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今、管理職に渡すべき”課題の分け方・向き合い方”ー技術的問題と適応課題ー

  • マネジメント

多くの企業が本格的にテレワークを始めて約1年、一時的にはテレワークがうまくいっていたものの、時間の経過と共にオフィス勤務に戻す会社も出てきています。一方でテレワークを継続し、むしろ生産性を高めている会社もあります。その違いはどこにあるのでしょうか?

管理職研修やセミナーでテレワークでの課題をお伺いすると、以下のようなものが挙がります。

●「メンバーのインフラに差がある。スムーズにテレワークができる人もいれば、通信環境が悪く、出社せざるを得ない人もいる」
●「部下の感じていることや考えていることが掴めていない気がして、部下が仕事に集中できているのか不安」
●「メンバーの様子を常日頃、観察することができないので人事評価が難しくなっている」
●「メンバーを信じたい一方で、ついついどこかでさぼっていないか?と考えてしまう自分もいる」

これらの課題は、業種・職種によらず多くの企業から頂くお悩みです。

今回のコラムでは、これらの課題を解決していく切り口として「技術的問題・適応課題」を紹介します。

1)テレワークで起きがちな課題の整理

生きていく中で、私たちには多くの課題が発生します。同様に解決策も世の中にはたくさんあります。例えば、ここ1年でテレワークにおけるマネジメントに関する書籍も多く出版されています。

しかし、目の前のあらゆる課題は減るどころか、時間と共に増え続けている、ないしはずっと同じ課題が残り続けているというのが実感ではないでしょうか?

なぜこのような現象が起きるのでしょうか?

ハーバード・ケネディ・スクールのロナルド・ハイフェッツ教授は、そもそも課題には2つの種類があると述べています。

世の中の課題は2つに分けられる~技術的問題・技術的問題

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技術的問題

技術的問題は知識の量や質を高めれば解決できる課題を指します。

例えば、企業における財務分析はやり方が定められていて、財務・分析に関する知識やスキルがあれば、誰でもできるようになります。

また、技術的問題は外部の専門家に分析を委託することもできます。
かえってその方が、質の高い分析ができるかもしれません。

適応課題

適応課題は、知識の量や質を高めても、それが直接課題解決に結びつくわけではありません。

例えば、部下の人事評価の納得感を高めたいという場合には、どれだけ自分が評価スキルに関する知識を身に着けても、結局のところ部下に納得感を持ってもらえなければ、課題が解決したとは言えません。

そして、何より人事評価の納得感は他者に委ねても解決しない課題です。
課題解決のポイントは自分にあり、他者に委ねて自分を切り離してしまうと、かえって課題が悪化してしまうからです。

目の前に起こっている課題を技術的問題・適応課題に分類して、適切なアプローチを選ぶことはテレワークにおいても有効です。

ここからは、身近な事例としてテレワークにおける技術的問題・適応課題について考えてみましょう。

テレワークと技術的問題

テレワークにおける技術的問題とは何でしょうか?いくつかありそうですが、代表的なものを挙げてみます。

●通信環境が悪い、PCスペックが低いなどで、WEB会議の際にスムーズにコミュニケーションが取れない
●テレワーク前は、データの不足や抜け漏れがあっても、気軽にコミュニケーションして解決できていたが、テレワークになり、お互いの状況が分からず、データのやり取りがうまくいかない
●WEB会議システムの使い方に慣れておらず、従来よりも時間が掛かってしまう
十分に作業できる机や椅子がなく、身体に負担が掛かってしまう

これらの課題は、いずれも解決策が明確です。

◇通信環境・PCスペック
◇ネットワークを増強する、新しいPCを導入する
◇データ共有
◇クラウドサービスを利用し、リアルタイムでデータ共有できるようにする
◇WEB会議システム
◇マニュアルを作成し、練習会を設ける
◇作業環境
◇机や椅子を購入する

では、テレワークにおける適応課題にはどのようなものが挙げられるでしょうか?

テレワークと適応課題

テレワークにおける適応課題で代表的なものは以下のようなテーマです。

●お客様もテレワークになり、これまでのような訪問や電話を中心として営業活動がやりにくい
●メンバーがさぼっていないか疑心暗鬼になり、ついつい細かい報告を求めがちになる
●コミュニケーションの頻度が減って、部下の様子が見えにくくなった

上記のような課題に直面した時に、取りがちなアプローチは以下のようなものです。

◇営業方法の改善
 ➢とりあえず提案書や事例をお客様に送り続ける
◇メンバーへの気掛かり
 ➢報告用のフォーマットをつくるなど報告にストレスが掛からないようにする
◇部下へのフォロー
 ➢仕事の話だけでなく雑談をするチャンネルをビジネスチャット上に設ける

いかがでしょうか?おそらく
「なんとなく悪くない気はするが、課題が解決される気もしない」
「それで解決するのであれば楽なのだが、実際には解決しないから困っている」

などの感想を抱かれたのではないでしょうか?

その感覚は間違っておらず、いずれも「適応課題であるにも関わらず、技術的問題として解決しようとした」ため、課題解決に至らないのです。

よくある間違い:適応課題を技術的問題として解決しようとする

適応課題に直面しても、人はついつい技術的問題として解決しようとしてしまいがちです。技術的問題は自分の考え方や捉え方を変える必要がありません。そのため、適応課題として解決するよりも、心理的な負荷が低いのです。

適応課題は、必ずしも知識やスキルを身に着ける必要はありませんが、その代わりに自分がそれまで正しいと信じてきた信念や価値観を見つめなおす必要があります。

このプロセスに慣れないうちは「自分が正しいと信じてきたことを見直すこと=自分は間違っている」と捉えてしまいがちです。

しかし、実際には「その信念や価値観が課題にはフィットしていなかった」ということに過ぎず、自分がすべて間違っていることは意味しません。

では、具体的に適応課題にはどのように向き合えば良いのでしょうか?
先ほどの事例をもとに考えてみましょう。

◇お客様もテレワークになり、これまでのような訪問や電話を中心とした営業活動がやりにくい
  ➢訪問や電話に頼らない新しい営業アプローチを考えてみる
◇メンバーがさぼっていないか疑心暗鬼になっており、ついつい細かい報告を求めがちになっている
  ➢メンバーがさぼることによって、何が自分にとって不都合なのか?を明らかにする
◇コミュニケーションの頻度が減って、部下の様子が見えにくくなった
  ➢部下の様子が見えないことで、自分にとって何が不都合なのか?を明らかにする

技術的問題を解決するアプローチと大きく異なる点は「課題解決の矛先を相手や外側ではなく、まずは自分に向ける」点です。

こうすると、自分のどんな信念や価値観が起こっている出来事とズレているのか?が分かってきます。

◇営業の改善
  ➢訪問すること、電話するなど直接の接点を持つことが営業であり、お客様への付加価値だと思っていたが、オンラインだけでも受注ができることが分かり、自社が考えていた価値とお客様が感じていた価値は異なっていたのでは?ということに気づく
◇メンバーへの気掛かり
  ➢メンバーがさぼることで今期の目標が達成できないのではないか?という不安があって、その不安からメンバーに報告を強いていることに気づく
◇部下へのフォロー
  ➢部下の様子が見えないことで、適切なサポートができないのでは?という不安から、部下の状況がウオッチできるようにコミュニケーションの量を増やそうとしていることに気づく

適応課題の解決に向けた第一歩は、このような自分の内面と、実際に起こっている出来事のズレに気づくことにあります。このズレが課題を引き起こしているので、ズレに向き合わないまま知識やスキル・ツールで課題を解決しようとしても、いっこうに課題は解決せず、むしろ時間が経つことで課題は悪化するばかりです。

2)適応課題を解決するには?

適応課題4つの分類

ここから先は適応課題の解決に向けて、さらに深掘っていきます。
その前に、目の前の課題が適応課題か否か?を表すサインがありますので、ご紹介します。
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上記のサインが多ければ多いほど、その課題は適応課題だと言えます。
そして、適応課題は大きく4つに分類することができます。

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今、皆さんが直面している課題は、4つのうちどれに当てはまるでしょうか?

これらの課題がある時には、相手や環境を変えても課題解決はできません。いったん、課題解決しようとはやる気持ちを抑えて、まずは自分の内面で何が起こっているのか?を紐解いていきましょう。

適応課題を扱う4つのプロセス

適応課題を扱うには4つのプロセスがあります。
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まず、「準備」です。ここでは起きている課題が技術的問題なのか?適応課題なのか?の区別を行います。ついつい自分の課題は技術的問題と認識してしまいがちですが、よくよく見ていくと「実は適応課題だった」ということがよくあります。

先に挙げた「適応課題を表すサイン」や「適応課題の4タイプ」も参考になると思います。

次は「観察」です。課題が分かると、解決策に飛びつきたくなりますが、その気持ちを抑えつつ「そもそも自分は何をしているから/何をしていないから適応課題が起こっているのか?」を明確にしていきます。

例えば、あなたがマネジャーで、部下に「どんどん相談して」と言っているが、いざ相談に来られてみると、自分の想像以上に何も考えずに相談する部下にイライラして「もう少し自分で考えてみたら?」と返答してしまうケースで考えてみましょう。

この場合は、イライラが元で「もっと考えてみて」とフィードバックしてしまうことが阻害行動に当たります。

実際に自分の言動を振り返っていくと、あまりにも大人げない言動を取っていたり、自分の信念と真逆の行動を取っていることに自己嫌悪が生じたりしますが、ここではそのような感情的な反応をいったん脇に置いて、自分の行動を写真や映画のようにはっきりと観察していくことが重要です。

また、どうしても自分の阻害行動が分からない場合には、信頼できる人に状況を明かし、「自分の行動のどこがこの問題を生んでいると思う?」と聞いてみると良いでしょう。

自分では分からないことも、他者からすると、すぐにわかることがよくあります。これは上司や部下の阻害行動は、本人ではなかなか気づきにくいものの、周囲の人からすれば丸見えであることなどからも、わかると思います。

続いて「理解」のフェーズです。改めてケースに戻ってみましょう。
そもそも「どんどん相談して」という言動と「もっと考えてから相談してほしい」という言動に矛盾が生じているとも言えます。この矛盾がどこから起こっているのか?に気づくのが「理解」のゴールです。

多くの場合、阻害行動には、その阻害行動を引き起こす「隠れた目的」があると言われています。しかし、それは世間体からするとカッコ悪いものであったり、世間の常識や周りの期待に反するものであったりすることが多いので、自分でも知らず知らずのうちに隠していることが大半です。

そこで、そんな世間体や評価・判断の声を保留しながら、自分の本音を見つめていきます。

◇「もっと考えてから相談してほしい」の本音とは?
  ➢(なぜ?)「仕事の負担を増やしたくないから」
  ➢(なぜ負担が増えるのがイヤ?)「仕事の負担が増えると残業しなければいけないから」
  ➢(なぜ残業がイヤ?)「自分の自由な時間が無くなるから」
  ➢(なぜ自由が無くなるのがイヤ?)「自分が好き勝手やれなくなるから」

このように自問自答を繰り返して、自分の本音を見つめます。慣れるまでは少し苦しさを感じますが、慣れていくと、部屋の掃除のような感覚で気楽にできるようになります。このステップも難しいようであれば、信頼できる他者やコーチ・カウンセラーなどの専門家からサポートを得ても良いでしょう。

ここまで来ると、自分の価値観と実際の行動のギャップがなぜ起こっているのか?について理解できるようになります。

今回のケースでは・・・

1.「(本当は)好き勝手やりたい自分もいる」
2.「(それは)仕事の負担を増やして自由時間を奪われなくないから」
3.「(だから、ついつい)もっと考えてから相談して」

と言ってしまう、という構造です。

最後に「選択」です。ここまで構造を紐解くことで起こった気づきを元に、行動を選択します。ここでのカギは「好き勝手にやりたい自分もいる」ということを受け入れることです。この自分をダメな存在、マネジャーとしてふさわしくないとしてしまうと、一時的に課題は解決しても、時が経つとまた同じことが繰り返されます。

受け入れる方法はいくつかありますが、最も効果的なのは「隠れた目的」を他者に明かすことです。

今回のケースでは「実は好き勝手にやりたいと思っている自分もいるんだよね…」と部下に開示することです。やってみるまでは抵抗があると思いますが、多くの場合、隠せていると思っているのは自分だけで、周りからみれば「本当は好き勝手にやりたいと思っていること」は透けて見えていることが多いものです。

そうすると、部下の方も「それは薄々感じていました。私の方でも、つい助けてほしくて甘えてしまっていました。自分なりにもう少し考えてから相談するようにします。」というような変化が起こりやすくなります。

これは心理学では「自己開示の返報性」とも言われており、自分に起こっていることをありのまま相手に伝えると、相手もありのままを返しやすくなるという法則です。

適応課題に直面した際には、反応的に課題解決しようとするのではなく「準備」→「観察」→「理解」→「選択」のステップで、起こっていることを紐解き、その理解から行動を選択することです。

適応課題が解決できるようになると何が起こるのか?

ここまで適応課題とは何か?適応課題を解決するためには?等についてご紹介しました。
最後に「そもそも適応課題が解決できることでどんなメリットがあるのか?」に触れてみたいと思います。

適応課題が解決できるようになることで得られる最大のメリットは、自身や自社の弱みや痛みがあればあるほど、その機会を変化に繋げ、強くなれることです。

弱みや痛みは、ついつい真正面からぶつかるのを避けてしまいがちです。
しかし、避けてばかりいると、いつまで経っても弱みや痛みのまま残り続けます。

少しずつでも粘り強く弱みや痛みと向き合うことで、それまでは弱み・痛みだったものが、弱みや痛みで無くなっていきます。そうなると、また同じ事象や似た出来事が起きたときに、今度は向き合った時の気づきを元に、新たな行動を選択できるようになります。

これを繰り返していくことで、実は弱みや痛みは最大の機会であることがわかってきます。

そして、このプロセスを繰り返していくことは「変化しやすくなる」「柔軟性が上がる」ことも意味します。

3)まとめ

適応課題はそれまでの考え方や信念をアップデートしていくための強力なツールです。
しかし自分一人で向き合うことは難しいかもしれません。

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