【チェックシート付き】研修したのに変わらない? 行動変容を実現する具体策をステージ別に解説

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「研修の実施後、行動変容は起きているのか?と疑問を感じる…」
「研修をやっても現場での行動変化が見られない。どうすればよいのか分からない」

時間とお金をかけて実施した研修で、行動変容が促されていないと残念に感じますよね。
研修で行動変容を起こしたいけれど、どうすればよいのか悩んでいる人がは多くいらっしゃいます。

本コラムでは、研修による社員の行動変容に不可欠な5つの要素と研修で社員の行動変容を促す具体的な取り組みを紹介します

【5つの要素】
・行動意図
・知識とスキル
・行動の重大性
・環境的制約
・習慣化

紹介している取り組みを実行して行動変容のない研修に終止符を打ち、社員の行動の変化によって組織の成長にポジティブな影響が出ることを実感しましょう。

※本コラムは行動変容を中心に扱っています。研修効果の測定方法や測定時期を知りたい方は「研修の効果測定で迷わない!具体手法4つを公開」をご覧ください。

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執筆者プロフィール
菊地 大翼
組織人事コンサルタント。業界歴15年以上。研修会社に入社し、法人営業で売上トップを達成後、新規商品の開発に従事。現在は人事制度構築支援、成人発達理論に基づいた人材・組織開発のコンサルティングを行っている。

専門性:パフォーマンス・マネジメント、研修開発・ワークショップデザイン、成人発達理論を活用した人材開発・組織開発

1)研修後の行動変容を起こすために不可欠な【5つの要素】

研修によって行動変容を促すことはできますが、どんな研修でもいいわけではありません。統合行動モデル(Integrated Behavior Model, IBM)によると、行動変容を促すためには次の5つの要素が必要だと言われています。

※統合行動モデルとは、Icek AjzenとMartin Fishbeinによって提唱された、人間の行動を理解し、意図(動機)に基づいて影響を与えるためのフレームワークです。

行動変容を促すためには、5つの要素を意識し取り入れることが重要です。
本章では、5つの要素について具体的に説明します。実践方法を知りたい方は「2)研修で社員の行動変容を促す方法」をご覧ください

行動意図

行動意図とは、特定の行動を起こそうとする気持ちや意欲のことです。行動意図は人が行動を起こすかどうかを決定づける最も大きな要因です。意図がなければ行動は起こりません。

行動意図は、次の3つの要素によって決定されます。

要素 概要
行動に対する態度 行動が良いと感じる、あるいは避けたいと感じること
認知された規範 他者の期待や意見に自分がどう感じているか、また周りの人々がその行動をどうしているかという認識
自己効力感 行動を実行できる力が自分にあると感じること

特に、自己効力感は現場実践の一歩を踏み出すために、重要な要素と言えるでしょう。認知された規範はイメージが付きづらいかもしれません。以下に例を記載します。

認知された規範の例

同じ部署の先輩社員たちが日常的に報連相をしっかり行っているのを見て、「自分もそれをしないと周りに悪い印象を与えてしまうかもしれない」と感じる場合、行動意図が強まります。

反対に、上司や周りの同僚が報連相をあまり行っていないと、「自分もそこまでしなくていいか」と感じ、行動を起こす意図が弱まる可能性があります。

これらの取り組みで行動意図を強くすることが、研修で行動変容を促すために必要です。

知識とスキル

当たり前ですが、新たな行動を起こすためには、正しい知識とスキルが欠かせません。どれだけ行動したいと思っていても、それを実現する力がなければ行動に移すことはできません

現場で行動変化を起こせるよう、研修内で「知識とスキル」を学んでおく必要があります。インプットのみの研修では、実際に現場で動き出すことは難しいでしょう。アウトプットの機会がある、実践的な研修を提供することが大切です。

行動の重大性

行動の重大性とは、「行動を起こさないことでどんなリスクがあるのか」を理解し、「その行動が自分にとってどれだけ重要か」を認識することを指します。この認識が深まるほど、行動を起こす可能性が高まります。

また、その行動が本人の納得感や価値観と一致している場合、実際に行動に移す確率はさらに高まります。逆に、行動を重要だと感じられない場合、意図的に行動を起こすモチベーションは生まれにくくなります。

例えば、仕事を一人で抱えすぎて納期を遅らせたり、体調を崩して周囲に迷惑をかけた経験がある人は、「周囲に協力を求めることの重要性」を実感しやすくなります。その結果、周囲を巻き込んで仕事を進める行動に移りやすくなるのです。

研修では「行動の重要性」や「行動しない場合のリスク」に気づかせることも重要です。同時に、行動することで状況が良くなるイメージを持てるよう支援することが、行動変容を促す鍵となります。

環境的制約

環境的制約とは、行動を実行する上での妨げとなるような要因のことです。行動を起こす上での環境的な制約を減らすことも必要です。行動の実行を阻む外的要因や障害が少ないと、行動を取る可能性が高くなります。

例えば、社員のためになる研修を実施したいのに、研修を改善するための時間やリソースが足りない状態では、「例年通りでもとりあえず問題はないし、改善はまたでいっか」となってしまいやすいです。
他にも、自分なりの意見を言ってほしいといいながら、現場ではそのための機会がないと行動しづらいです。

そのため、研修での学びを現場で実行しやすい環境を作り、フォローする体制を整えておくことも重要です。

習慣化

習慣化とは、行動を継続的に繰り返すことで、無意識に実行できるようになることです。研修で学んだ後に、特定の行動を繰り返し実行することで習慣化され、意識せずとも自然に行動を続けられるようになります

学んだことを習慣化してもらうためには、研修後に研修内容をリマインドし、学んだことを思い出す働きかけが重要です。また、研修後の自身の行動や周囲への影響を改めて振り返り、変化を実感することも、習慣化を促進します。あります。

これら5つの要素を意識し、研修前、研修中、研修後に適切に働きかけることで、行動変容を促進することができます。

2)【実践】研修後の行動変容を起こす!実施すべき具体的施策

研修で社員の行動変容を促すためには、1)研修で社員の行動変容を動かすために不可欠な5つの要素でご紹介した5つの要素を適切なタイミングで実施していくことが重要です。

本章では、人が行動を変えるまでに通過するプロセスを基に、実施すべき施策を具体的に解説します。できる部分から、取り組んでいきましょう。
【行動を変えるまでに通過する5つのプロセス】

※行動変容ステージモデルとは、アメリカの心理学者であるジェームズ・プロチャスカ氏とカルロ・ディクレメンテ氏が1983年考案した「多理論統合モデル」の中核概念の一つです。人が行動を変えるまでに通過するプロセスをフレームワークで説明しています。

無関心期

無関心期は以下の状態にあるときです。

無関心期にある社員は、具体的には以下のような状態が見られます。

・部署間でうまく連携が取れず、プロジェクトがスムーズに進まなくても、自分のコミュニケーション不足が原因だとは思わず、周囲に責任を押し付けている。

・納期に遅れても「これくらいは問題ない」と受け流し、改善しようとしない。 

研修実施前の受講者は、多くの場合、このような無関心期の状態でしょう。

無関心期の状態には統合行動モデルの【行動に対する態度】【認知された規範】を促すことがポイントです。具体的な実践方法を2つ紹介します。

人事や経営層からのメッセージを伝える

研修内容に興味や意識を持てるようにするための1つ目の方法は、人事や経営層から、研修の目的や期待する姿を気持ちを込めたメッセージで伝えることです。
受講者が「なぜこの研修が必要なのか」「どのような成果が期待されているのか」を把握することで、研修内容への興味や参加意欲が高まります

例として、ロジカルシンキング研修を受講する場合のメッセージを考えてみます。

OK例
入社して半年以上経って仕事を任されるようになってきていると思います。そんな中、先輩やクライアントから「結局何が言いたいの?」「もう少し簡潔に話せてもらえる?」というフィードバックをもらうこともあるかもしれません。もしくは、自分の意見をうまく説明できずに、なかなか採用されない経験をしている人もいるかもしれません。

そんな時に必要になるのがロジカルシンキングです。ロジカルシンキングが身につくと、物事を論理的に考えて整理し、自分の意見を分かりやすく伝えることができたり、情報を論理立てて整理することで確認モレやミスが減り、業務効率や生産性が高まることを期待できます。

今の皆さんにとって必要になるスキルかなと思いますし、会社としてもロジカルシンキングを身につけてより良い仕事を行なってもらうことを期待しているので、来月にロジカルシンキング研修を実施することにしました。

ロジカルシンキングに苦手意識や抵抗感を持つ方もいるかもしれませんが、丁寧に実践しながら学べるので、安心してください。
ロジカルシンキングを学んで、仕事の質が高まることを期待しています!

P.S.研修に集中できるように、研修の予定を部の共有スケジュールに入れて、急ぎの仕事を持たなくていいように調整しましょう!

研修のことで疑問や質問などあれば、人事の〇〇までご連絡ください。

NG例
来月○月×日にロジカルシンキング研修を実施します。

ロジカルシンキングは、物事を論理的に考えるスキルで、仕事に役立つと言われています。皆さんも知っておいて損はないと思うので、ぜひ参加してください。

OK例とNG例で研修への興味や関心が変わることがイメージできるでしょう。ポイントは以下の通りです。

ポイント①:目的や期待の明確な伝達
ポイント②:具体的なメリットの提示
ポイント③:受講者視点に立ったメッセージ

研修内容に関わる事前課題を実施する

研修内容に興味や意識を持てるようにするための2つ目の方法は、研修内容に関わる事前課題を実施することです。

事前課題を行うことで、現在の自分に課題感を持ったり、研修内容に興味が深まり、自分に関係のある内容だと実感できます。これにより、研修への期待感や興味が醸成され、研修での学びの効果の向上に影響します。

事前課題としてアーティエンスが取り入れるのは、インタビュー現状確認の課題です。

受講前に、自身の上司や先輩にインタビューを行い、自身にどのような期待・課題を感じているのかを知ることができます。インタビューを実施する際は、問いが非常に重要になるため、問いの設計は丁寧に行う必要があります。

※アーティエンスの研修でインタビューの事前課題を実施する際は、当社で問いと具体的な進め方を用意いたします。

事前課題のポイントは、以下です。

ポイント①:具体的な質問
ポイント②:ポジティブな感情を生み出す質問の仕方

ポジティブな感情を生み出す質問とは、成長や期待を感じさせてくれる質問です。具体例を記載します。

×・あなたが改善したいことは何ですか?
〇・あなたが3年目として活躍するのために、変えていきたいことは何ですか?

上記の二つは同義ですが、与える印象が大きく異なります。無関心期の社員の関心を上げるためには特に、ポジティブな質問を意識しましょう。前向きな質問によって、研修に対する関心を強められます。

無関心期の社員は、研修の必要性を感じていないため、準備や導入を怠ると効果的な学びが得られません。また、研修内容やタイミングが不適切だと、学ぶ意欲をさらに損ねる可能性があります。例えば、業務に追われている時期に実施された研修や、社員の現在のスキルレベルや業務に合わない研修は、受講者にとって負担になり、関心が薄れます。

今回紹介したようなメッセージの提言や事前課題を実施して、研修前に研修内容の目的を理解してもらい、自身の状態を確認する機会を設けることで、無関心期から関心期にステージを上げていきます

関心期・準備期

関心期・準備期は以下の状態にあるときです。

関心期・準備期にある社員には、具体的には以下のような状態が見られます。

関心期
・上司や同僚からのフィードバックに「自分に問題があるかもしれない」と感じつつも、どのように改善すべきか分からず、まだ行動には移していない。
・研修冒頭で「このままで良いのか?でも変えるのは大変そう…」と頭の中で迷っている。

準備期
・具体的な行動目標(毎朝10分早く出社しメールのチェックをする等)を立て、実行するための準備をしている。

このステージでは、統合行動モデルの【行動意図(自己効力感)】【行動するために必要な知識とスキル】【行動の重大性】を意識することが有効的です。

研修の始めの段階で関心期に移り、研修の最後には準備期のステージにいることを目指します。以下の流れで取り組むと良いでしょう。

流れに沿って、具体的に解説します。

①受講者が学ぶべき理由を見つける

まず受講者に学ぶべき理由を見つけてもらいましょう。受講者が学ぶべき理由を見つけるために実際にアーティエンスが研修で取り入れているのは次の2つです。

・研修の目的や研修後に目指す姿の提示
ワールド・カフェの実施

研修の目的や研修後に目指す姿の提示は、講師でなくとも、人事や組織の方が伝えてもいいです。受講者が実業務での成長をイメージできるメッセージを、パワフルな言葉で伝えましょう

その後ワールド・カフェを行います。ワールド・カフェは、カフェのようなリラックスした雰囲気の中で、テーマについて少人数に分かれて自由な対話を行います。

例えば社会人としての自覚を伝える研修では「学生と社会人の違いとは何だろう?」というテーマについて、グループごとに自由に対話し、話した内容を模造紙にメモしていきます。

※ワールド・カフェのアウトプットイメージ

ワールド・カフェの特徴は、外部からの答えを待つのではなく、自分たちでテーマを探究することです。自分なりの意味づけができ、主体的な考えや行動が引き出されやすくなります

ワールド・カフェを活用することで、参加者が自ら考え、納得するプロセスを通じて、より積極的な姿勢で研修に取り組めるようになります。

②知識・スキルを得る

知識やスキルを伝える際は、一度に多くの情報を詰め込むのではなく、段階を設けて進めることが重要です。学ぶ内容を小さなステップに分けて、着実に進めていくことで理解が深まり、自信を持って次の学びに進めます。

なお、各ステップの間に、受講者がしっかりと理解できているか、学んだ内容を消化できているかを確認する時間を設けましょう。

また、受講生が研修後に行動に移せるよう、適切な量の知識とスキルを渡すことも重要です。

③実践しながら学ぶ

知識やスキルを得たら、早速実践します。「理解」と「実践」は異なるためです。
研修内で実践機会があることで、疑問点の解消やコツをつかむことができ、行動へのハードルを下げます。

具体的には、アーティエンスでは多くの研修で前半はケーススタディ、後半はシミュレーションワークを取り入れています。
ケーススタディでは、一つのスキルに、一つのケースという仕立てて、使い方に慣れてもらいます。
ケースによって、知識とスキルの理解を深めた後に、シミュレーションワークを行います。シミュレーションワークは、現場で起きそうな状況を設定できると、行動に繋がりやすくなります。

例えば、当社の上司との協働体感研修では、「上司であるリーダーと共に若手社員の日報提出改善プランを作成する」ことを目指し、笠井リーダー役の講師に報連相を繰り返しながら、アウトプットを完成させるシミュレーションワークを実施しています(約2時間)。

【シミュレーションワークの世界観】

※当社、上司との協働体感研修テキストより抜粋

約2時間、上司役の講師への報連相とグループワークを繰り返しながら、アウトプットを完成させていきました。シミュレーションワークを終えた振り返りとして、次のようなコメントが出てきていました。

ワーク時の受講者コメント

「チームで仕事をする感覚が身についたと思う。上司とかもチームなんだなと感じた。」

「実際の仕事となると今回のワークよりもっと複雑になると思うし、自分が他の人に仕事を依頼しないといけなくなることもあるから、それらのことをいろいろ意識するのが難しそうだなと感じた。」

「まだ仕事の経験がないからできるか不安。経験って必要だなと感じた。」

「学んだことを理解すること」と「実際に使えるようになること」は違います。新しく学んだことについて理解はできたけど、どう使えばいいかわからない状態になることが多いです。

そのため研修の中で実践する機会を作り、失敗を通して学び、現場に戻った時に使えるようになれていることが重要です。

④アクションプランを策定する

研修で学んだことを現場でどのように活かすかを考えて、アクションプランを策定します。
具体的にやることが明確になると行動しやすくなるためです。

アーティエンスの研修では、個別で考える場合とOSTを用いる場合があります。

※OSTとは、数人から数百人全員が一堂に会して話し合い、人々のコミットメントを引き出し、主体的な話し合いを通して垣根を超えた問題解決への取り組みを促すファシリテーションのプロセスです。ハリソン・オーエン(Harrison Owen)氏によって1985年に提唱されました。

研修で扱うOSTは本来のベーシックなやり方ではなく、次のような簡易版で実施しています。

自分が扱いたいテーマを紙に書く

紙を持って立ち、紙を他の人に見えるようにしながら同じテーマの人を探す

テーマが同じ人が2人以上になったらグループとなる

グループごとにテーマについて話し合い、アクションプランを策定する

例えば、当社の関係性構築力研修で「上司・トレーナーと素晴らしい関係性を創るため」のアクションプランを策定した際は、次のようなアウトプットが出てきました。

OSTは参加者が主体的に議題を設定し、関心のあるテーマで自由にディスカッションを行う形式です。参加者自身が関心を持つ問題に取り組めるため内発的なモチベーションが高まります

また、参加者は自らのアイデアや意見をもとに行動計画を立てるため、行動変容がより現実的になります

研修を通して学んだことを活かして具体的にどう行動するかを具体化すると、現場で行動しやすくなります

⑤振り返る

研修の最後は振り返りの時間を設けます。研修で学んだこと、気づいたこと、行動したいことが整理できると、行動に移しやすくなります

アーティエンスでは、オリジナルの振り返りシートを使って振り返ります。このシートで研修で学んだことを現場でどう活かすかの問いを設けているため、自然と現場での行動を意識できるようになります。

振り返りシートに関する詳細は、新入社員の成長を促す振り返りシートを2種紹介!活用方法の例文ありよりご確認いただけます。

これらのポイントを意識して振り返ることで、やることが明確になり行動変容を促しやすくなります

研修中に関心期と準備期を越えて、いかに実行できる状態まで持っていけるかが重要です。

実行期

実行期は以下の状態にあるときです。

実行期にある社員には、具体的には以下の状態が見られます。

・自己流の仕事の進め方を止め、新しい業務フローを意識して守ろうとしている
・新しく学んだロジカルシンキングを活用し、不明な点は先輩や同僚に質問している

実行期の状態には統合行動モデルの【行動の重大性】【環境的制約を無くす】を意識することがポイント、です。具体的な方法を下記の2つ紹介します。

・研修で学んだことをリマインド
・上司や周囲メンバーからのフォロー

研修で学んだことをリマインド

研修で学んだことをリマインドし、思い出す機会を作ります。人は繰り返し思い出して使うことをしないと忘れてしまうためです。

人の忘却のメカニズムの研究として、「1日後には34%、1か月後には21%しか記憶した内容を覚えていない」という研究結果(Ebing Housの忘却曲線)があります。 エビングハウスの忘却曲線画像参照:エビングハウスの忘却曲線

この実験は無意味な単語を覚え、その後の記憶の定着率を表した実験結果のため、意味のある研修の内容にはそのまま適応できませんが、1日経てばかなりの部分を忘れてしまうことは確かでしょう。
 研修での学びを記憶に留めるだけでなく、認知・行動変容へと繋げていくには、定期的なリマインド(刺激)やフォローは不可欠です。

リマインドの具体的な方法として、次の3つ紹介します。

・研修のレポート共有
・日報
・バトンメール®

研修で学んだテキストの一部や、研修の様子を思い出せる写真、コメントを入れた研修レポートを作成して受講生に共有します。その内容を見るだけで、研修の記憶が蘇り、研修で定めたアクションプランを実行に移せているかを意識できます。
アーティエンスの研修は、研修レポート(有料)を作成することも可能です。

日報や週報として、研修で学んだことを現場でどのように活かしたのかを書いて提出することも有効です。研修の学びを振り返る、リマインド効果を生みます。時に、日報に書くためにも意識して行動しようという動きも見られます。

バトンメール®はアーティエンスが開発した取り組みです。特定のグループの中で研修で学んだことをどう活かしたかを記載したメールを回していく方法です。(メール以外にも、グループチャット等で実施も可能です)

他のメンバーが研修で学んだことを仕事でどう活かしているのかを知ることができ、学びの活かし方の幅を広げられます。行動が維持されるまでの3ヶ月程度行うことをおすすめします。  
  

これら3つの方法でリマインドし、研修で学んだことや定めたアクションを実行できる状態にします。

上司や周囲メンバーからのフォロー

実行期には上司や周囲メンバーがフォローを行い、現場での行動を促し環境的制約をなくすようにしましょう。

例えば、上司や周囲メンバーへ研修内容の詳細を共有することも一つの方法です。受講者の上司・先輩や、研修の学びに繋がるコミュニケーションを意図的に実施することもできます。

また、試みた行動が習慣化するまでには時間が必要です。受講者本人の様子を見ながら時間的な制約を緩和したり、業務量を調整を行うことも必要です。

人事側が実行期にしてはいけないことは、フォローを現場任せにすることです。実行できる環境を整えるためにも、人事は現場に対して次のことを行いましょう。

・研修概要の共有
・受講生経由で、上司や周囲のメンバーに「アクションプラン」を伝えるようにアナウンス
・研修レポートの共有

研修で何を学んできているのかわからない状態では現場はフォローのしようがありません。これらの情報を伝えて現場でフォローし、実行できる環境を整えましょう。

リマインドとフォローを3ヶ月程度は行い、研修の学びを現場で実行し続けられる状態にしましょう

維持期

維持期は以下の状態にあるときです。

維持期にある社員には、例えば以下のような状態が見られます。

・スケジュール管理が苦手だった社員が、研修で学んだスケジューリングのコツを活かしてスケジュールを立てれるようになり、週ごとに仕事の進捗を見直して改善点を探している。
・他部署との積極的なコミュニケーションを増やした社員が、部署間の更なる連携のために定期的にランチミーティングを企画している。 

維持期の状態には、統合行動モデルの【習慣化】を促すことがポイントです。

行動したことによる変化を振り返る

変化を振り返る機会を作ります。日常生活では気づかなかったポジティブな変化に気づき、行動の重大性を感じると、今後も続けていこうと思うようになります

振り返り方は、内省でも良いですが、1on1の時間で扱えると良いでしょう。

OK例
「〇〇の研修でこういうことを学び、〇〇というアクションプランを立てていたと思うけど、実行してみて何か感じることはある?」などの問いを投げると内省しやすいです。

また、その後、「報連相の内容が簡潔になって、わかりやすくなったよ。」など自分の立場から受講者に感じた変化を伝えてあげられると、より気づきを与えられます。

NG例
「研修で学んだこと活かせてる?」という問いは「はい」か「いいえ」の先を考えることがなく、振り返りが浅くなる可能性があるため避けましょう。
また、「研修で習った○○を取り入れて丁寧に行っているみたいだけど、自分が抱えている仕事の質を落とさないように気をつけてね」など、変わろうと行動していることを大切に扱わないような声がけをすると、行動を変えるモチベーションが下がるため気をつけましょう。

維持期に行ってはいけないことは、とにかく行動していればOKとしてしまうことです。

行動が習慣化してくると、何のための行動なのかが忘れられがちです。しかし、行動の目的を意識できなくなると、今までポジティブな影響を与えていたことも、ネガティブに作用することがあります

例えば、研修で受講者が「チームのコミュニケーションを活性化する」目標を持ち、積極的にミーティングで発言したり、他のメンバーに意見を求める行動を取るようになったとします。
しかし、時間が経つにつれて「チームのコミュニケーションを良くする」という本来の目的を見失い、ただ発言回数を増やすことが目的になってしまう等があります。

周囲からは「話が多すぎてミーティングが長引く」といった不満が出る可能性があり、逆にチームの結束が弱まる結果を招いてしまうかもしれません。

そのため、行動することを目的とするのではなく、何のために行動しているのかを今一度想い出せるような機会を作りし、目的を意識した上で行動できるようにしましょう

これらのポイントを押さえた振り返りをすることで、行動を変えたことでの変化や改善点、目的意識の再確認ができ、より良い行動を維持できるようになります

行動変容ステージモデルの「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージに沿って、研修で社員の行動変容を促すために具体的にどのようなことをすればいいかを解説しました。

紹介した具体的な取り組みの中で、できることから実践していきましょう。

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3)研修後の行動変容はいつ測定する?実施時期と確認方法

研修の効果測定の基本的な方法は「カークパトリックモデル」が挙げられます。

カークパトリックモデルは、現在、企業における研修評価で最もよく使われているモデルです。1959年にアメリカのドナルド・カークパトリック博士によって開発されました。

このモデルは、研修がどれだけ成果を上げているかを評価するために、研修後の効果測定を4つのレベルに分けて評価する方法を提示しています。

レベル 実施時期 確認内容 確認方法
レベル1
反応(Reaction)
研修中〜1週間程度 受講者の研修に対する自己効力感を測定 ・研修中の反応
・研修後のアンケート
レベル2
学習(Learning)
研修直後〜1,2ヶ月程度 研修を通じて受講者がどれだけ知識やスキルを習得したかを測定 ・テスト
・ケーススタディ
レベル3
行動(Behavior)
研修実施から3-6ヶ月後程度 研修後に受講者が実際に業務でどのように行動を変えたかを測定 ・日報や週報
・バトンメール・本人による自己評価(パルスサーベイなど)
・上司や同僚からの評価(インタビューやアンケートなど)
レベル4
結果(Results)
研修実施から半年以降 研修が組織全体にどのようなビジネス成果をもたらしたかを測定 生産性の向上、品質の向上、費用の低減、事故頻度の低減と重大事故の低減、売上の増大、離職率の低下、利益の増加などの数値的変化

本モデルより、行動変容を測定する時期は3-6か月後が適していると言えます。

測定時期や測定方法について詳しく知りたい方は、研修の効果測定【実践ガイド】測定時期や測定方法、ポイントも解説をご覧ください。

4)行動変容を促す研修はアーティエンスにご相談ください

本コラムでは、研修で社員の行動変容を動かすために不可欠な5つの要素と研修で社員の行動変容を促す具体的な取り組みを紹介しました。

研修で社員の行動変容を動かすために不可欠な5つの要素(行動意図/知識とスキル/行動の重大性/環境的制約/習慣化)を意識して、研修前、研修中、研修後に適切に働きかけることが必要です。
具体的な働きかけ方は、行動変容ステージモデルに合わせて取り組みましょう。

研修によって行動変容を促すためには、研修の実施タイミングや実施内容、研修内の進め方などを丁寧にデザインする必要があります。この設計が適切でないと、研修による行動変容を起こせません。
時間とお金をかけて実施した研修が無駄にならないためにも、専門知識や経験知のある外部パートナーと一緒に取り組むことをおすすめします。

アーティエンスでは、企業の状況や課題感を丁寧に扱い、適切な研修のデザインを皆さんとともに考えていきますので、ぜひご相談ください

紹介している取り組みを実行して行動変容を促せない研修に終止符を打ち、社員の行動の変化によって組織の成長にポジティブな影響が出ることを実感しましょう。

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