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ハラスメントとは?ブラックゾーンや定義・対策を分かりやすく解説
更新日: ー
作成日:2024.2.1
「職場でハラスメントの問題が起きないように対策を考えないと…」
「そもそもハラスメントってどんなもの?」
このようなお悩みをお持ちの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
ハラスメントの問題は、組織にネガティブな印象を与えやすく、組織の存続に影響を及ぼしかねません。
しかし、近年は多様なハラスメントの用語が生まれて把握が難しくなっていたり、ハラスメントの根本的な問題が見えづらくなっています。
そこで本コラムでは、職場におけるハラスメントの全体像が見えるように定義や、種類、対策方法などを説明します。ハラスメントの概要を理解し、ハラスメントへの対策を実施できるようにしましょう。
このコラムで分かること
- 職場で起きるハラスメントの種類
- ハラスメントによる影響・リスク
- ハラスメントの対策方法
専門性:インタラクショナルデザインコーチング、キャリア開発、メンタルヘルス/レジリエンス
目次
1)職場におけるハラスメントとは
ハラスメントを翻訳すると、人を困らせること、嫌がらせ、という意味になります。つまり、ハラスメントとは、ある人やグループに対して不快や不利益を与えるような言動をとることを指します。
例えば、上司が仕事を依頼しやすい部下ばかりに仕事を与えて、他の部下へはあまり仕事を依頼しない状態があるとします。その際に、上司は意地悪しているつもりではなくとも、そのことで部下が不快を感じたらハラスメントになるということです。
基本的に受け手が不快を感じたらハラスメントに含まれるため、意図せずともハラスメントになってしまっている可能性も多々あります。
不快や不利益を感じるボーダーラインは個人によって異なり、ハラスメントとなる言動を明確にしきれないところがハラスメント問題の難しい点です。
ただ、ハラスメントには「処分対象」と「そうでないが不快であるもの」というブラックとグレーゾーンがあります。
受け手が不快を感じたら全て処分対象になるわけではなく、処分対象のハラスメントか否かは一定の客観性も求められます。この客観性でポイントとなるのが「業務範囲」か否かです。客観的に見て業務範囲を超えた行為は処分対象でブラックとなる場合が多いです。
例えば、仕事上のミスを指摘することは業務上必要ですが、その時に「若いやつは」「母子家庭が」などと業務と関係がない要素を指摘に持ち込むのは業務範囲内とはいえません。
また工場などで大声を出す・身体を抑える行為は、事故を防ぐための緊急対応として必要な場合もあります。一方で、通常の指導の際に大声を出すとか、暴力的な行為は業務範囲内とは言えません。
このように、ハラスメントには「処分対象」と「そうでないが不快であるもの」というブラックとグレーゾーンがあります。これらを判断する際には業務範囲を超えた行為か否かの客観性が必要となります。
業務範囲内かどうかは、様々な要因を鑑みて判断されます。詳しくは判例などを読み、自社の状況に照らし合わせたり、専門家と話し合うことをお勧めします。
【参考】職場の考え方について
職場とは「労働者が業務を遂行する場所」です。業務行う場所であれば、事業所内に限らず、出張先や取引先、営業車内、顧客の自宅、リモートワーク時の自宅やカフェ、コワーキングスーペースなども職場に含まれます。
就業後の飲み会についても、職務との関連性や強制参加の有無などにより、実質的に勤務の延長であり「職場」とみなされる例もあります。
2)職場で起きる16個のハラスメントの種類
職場で起こりやすいハラスメントを16個紹介します。
ハラスメントの種類 | 概要 |
---|---|
パワーハラスメント(パワハラ) | 上司や同僚が権力を濫用し、他者に対して不当な圧力や攻撃を行うこと |
モラルハラスメント(モラハラ) | 道徳的な価値観に基づく嫌がらせや不当な圧力を与えること |
テクノロジーハラスメント(テクハラ) | ITスキルに弱い相手に不快や不当な影響を与えること |
リモートハラスメント(リモハラ) | 電子メール、ビデオ会議、チャットなどで相手に不快や不当な影響を与えること |
リストラハラスメント(リスハラ) | 企業の再編などの理由で、従業員を退職に追い込むこと |
カスタマーハラスメント | 顧客が従業員に対して行う不適切な行動や言動のこと |
就活ハラスメント | 就職活動中に受ける不当な扱いや圧力のこと |
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ) | 性別に基づく差別や不当な扱いをすること |
セクシュアルハラスメント(セクハラ) | 性的な言動や行動により、相手に不快や不当な影響を与えること |
マタニティハラスメント(マタハラ) | 妊娠や出産、育休によって、差別や不当な扱いが行われること |
パタニティハラスメント(パタハラ) | 男性が産休や育休をとることによって、差別や不当な扱いが行われること |
エイジハラスメント(エイハラ) | 年齢に基づいて差別や不当な扱いを受けること |
ケアハラスメント(ケアハラ) | 家族の介護で早退したり休むことに対して不当な圧力や嫌がらせが行われること |
アルコールハラスメント(アルハラ) | アルコール飲料を無理やり飲ませるなどの嫌がらせや問題行動をすること |
カラオケハラスメント(カラハラ) | カラオケで無理やり歌わせるなどの嫌がらせや問題行動をすること |
ソーシャルハラスメント(ソーハラ) | SNS上でいいね!を強要するなどの嫌がらせや問題行動をすること |
これらのハラスメントは職場でよく起きるハラスメントです。組織としてはこれらのことが起きていないか注意深く意識しておく必要があります。
また、ハラスメントの中でもよく起きるものはこのように種別化されていますが、これに当てはまらなければ問題ない、というわけではありません。あくまでも受け手が不快を感じたらそれは少なくともグレーゾーンのハラスメントには該当しています。今回紹介したハラスメントには当てはまらないからハラスメントではない、という誤解が起きないようにしましょう。
3)ハラスメントによる6つの影響・リスク
ハラスメントによる影響とリスクについて説明します。
①組織に対する法的責任
ハラスメントが職場で起きた場合、加害者を雇用していた企業も、安全配慮義務違反(労働契約法5条)や使用者責任(民法715条1項)に基づき、被害者に対する損害賠償責任を負う可能性があります。
ハラスメントが刑法上の犯罪に該当する場合は、企業や管理者が刑事罰を受ける可能性もあります。
実際にパワハラをした人だけではなく会社の責任が認められた裁判事例として次のような事例があります。
パワハラをした人だけではなく会社の責任が認められた裁判事例
・事案の概要
機械の製造販売等を業とする会社に勤務していた原告が、会社から休職期間の満了により自然退職となった旨の通知を受けたところ、上司からパワハラを受けたことが原因で適応障害を発症し休職していたものであると主張し、会社に対し雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び就労が不可能になった期間の賃金の支払いを求めるとともに、上司に対し、不法行為に基づく損害賠償を、会社に対し使用者責任に基づく損害賠償を請求した事案。
・判決
上司のパワーハラスメントを一部認定し、さらにパワーハラスメントと適応障害との因果関係も肯定した上で、原告の地位確認を認容し、賃金請求を全額命じ、慰謝料については原告の請求額の一部の支払いを命じた。
このようにハラスメントが起きることで組織が責任を問われる部分もあることを理解し、ハラスメントが起きない対策を行うことが必要です。
②世間からのイメージダウン
職場でハラスメントが発生すると、組織は世間からのイメージダウンが懸念されます。ハラスメントが起きる組織は社会的責任に対する不履行と見なされる可能性があるためです。
近年はメディアやソーシャルメディアによって情報が迅速に拡散され、ハラスメントが露呈されることも懸念されます。昔よりタイムリーに多くの人に情報が伝わることで企業の評判は大きな打撃を受けます。この負のイメージは顧客、取引先、投資家にも及び、信頼性の低下やブランド価値の減少に繋がります。
このように職場でハラスメントが起きると、社会的責任を果たせていない組織だと見なされて、世間からの組織のイメージが低下し、このことが将来の成長や存続にも影響することとなります。
③組織への不信感の向上
職場でハラスメントが発生すると、社員から組織に対する不信感が増大します。安全で健全な労働環境を提供できないと感じ信頼を喪失するためです。
特に、ハラスメントについて適切な対応が行われていないと社員に判断されると、組織に対する不信感はより大きくなります。
問題が起きた時に組織に相談しても解決してもらえないと感じると、問題を報告することをためらうようになります。組織は問題が起きている現状を知る手段がなくなり、知らないうちに社員の不満が募っていき、限界を感じた人から退職していく流れとなってしまいます。
このような不満は口コミでさまざまな人に拡散され、今後優秀な人材の獲得が難しくなるでしょう。
このように職場でハラスメントが起きると、組織に対する信頼感がなくなり、組織への不信感から転職する人が増え、今後の人材獲得が難しくなります。
④離職率の向上
職場でハラスメントが発生すると、従業員の離職率が上昇する傾向があります。ハラスメントの被害者はもちろん、従業員にも不安や不信感などを与え、働く意欲や生産性が低下するためです。
パーソル総合研究所の「職場のハラスメントについての定量調査」によると、ハラスメントの被害者のうち約2割が離職していることがわかります。
また、ハラスメントの被害者でなくても、周囲の社員はハラスメントが起きた職場で安心して働けなくなくなると、他社への転職を検討します。
このように組織でハラスメントが起きることで、離職率が向上する場合があります。
⑤社員の被害
職場でハラスメントが起きると、さまざまな社員にネガティブな影響があります。
ハラスメントを受けた社員の被害
ハラスメントを受けた社員は心身の体調を崩し休職せざるを得ない場合があります。また、精神疾患を発症してしまうこともあります。体調や精神疾患の治療のために仕事を休むことで成長に遅れが出てしまったり、同期と比べて経験が不足し、成果が落ちてしまうことがあります。
また、復帰しても、他の社員から「〇〇部長からセクハラを受けた人」「ハラスメントで休職していた人」などのレッテルが貼られ、そのことが気になって居心地の悪さに転職を余儀なくされる場合もあります。
周囲の社員に対する被害
ハラスメントが起きたことで、周囲の社員に急な職務変更が起きる場合があります。
他にも、急に社員が減ることで他の社員でその分をフォローする必要があり、社員の負担が重くなる、という影響もあります。
このように職場でハラスメントが起きると、ハラスメントを受けた社員だけでなく、その周囲にまで被害が出ます。
⑥生産性の低下
職場でハラスメントが発生すると、生産性が低下します。ハラスメントによるストレスや不安が業務に影響を与え、パフォーマンスが落ちるためです。また、職場の雰囲気が悪化し、協力やチームワークが崩れることもあります。
上司からすると、後輩にハラスメントと思われないようにするために、極力関わることを避けようと仕事を依頼することなく、自分で片付けようと仕事を抱え込みすぎてしまう人も出てくるかもしれません。
このように職場でハラスメントが起きると、不安や職場の雰囲気の悪化によって、生産性が低下してしまいます。
ハラスメントはこのようなネガティブな影響を組織や社員に与えることになります。
4)ハラスメントが起きる6つの原因
ハラスメントが起きる原因として6つのことが考えられます。
①権力構造
ハラスメントが起きる原因として権力構造があります。組織内で特定の個人やグループが支配的な地位にある場合、その権力を濫用し、弱者を対象にハラスメントが発生する可能性が高まるためです。
例えば、上司や管理職が不正な権力を行使すると、部下や同僚に対して圧力や嫌がらせが行われることがあります。
また、不平等な権力構造が組織内で浸透していると、被害者は報復を恐れてハラスメントを報告しづらくなります。不正規な権力の行使や意図的な不公正が容易に行われ、組織内の信頼関係や公正感が崩れ、ハラスメントの温床となります。
このように、組織の中に権力格差があると権力の強いものに弱いものは対抗できない状態が作られるためハラスメントが起きやすくなります。
②ハラスメントについての教育不足
ハラスメントが起きる原因として、ハラスメントについての教育不足があります。従業員や管理職がハラスメントについて正確な理解を持っていない場合、適切な対応や予防が難しくなるためです。
ハラスメントの知識やリスクを理解していないと、自身の言動がハラスメント視点で問題がないかを考えてもらう時間を作れません。
また、教育不足は差別や嫌がらせの認識を低くし、問題を未然に防げない状況を招きます。
このように、ハラスメントの知識や認識がないと、自身の言動についてわざわざ振り返ろうとしないためハラスメントが起きやすくなります。
③コミュニケーション不足
ハラスメントが起きる原因として、コミュニケーション不足があります。効果的なコミュニケーションがない職場では、誤解や不満が蓄積するためです。
例えば、上司から部下に対して仕事を依頼するときに「この仕事お願い」とだけ伝え、部下も「はい」とだけしか答えないとします。しかし本心では上司は「言われる前に自分で気づけよ」と思っているかもしれません。部下も「今の仕事で手一杯なのに…」と思っているかもしれませんが、それぞれの心の内を伝えていないため伝わることはなく、ストレスを抱え続けることになります。
このようにコミュニケーションが不足していると、お互いにストレスや不満を抱えやすくなったり、認識の違いが起こりやすくなり、ハラスメントとして表面化することがあります。
④個人の価値観の理解不足
ハラスメントが起きる原因として、個人の価値観の理解不足があります。職場にはさまざまな価値観を持った人がいるためです。多様性を尊重せず、個人の異なる価値観に理解を示さないと、ハラスメントの原因となります。
例えば、スマホでメモをとるなんてあり得ないとという方もいますが、最近の若者からしたら当たり前のことで、怒られている意味すらわからないという人もいます。
価値観の違いがあることを理解し受け止めた上でお互いが納得できる方法を模索できれば問題ないのですが、自身の価値観の押し付け合いになってしまうとハラスメントとなってしまう場合があります。
⑤アンコンシャス・バイアス
ハラスメントが起きる原因として、アンコンシャス・バイアスがあります。
アンコンシャス・バイアスとは無意識の偏見のことで、特定のグループに対して偏見的な態度を持つことを指します。
無意識に偏見的な態度をとってしまうため、ハラスメントの原因となりやすいです。
例えば、育児は女性がするものだという偏見を無意識に持っていると、育休を希望している男性に対して、育休を取らせないように働きかける、ということがおきます。
このようにアンコンシャス・バイアスが職場に存在すると、加害者側が気付かないうちにハラスメントを起こしている可能性が高くなります。
⑥日々の社員へのフォロー制度不足
ハラスメントが起きる原因として、日々の社員へのフォロー制度不足があります。社員への十分なサポートやフォローアップがない状況では、ストレスや問題が積み重なりやすくなるためです。
例えば、社員の1on1などを行っておらず、社員からの不安や悩みを聞く時間を設けていないと、不安や悩みを話すハードルが上がり、伝えられない状態が続いてしまいます。そのうちにストレスが強くなり、相談ではなくハラスメントとして訴える、という話になってしまったり、急に退職をされてしまいます。
このように、不安や悩みなどを定期的に話せる場を設けていないと、ストレスや問題が増えていき、ハラスメントとして現れてしまうようになります。
これらの要因が同時に存在する場合、ハラスメントが起きる可能性が高まります。組織はこれらの問題に対処し予防策を講じることで、健全な労働環境を構築することが求められます。
5)ハラスメントが発生したときの対応方法3ステップ
ハラスメントが発生した時は、次のプロセスで対応しましょう。
①事実確認を行う
ハラスメントの疑いが浮上した場合、まず組織は公平で客観的な立場から事実を確認することが重要です。
被害者や行為者からの話だけでなく、証人からの証言や関連する文書や電子メッセージの調査、監視カメラ映像の確認などを通じて、事件の全体像を正確に理解します。
事実確認は公平かつ中立的なプロセスで行われ、透明性を確保しなければなりません。
②処分やフォローを講じる
事実確認の結果、ハラスメントが確認された場合、組織は適切な措置を講じます。
加害者には懲戒処分や教育プログラムの参加を求めるなど、ハラスメントの内容に応じた懲戒処分を科すことになります。この処分については、法律も関わることのため、専門家と相談しながら慎重に行う必要があります。
被害者に対しては被害者の意向や安全を最優先に考慮し、適切にフォローアップします。精神的なフォローが必要な場合は産業医と連携して専門家の力も借りましょう。
そのほかの社員がハラスメント問題のことを認識している場合は、社員全体へのフォローも必要です。余計な不安を感じさせず、安心して業務に取り組める状態にすることを意識してフォローしましょう。
加害者と被害者、そしてほかの社員にとって、適切な処分とフォローすることで業務を遂行できる状態にします。
③再発防止策を検討し実施する
今後同様の問題が再発しないようにするために、組織は再発防止策を検討し実施します。
ハラスメントが起きたことで社員や世間からネガティブな印象を持たれていることが多いため、事実と対策を明確に提示し、再発防止と共に信頼を取り戻していくことが必要です。
具体的なハラスメントの対策方法については次の章で紹介します。
これらのプロセスで対応し、ハラスメントの被害を最小限に抑えた上で、再発防止に努めましょう。
6)ハラスメントの対策方法7つ
ハラスメントが起きないようにする対策方法を7つ紹介します。
①組織のハラスメント方針等の明確化・周知
ハラスメントが起きないようにする対策として、組織のハラスメント方針等を明確にし周知する方法があります。明確な方針がないと、従業員や関係者は望ましい行動基準を理解できないためです。また、方針があっても社員が認識できていなければ意味がありません。
組織としてハラスメントをどのように扱うかや、組織が独自に退職処分などの罰を下す場合は、そのことについても明確に提示しておく必要があります。この内容は年に1回は見直し、時代にあった内容になっているか確認した上で、社員への周知を行う必要があります。
周知の方法としては、社内の掲示板や社内報、会社のウェブサイトなどでの掲載や、入社時の説明会、ハラスメント研修などの機会を活用して伝える方法もあります。
ただ、一方的に伝えるだけでは内容を読まない社員もいるため、アンケートフォームなどで組織の方向性について理解し同意してもらうと、組織として安心できます。また、組織の方向性について質問があれば受付、答える体制も整えておきましょう。
このように社員全員に対して組織のハラスメントの方針などを理解してもらうことで、ハラスメントの発生を抑えることにつながります。
②組織の構造の見直し
ハラスメントが起きないようにする対策として、組織の構造の見直しがあります。権力格差をなくすためです。
組織構造を見直す方法として、具体的に次のようなことが考えられます。
現在のポジションの見直し
ポジションに求められるスキルや知識、人間力を言語化し、その基準を満たしているかを確認します。そうすることで、コネなどによって昇進してきた人に対して適切なポジションを提示できます。
意思決定プロセスや昇進の基準などの透明性を確保
どのようなプロセスで意思決定するか、また昇格や降格の基準を明確にすることで、権力の濫用や不正な取り決めを防ぎます。評価基準が従業員に明確であれば、不公正な差別が生じにくくなります。
このような方法を実施して権力格差をなくし、権力によるハラスメントが起きないようにしましょう。
③ハラスメントについて教育する機会の設置
ハラスメントが起きないようにする対策として、ハラスメントについて教育する機会を設ける方法があります。ハラスメントの知識があることで第三者が早い段階でフォローできたり、ハラスメントのリスクを知ることで自身の言動がハラスメントとなっていないか確認しようとするためです。
ハラスメントについての教育の方法としては、研修や動画学習、指定図書などがあります。一人で学ぶ動画学習や読書は知識のインプットには向いていますが、インプットだけで終わってしまうと行動として活かしにくいため、各自で学んだ後に対話の機会を設けることをお勧めします。ハラスメントについての気づきやよくわからなかったことをシェアしあったり、学んだことから、どのようなアクションを取るかを話し合うことで、知識を活かせるようになります。研修でも、知識のインプットのみだけでなく、参加者同士で対話を行う時間があると理解が深まります。
ハラスメントについての知識を身につけ、社員それぞれがハラスメントを意識し、職場でハラスメントが起きないようにしましょう。
④コミュニケーション機会の設置
ハラスメントが起きないようにする対策として、コミュニケーション機会を設ける方法があります。日常的にコミュニケーションを取れていれば、相手の価値観の理解や、信頼性を築けて誤解から生じるハラスメントを防げるためです。
具体的な方法としては、例えば次のような方法があります。
1on1
1on1とは、上司と部下が1対1で行う定期的な面談のことです。1on1は部下の成長のための時間で、部下が抱えている悩みや不安を解消したり、これから頑張りたいことができるように一緒に考えたりします。
実施タイミングは組織によってさまざまで、毎日15分程度行う場合もあれば、週1回、月に1回という場合もあります。
ただ回数を多く実施すればいいというわけではなく、上司と部下で信頼関係があり、お互いが素直に話せる環境であることが大切です。
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ランチ補助
社員同士でランチをする際に会社から1人1,000円程度補助を出すという福利厚生をつけることも方法のひとつです。そうすることで、積極的に社員同士のコミュニケーションが生まれやすくなります。
同じ人とばかり行かないように、同じ人との場合は月に1回まででしか支給しないようにしている組織もあります。そのほか、部署間のコミュニケーション機会を作るために、部署メンバーが全員参加のときのみ支給するルールにしている組織もあります。
ランチは仕事から離れてリラックスしやすいため、お互いを知るコミュニケーションがとれることを期待できます。
部活
社内で部活をつくり、上下や部署に関係ないコミュニケーション機会をつくる方法もあります。自分の好きなことや興味のあることを通して会話をするため、話題に困ることなく会話を楽しめます。
部活によっては部下のほうが得意で上の立場の人に教えるような場面も考えられるため、よりフラットなコミュニケーションが生まれやすいです。
このように定期的にコミュニケーションをとる機会を作ることで、違和感を溜め込むことがなくなり、また、お互いの性格や特徴を知ることで関係性が築かれるためハラスメントの抑制に効果的です。
⑤価値観の違いを知る機会の設置
ハラスメントが起きないようにする対策として、価値観の違いを知る機会の設置という方法があります。自分の言動に対して相手はどのように感じるかを考えきれていないことによってハラスメントが生まれるためです。
具体的な方法を3つ紹介します。
各年代の社員が育ってきた環境と特徴を知る
各年代の社員が育ってきた環境と特徴を知ることが一つの方法です。価値観は育ってきた環境によってつくられることが多く、年代ごとに持っている価値観が似ていることが多いためです。もちろん人それぞれ持っている価値観は異なりますが、相手を知る手掛かりになります。
例えば現在60歳あたりの方は、男性が仕事をして女性は専業主婦で家事をする環境が多くありました。しかし、最近の若者は両親共働きの環境で育っている人も多く、結婚しても仕事をすることが当たり前という認識を持っている人もいます。
このように各年代の社員がどのような環境で幼少期から社会人を過ごしてきたのかを知る機会を作ることで、自分と異なる年代の人と関わるときに関わりやすくなります。
インタビュー
お互いの価値観を知るためにインタビューする機会を作ることも一つの方法です。普段の会話の中で価値観に触れる話をするのが難しいためです。
例えば、アーティエンスではお互いに大切にしている想いや背景を理解し合うことを目的として相互インタビューを行っています。価値観を知るための質問をあらかじめ用意しておいて、インタビュー者はその内容をそのまま尋ねます。そのようなルールにしておくことで、個人的には聞けないような質問もしやすくなります。
【参考:相互インタビューシート】
弊社新入社員研修を導入いただいたお客様にオンボーディング支援ツールとしてお渡ししています。
インタビューという形式を取るだけで、普段質問しにくいことを聞けるようになるためお勧めです。
⑥アンコンシャスバイアスについて理解する機会の設置
ハラスメントが起きないようにする対策として、アンコンシャスバイアスについて学び対策を考える機会を設ける方法があります。無意識のバイアスは日常の言動に現れ心理的安全性を損なうためです。
アーティエンスで実施しているリーダーのためのアンコンシャスバイアス・トレーニングでは、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)について理解だけでなく、アンコンシャスバイアスによってどのような負の影響が起きているかを見つめ、対策を検討していきます。
無意識のバイアスによる負の影響を回避するために必要なコミュニケーション方法を知ることで、ハラスメントにつながる言動を抑えられるようになります。
⑦相談・苦情に応じる体制の整備
ハラスメントが起きないようにする対策として、相談・苦情に応じる体制を整備する方法があります。相談しづらい状況がフォローを遅らせ、ハラスメントを起こし続けるためです。
例えば、組織内に相談窓口につながるメールアドレスを用意して相談のハードルを下げて連絡しやすくする方法があります。このときに必ず守秘義務を約束しましょう。相談内容が漏れてしまうのではないかという不安があると相談できないためです。また、相談窓口以外の社員はメール内容を見られない設定にしておくことも必要です。
他には、外部カウンセリングと契約してカウンセラーに相談できるようにする方法もあります。第三者だからこそ安心して話せる場合もあります。また、プロのカウンセラーのため受け入れてくれるだろうという安心感もあるでしょう。
ハラスメントの問題について管理職のみの対策をしている組織が多いですが、社員一人一人がハラスメントについて理解し、ハラスメントを起こさない意識を持つことが大切です。今回紹介した対策の中でできていないことがあれば、一つずつ実行していきましょう。
【参考】ハラスメントに関係する法律
・労働基準法(労働基本法)
労働者の労働条件や待遇に関する基本的な規定を含む法律で、労働環境の改善や安全確保が重要視されています。2019年に改正され、セクシュアルハラスメントへの対策を強化しました。雇用主は予防策の実施や労働者への教育を行うことが求められています。
・男女雇用機会均等法
男女の雇用機会の均等の確保を目的とした法律で、セクシュアルハラスメントに関する規定があります。雇用主は、セクシュアルハラスメントを防止するために適切な対策を講じることが求められています。
・労働安全衛生法
労働者の安全と健康の確保を目的とした法律で、労働環境の改善が規定されています。ハラスメントが労働環境に悪影響を与える場合、これに対処するための規定が含まれています。
・労働施策総合推進法
労働環境の改善や労働者の健康確保、ワーク・ライフ・バランスの向上などを目的として、労働施策を総合的に推進するための法律で、その中でパワーハラスメント防止に関する規定が含まれています。
・育児・介護休業法
労働者が家庭の事情により一時的に仕事を休む際に、雇用を維持したまま休業できるようにするための法律です。職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置に関する内容が記載されています。
7)まとめ|アーティエンスはハラスメントへの対策に関する研修を実施
本コラムでは、職場におけるハラスメントの全体像が見えるように定義や、種類、対策方法などを説明しました。
ハラスメントとは、ある人やグループに対して不快や不利益を与えるような言動をとることを指します。ただ、ハラスメントには「処分対象」と「そうでないが不快であるもの」というブラックとグレーゾーンがあり、これらを判断する際には業務範囲を超えた行為か否かの客観性が必要となります。
職場で起こりやすいハラスメントを16個紹介しました。
ハラスメントの種類 | 概要 |
---|---|
パワーハラスメント(パワハラ) | 上司や同僚が権力を濫用し、他者に対して不当な圧力や攻撃を行うこと |
モラルハラスメント(モラハラ) | 道徳的な価値観に基づく嫌がらせや不当な圧力を与えること |
テクノロジーハラスメント(テクハラ) | ITスキルに弱い相手に不快や不当な影響を与えること |
リモートハラスメント(リモハラ) | 電子メール、ビデオ会議、チャットなどで相手に不快や不当な影響を与えること |
リストラハラスメント(リスハラ) | 企業の再編などの理由で、従業員を退職に追い込むこと |
カスタマーハラスメント | 顧客が従業員に対して行う不適切な行動や言動のこと |
就活ハラスメント | 就職活動中に受ける不当な扱いや圧力のこと |
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ) | 性別に基づく差別や不当な扱いをすること |
セクシュアルハラスメント(セクハラ) | 性的な言動や行動により、相手に不快や不当な影響を与えること |
マタニティハラスメント(マタハラ) | 妊娠や出産、育休によって、差別や不当な扱いが行われること |
パタニティハラスメント(パタハラ) | 男性が産休や育休をとることによって、差別や不当な扱いが行われること |
エイジハラスメント(エイハラ) | 年齢に基づいて差別や不当な扱いを受けること |
ケアハラスメント(ケアハラ) | 家族の介護で早退したり休むことに対して不当な圧力や嫌がらせが行われること |
アルコールハラスメント(アルハラ) | アルコール飲料を無理やり飲ませるなどの嫌がらせや問題行動をすること |
カラオケハラスメント(カラハラ) | カラオケで無理やり歌わせるなどの嫌がらせや問題行動をすること |
ソーシャルハラスメント(ソーハラ) | SNS上でいいね!を強要するなどの嫌がらせや問題行動をするこ |
これらのハラスメントは職場でおく起きるハラスメントのため、組織としてはこれらのことが起きていないか注意深く意識しておく必要があります。
ハラスメントによる影響とリスクとして次の6つのことがあります。
・組織に対する法的責任
・世間からのイメージダウン
・組織への不信感の向上
・離職率の向上
・社員の被害
・生産性の低下
ハラスメントはこのようなネガティブな影響を組織や社員に与えることになることを理解しましょう。
ハラスメントが起きる原因となるのは次の6つのことが考えられます。
・権力構造
・ハラスメントについての教育不足
・コミュニケーション不足
・個人の価値観の理解不足
・アンコンシャス・バイアス
・日々の社員へのフォロー制度不足
これらの要因が同時に存在する場合、ハラスメントが起きる可能性が高まります。組織はこれらの問題に対処し予防策を講じることで、健全な労働環境を構築することが求められます。
ハラスメントが発生した時の対応方法は、次の流れで行いましょう。
①事実確認を行う
②処分やフォローを講じる
③再発防止策を検討し実施する
これらのプロセスで対応し、ハラスメントの被害を最小限に抑えた上で、再発防止に努めることが必要です。
ハラスメントが起きないようにする対策方法として次の7つが考えられます。
・組織のハラスメント方針等の明確化・周知
・組織の構造の見直し
・ハラスメントについて教育する機会の設置
・コミュニケーション機会の設置
・価値観の違いを知る機会の設置
・アンコンシャスバイアスについて理解する機会の設置
・相談・苦情に応じる体制の整備
ハラスメントの問題について管理職のみの対策をしている組織が多いですが、社員一人一人がハラスメントについて理解し、ハラスメントを起こさない意識を持つことが大切です。今回紹介した対策の中でできていないことがあれば、一つずつ実行していきましょう。
なおアーティエンスでもハラスメントに関連するサービスを実施しています。
貴社のお悩みに合わせて適切な対応・対策を行えるようにサポートしますので、お気軽にお問い合わせください。
ハラスメントの問題が起きないように、できることから始めていきましょう。
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