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【例文付き】部下を上手く褒めるための伝えるスキル|Ⅰメッセージとは
更新日: ー
作成日:2018.11.28
突然ですが、あなたは最近、どんな場面で部下を褒めましたか?
というのも、「褒める」という行為が苦手な上司の方は、案外たくさんいらっしゃいます。
確かに、年齢や立場が違う相手を褒めるというのは、ある程度の気恥ずかしさは拭えないものかもしれません。しかし同時に、「褒める」という行為は部下育成において重要なことの一つでもあります。
今回は、部下の成長を促す効果的な「褒め方」についてご紹介していきます。
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目次
1)そもそも、どうして褒めることが重要なの?
今現在、上司として部下の育成に取り組んでいる方の中には、「自分が部下だった頃は、上司から散々叱られながら鍛えられた」という方も少なくないのではないでしょうか。
そんな方から見れば、部下を「褒めて育てる」という行為は、どことなく生温さを感じてしまったり、慣れないものかもしれません。
しかし、とあるアンケートでは大多数の若手社員が「上司から褒められるのは嬉しい」と回答しています。一体、部下を褒めることでどのような効果が期待できるのでしょうか。
褒めることで生まれる効果は多い
部下育成となると、どうしても「部下に仕事を教える、間違いを正す」といった面に目を向けてしまいがちです。 仕事上、部下を叱る・注意するという行為も必要な場面はありますし、それも立派な部下育成の方法です。
しかし、叱られてばかりですと部下自身も次第にやる気を無くしてしまう恐れがあります。また、「自分は仕事ができないんだ」と、自分自身を追い込んでしまう可能性もあるのです。そのような状態では業務効率も下がり、人間関係にも悪影響が生じてしまいそうです。
一方、部下を「褒める」ことで、様々なメリットがあります。「褒める」という行為は、その人の良い面を見出すことですので、褒められた部下は「自分が認められている」と実感し、モチベーションも上がり、ひいては上司と部下間のコミュニケーションも円滑になります。また、「褒める」という行為は、受け手側だけでなく発信する側にもメリットがあると言われています。
「その人の良い面を見つけて伸ばしてあげよう」という前向きな気持ちは、自然と自身の成長に対するポジティブな思考も育てることにつながります。
褒められた部下だけでなく、褒める側の上司のモチベーションも上がるのです。モチベーションが上がれば、業務へのパフォーマンスも向上します。
一人一人の業務パフォーマンスが向上すれば、組織としての成長にも繋がります。「褒める」という、たった一つの言葉だけのコミュニケーションが、様々なメリットを生み出すのです。
人が成長しやすいのは、ポジティブ:ネガティブが3:1の状態
「どんな時でも前向きに」。
一見すると、良い言葉に聞こえるかもしれません。もしかしたら、かつて上司からこのような言葉をかけられた経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし「ポジティブ心理学」では、必ずしもポジティブな感情だけが成長を促すわけではないと言われてもいるのです。心理学の権威であるバーバラ・フレドリクソン博士は、人の成長に適切な感情比率として「ポジティブ3:ネガティブ1」という説を唱えています(「ロサダの法則」とも呼ばれています)。
これはすなわち、何かネガティブな感情を起こさせる出来事に直面しても、その3倍の良い出来事が起こった時に、人は最も幸福を謳歌でき、成長できるという説になります。
このポジティブな感情とネガティブな感情の比率の差が大きいと、成長に適した心理状態にあり、反対にこの比率の差が小さい時、人の成長は制限されてしまう傾向にあるのです。
しかし、だからといって「ポジティブ10」に対し「ネガティブ1」の比率が良いとも限りません。一見するとポジティブな感情に支配され、幸福度合いも高く感じられますが、人はいかなる時もポジティブな感情のみで生きることはできないのです。
したがってポジティブな感情ばかりが高まっていても、「自己欺瞞=何だってできるという気持ち」がかえって行動を制限してしまう結果となるのです。
部下育成の際にはこの比率を意識し、「3褒めて1叱る」といった方法を取ってみると、部下の成長も高まっていくでしょう。
管理職の悩みとは?│解決するための有効な対処方法も説明の記事では、具体的な事例もご紹介しておりますので、ぜひ参考にしてください。
しかし、褒めることが苦手な人は多い
部下を褒めることが、成長のきっかけとなることはお分かりいただけたかと思います。
しかし、冒頭でも述べたように、部下を褒めることが苦手な上司が多いのも事実です。
そもそも「上司・部下」という関係性に限らず、日本人はもともと褒めるのが得意でないと言われています。そこには様々な理由があるかと思いますが、今回は以下のポイントに絞って見てみましょう。
・どこを褒めたらいいのかが分からない
・褒めたことによってどんな効果があるかが分かっていない
「どこを褒めたらいいのか分からない」のは、日頃、部下のことをきちんと見てあげられていないことが考えられます。相手のことを十分に知らない状態では、褒めようと思っても褒められませんよね。
また、自身があまり褒められた経験が無い場合、自分が部下を褒めるということに苦手意識を感じてしまう人もいます。これは褒めるという行為によって、部下にどんなメリットがあるのかを知らないからです。
これらの問題の解決策として、相手を「具体的に」褒める方法「Iメッセージ」をご紹介したいと思います。
2)“褒める”がうまく伝わる“Iメッセージ”とは?
ある調査では、「部下をきちんと褒めることができている」と答えた上司が8割に上るのに対し、「上司から褒められていると感じる」部下が全体の半分にも満たなかった、という結果が出ています。
なぜこのような食い違いが生じてしまうのか。その原因の1つとして「Iメッセージ」の実践がうまく行えていないことが考えられます。「Iメッセージとはそもそも何か」「どのような効果が期待できるのか」をご紹介します。
Iメッセージって何?
上司「〇〇さん、さっき頼んだ仕事、もう終わってる?」
部下「すみません、まだです……」
上司「なんで?もっと早くできるでしょ」
このようなやり取りを見聞きしたことのある方もいるのではないでしょうか。
あなたが部下だと仮定したとき、上司のこの物言いにどのような気持ちを抱くでしょうか。 相手への伝え方には大きく分けて「Iメッセージ」と「YOUメッセージ」の2種類があります。
Iメッセージは、発信者である「私」を主語とした伝え方で、発信者の気持ちがダイレクトに相手に伝わるのが特徴です。一方「YOUメッセージ」は受け取り手である「あなた」が主語となっている伝え方です。その内容は発信者の主観によるところが多く、受け取り手からすると「指示・命令」といった意味合いが強くなる伝え方です。
上司「なんで?(あなたはこの仕事を)もっと早くできるでしょ」
この伝え方が「Iメッセージ」「YOUメッセージ」どちらに当てはまるのか、もうお分かりですよね。引き続き、Iメッセージ、YOUメッセージそれぞれの特徴についてご説明します。
Youメッセージの特徴
先ほども申し上げたように、YOUメッセージは、伝える相手(=あなた)を主語に置いています。
YOUメッセージを用いた褒め方に以下のようなものがあるとします。
「あなたは、本当に仕事が早いよね」 これでも褒め言葉として機能しているようにも感じますが、YOUメッセージの気を付けるべき点は、「あくまで話し手の主観ありきのメッセージ」であることです。
つまり、メッセージの受け手が「いや、私は別に仕事は早いと思わないんだけどな……」と思ってしまえば、そのメッセージは意味を持たなくなってしまう恐れがあるのです。
また、YOUメッセージには「断定的・命令的」なニュアンスを含ませてしまうことが多く、発信者がその意識を持っていなくとも、受け手の捉え方次第で「非難された・命令された」と感じられてしまうこともあります。 そして実際に多くの上司が、このYOUメッセージを使ってしまう傾向があります。
「あなたは、仕事が早いよね」「もっと早くできるでしょ?」
これらの部下を評価する際や、注意をする際のメッセージの発信者は自分(私)です。
しかし誤ってYOUメッセージを用いることによって、相手の行動を限定したり、非難するような意味合いを含ませてしまうことになります。部下育成においてYOUメッセージの使用は避けるのが賢明です。
Iメッセージの特徴
YOUメッセージとは反対に、Iメッセージの主語は自分(=私)です。
発信者が思ったこと・感じたことを主語を明確にしつつストレートに相手に伝えるメッセージのため、相手も「その言葉に嘘は無い」と感じ、素直に受け取れるといった特徴があります。
「〇〇さんはいつも仕事が丁寧だから(私は)感謝してるよ」「これだけの時間で仕上げてくれるなんて、すごい!」
これらのメッセージは、発信者である「私」の感想ですが、主語を補っている分、とてもストレートに伝わってきませんか?しかしこのようにして自分の本音を相手に伝えるということは、始めのうちは照れくささがあるものかもしれません。
それでも、上司であるあなたが部下の仕事ぶりを観察し、素直に思ったことを伝えるのは、部下にとって「ちゃんと自分のことを見てくれていて、正しい評価をしてくれる」という気持ちに繋がります。
それが「褒め言葉」だったなら、尚のこと部下のモチベーションは上がることでしょう。 部下の成長を願うならば、Iメッセージを駆使して部下を褒められるようになると良いでしょう。
Iメッセージを活用すれば“褒める”の効果が引き出せる
前の項目でもお伝えしたように、Iメッセージは、メッセージの発信者が思ったこと・感じたことを素直に伝えるための方法です。何事においても「素直な気持ち」というのは、相手の心にも残りやすく、影響を与えやすいパワーを持っています。
また、Iメッセージの特徴の1つとして、「上司」「部下」などの関係性に縛られず、対等な立場でメッセージのやり取りが行うことができます。
部下にとって「上司」という存在は、やはりある程度の緊張感もあり、「本音を話しづらい」といった印象を抱いてしまうものです。 Iメッセージをうまく活用することによって、そうした上司部下間のわだかまりが解け、対等なメッセージのやり取りができるようになります。 Iメッセージが習慣化すると、自然と「相手の良い部分を見つけよう」というポジティブな思考が育ちますので、的外れな評価でない「褒め上手」な上司になることができます。
Iメッセージの活用例
では、先ほどの例に挙げた2つのYOUメッセージを、Iメッセージに変換してみましょう。
「あなたは、仕事が早いよね」「なんで?もっと早くできるでしょ?」
↓
「あなたは仕事が早いから、(私は)とても助かってるよ」「早めにやってもらえると(私は)嬉しいな」
いかがでしょう。YOUメッセージにあった断定的・批判的なニュアンスが削られ、発信者の素直な感情が伝わりますよね。
これは「私自身」の気持ちを包み隠さずオープンに伝えているので、受け手もそのままの意味でメッセージを受け取ることができるのです。Iメッセージは特に、部下を「肯定する」ときに最適な方法です。
「上司は自分を見てくれて、評価してくれる」と感じることで、部下のモチベーションアップに繋がるのです。「部下を思うように褒められない」と感じている上司の方は、今一度、自分の伝えているメッセージがYOUメッセージになっていないか、そしてIメッセージを効果的に取り入れられているか確認してみると良いかもしれません。
3)Iメッセージで伝えるためのポイント
IメッセージとYOUメッセージの違い、Iメッセージがもたらす効果についてご紹介させていただきました。
続いて、Iメッセージを正しく活用する際に押さえておきたいポイントについてご説明します。 肝心な時に、すぐにIメッセージを活用できるよう、ぜひ覚えておきましょう。
努力・過程を褒める
「褒めて伸ばす」という言い方がありますが、何でもかんでも褒めたらいい、という訳ではありません。
褒める相手のやる気を引き出すためには、あるポイントに重点を置いて褒めるのが効果的です。
そのポイントの1つが、その部下の「努力・過程」を褒めることです。
ある業務を部下に任せていたとして、陥りがちなのが、その業務の「結果」だけを見て評価することです。
もちろん、最終的な業務の達成を見るのは大切なことなのですが、その業務を終えるまでに、部下はあらゆる努力や失敗を繰り返してきたかもしれません。その背景に目を向けないまま、目の前の結果だけを評価してしまうのは、部下としても素直に喜ぶことができません。
また、「失敗や葛藤は悪い事なのだ」と思い込み、失敗を避け自由に業務を遂行することができなくなってしまう恐れもあります。努力や過程を褒めるということは、部下がその業務にかけたすべての時間を「肯定する」ということです。 仮に業務が完了できなかったとしても、そこにかけた時間と労力はきちんと評価する。
「よく頑張っていたのを(私は)知ってるよ。お疲れ様」
その肯定感は部下の自信に繋がりますし、失敗を恐れず主体性を持って行動できる人間へと成長できるのです。
部下の目線に立つ
当たり前ですが、上司と部下では、社会人としてのスキルにも経験にも差があります。
それゆえ、上司としては「できて当たり前」のことでも、部下にとっては大きな苦労を伴うこともあるのです。
これらの行き違いは、かつては自分も「部下」として働いてきた経験があっても、ついつい忘れがちになってしまうものです。
その行き違いを回避するためには部下の目線に立って考えることが重要なのですが、これはそう簡単なことではありません。なぜなら、そこで考える部下の目線は、あくまで「上司のあなたが思う部下の姿」であり、そこに気づけないと、正しい評価を下したつもりでも、知らず知らずYOUメッセージを用いた一方通行のコミュニケーションになりかねないからです。
これを補うには、日ごろから部下と密接にコミュニケーションを取り、部下の思っていること・考え方・何を上司に期待しているか、きちんと把握しておくことが必要です。密接なコミュニケーションとは、ただ部下の話を聞くだけではなく、視線や姿勢を相手に合わせ、相手の言葉に深く共感する「傾聴力」が重要になります。
密接な関係性を構築できていれば、部下を褒める際にも、どんな褒め方ならば部下のモチベーションを上げることができるのか、自ずと分かってくるはずです。
まとめ 上司の「私」から見た「部下」はどんな人か。
上司と部下は、その立場の違いから、しばし考え方・捉え方の行き違いが生じやすい関係性となります。しかし、それを「仕方のないこと」として放っておいては、上司にとっても部下にとってもプラスの結果にはなりません。
上司、部下間の関係性を構築し、コミュニケーションをもっと円滑にしたい、という想いがある方は、OJTトレーナー研修などで関係性を創るためのフィードバック方法や、聴き方を学ぶこともおススメです。
アーティエンスでも、OJTの基本的かつ重要な考え方とスキル・型を学び、 現場で実践または伝播し、チーム・組織の活性化を目指すことを目的としたOJTトレーナー研修を実施しています。
シミュレーションワークを通して実践しながら学ぶ子をができますので、興味がありましたらぜひご参加ください。
部下は「上司は自分を評価してくれてない」「どう思っているのか、本当のことが知りたい」と、言葉に出さずともそう思っているものです。 その気持ちに応えてあげるためにも、ぜひ今回ご紹介したIメッセージが役に立つことを願っています。