半年が経過したけれど、新入社員が思うように育たなかった…なぜ?

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9月も中旬に差し掛かり、大分秋らしい気候が感じられるようになりました。

この時期は、新社会人として半年間の経験を積んだ新入社員の方々の、成長や変化の度合いが顕在化されやすい(意識されやすい)時期でもあるでしょう。

私達アーティエンスも、この時期は人事の方々との「今年の新入社員の成長について」の議論や相談を受けることが多くなります。   思った以上に成長をした新入社員の話や、新プロジェクトに抜擢された新入社員の話、配属後にチーム全体の活性が増した話等々…。

一方で、「この新入社員だけ、なかなか伸びない(成長しない)」、「どう育成していいのか、もう分らない」といった、育成についての悩み・相談をされることも少なくありません。     そこで、今回はそんな「半年が経過したのち、新入社員が思うように育たなかった」といったケースで、どのような課題や対策が考えられるかについて、お話していきたいと思います。      

1)新人の成長過程の課題を見出す際は、「個人課題」「業務課題」の観点を持つ

「他の新人たちは結構成長が見られているのだが、一部の新人だけ変化が見られない」

  ──このような状況が確認された際、多くの育成現場では対象者の課題について、要素分解をしないまま「他の新人たちの比較」や「昨年度の新人との比較」といった相対的かつ大局的な観点から対策を考えてしまう傾向が多いようです。

(もちろん、そういった観点も大切なのですが、)この場合はまず、その対象の方の課題を「個人課題」と「業務課題」に分けて整理されると良いでしょう。    

個人課題」とは、価値観やものの考え方、業務に対するスタンスやモチベーションといった、個人の性質や状態における課題です。   それに対して、「業務課題」は業務に関わる技能や知識の習得度、そのほか業務自体の遂行能力といった、業務遂行に関わる課題を指します。        

なぜ、個人課題と業務課題に分けて考える必要があるのか

    二つに課題分類することによってまず知っておくべきことは、

・その課題分類ごとに打ち手(対策)の取り方が変わる
・一般的に「個人課題」の解決は「業務課題」のそれと比べて難易度が高くなる傾向にある     ということです。    

ですので、ただでさえ難易度が高い個人課題に対して、「どれもこれも個人に関わる課題だから」と対象者の個人課題リストをどんどん増やしていってしまうと、それだけ対策の難易度も上がってしまいます。

ここで大切となるのは、「業務課題」として扱えるものを適切に見出していくことです。つまり、個人課題を不要に肥大化させない、ということですね。

例えば、「論理的思考力」や「対人コミュニケーション力」といったスキル・能力については、個人課題と業務課題のどちらに分類されるか、という点で悩むケースも多いでしょう。

この場合、「今後の業務機会・経験を一定量積むこと」で解消が見込めるとすれば、一旦は「業務課題」とみておくほうが適切です。
これら業務遂行能力に対して、「他の新人は同じ経験量で習得しているのに、対象の新人は出来ていないから」といった相対評価的な理由のみで、「個人課題」扱いにすることは避けたほうが良いでしょう。

人によって習得の時間差があるのは当たり前のことで、かつ、当たり前のことを課題視することは、とても非効率なことです。     誤解しないようご注意いただきたいのは、「新入社員に個人課題を見出すべきではない」ということを伝えている訳ではありません。むしろ、育成において大きな壁が発生する際は、業務課題よりも個人課題であることの方が多くなるでしょう。

──ですので、それゆえに、個人課題については要点を絞った対応が必要となってくるのです。そして、前述のとおり業務課題の解決は個人課題のそれよりも難易度は低くなります。     つまりは、成長過程に課題のある新入社員に対しては、その課題をどれだけ「業務課題」として見出していけるかが、育成を進めていく上で大きな鍵となってくるのです。        

2)その課題は、「外からの働きかけ」で解決するか、「当人の内からの働きかけ」を引き出して解決するか

 新入社員の成長に向けての課題を「個人課題」と「業務課題」に分けていったのち、それら課題に対してどう対策を打っていくかについて見ていきましょう。

対策を講じる際には、それらを解決していくうえで「周囲からの働きかけによる解決」が望ましいか、「当人の気づき・自覚を促しつつ、引き出していきながらの解決」が望ましいかで、区分していきます。    

  「周囲からの働きかけによる解決」が効果的な課題とは、いわば「PUSH型」対策が望ましい課題です。通常は、育成担当や上司が当人に直接伝えて、理解・覚えさせていき、課題解決されることが多いでしょう。

それに対して「当人の気づき・自覚を引き出しつつの解決」が効果的な課題は、「PULL型」対策が望ましい課題です。一から十まですべて伝えるのではなく、あくまで当人の自律性・自発性に委ねたうえで、成長を促していくことによって解決されることの多い課題です。

対策を検討する際は、まず対象の人物が有する課題を、項目ごとに上記のマトリックスに落とし込んでいきます(マッピング)。

例えば、社会人としての基本的な行動(時間を守る等)や社則に対する対応面で課題がある場合は、左上の「個人課題・周囲からのはたきかけで解決していくのが望ましい課題」に位置することができるでしょう。

業務習得スキルにおける課題の場合は、左下か右下かのどちらかに位置できます。   業務ツールなど、日常で使用するシステムの習得の場合は、左下の「業務課題・周囲からの働きかけによる解決」に位置することが多いでしょうし、営業スキルやプレゼンテーションスキルは、一定のレベルを超えたのちは右下の「業務課題・当人の気づき・自覚を引き出しつつの解決」が有効になることが多くなります。     課題のマッピング後は、それぞれのエリアで望ましいとされる対策を確認していきます。 詳しくは、下の図をご確認ください。    

課題のタイプごとの対策の種類 マトリックス

先ほどのマトリックスにて、4つに区切られた領域にそれぞれティーチングコーチングメンタリングカウンセリングの4つの対策種類が記載されています。   つまり、それぞれの領域の課題において該当する対策種類で対応するのが望ましいということですね。
(※ 状況によっては対応する対策種類がそぐわないケースもございます。上記の対策種類マトリックスは「一般的な対応区分」としてご参考ください。)     それぞれの対策種類の特徴について、説明していきましょう。    

このように課題をマッピングしていき、課題ごとに対策種類を整理することによって、育成を効果的かつ効率的に進めていくことが見込めます。   特に新入社員の育成においては、「ティーチング」と「メンタリング」に位置される課題が多くなります。

上長や育成担当は、それぞれの対策手法を熟知したうえで、対象者の成長に合わせて対応種類を広げていく(少しずつ「コーチング」や「カウンセリング」の機会も創出していく)と、より新入社員の成長フェーズにマッチした育成を実現していくことができるでしょう。       

【関連記事】ティーチングとコーチングの違いとは?具体例から学ぶ活用領域と活用方法

3)「思うように育っていない」という新人が発生するのは、なぜか

    ──さて、冒頭の問いかけに話を戻していきたいと思います。

「半年経って、新入社員が思うように成長しなかったとき、その理由や原因は何が考えられるか」     当然ながら、上記のような事態は様々なケースがありますで、「どれでも原因はひとつ」ということはありえません。

ですが、上記事態の際には往々にして、「育成者が対象の新入社員に持つ『課題感』と、対象の新入社員自身が持つ『課題感』(または現状把握)とで、ギャップが生じている」様相が見受けられるものです。

これら課題感のギャップが生じているとき──つまりは「成長に向けての課題が【整理されていない】状態」においては、「新入社員の成長が鈍化される」症状もまた、発生しやすくなるのでしょう。      

課題の整理を行い、対象の新入社員とも共有していく

「トレーナーや育成担当が感じている課題について、対象の新入社員は表面でしか理解していない」

──こういった状況であるとき、トレーナーや育成担当自体も課題の整理がなされていないことも非常に多いものです。   前章で述べたように、新入社員の育成は、その「課題」を整理していくことで、講じる対策もまた明確になっていきます。

当然ながら、成長の課題というものは、新入社員の方々ひとりひとりで異なっていくものです。 そして、入社半年が経過したこの時期はまだ、その課題を整理して適切な対応を行っていく責任は育成者側のほうにウエイトが置かれていると見るべきでしょう。

新入社員の課題の理解を深めさせる前に、まずは育成側として「対象者の課題をしっかり整理できているか」を見ていくことが、とても大切です。   更には、その課題を整理した状態を対象の新入社員とも共有していくことで、育成の効果をさらに高めていくこともできるでしょう。  

【関連記事】新入社員の配属後フォロー|3つのギャップを解消する4つの施策      

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