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もう迷わない!管理職研修は4種類!おすすめ研修内容一覧表付き
- 「管理職研修には、どんな種類があるのだろう?」と思い、本コラムにたどり着いたのではないでしょうか。結論からお伝えすると、管理職研修は大きく下記の4種類に分けられます。1.新任管理職研修2.次世代リーダー育成(上級管理職)研修3.パフォ
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「管理職候補がいない!」の打開策。人事が取るべき施策を解説
「管理職を増やしたいが、候補となる社員がいない」
「管理職候補を育てたいけれど、どうしたら良いか分からない」
こうした悩みを抱える中小企業の経営者・人事の皆さまは多いのではないでしょうか?
現在、管理職は“罰ゲーム”と揶揄されるほど、その育成に苦戦している実情があります。
実は、こうした問題の背景には、育成の仕組みや具体的なロールモデルが欠如していることが大きく影響しているのです。
そこで、今回は管理職候補が育たない4つの理由と、管理職候補を確実に育成するための具体的施策について取り上げました。
ぜひ、この記事を手掛かりに自社の育成戦略を再検討してみてください。

大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。
目次
1. 管理職候補者が育たない4つの理由
管理職候補者が育たない要因として、4つがあげられます。
1. プレ・マネジメント経験の不足
2. 業務に即さない研修内容
3. 管理職になりたがらない
4. 管理職のロールモデルがいない
1-1. プレ・マネジメント経験の不足
管理職候補者が育たない理由として、プレ・マネジメント経験の不足があげられます。管理職に必要なスキルや視点を事前に習得する機会が少ないため、管理職昇進後の適応や成果に影響を及ぼします。
多くの中小企業では、採用難、組織のフラット化、業務の細分化が進んでいます。その結果、中堅社員がリーダー的役割を担う機会が減少し、管理職に必要なスキルや視点を事前に習得する機会が少なくなっています。
具体的な例として、以下のような状況が考えられます。
・後輩指導の機会減少:
新入社員の採用抑制により、若手社員が少なくなり、中堅社員が後輩を指導する経験を積む機会が減少しています。
・リーダー経験の欠如:
プロジェクトのリーダーやチームリーダーとしての経験を積む機会が少なく、マネジメントの基本的なスキルが身につかないまま管理職に昇進してしまうケースがあります。
・業務の細分化による視野の狭窄:
業務が細分化され、個々の社員が担当する範囲が限定的になることで、全体を見渡す視点や他部門との連携を経験する機会が減少しています。
これらの状況により、管理職候補者はマネジメントに必要な経験を積むことができず、昇進後に適応が難しくなる傾向があります。
1-2. 業務に即さない研修内容
管理職候補者が育たない理由として、業務内容と乖離した研修があげられます。研修内容が現場の実情や具体的な課題と合致しない場合、参加者は学んだ知識やスキルを実務に活かすことが難しくなります。その結果、研修の効果が薄れ、管理職候補者の成長が停滞する可能性があります。
多くの企業では、一般的なマネジメント理論や抽象的な概念を中心とした研修が行われています。しかし、これらが実際の業務と直結していない場合、参加者は学んだ内容をどのように現場で適用すればよいか分からず、研修の成果が限定的になります。多くの企業では、独自の業務プロセスや組織文化が存在するため、画一的な研修内容では対応しきれない場合があります。
例えば、「管理職はプレイヤー業務をしてはいけない」と研修で伝えたとしても、多くの企業では「プレイングマネージャー」であることが求められる実情があり、現場との乖離があります。このようなミスマッチが続くと、研修へのモチベーション低下や、学んだ内容を実務に活かせないフラストレーションが生じる可能性があります。
せっかく研修を行っても、管理職候補者はマネジメントに必要な知識やスキルを得ることができません。
1-3. 管理職になりたがらない
管理職候補が育たない理由として、メンバーが管理職への昇進を望まない傾向が挙げられます。若手社員・中堅社員が管理職になりたくない理由は、「管理職になっても希望を見出せず、負担ばかり増える」からです。
多くの調査では、管理職になりたくない理由として、下記のような内容が出てきます。
・責任が増える。責任が重い
・仕事量が増える
・報酬面でのメリットがない
・部下育成が面倒・自分のしたい仕事ができない
上記内容は、アーティエンスが実施する研修内で、管理職本人から愚痴としても出てきますし、若手社員・中堅社員からも「管理職になりたくない理由」として出てきます。
この内容を払拭するほどのメリットを感じていないため「管理職になりたくない」と思うのです。「管理職になっても、希望を見出せず、負担ばかり増える」と言っていいでしょう。
一昔前(高度成長)の管理職は、負担があったとしても希望が見出せていました。
例えば、
・「仕事量」の増加に比例して、やりがいや報酬がある
・「部下育成が面倒」という状況でも、部下も未来に希望が持てたり、キャリアの選択が少なかったので、管理職の期待に応えようとした
・「自分のしたい仕事」ではなくても、成果によって管理職のやりがいを感じられた
しかし、今の管理職は、前述した調査結果で言われているような状況が実際に起きています。
まさに、管理職不遇の時代と言っていいでしょう。管理職は疲弊し、それを見ている若手社員・中堅社員は、管理職になりたいとは思いません。なぜなら、「管理職になっても、希望を見出せず、負担ばかり増える」ためです。
より詳しい内容は、「管理職になりたくない理由は「管理職になっても希望が見出せず、負担ばかり増える」から」をご覧ください。
1-4. 管理職のロールモデルがいない
管理職候補が育たない理由として、適切なロールモデルの不在が挙げられます。組織内に目指すべき管理職の姿が見えないと、社員は自身のキャリアパスを具体的に描くことが難しくなります。
「管理職が疲れている」や「管理職が割に合わない」というイメージを持たれているケースをよく見かけます。また、特に女性社員にとっては、女性管理職のロールモデルが少ないことが課題となっています。多くの企業で男性管理職が中心を占めており、女性社員が参考にできる事例が少ないため、管理職を目指す意欲が低下する傾向があります。
このような状況では、理想の管理職像を描くことが難しくなります。
2. 3つの方法で管理職候補を育てる
管理職候補を育てる方法は、下記3つあります。
2-1.管理職候補の育成の仕組みを作る
2-2. 管理職の「役割」と「価値」を明確にする
2-3. 現役の管理職を「ロールモデル」として活用する
2-1.管理職候補の育成の仕組みを作る
管理職候補を育てる方法の一つ目は、「管理職候補の育成の仕組みを作る」ことです。会社として戦略的・体系的に育てる仕組みを整えることが、管理職育成の第一歩です。
多くの企業では「管理職になってから初めて研修を受ける」、「OJTで学んでもらう」といった場当たり的な育成が少なくありません。実際、「新入社員研修はあるが、次の教育の機会は管理職になった後」という空白期間が存在する企業も多く見受けられます。
そのために必要なのが、「育成のロードマップ」と「管理職の準備期間(育成支援)」の整備です。これらが明確であれば、候補者は「いつ」「どの段階で」「何を学ぶべきか」が可視化され、納得感をもって成長に向かうことができます。
たとえば、当社アーティエンスのクライアント(製造業)では、管理職候補育成のために以下のようなロードマップを整備しています:
・中堅社員:「チームリーダー経験」や 「プロジェクトマネジメントの一部を任せる」
・昇進1年前:シェアドリーダーシップ研修と月1回の1on1フィードバック
・昇進直後:管理職基礎研修と、半年間は上司が伴走支援
この企業では、候補者に対して「管理職になる前に小さなリーダー経験を積む場面」を意図的に設計しています。そのため、いざ昇進のタイミングになった時に、「自分が何のために管理職になるのか」「何をすればいいのか」が自覚できており、スムーズな移行が実現しています。
管理職候補の育成において重要なのは、偶然や現場の善意に頼るのではなく、組織として“育てる設計図”を持つことです。ロードマップによって「育成の流れ」を可視化し、準備期間で「実践と支援の場」を提供することで、管理職への移行を自然な流れにできます。育成の仕組みは、一度整えれば組織全体の人材戦略にも大きく貢献する投資です。
2-2. 管理職の「役割」と「価値」を明確にする
二つ目は「管理職の役割と価値を明確に伝えること」です。管理職候補を育てるうえで最も欠かせない項目と言っていいでしょう。中でも特に重要なのは「組織にとって管理職がどれほど重要な存在か」、「管理職になることは、本人のキャリアアップに直結する」という2点を、本人の納得感がある形で伝えることです。
「1-3. 管理職になりたがらない」でお伝えしたとおり多くの企業で、管理職に対する社員のモチベーションが上がらない背景には、「責任は重いのに報われない」、「やりたい仕事ができなくなる」、「成長が止まる」といったネガティブな印象があります。これらが払拭されないままでは、いくら制度や研修を整えても、候補者自身が管理職を目指す気になれません。
だからこそ必要なのが、まず「組織にとって管理職がどれほど重要な存在か」を言語化して伝えることです。プレイヤーではできない「人を育てる」、「組織全体の方向性を支える」という価値ある役割を担うポジションであることを示す必要があります。
同時に、「管理職になることは、決して会社のためだけではなく、自分自身のキャリアアップにもなる」こともセットで伝えるべきです。リーダーシップ経験を積むことは市場価値を高めるうえでも有効であり、より大きな裁量権や経営への関与にもつながるステップです。
たとえば、あるIT企業では、年に4回「幹部会議」の機会を設け、管理職や候補者に向けて経営陣からのメッセージを伝える場を設けています。
そこで伝えているのは、大きく二つです。
「管理職になることで、社内外問わず自分の市場価値が上がり、将来の選択肢が広がる」
このような機会が増えることで、管理職=重荷というイメージだけではなく、「自分も目指してみようかな」という気持ちが芽生える社員が確実に増えてきているといいます。
管理職育成を成功させる鍵は、「なぜ自分が管理職になるべきなのか」を候補者本人が腹落ちして理解できるようにすることです。そのために、管理職の存在意義とキャリア価値の2つをセットで伝えましょう。「誰のための役割か」と「自分にとっての意味」の両面がクリアになることで、管理職を目指すモチベーションが自然と高まっていきます。
2-3. 現役の管理職を「ロールモデル」として活用する
管理職候補者を育てる方法3つ目は、「現役の管理職をロールモデルとして活用すること」です。成功している管理職のリアルな声を共有すること、そして1on1やメンター制度を通じて日常的な関わりを持つことは、管理職候補者の成長を強く後押しします。
多くの企業で管理職を目指したがらない理由の一つに、「良いお手本がいない」「将来の自分の姿がイメージできない」という声もあります。特に中堅社員にとって、日々目にする管理職が疲弊していたり、ネガティブな印象を持たれていると、「自分も、ああなるのか…」と希望を持てずに終わってしまいます。
だからこそ、社内で実際に成果を出していたり、部下から信頼されている現役の管理職の存在を「見える化」することが必要です。そしてただ存在を示すのではなく、
「何がやりがいだったのか」
「どう乗り越えたのか」
など、リアルなストーリーを語ってもらうことで、候補者が感情的にも納得できる形で学びを得ることができます。
また、それらを一方的に伝えるだけでなく、1on1やメンター制度を活用し、候補者が個別に対話できる場を設けることも重要です。相談できる相手がいるだけで、候補者の不安は大きく軽減され、自信を持ってチャレンジできるようになります。
たとえば、当社が管理書候補者研修でよく実施するのは、「ハイパフォーマーの管理職によるストーリーテリング」です。そこでは、「初めて部下を持ったときに戸惑ったこと」「うまくチームをまとめられなかった時期にどう対処したか」など、赤裸々に語る場を設けています。
その話を聞いた管理職候補者からは、「管理職は特別な人だけがなるものではなく、自分にもできる気がしてきた」、「課題も含めてリアルな姿を見られて安心した」という声が上がってきます。
「見えるロールモデルがいるかどうか」は、管理職を目指すか否かに直結する大きな要素です。候補者が「この人のようになりたい」「自分にもできそう」と思えるような先輩の存在こそ、もっとも自然な動機づけになります。
だからこそ、成功している管理職の経験をシェアする場をつくり、候補者が身近な相談相手を持てるよう、1on1やメンター制度を積極的に活用していくことが、育成の鍵になります。
まとめ
「管理職が育たない」という課題は、一部の企業だけの問題ではありません。
プレ・マネジメント経験の不足、現場と乖離した研修、昇進したくない風潮、そしてロールモデルの不在——その背景には、構造的で複雑な要因が潜んでいます。
しかし、それらを「仕方ない」で終わらせるのではなく、今回ご紹介したように、
管理職の役割と価値を“本人目線”で伝える
現役管理職をロールモデルとして活用する
といった手を打つことで、状況は確実に変えていけます。
管理職は、単なるポジションではなく、組織の文化と未来を創る“要”です。
だからこそ、育成を後回しにせず、仕組みとして整えていくことが、企業にとって最大の投資になります。
「自社ではどこから手をつけるべきか分からない…」という方も、まずは社内の課題を言語化し、対話を始めてみてください。
そして、必要であれば、私たちのような育成のプロにご相談いただければ幸いです。
次の一手が、未来の管理職を育てる第一歩になります。