【ファシリテーション実践ガイド】良いアウトプットと参加者の一体感を促す

「ファシリテーションスキルを学んだものの、現場でうまく実践できない…」

ファシリテーションの理論や知識は持っていても、現場でうまく使いこなせずに苦戦してしまうことがよくあります。

本コラムでは、

・会議やワークショップでの良いアウトプット
・参加者の一体感の促進

という2つの効果を得るための、ファシリテーションの具体的な実践方法を3つのステップで解説します。

ファシリテーションスキルを高めるためには、実践を通じて経験を積むことが不可欠です。
紹介する3つのステップの内容を参考に実践し、ファシリテーションによるポジティブな影響を高めていきましょう

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    監修者プロフィール

    迫間 智彦

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    大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

    1)【前提】ファシリテーションを実践して得たい効果とは、良いアウトプットと、参加者の一体感

    ファシリテーションを実践して得たい効果とは、良いアウトプットと、参加者の一体感です。良いアウトプットと、参加者の一体感の二つが高い水準でなければ、会議やワークショップの目的・目標を達成できないためです。

    例えば、どんなにロジックが完璧な企画ができ、参加者が理解していても一体感がなければ、絵に描いた餅に終わるでしょう。逆に、参加者がテンションが上がり一体感があっても、ロジックが弱ければ、具体的に前に進まないでしょう。参加者の一体感の二つが高い水準でなければ、ファシリテーションを実践しているとは言えません。

    次の章から、良いアウトプットと、参加者の一体感を促すためのファシリテーションの実践ステップをお伝えしていきます。  

    2)良いアウトプットと、参加者の一体感を促すためのファシリテーションの実践ステップ

    下記3つのステップに沿って、それぞれお伝えしていきます。

    ・ファシリテーションの準備段階
    ・ファシリテーションの実施段階
    ・ファシリテーション後のフォロー

    ファシリテーションの準備段階

    ファシリテーションの準備段階では、下記3つのポイントを抑えておくことが必要です。

    ・ファシリテーター自身が、タスクタイプか、メンテナンスタイプかを知る
    ・ファシリテーションする場の傾向を知るか
    ・会議・ワークショップのデザイン(企画)・準備を行う

    それぞれ説明していきます。

    ファシリテーター自身が、タスクタイプか、メンテナンスタイプかを知る

    ファシリテーター自身が、タスクよりのファシリテーターなのか、メンテナンスよりのファシリテーターなのかを知る必要があります。

    自身が、タスクよりかメンテナンスよりかが分かるだけで、ファシリテーションする場である会議やワークショップでの介入度合いに自身のコントロールができるからです。

    タスクよりのファシリテーター、メンテナンスよりのファシリテーターの事例をそれぞれお伝えします。
    タスクよりのファシリテーターは、参加者のメンテナンスに関しておざなりになる傾向があります。ファシリテーターと、一部の参加者が「とてもよいアウトプットだ!完璧なロジック」と思っていても、冷めた目で見る参加者がいるということがよく起きます。

    このような場合、ファシリテーター自身がタスクよりのファシリテーターであるとわかっていれば、ファシリテーションする場の始めに参加者の関係の質が上がり、一体感を持ちやすい働きかけを行うといいでしょう。ファシリテーションスキル(※)でいう「場のデザインのスキル」や「対人関係のスキル」を丁寧に扱うといいでしょう。

    メンテナンスよりのファシリテーターは、アウトプットがおざなりになる傾向があります。ファシリテーションをした場はとても穏やかで温かい場になり、参加者同士がつながっているような感覚を持てます。ただし「結局、何をするの?」という状況がよく起きます。

    このような場合、ファシリテーター自身がメンテナンスよりのファシリテーターであるとわかっていれば、参加者の発言を板書し、可視化していくことで、議論・対話することが明確になっていきます。ファシリテーションスキルでいう「構造化のスキル」を丁寧に扱うといいでしょう。なお注意点としては、「100か0」かの話ではなく、「タスクは○○%、メンテナンスは○○%」と考えていくといいでしょう。

    このように、ファシリテーター自身が、タスクよりのファシリテーターなのか、メンテナンスよりのファシリテーターなのかを知ることが必要です。

    (参考)ファシリテーションスキルをより知りたい方に
    より良い決定を導くファシリテーションスキルは4つと具体例

    ファシリテーションする場の傾向を知る

    ファシリテーションする場の傾向を知る必要があります。なぜなら、ファシリテーションする場の傾向を知っておくことで、適切な会議・ワークショップのデザイン(企画)・準備を行うことが可能なためです。ファシリテーションする場の傾向を、下記のマトリックスのどこの位置にいるかで把握します。  タスクとメンテナンス ※ 当社、ファシリテーター育成コースのテキストより一部抜粋

    「タスクの質も、メンテナンスの質も高い」ということであれば、さらによりよくなるためのデザイン(企画)・準備をしていく必要があります。最も難易度が低いファシリテーションを実践する場です。

    「タスクの質は低いが、メンテナンスの質は高い」ということであれば、タスクの質が高まるための議論・対話の時間を多くとるようにしましょう。メンテナンスの質が高いのであれば、いきなり本題に入ることも可能でしょう。二番目に難易度が低いファシリテーションを実践する場です。

    「タスクの質は低いが、メンテナンスの質は高い」ということであれば、メンテナンスがなぜ低くなっているのかを把握することが必要です。例えば、「上意下達になっているのか」、「部門間の対立関係があるのか」などです。それを紐解き、お互いが相手の立場や背景を理解していくことからスタートすることが必要です。二番目に難易度が高いファシリテーションを実践する場です。

    「タスクの質も、メンテナンスの質も低い」ということであれば、社風やチームカラーなどから、タスクの質・メンテナンスの質のどちらに手を加えたほうがいいかを考えていく必要があります。最も難易度が高いファシリテーションを実践する場です。

    会議・ワークショップのデザイン・準備を行う

    会議・ワークショップのデザイン・準備を行う必要があります。

    「タスクの質を上げることに重きを置くのか」、「メンテナンスの質を上げることに重きを置くのか」、「タスクの質・メンテナンスの質もバランスよく実施するのか」を決めることにより、会議・ワークショップの目的・目標が達成しやすくなります。

    例えば、プロジェクトのキックオフミーティングなど行う場合は、始めにメンテナンスの質を高めていくのが一般的です。初対面の方もいるケースが多いためです。この時に注意点としては、社風がタスクの質への意識が高いと、メンテナンスの質に対してアプローチすること自体に違和感を感じることが多いです。そのため、「タスクの質が高まることが想像できるメンテナンスの質を高めるアプローチ」や、「タスクの質を高めながら、メンテナンスの質を高めていくアプローチ」を行っていくことが必要です。

    自身が、タスクよりかメンテナンスよりかが分かるだけで、ファシリテーションする場である会議やワークショップでの介入度合いに自身のコントロールができるからです。会議・ワークショップのデザイン・準備を行うと、タスクの質もメンテナンスの質も高めていくことが可能です。

    ファシリテーションの準備段階では、下記3つのポイントを抑えていきましょう。

    ・ファシリテーター自身が、タスクタイプか、メンテナンスタイプかを知る
    ・ファシリテーションする場の傾向を知るか
    ・会議・ワークショップのデザイン(企画)・準備を行う

    ファシリテーションの実施段階

    ファシリテーションの実施段階では、下記3つのプロセスで進めていくことが必要です。

    ・自身の状態を整える
    ・ファシリテーションする場をメタで見る
    ・参加者のアウトプットと、コミットを確認する

    それぞれ説明していきます。

    自身の状態を整える

    ファシリテーターが、会議・ワークショップの場に入る前に、状態を整えることが必要です。状態を整えないと、視野狭窄になってしまい、フラットに物事を見れなくなるためです。

    例えば、会議のファシリテーションに入る前に、クレーム対応をしていて、そのクレームがまだ続いている状態だと、そのことが気になってしまいます。そのため、アウトプットを高めていくための思考が回らなかったり、参加者同士の関係性がどうなっているかを感じることも難しいでしょう。

    大事な会議の場であれば、30分前には状態を整えるといいでしょう。難しい場合は、5分前でも構わないので、深呼吸をするなどが必要です。ワークショップの前などは、前日から状態を整えるのが一般的です。少なくとも2時間前には、状態を整えます。

    ファシリテーター自身が、タスクよりのファシリテーターなのか、メンテナンスよりのファシリテーターなのかを知る必要があります。会議・ワークショップの場に入る前に、ファシリテーターが状態を整えることは、タスクの質・メンテナンスの質を高めるためにとても重要です。

    ファシリテーションする場をメタで見る

    ファシリテーションする場をメタで見ることが必要です。メタで見る意識を持っておかないと、ファシリテーター自身の思考や価値観に引っ張られたり、参加者の誰かの意見に引っ張れることになるためです。

    メタで見ていないと、「参加者の思考が正しい・正しくない」になってしまうことがあり、タスクの質に悪影響を与えます。また一部の参加者の関係性に引っ張られて、「一体感がある・ない」と捉えてしまい、メンテナンスの質に悪影響を与えます。

    具体的な対応方法として、ファシリテーションをしている場を、外から見るイメージを持つといいでしょう。参加者がロジックを創っていくときは、どうしても参加者の世界でのロジックになります。そのため、世の中の動きや、敢えて極論を伝えることで、思考を広げていく働きかけをするといいでしょう。その結果、タスクの質は高まっていきます。

    参加者同士の関係性を観るときは、全体を観るといいでしょう。「議論・対話の場にポジティブに参加している人は何%か?ネガティブに参加している人は何%か?」です。この見立てをしておくと、それぞれの関係性や、お互いどのような影響を与えているかが見えてきます。

    (参考)具体的な観察方法を知りたい方は、下記コラムをぜひ参考にしてください。
    ファシリテーションのコツとは何か?│ファシリテーターとして、レベルアップする

    ファシリテーションする場をメタで見ることで、タスクの質・メンテナンスの質をより深く見立てることができます。

    アウトプットと、参加者のコミットを確認する

    アウトプットと、参加者のコミットを確認することが必要です。会議・ワークショップの目標であるアウトプットが出てきているかを確認することで、タスクの質が高いかどうかを確認できます。またそれと同時に、参加者のコミットを確認することで、メンテナンスの質が高いかどうかを確認できます。

    例えば、会議・ワークショップの目標であるアウトプットを確認したときに、「この施策なら、問題が解決できる」、「この企画なら、スケジュール的にもお客様の満足度を高めることができる」という発言が出てきたのであれば、タスクの質は高いでしょう。ただし、「この施策は、現場のリソースを多くとるので現実的ではない」や、「うーん、何か足りない気がする」などの発言が出てきたのであれば、タスクの質が高いとは言えないでしょう。

    具体的な聞き方としては、「本会議のアウトプットはこちらということでいいですか?」、「本会議の目標は達成できたという認識で構いませんか?」などストレートに聞くといいでしょう。

    コミットの確認をしたときに、全員が「この施策を進めよう!」や、「これは行けると思う。○○さん、これできる?OK?」など全員が一体感を持っている発言があれば、メンテナンスの質は高いと言えます。ただし、表情が曇っている人がいたり、「まあ頑張ります」などは、メンテナンスの質が高いとは言えないでしょう。

    具体的な聞き方としては、「本施策を実施するにあたって、みなさんのコミットは10段階なら何点ですか?10点が最も高いとどうでしょうか」、「本企画、みなさん、本当にやりたいと思いますか?」などストレートに聞くといいでしょう。

    アウトプットと、参加者のコミットを確認することで、本当にその会議やワークショップの目的・目標が達成できそうかどうかを把握できます。

    ファシリテーションの実施段階では、下記3つのプロセスで進めていきましょう。

    ・自身の状態を整える
    ・ファシリテーションする場をメタで見る
    ・参加者のアウトプットと、コミットを確認する

    ファシリテーション後のフォロー

    ファシリテーション後のフォローでは、下記2つのポイントを抑えていくことが必要です。

    ・進捗・効果を確認する
    ・ドライブをかける

    それぞれ説明していきます。

    進捗・効果を確認する

    進捗・効果を確認することが必要です。進捗・効果を確認していかないと、会議やワークショップでは熱量が高かったけど、その後冷めてしまうということが起きます。

    会議やワークショップが終わった後は、現場に戻り、今までの日常が戻ってきます。それは多くの仕事が待ち受けており、目の前の仕事に忙殺されるためです。そのため、一週間後に進捗確認の会議やフォローセッションを入れておくといいでしょう。進捗が進んでいたり、効果が見えていると、熱量が上がってきます。それは、タスクの質にもメンテナンスの質にもポジティブな影響を与えていきます。

    ドライブをかける

    ドライブをかけることが必要です。ドライブをかける意識と行動がないと、停滞が長く続き、熱量が覚めていくためです。どうしても、どのような仕事でも、必ず停滞の時期があります。そこを乗り越えることができるかどうかが、とても重要です。

    この時に、ファシリテーターが意識・行動してほしいことは、ポジティブフィードバックです。数字上の成果が出ていなくても、タスクの質とメンテナンスの質が高まっている施策・企画は、必ずポジティブな動きがあります。小さくてもいいので参加者と共に探していきます。例えば、「部門間のメールの数が多くなった」、「事前共有が多くなった」などのレベルでも構いません。ポジティブな小さな変化を見逃さないことが重要です。

    このようにドライブをかける意識・行動を持つことが、タスクの質・メンテナンスの質を高めていきます。

    ファシリテーション後のフォローでは、下記2つのポイントを抑えていきましょう。

    ・進捗・効果を確認する
    ・ドライブをかける

    3)まとめ

    本コラムでは、ファシリテーションを実践することで、「良いアウトプットを得るためのタスクの質と、参加者の一体感を促すメンテナンスの質」の重要性と、扱い方をお伝えしました。

    タスクの質とメンテナンスの質を高めていくには、下記ファシリテーションの実践ステップを行っていく必要があります。

    ・ファシリテーションの準備段階
    ・ファシリテーションの実施段階
    ・ファシリテーション後のフォロー

    タスクの質とメンテナンスの質を高めていくことで、「ファシリテーションを実践している」と自信を持って言えるようになってほしいと思います。

    なお、当社では、公開講座・講師派遣型にてファシリテーション研修をご用意しております。ご興味があれば、ぜひご連絡ください。
    【公開講座】会議の進行術を学べる!会議ファシリテーション研修 開催中

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