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[ コラム ]
【徹底解説】知っておきたい!会議の進め方
- 「会議で意思決定が進まず、仕事が停滞してしまう…」「会議で参加者全員の意見を引き出すのが難しい…」このように会議の進め方に悩んでいる方は多いでしょう。会議は、参加者が意見を出し合い、より良い意思決定を行うための重要な場です。しかし、進め方に
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「会議が多い」の真因とは?9つの原因と対策【会議削減の実例あり】
「毎日会議に追われて、本来やりたかった業務に手が回らない」
「なんとなく集まって話しているけれど、結局何も決まらない」
「資料を読み上げるだけの会議に、何の意味があるんだろう…」
そんな“会議疲れ”を感じている方も多いのではないでしょうか。
会議が連日続き、「このままでいいのか?」という疑問を抱えながらも、変えられないまま日々が過ぎていく——そんな状況に陥りがちです。
実は「会議が多い」背景には、惰性で続く定例会議、承認文化、情報共有手段の不足など、組織に根づいた“構造的なクセ”があります
だからこそ、「ただ会議を減らす」のではなく、“なぜ集まるのか”“この場で何を生み出すのか”を問い直すことこそが、会議改革の本質的な一歩です。
本記事では、会議が多くなる9つの典型的な原因と、それぞれの具体的な対策を整理して解説します。さらに、会議設計の7つのポイントや、実際に会議文化を変革して新規事業を生み出した中小企業の事例もご紹介します。
会議を変えることは、働き方を変えること。そして、組織の未来を変えることにつながります。
まずは、目の前の“1つの会議”から、変えていきましょう。
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。
1)「会議が多い」の真因とは?9つの原因と対策
会議が多くなる背景は、習慣・文化・仕組み・ツール・風土など様々です。ここでは、よく見られる9つのパターンに分けて整理します。
| No. | 会議が多いと感じる原因 | 主な対策 |
|---|---|---|
| ① | 惰性で続く定例会議 | アジェンダを整理し、定例を棚卸しする |
| ② | 承認文化の弊害 | 意思決定を委譲し、ルールを再設計する |
| ③ | 情報共有の手段不足 | ツールを導入し、会議を置き換える |
| ④ | 参加者が多すぎる会議 | 関係者の役割と参加範囲を明確にする |
| ⑤ | 結論が出ない議論 | 進行役を設け、タイムボックスを設定する |
| ⑥ | 即会議文化 | 手段を見極め、会議の発生を抑える |
| ⑦ | 業務の進捗が不透明 | 業務を可視化し、確認会議を減らす |
| ⑧ | 発言しづらい雰囲気 | 心理的安全性を高め、対話設計を見直す |
| ⑨ | 成果より多忙感が重視される組織 | アウトプット評価へと軸を移す |
①【惰性で続く定例会議】アジェンダを整理し、定例を棚卸しする
会議が多いと感じる原因の一つに、目的が形骸化し、惰性で続きがちな定例会議の存在が挙げられます。
「なんとなく毎週やっている」「会議自体が目的になっている」会議は、多くの時間とリソースを消費します。会議に対する社員の主体性は低下し、組織全体の生産性も落ちていく悪循環に陥ります。
惰性で続く定例会議への対策は、「アジェンダの有無での開催判断」と「定例会議の定期的な棚卸し」の2つです。
アジェンダの有無での開催判断
多くの定例会議は、アジェンダが事前に共有されないまま開催されています。アジェンダは単なる議題リストではなく、「この会議で何を議論し、何を決定するのか」という会議の羅針盤です。
もし、アジェンダが明確に設定できない、または共有できない会議であれば、その会議は本当に必要なのか、その場で議論する意味があるのかを疑うべきです。
アジェンダがなければ会議は中止する、というルールを徹底するだけでも、無駄な会議を大幅に減らすことができます。これにより、参加者は目的意識を持って会議に臨むようになり、準備不足による時間の浪費も防げます。
定例会議の定期的な棚卸し
例えば、四半期に一度など、定期的にすべての定例会議をリストアップし、以下の観点で評価する機会を設けてみましょう。
・目的: この会議の当初の目的は達成されているか?
・有効性: この会議でしかできない議論や意思決定があるか? 他の手段で代替できないか?
・効率性: 参加者は最適か? 頻度や時間は適切か?
・成果: 会議の最後に具体的なアウトプット(決定事項、ToDo、共有事項など)は出ているか?
場合によっては、会議の目的自体が変化していたり、別の手段(チャットツールでの情報共有など)で代替可能になっていたりすることもあります。
こうした棚卸しを組織全体で習慣化することで、会議の「量」だけでなく「質」の改善にも繋がります。
アジェンダを明確にし、定例会議を定期的に棚卸すことで、会議は「なんとなく集まる場」から、「目的に沿った価値ある時間」へと変わっていきます。
ただ会議を減らすのではなく、“なぜ集まるのか”“この会議で何を生み出すのか”を問い直すことが、会議改革の第一歩です。
こうした取り組みは、社員一人ひとりの時間を守るだけでなく、会議を通じて組織の意志と行動を加速させる、重要な変化の起点になります。
②【承認文化の弊害】意思決定を委譲し、ルールを再設計する
過度な承認文化も、会議が量産される大きな要因の一つです。
「上司に聞いてからじゃないと動けない」という状況は、多くの組織で見られる課題です。小さな決定事項でも、上長や関係部署の承認を段階的に得る必要があるため、同じような内容の会議が何度も繰り返されたり、関係者が増えることで調整のための会議がさらに発生したりします。
結果として、プロジェクトの進行が遅れるだけでなく、現場の「自分たちで決められない」という無力感や、本来の業務への思考停止といった心理的な影響も生じかねません。
承認文化の弊害への対策は、「権限委譲の推進」と「意思決定プロセスの明文化」です。
権限委譲の推進
特定の意思決定について、現場のチームや担当者に決定権を与えることを意味します。
例えば、「〇〇の金額までの費用は部門長決裁」「〇〇の範囲内の仕様変更は現場チームで判断」といった具体的なルールを設け、明確に担当者を指名します。
これにより、上司への確認のために会議を招集する必要がなくなり、現場の意思決定スピードが格段に向上します。
また、現場社員が「自分ごと」として課題解決に取り組む機会が増え、主体性や責任感を育むことにもつながるでしょう。
意思決定プロセスの明文化
どのレベルの決定が、誰によって、どのようなプロセスを経て行われるのかを、組織全体で共有し、明文化します。
例えば、社内Wikiや共有ドキュメントに「意思決定マトリクス」のようなものを設けるのも有効です。これにより、社員は「誰に」「いつ」「どのような形式で」承認を得るべきかが明確になり、迷いや無駄な調整が減ります。
上司側も「これは現場に任せられる」「これは私が判断すべき」という線引きがしやすくなり、「念のため呼んでおこう」といった無意味な会議を減らすことにも繋がるでしょう。
こうした権限委譲と意思決定プロセスの明文化を進めることで、会議は「承認を得るための場」から、「必要な議論や対話、創造のための場」へと変貌を遂げます。
これは、単に会議を減らすだけでなく、社員の主体性を育み、組織全体の生産性を底上げする、重要な組織変革の一歩となります。
③【情報共有の手段不足】ツールを導入し、会議を置き換える
議がなかなか減らない背景には、情報共有の手段が不足していることが挙げられます。
「会議以外で情報を共有・把握する仕組みがない」「ドキュメント文化が育っていない」という状況は、多くの企業で共通の悩みです。
口頭での情報伝達や、会議でしか最新情報を得られないといった状況では、何か確認するたびに会議を招集したり、関係者全員が同じ時間に集まる必要が生じます。
結果として、スケジュールは会議で埋まり、社員は「Zoom疲れ」を感じ、本来の業務に集中できないという悪循環に陥ってしまいます。これは、情報共有が目的の会議が、本来の目的を達成するどころか、組織の生産性を著しく低下させている状態です。
情報共有の手段不足への対策は、「SlackやNotionなどの情報共有ツールの導入と活用」が有効です。
SlackやNotionなどの情報共有ツールの導入と活用
具体的には、Slackのようなチャットツールや、Notion、Confluence、Google Workspaceといった情報共有プラットフォームを導入し、積極的に活用することです。
こうしたツールを使えば、進捗報告や連絡事項、資料の管理や議事録の共有などを、各自が自分のタイミングで確認・発信できるようになります。
その結果、「全員が集まらないと成り立たない会議」を大幅に減らすことができます。
例えば、日々の進捗報告や簡単な連絡事項、議事録の共有、プロジェクトの資料管理などをこれらのツール上で行うことで、これまで情報共有のためだけに行われていた会議を大幅に削減できます。
また、ツールを導入するだけではなく、ドキュメント文化を組織に根付かせることも重要です。
例えば、「情報はまずツールで共有する」「会議後に決定事項は必ず文書に残す」「プロジェクトの進捗はリアルタイムでツールに反映する」といったルールを明確にし、その運用を徹底します。
最初は戸惑いがあるかもしれませんが、メリットを繰り返し伝え、小さな成功体験を積み重ねることで、社員はツールの利便性を実感し、積極的に活用するようになるでしょう。ツールの使い方をレクチャーする研修を設けたり、活用事例を社内で共有したりすることも効果的です。
情報共有ツールを導入し、ドキュメント文化を醸成することで、情報共有のために費やされていた膨大な時間を削減し、会議の質を劇的に向上させることができます。
これにより、社員は「無駄な会議」から解放され、本来注力すべき業務に集中できるようになり、組織全体の生産性向上や、社員のストレス軽減につながります。
④【参加者が多すぎる会議】関係者の役割と参加範囲を明確にする
会議の数が増える要因として、「念のため呼んでおこう」といった安易な姿勢による、参加者の過剰な招集が挙げられます。
「念のため呼んでおこう」という発想で会議の参加者が増えると、議論が複雑化し、意思決定が鈍る結果に繋がります。
本来数名で結論を出せる内容が、大人数になることで意見が収束せず、さらに別の会議が必要になるという悪循環を生み出してしまうのです。これは、社員の意欲を削ぎ、会議そのものへの不信感を募らせる原因にもなります。
参加者が多すぎる会議への対策は、「関係者の役割と参加範囲の明確化」、そして「情報共有の場と意思決定の場の分離」です。
関係者の役割と参加範囲の明確化
会議を招集する際、参加者一人ひとりの役割(決定者、承認者、情報提供者、協力者、オブザーバーなど)を事前に定義し、本当にその会議に「必要不可欠な人」だけを招待するよう徹底します。
例えば、議事録の配布や事後の情報共有で十分な人には、わざわざ会議に参加してもらう必要はありません。
役割を明確にすることで、参加者も自身の会議への貢献度を理解し、より当事者意識を持って臨むことができます。
情報共有の場と意思決定の場の分離
多くの会議では、まず情報共有から始まり、その後で議論、最後に意思決定という流れを一つの会議で行いがちです。しかし、これが参加者の多さや時間の浪費に繋がる大きな要因です。
対策としては、事前に情報共有ツール(Slack、Notionなど)で必要な情報を共有し、参加者全員が事前に内容を把握した上で、会議では「意思決定や深い議論」に集中するよう切り替えます。
これにより、情報共有のためだけの参加者を減らし、会議の時間を短縮するとともに、本質的な議論の質を高めることができます。例えば、報告事項は非同期で共有し、会議は質問や承認の場に限定するといった運用が考えられます。
これらの対策を講じることで、会議は単なる「出席イベント」から「目的を達成するための戦略的な場」へと変わります。
結果として、無駄な会議が減り、社員は本当に重要な業務に集中できるようになり、組織全体の生産性向上に大きく貢献するでしょう。
⑤【結論が出ない議論】進行役を設け、タイムボックスを設定する
会議の時間が長引き、最終的に「検討します」で終わってしまう。このような結論が出ない議論の繰り返しも、会議が増える大きな原因です。
会議で議論がループし、具体的な結論や次のアクションが決まらない状況は、参加者の時間とエネルギーを浪費します。社員からは「何のために集まったのか」「手応えがない」といった不満の声が上がります。
このような会議が常態化すると、組織全体で「会議に出ても意味がない」という意識が広がり、生産性低下やモチベーションの減退を招くでしょう。
結論が出ない議論への対策は、「進行役(ファシリテーター)の設置」と「タイムボックス(時間制限)の導入」です。
進行役(ファシリテーター)の設置
ファシリテーターは、会議の目的達成に向けて議論をリードし、参加者全員が意見を出しやすい雰囲気を作り、脱線を防ぎ、時間内に結論へと導く役割を担います。
例えば、発言が偏っている場合は促したり、議論が膠着状態になった場合は異なる視点を提供したり、時には休憩を挟んだりすることで、停滞しがちな議論を活性化させます。
このファシリテーターの役割を事前に決め、そのスキルを持つ人材を育成することは、会議の質を劇的に向上させる上で不可欠です。
タイムボックス(時間制限)の導入
議題ごとに明確な時間制限を設けることで、参加者は限られた時間内で効率的に議論を進めようと意識するようになります。
例えば、「この議題は15分」「意思決定は最後の5分」のように具体的に時間を区切ります。
時間切れが近づいても結論が出ない場合は、一度議論を中断し、次のアクション(例:宿題として持ち帰る、別の会議を設定する、担当者を決めて追加調査する)を明確にすることで、「検討します」で終わることを防ぎます。
タイムボックスは、会議全体の集中力を高め、だらだらとした議論をなくす効果があります。
これらの対策を講じることで、会議は「話し合うだけ」の場から、「具体的なアウトプットを生み出す場」へと変わります。
結果として、無駄な再会議が減り、社員は「進んでる感」を得られるようになり、組織全体の意思決定スピードと生産性が向上します。
⑥【即会議文化】手段を見極め、会議の発生を抑える
会議がなかなか減らない一因として、「とりあえず会議」という、即会議文化が挙げられます。
Slackやメールといった非同期ツールで済むような簡単な情報共有や確認事項でも、「一回話そう」とすぐに会議が設定されがちです。
これは、対面でのコミュニケーションを重視する文化や、ドキュメントにまとめる手間を避けたいという無意識の習慣が背景にあるかもしれません。
しかし、その結果、社員は次から次へと会議に駆り出され、本来集中すべき業務の時間が削られていきます。特にリモートワークと出社のハイブリッド環境では、「Zoom疲れ」に繋がり、社員のストレスを増大させる要因となるでしょう。
即会議文化への対策は、「議題別に最適なコミュニケーション手段を選ぶ基準を設けること」です。
議題別に最適なコミュニケーション手段を選ぶ基準を設ける
具体的には、情報共有や確認事項のレベルに応じて、会議以外の手段を積極的に活用するルールを明確にします。
例えば、以下のような基準をチーム内で共有し、徹底することをおすすめします。
・情報共有・確認のみ:Slack、Microsoft Teamsなどのチャットツール、メール、社内掲示板、共有ドキュメント(Notion, Google Driveなど)で完結する。
・簡単な質問・相談:チャットツールでの個別メッセージ、または数名での短時間ビデオ通話(5分以内)。
・意見集約・アンケート:フォームツール(Google Formsなど)や共有ドキュメント上でのコメント機能。
・認識合わせ・方針共有:週次・月次の定例報告会など、既存の決まった枠組みを活用し、新規の会議は極力設定しない。
この基準を設けることで、社員は「これは会議にするべきか、それともチャットで済むか」という判断軸を持つことができます。
最初は慣れないかもしれませんが、例えば「会議を立てる前に、まずチャットで聞いてみる」という習慣を推奨するなど、小さな行動変容から促していくことが重要です。
人事やリーダー層が率先して非同期コミュニケーションを実践し、そのメリットを体現することも、文化変革を後押しするでしょう。
議題ごとに最適なコミュニケーション手段を見極め、即会議文化から脱却することで、不要な会議を抑制し、社員の貴重な時間を創出できます。
これにより、社員は「忙しさで思考停止したくない」という想いを実現し、本来注力すべき創造的・戦略的な業務に時間を使えるようになるでしょう。
⑦【業務の進捗が不透明】業務を可視化し、確認会議を減らす
会議が増える原因として、業務の進捗が不透明であることも挙げられます。
「誰が何をしているかわからない」という状況では、進捗確認や情報共有のためだけに、頻繁に会議が設定されがちです。
特に複数のプロジェクトが並行して進む中堅企業では、この「確認会議」が社員の時間を圧迫し、本来の業務への集中を妨げます。これにより、社員は確認業務に時間を取られ、生産性低下やストレスの増大を招いてしまいます。
業務の進捗が不透明への対策は、「業務の可視化」と「進捗共有の仕組み化」です。
業務の可視化
具体的には、業務の進捗共有ツールの導入が非常に有効です。Asana、Trello、Jira、Backlogといったプロジェクト管理ツールやタスク管理ツールを活用することで、各メンバーの担当業務、進捗状況、課題などがリアルタイムで可視化されます。
これにより、わざわざ会議を設定して口頭で進捗を確認する必要がなくなり、多くの確認会議を削減できます。ツール上でコメント機能やステータス更新を活用すれば、必要な情報が常に最新の状態に保たれ、関係者全員がいつでもどこでもアクセスできるようになります。
進捗共有の仕組み化
週報や日報の運用を見直すことも重要です。単なる業務報告に留まらず、各メンバーの「進捗状況」「課題」「次にやること」「ヘルプが必要な点」などを簡潔にまとめるフォーマットを導入します。
これを共有ドキュメントや社内Wiki、あるいは前述の進捗共有ツールにアップロードすることで、会議なしでもチーム全体の動きを把握し、必要なサポートをタイムリーに行うことが可能になります。
これにより、口頭での進捗確認に費やされていた時間を、より本質的な議論や意思決定に充てられるようになります。
業務の可視化と進捗共有の仕組み化を進めることで、不要な確認会議を大幅に減らし、社員は本来の業務に集中できる時間を確保できるようになります。
これは、組織全体の生産性向上に貢献するだけでなく、社員の「進んでる感」を高め、自律的な働き方を促進する効果も期待できます。
⑧【発言しづらい雰囲気】心理的安全性を高め、対話設計を見直す
会議の回数が増え、生産性が上がらない原因として、発言しづらい雰囲気が挙げられます。
意見が出にくい会議では、活発な議論が生まれず、表面的なやり取りに終始しがちです。その結果、肝心な結論が出ずに「持ち帰り」となり、複数回にわたる再会議が発生してしまうのです。
これでは、組織全体の意思決定を遅らせ、新しいアイデアや挑戦が生まれにくい風土を醸成してしまいます。会議が「形だけの場」になり、社員のモチベーションも低下するでしょう。
発言しづらい雰囲気への対策は、「発言しやすい場の設計」と「対話型の進行」によって心理的安全性を高めることです。
発言しやすい場の設計
物理的な配置だけでなく、心理的な安心感を醸成することを含みます。
例えば、会議の冒頭でアイスブレイクを取り入れたり、全員が一度は発言する機会を設けたりすることで、参加者間の心理的な距離を縮め、発言へのハードルを下げます。
また、「正解を求める」場ではなく、「多様な意見を歓迎する」場であることを明確に伝えることも重要です。
会議のルールとして「批判より意見を尊重する」「発言の途中で遮らない」などを明文化し、共有するのも有効です。
対話型の進行
ファシリテーターが一方的に進行するのではなく、参加者全員が対等に意見を出し合えるよう促す「対話型」の進行を意識します。
例えば、特定の少人数に議論を任せるのではなく、全員に意見を求める問いかけをしたり、発言内容を整理して「〇〇さんの意見は△△ということですね?」と確認したりすることで、議論の理解度を高め、全員が議論に参加しやすい状況を作ります。
また、会議の冒頭で「この会議では、皆さんの率直な意見を求めています」といったメッセージを伝え、発言しやすい雰囲気づくりを意図的に行うことも大切です。
これらの対策を通じて心理的安全性を高めることで、会議は「意見が出ない場」から「活発な対話が生まれ、建設的な議論ができる場」へと変貌を遂げます。
結果として、一度の会議で質の高い結論が出せるようになり、再会議が減るだけでなく、社員の主体性や協働意識が育ち、組織全体の生産性向上と前向きな組織風土の醸成に繋がるでしょう。
⑨【成果より多忙感が重視される組織】アウトプット評価へと軸を移す
会議がなかなか減らない根本的な原因の一つに、「成果よりも多忙感が重視される」組織文化が挙げられます。
「会議に出ている=働いている」という認識が残り、「忙しさ」によって個人の貢献度が測られがちな組織では、不要な会議に時間を費やすことが正当化されやすい傾向があります。
本来の成果に繋がらない活動に時間とエネルギーが費やされることで、組織全体の生産性は停滞し、社員のエンゲージメントも低下します。
成果より多忙感が重視される組織への対策は、「成果と時間投入の明確な切り分け」と「アウトプット評価の明確化」です。
成果と時間投入の明確な切り分け
社員の評価や個人の働き方を考える上で、「どれだけ会議に出席したか」や「どれだけ長時間働いたか」ではなく、「どんな成果を生み出したか」に焦点を当てることを意味します。
例えば、評価基準に「会議への参加時間」といった項目をなくし、担当業務の進捗、プロジェクトの達成度、具体的な貢献内容など、アウトプットに直結する指標を重視するよう見直します。
これにより、社員は「会議に出る」ことではなく、「成果を出す」ことに意識を集中できるようになります。
アウトプット評価の明確化
各業務やプロジェクトにおいて、期待される具体的な成果物(アウトプット)や達成基準を事前に定義し、それを社員と共有します。
例えば、「〇〇の資料作成」「△△プロジェクトの完了」「顧客からのフィードバック改善」といった形で、達成すべき内容とそれが達成されたと判断できる状態を具体的に設定します。
そして、評価の際には、これらの定義されたアウトプットの達成度合いを客観的に評価します。
これにより、社員は「何をやれば評価されるのか」が明確になり、会議の時間を削減してでも、効率的に成果を出すための工夫を凝らすようになるでしょう。
これらの対策を通じて、組織の評価軸を「多忙感」から「成果」へとシフトさせることで、社員は自律的に時間配分を最適化し、真に価値ある業務に集中できるようになります。
結果として、不要な会議が減り、組織全体の生産性が向上するとともに、社員一人ひとりが「自分の役割に誇りを持てる」前向きな組織風土へと変革が進むでしょう。
会議が多いと感じる背景には、「仕方ない」と諦めてきた組織の“構造的な問題”が潜んでいます。
今回紹介した9つの原因は、文化・ルール・ツール・評価制度といった「組織の前提」によって再生産されています。
だからこそ、会議改革の本質は「やり方」だけでなく「あり方」の見直しにあります。
単に会議を減らすのではなく、「なぜ集まるのか?」「この場で何を生み出したいのか?」を問い直し、組織の“思考様式”そのものを見直しましょう。
2)会議が多いへの対策!会議設計ポイント7つ
多くの企業が、「会議が多い」ことに悩んでいますが、本質的な課題は「数」ではなく「質と設計」です。
設計力さえ高めれば、会議は組織を前に進める強力なツールになります。
会議設計ポイント7つを紹介します。
① 会議の“目的”を明確にする
② 目的に応じて「型」を決める(会議フォーマット設計)
③ アジェンダ(議題+ゴール)を事前共有する
④ 進行役(ファシリテーター)を明確にする
⑤ 会議ごとに「アウトプットの型」を決めておく
⑥ 非同期で済む部分は“先に済ませておく
⑦ 会議設計をチームで定期的に見直す(会議のメタ会議)
① 会議の“目的”を明確にする
会議の質を高めるためには、会議の「目的」を明確にすることが重要です。
会議は、報告・共有・検討・意思決定・創造(ブレスト)といった多様な目的で開かれます。
しかし、これらの目的が曖昧なまま開催されると、参加者の集中力は低下し、期待する成果も得られにくくなります。
例えば、「情報共有」なのか「意思決定」なのかが不明確な会議では、参加者はどのスタンスで臨めば良いか分からず、結果的に「議論の中身が薄い」「結論が出ない」といった問題に繋がりがちです。
目的が明確でない会議が続くと、社員は「何のための会議か分からない」「時間を無駄にしている」と感じ、会議そのものへの不信感や「忙しさで思考停止したくない」という意欲が削がれてしまいます。これは、組織全体の生産性低下にも直結する深刻な課題です。
だからこそ、会議を開く前には「この会議は何をする場なのか?」という問いを立て、目的を明確に定義することが重要です。
例えば、「この会議は、新製品のマーケティング戦略における最終意思決定を行う場である」「この会議は、次期プロジェクトの課題をブレインストーミングし、アイデアを創出する場である」といった具体的な表現で目的を定義します。
そして、この目的を会議の招待時や冒頭で参加者全員に共有することを徹底しましょう。
会議の目的を一言で言える状態にすることは、会議の質を高めるだけでなく、「本当にこの会議が必要か?」を見極める視点を持つことにもつながります。
目的が不明瞭な会議は、そもそも開催しなくてもよい可能性が高いため、目的の明文化を徹底することで、自然と“開かなくてよい会議”を減らすことができます。
② 目的に応じて「型」を決める(会議フォーマット設計)
会議の質を高めるためには、目的に応じた「会議の型(フォーマット)」を設定することが不可欠です。
多くの会議は、どのような目的であっても一律の進行で行われがちです。しかし「報告」と「意思決定」では、必要な準備、参加者の役割、議論の進め方が全く異なります。
目的とフォーマットが合っていない会議では、参加者はどこに集中すべきか分からず、結果として「議論の中身が薄い」「結論が出ないまま時間だけが過ぎる」といった非効率な状況が生まれます。
そのため、会議の目的別に最適な「型」を当てはめることを意識しましょう。
具体的には、以下のようなフォーマットを会議の目的に合わせて使い分けることを推奨します。
報告型会議
事前に必要な情報を共有し、会議では質疑応答と認識合わせに集中します。参加者は資料を読み込む時間を確保し、不明点を明確にする場とすることで、情報共有のためだけの会議をなくします。
意思決定型会議
議論の前提となる選択肢、判断基準、そして決定権限を持つ人を明確にします。会議の冒頭でこれらを確認し、設定された時間内で結論を出すことに集中します。決定後の具体的なアクションプランも合わせて確認することで、会議が「検討します」で終わることを防げます。
検討・ブレスト型会議
自由な発想やアイデアの創出を促すため、ホワイトボードやMiro、Google Jamboardのような視覚共有ツールを積極的に活用します。活発な意見交換のために、発言しやすい雰囲気づくりや、多様な意見を引き出すファシリテーションが特に重要です。
目的に応じた「型(フォーマット)」を設定することで、ムダなやりとりや、曖昧な進行を防ぐことができます。
さらに、型が定義されていれば、すべての会議を対面で行う必要はなくなり、「これはツールで済む」「これは短時間で十分」といった判断もしやすくなります。
つまり、“すべてを会議でやろうとする発想”から抜け出すことができ、結果的に会議の数そのものを減らすことにつながります。
③ アジェンダ(議題+ゴール)を事前共有する
会議の時間を有効に活用するために、アジェンダ(議題+ゴール)の事前共有は欠かせません。
多くの会議では、アジェンダが不十分だったり、会議の場で初めて共有されたりすることがよくあります。すると参加者は準備不足のまま会議に臨むことになります。
結果として、議論が脱線したり、同じ情報が何度も繰り返されたりして、貴重な時間が無駄になってしまうでしょう。
そうならないためにも、アジェンダを議題だけでなく、達成すべきゴールとセットで事前共有するでことが大切です。
会議の主催者は、少なくとも会議の前までに、以下の要素を含んだアジェンダを参加者全員に共有しましょう。
会議の目的: なぜこの会議を開くのか。
議題: 話し合うテーマ。
各議題のゴール: その議題で何を決定したいのか、どのようなアウトプットを得たいのかを具体的に示す。
資料: 会議で使う資料があれば添付し、事前に目を通すよう促す。
所要時間: 各議題に割り当てる時間配分。
アジェンダに「この議題で何を決めたいか」というゴールを明確に含めることで、1回で結論が出る会議が増え、何度も同じ議題で会議を重ねるループ状態を防ぐことができます。
アジェンダの明確化は、無駄な会議の発生も、繰り返される会議の連鎖も断ち切る、会議最適化の起点となるのです。
④ 進行役(ファシリテーター)を明確にする
会議の質を高め、効率的に進行するためには、進行役(ファシリテーター)を事前に明確にすることが極めて重要です。
会議で議論が停滞したり、目的から逸れたりする原因の一つは、進行役が不在であることです。誰が議論をリードし、時間を管理し、意見を引き出すのかが不明確な場合、会議は「話がブレてしまい、結論が出ない」「一部の人だけが話し、他の参加者は蚊帳の外」といった状態に陥りがちです。
特に、検討や意思決定を伴う会議では、進行役の力量がその会議の成否を左右すると言っても過言ではありません。
そのため、会議ごとに進行役を明確に指名し、その役割を全うしてもらうことが重要です。
進行役は、以下の役割を担います。
時間管理
各議題に割り当てられた時間を守り、会議全体の時間をコントロールします。
議論の方向づけ
会議の目的とゴールに沿って議論が進行するよう促し、脱線を防ぎます。
意見の引き出し
特定の意見に偏らないよう、多様な参加者から意見を引き出し、議論を活性化させます。発言しにくい雰囲気の場合には、指名したり、グループワークを取り入れたりする工夫も必要です。
議論の整理
複数の意見を整理し、論点を明確にすることで、結論への道筋を示します。
「誰が回すか」が決まっていない会議は、残念ながら「ほぼ確実に脱線します」。進行役を事前に決めるだけでなく、そのスキルを向上させるためのファシリテーション研修を定期的に実施することも効果的です。
ファシリテーターが的確に議論を整理し、結論まで導く力を持てば、「話し合ったけど結論が出なかったから、また会議しよう…」という無駄な“再会議”を減らすことができます。
⑤ 会議ごとに「アウトプットの型」を決めておく
会議の有効性を最大化するためには、会議ごとに「アウトプットの型」を事前に決めておくこともポイントです。
多くの会議では、活発な議論が交わされても、最後に「何が決まったのか」「誰が何をすべきなのか」が曖昧なまま終わってしまうことがあります。
会議の最後に「検討します」という言葉で締めくくられ、具体的なアクションに繋がらない状況は、参加者の時間と労力を無駄にするだけでなく、会議そのものへの不信感を募らせる原因となります。これは、組織全体の生産性低下にも直結する深刻な課題です。
そのため、会議の冒頭で期待するアウトプットの形式を明確にし、その型に沿って記録を残すことが重要です。
会議で記録すべき主なアウトプットの型は以下の通りです。
決定事項: 「何を決めたか」を明確に記載します。
担当者と期限: 「誰が何をするか」「いつまでに完了するか」を具体的に設定します。
ToDoリスト: 会議で発生したタスクをリスト化し、担当者と期限を紐付けます。
課題とネクストアクション: 解決すべき課題と、それに対する次のステップを明確にします。
これらのアウトプットは、例えば「モモカン(目的、目標、内容、感想、ネクストアクション)」「KPT(Keep, Problem, Try)」「シンプルなToDoリスト」といった既存のフレームワークを活用して記録すると良いでしょう。
会議は「話す」ための場ではなく、「動く」ための場です。出口を明確にして会議を設計することで、参加者全員が目指すべきゴールを共有し、会議の後に自然と行動に移りやすくなります。
そして行動に直結する会議設計は、結果的に“会議の数”を減らすことにつながります。
⑥ 情報共有や意見集約は、事前に済ませておく
会議の時間を有効に使うためには、会議中にやらなくてもよいことを、あらかじめ済ませておくことが大切です。
多くの会議では、情報共有や簡単な意見集約、事前アンケートの結果発表といった、必ずしもリアルタイムでの対話が必要ない内容に多くの時間が割かれがちです。
これにより、会議の主要な目的である「考える」や「決める」ための時間が圧迫され、結局は「議論の中身が薄い」「結論が出ない」といった状況に陥ります。
そのため、情報共有や意見集約など、リアルタイムで行う必要のない活動は、会議の前に完了させておくことが重要です。
具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
情報共有
資料の事前共有はもちろん、進捗報告や実績データなどは、Slack、Notion、Google Workspaceなどのツールで事前に共有し、参加者には会議前に目を通すよう依頼します。
事前アンケート・意見集約
議論の前提となる参加者の意見や要望は、Formsなどのアンケートツールで事前に回収したり、共有ドキュメント上でコメント機能を使って集約したりします。
不明点の洗い出し
会議の前に資料を読んだ上で、質問や疑問点を事前にツールに投稿してもらうことで、会議ではその回答や議論に集中できます。
共有や準備を事前に行うことで、会議は「情報を発表する場」ではなく、「判断や対話に集中する場」へと進化します。
これにより、会議時間の短縮だけでなく、「そもそもこの会議、必要だった?」といった会議自体の存在を見直すきっかけにもなります。
⑦ 会議設計をチームで定期的に見直す(会議のメタ会議)
会議の質を継続的に向上させるためには、会議そのものを定期的に見直し、改善サイクルを回すことが不可欠です。
どんなに優れた会議設計や運営ルールを導入しても、時間が経つにつれて「慣れ」が生じ、形骸化してしまうことがあります。会議の目的が曖昧になったり、議論が非効率になったりしても、「昔からやってるから」という理由で見過ごされがちです。
これにより、社員は再び「この会議、本当に意味があるのかな」と感じ始め、せっかく改善したはずの会議が「無駄な時間」に戻ってしまうリスクがあります。
そのため、「会議のメタ会議」を定期的に実施することが重要です。
具体的には、四半期に一度など、定期的にチームや部署の主要な会議について、以下の点を話し合う時間を設けましょう。
・目的の再確認: 会議の当初の目的は今も有効か?
・効果測定: 期待するアウトプットはきちんと出ているか?
・課題の洗い出し: 議論が停滞する原因や、参加者が発言しにくい点はないか?
・改善点の検討: 進行方法、アジェンダ、参加者、頻度などで改善できる点はないか?
・成功事例の共有: うまくいっている会議があれば、そのノウハウを共有し、他の会議に活かす。
この「メタ会議」は、単なる反省会に留まりません。
会議の“目的”や“設計”そのものを継続的に問い直すことで、本当に必要な会議だけが残り、「いつの間にか会議だらけ…」という状態を防ぐことにもつながります。
ここまで、会議の質を高めるための具体的な設計ポイントを見てきました。
しかし、自社の会議が具体的にどの課題に当てはまるのか、どこから手をつければ良いか迷うこともあるでしょう。
そこで、以下のチェックリストを活用し、あなたの会社の会議に潜む「原因」を見抜いてみてください。このチェックリストを通じて、会議の課題を客観的に把握し、具体的な改善策を検討するきっかけになるはずです。
【会議が多いかも?無駄な会議を見抜くチェックリスト】
| No. | 質問(問いかけ) | ワンポイントアドバイス(語りかけ調) |
|---|---|---|
| 1 | この会議の目的はなんですか? | 目的によって進め方も関係者も変わります。はじめに明確にしましょう。 |
| 2 | この会議で、何を決めたいのですか? | 結論が出ない会議を防ぎましょう。ゴールを明確にしてから始めるのがコツです。 |
| 3 | 議題や資料は、事前に共有されていますか? | 事前共有があるだけで、会議の密度はぐっと上がります。 |
| 4 | 参加者の中に、意思決定できる人はいますか? | 決定権がある人がいないと、また会議…という事態に。事前に確認しましょう。 |
| 5 | この内容、本当に“会議”で話す必要がありますか? | チャットやドキュメントで済むなら、会議は不要かもしれません。手段を見極めましょう。 |
| 6 | 参加者それぞれに、役割や意見が求められますか? | “とりあえず出席”が無駄な会議のもと。誰に何を期待するか考えてみましょう。 |
| 7 | 業務の状況は、他の手段でも共有できませんか? | タスク管理ツールや日報なども活用できます。会議に頼りすぎない工夫を。 |
| 8 | 進行役は決まっていますか?時間配分は意識されていますか? | 話がブレないよう、進行と時間管理を明確にしましょう。会議の質が大きく変わります。 |
| 9 | 参加者が安心して発言できる雰囲気ですか? | 発言しやすい場づくりは、意見の深まりと合意形成につながります。 |
| 10 | この会議は、何の成果につながりますか? | 「出席=仕事」ではありません。会議の時間が、ちゃんと成果に結びつくか意識しましょう。 |
3)事例|“会議だらけ”から脱却!新規事業まで生まれた中小企業の変革
ファシリテーション研修を導入し、会議文化を劇的に変革した中小メーカーの成功事例をご紹介します。
課題|「無駄な会議」が組織全体の停滞を招いていた
この中小メーカー(社員数約200名)では、研修導入前、日々の業務が会議で圧迫されている状態が続いていました。目的が曖昧な定例会議や、結論の出ない長時間会議が常態化し、社員の多くが「本来の業務に集中できない」「準備に追われるばかりで意味を感じない」と感じていたのです。
こうした“無駄な会議の多さ”は、単なる時間の浪費にとどまらず、組織のあらゆる停滞に波及していました。
たとえば、新商品開発では議論がかみ合わず、意思決定が先延ばしに。営業やマーケティング施策の見直しも後回しになり、変化への対応が遅れたまま日常業務に埋もれていく。さらに、閉塞感が若手やエース級社員の離職を招くなど、将来の競争力を損なう兆しも現れていました。
このまま「会議の在り方」を見直さなければ、事業の成長も、人材の定着も、どこかで頭打ちになる——。そんな懸念が、徐々に社内でも共有され始めていました。
研修内容|会議を動かす力を育むファシリテーション研修を導入
こうした状況を打破するため、このメーカーは、経営陣から若手社員まで選抜された16名を対象に、アーティエンスの派遣型ファシリテーション研修を導入しました。
この研修は、単なる知識習得に留まらず、参加者が会議を「動かす」ための実践的なスキルを身につけ、組織変革の推進役となることを目指した内容でした。
研修では、具体的に以下のようなポイントに重点が置かれました。
・会議設計の基礎: 会議の目的設定、アジェンダ作成、時間配分の最適化。
・議論の活性化: 多様な意見を引き出す問いかけ、発言しやすい雰囲気づくり。
・合意形成と意思決定: 議論を収束させ、具体的な結論へと導く技術。
・実践的なロールプレイング: 実際の会議シーンを想定した演習とフィードバック。
・会議後のフォローアップ: 決定事項のアウトプット化と、ネクストアクションの明確化。
研修効果|“会議が多い”という慢性的な課題からの脱却
ファシリテーション研修の導入後、組織には劇的な変化が現れました。
・無駄な会議の激減
研修を通じて育成された社内ファシリテーターが、各会議の設計・進行を担うようになり、
「目的が曖昧な会議」「ただの情報共有で終わる会議」「決まらない会議」が劇的に減少。
会議の本数自体も見直され、日々の業務時間に余白が生まれました。
社員の間には「ようやく本来の仕事に集中できるようになった」という声が広がりました。
・意思決定のスピードが向上
無駄な会議を減らすことで、本当に必要な議論に集中できるようになり、新商品開発や営業戦略の見直しがスムーズになりました。
結果として、新規事業やマーケティング部の立ち上げなど、組織の未来に向けた動きが加速しました。
・会議=“消化試合”から“創造と行動の場”へ
会議設計が整い、アウトプットや次のアクションが明確になったことで、社員の参加意識も変化。「時間を消費する場」だった会議が、「価値を生み出す場」として再定義され、チーム全体のエンゲージメント向上にも繋がりました。
この事例は、「会議のあり方」を見直すことが、単なる会議削減にとどまらず、組織全体の行動量と創造性を引き上げる原動力になることを示しています。
4)まとめ
「会議が多い」という課題は、実は「会議の数」だけの問題ではありません。
その背後には、惰性や承認文化、情報共有手段の不足、心理的安全性の低さなど、組織に染みついた“前提”があります。
だからこそ大切なのは、やり方を変えるだけでなく、「なぜ集まるのか?」「この場で何を生み出したいのか?」という“あり方”を問い直すことです。
目的を明確にし、型を整え、進行を工夫し、アウトプットを意識する。
こうした設計力が備われば、会議は単なる情報共有の場ではなく、創造と意思決定を加速させます。
実際に、本記事で紹介した中小企業のように、会議改革に取り組んだことで、新規事業が生まれ、社員の主体性が育ち、組織全体が動き出した事例もあります。
会議を見直すことは、組織を進化させるための第一歩です。
もし、「今の会議のままでいいのか?」と感じているなら、それは変革のサインかもしれません。
アーティエンスでは、ファシリテーション研修をはじめ、会議の質を高める各種支援を行っています。
「まずは自社の課題を整理したい」「変化のきっかけをつかみたい」――そんな想いがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
あなたの組織の会議が、“ただ集まる場”から、“未来を動かす場”へと変わるお手伝いを、私たちは全力でサポートします。




