④ アテンドスタッフが、講師をフォローする
それぞれ説明します。
① グループワークのメンバー構成を目的に合わせて調整する
メンバー構成によって、グループワークで見れる行動に変化があるためです。
グループワークのメンバー構成には大きく2つのパターンがあります。
・毎回同じメンバーでグループワークを行う場合
・適度にメンバーを入れ替えてグループワークを行う場合
毎回同じメンバーでグループワークを行う場合
毎回同じメンバーでグループワークを行う場合は、以下の目的の時に効果的です。
・関係性の育み方を知りたい
配属されたときに部署内でどのように関係性を築いていくのかを垣間見ることができます。
適度にメンバーを入れ替えてグループワークを行う場合
適度にメンバーを入れ替えてグループワークを行う場合は、以下の目的の時に効果的です。
・初対面の人とどのように関係性を築くのか知りたい
例えば、自ら積極的に声を掛けに行く方なのか、話しかけるのを待っているのかなどを見ることができます。
・同期同士の繋がりを持たせたい
毎回異なるメンバーになるようにするとその分多くの人と関係を持てます。
グループワークで、メンバーのどんな様子が見たいかに合わせて、グループメンバーの編成を調整することでより効果的に活用できます。
【参考】グループワークの人数と男女比率
グループワークを行う時に一般的に適切と言われているのは、対面実施の時は4~6名、オンラインの時は3~5名です。
あまりにも少人数過ぎると1名の影響力が強く出てしまい、グループのメンバーで協力し合う効果が薄くなってしまいます。一方で多すぎると、発言ができなかったり、何もしなくてもグループワークが進む状態になりかねません。そのため、一般的には、対面実施の時は4~6名、オンラインの時は3~5名が良いとされます。
しかし、この人数はあくまでの基本的な人数設計になるため、グループワークの主旨にあった人数かを検討して実施するようにしてください。
また、グループの男女比が可能な限り1:1になると良いです。そうすることで多様性が生まれ、さまざまな意見を統合しながら目的を達成する経験に繋がります。同性だけになると、偏った思考になったり、慣れ合いが強くなる場合があります。学生ノリが出てしまい、社会人への意識変革も難しくなります。
② 意図的に新入社員が想像できる余白を作る
意図的に余白のある指示を出しましょう。実際の仕事も完璧な情報を元に依頼されることは少ないためです。
ゲームの場合は、しっかりとルールを伝えることが必要ですが、対話・課題解決・ディベートのときは、意図的に説明を明確にしすぎないとか、定義をしすぎないようにすることが必要な場合もあります。
決まり切っていないことについて、新入社員がどのように対応するのかもグループワークで見ることができる大切なポイントです。中には、「これってこういうことであっていますか?」と質問されることもありますが、明確にしない方が良いと思う箇所であれば「ご自身で考えてもらって大丈夫です。」とだけ伝えて良いも悪いも講師で判断しないようにしましょう。
余白とグループワークが問題なくできる状態のバランスは難しいですが、「初めて新入社員に業務を依頼する時にどこまで伝えるか」や、「現場の上司がどのような依頼をするか」などを一つの判断軸として持ってもらえると良いでしょう。
このように、完璧すぎず余白のあるグループワークにすることで、より業務に近い状態を生み出せます。
新入社員に余白を渡すことは必要ですが、講師のオペレーションも明確にする必要があります。講師にオペレーションのトークスクリプトを用意することが必要です。これは、グループワークの品質を保持し、学びの質を高めるためです。
例えば、新入社員が上司役である講師に確認をした場合に、「講師は、どこまでオペレーショに沿う必要があるのか」は明確にしておきます。
主に、下記を抑えておくといいでしょう。
・何をどのタイミングで伝える必要があるのか
・新入社員に情報を渡す判断はどうしたらいいのか
・講師判断で、新入社員の余白に対して、どこまで自由にフィードバックをしていいのか
一例として、当社の講師オペレーションの説明資料(一部)をお見せします。※ 当社ロジカルシンキング研修の講師トークスクリプトより抜粋
③ 講師が場をホールドする
講師がしっかりと場をホールドすることが必要です。場をホールドするとは、「コントロールするのではなく、研修で起きることを全て受け止めて、その時に合わせたベストな学びを提供すること」です。
研修への参加意欲が低い方の影響が強いと、クラス全体の学びの質が低くなってしまうこともあります。特に対面形式だと、他のグループの空気感を何となく感知することができるため、クラス全体に影響してしまいます。
クラス全体にネガティブな影響を与える例としては、グループワークをやっているときに、だらっと机の上で寝るような姿勢を取ったり、背もたれに浅く腰掛けるような行動をしている人や、「このワーク面倒だね」という発言をするような人です。ネガティブな影響は伝播しやすいため、1人から1グループへ、そしてクラス全体へ伝わっていきます。
講師は、そのような状態になった時でも場をホールドし、フィードバックの時間に適切に指導する必要があります。
当社のビジネスマナー研修で講師が場をホールドすることにより、新入社員のマナーに対する認知の変化が起きた例がありますのでご紹介します。
挨拶のマナーの変化が分かる動画がありますので、まずはこちらをご覧ください。
認知前は、椅子をしまっていなかったり後ろで腕を組んでいたり、お辞儀が浅く雑な印象ですが、認知後は、そのようなことが無くなり、ピシッとしている印象になっています。
新入社員にこのような認知の変化を促せたのは、講師が場をホールドしていたためです。
「挨拶をちゃんとしなさい」と伝えるのではなく、認知前の動画を見せて、お客さんがみたらどう思うか?と問いを投げることで新入社員に気づきを与えることを行いました。
このような問いかけや講師からのフィードバックを積み上げることで、研修効果を最大限にすることができます。小さな働きかけで場は変わってくるのです。
オンライン形式だと、他のグループがどのような状態か見えないため、話し合いに集中はできますが、新入社員自身が周りを見ながらアウトプットの質や時間を調整することは難しくなります。
オンライン形式の時は、当社では、定期的にアテンドがグループを回って、ワークと異なることを行っている場合や、態度の気になる方がいた場合は講師に報告しています。その状況に合わせて、講師の判断により、全員に向けてアナウンスをしたり、グループに介入するなど、対応を考えて場をホールドしています。
④ アテンドスタッフが、講師をフォローする
講師一人だとグループワークの中でどのようなことが起きているのかを見きれないため、アテンドスタッフを用意します。講師は場をホールドすることに意識が向いているため、個々の動きをすべて見ることは難しいです。そのため、アテンドを1名付けて、新入社員の動きを見ておくと、講師が見えていない部分を見て、講師をフォローできます。
講師から見えづらい新入社員のワークの進みの状態や、新入社員がネガティブな発言・行動がある場合に講師に伝えることで、講師から適切なフィードバックが可能です。
また、人事の方が気にしている新入社員の様子も、アテンドから見えたグループワークの中での発言や発言量、人との関わり方などを人事へ個別のフィードバックできます。
※ アセスメントではないので、あくまでも見えている範囲になります。
個の状態を確認するためにも、グループワークを行う時はアテンドを付けることをおすすめします。
これらのことに注意して、意味のあるグループワークを実施できるようにしましょう。
6)まとめ
本コラムでは、新入社員のグループワークに関して、お伝えしていきました。
新入社員研修でグループワークを行う目的は、2つです
・新入社員の成長を促進するため
・人事が新入社員を適切に観察する
グループワークを開発する場合は、次の手順を踏み、押さえておきたいポイントを意識することで新入社員にとって効果のあるグループワークを実施できます。
研修の中にグループワークを取り入れることで、インプットだけでなくアウトプットを行い、学んだことを活用できるレベルを目指していきましょう。
アーティエンスの新入社員研修は、毎年時代に合わせた内容にアップデートし続けており、目的に合った質の高いグループワークを開発しております。
グループワークを含む新入社員研修について相談したい場合は、ぜひアーティエンスにご相談ください。