【例文付き】コーチング型1on1|部下の変容を促す進め方を詳しく解説

更新日:

作成日:2023.10.30

1on1

「1on1でコーチング的な関わり方が大事と学んだが、どのように実践していけばよいのか…?」
「1on1でコーチングしているつもりが、結局、ティーチングになってしまう…」
「コーチング的な関わり方をしているつもりだけど、相手に変化が生まれていない気がする…」

このようなお悩みをお持ちの方が多いらっしゃるのではないでしょうか。

1on1ミーティング(以下1on1)の質を高めるためのスキルを学ぶと、コーチングの手法に出会うことが多いです。コーチングというのは、部下の自律的な行動を促すことを目的とした、コミュニケーションスタイルです。

しかし、コーチングの理解をしきれていないことで、ただ話しを聴くだけになってしまって話が前に進まないという状況が起きていることがあります。他にも、上司本人はコーチングをしているつもりだけど、客観的にみるとティーチングになってしまっていることもあります。

そこで本コラムでは、コーチング型の1on1の目的や効果を確認した上で、具体的な進め方をお伝えします。お読みいただくことで、コーチング型の1on1の基本的な流れを理解し実施できます。

部下の自己実現をサポートできるようになるためにも、コーチング型の1on1を習得していきましょう。

監修者プロフィール

迫間 智彦

X:@tohaza_atc youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。


合計500社以上の導入実績を誇るアーティエンスでは「管理職がプレイヤーから抜け出せていない」「管理職が昔の気質のままで変われない」といった企業さまへ「研修成功事例集」を作成しました。
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1)コーチング型1on1の目的と効果

コーチング型1on1の目的は、部下の自律的な行動を促すことです。そうすることで部下が主体的に仕事に取り組むようになり、成果が出やすくなります。そして結果として、部下自身の成長、さらには組織全体の成長にもつながります。

コーチング型1on1を行うことで、なぜ、部下の自律的な行動を促すことができるのかというと、部下が自分の課題や目標に対して主体的に考え、解決策を見つけるためです。
コーチングは、「相手の中に答えがある」というスタンスで行います。そのため、基本的にはアドバイスはせず、傾聴や問いによってテーマの内容を深め、部下が自分で気づきを得られるようにします。
部下は誰から言われたわけではなく、自ら出てきた答えについては納得感が強く、すんなりと受け入れることができるため、行動にも移しやすくなります。

また副次的に、上司と部下の関係性が構築されることも期待でき、それも部下の自律的な行動を促しやすくする要因です。上司と部下で関係性が築かれると、人間関係のストレスが軽減したり、コミュニケーションがしやすくなったり、お互いの意見を素直に伝え合ったりできるためです。

実際に、1on1がうまくいくことで、離職率の低下やエンゲージメントの向上につながることが研究でもわかっています。

※アーティエンスの無料勉強会資料より

このようにコーチング型1on1は、部下の成長を支援することで、結果的に組織全体にもポジティブな影響を与えることができます。

【参考】コーチングの種類 ~ティーチング型1on1との違い~
1on1のスタイルは、「ティーチング型」と「コーチング型」の大きく2つに分類されます。

ティーチング型は、教育や指導をすることがメインの時間になる1on1です。
一方のコーチング型は、話し手の自己実現や目標達成のために気づきを促す時間となる1on1です。

どちらのスタイルを行うのかは1on1を行う相手の状況や希望に応じて判断します。
ただ、現在の1on1の多くはティーチング型の割合が多い印象です。理由としては、コーチングスキルが足りず、コーチング的な関わり方がわからないことが挙げられます。

しかし、部下の自己実現をサポートするためには、部下に新たな気づきを与え変容を促すコーチング的な関わり方も必要です。状況によって適切な関わり方をできるように、コーチングのスキルを身につけ、部下に対して適切な支援をできるようにしましょう。

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2)コーチング型1on1に必要な3つのスキル

コーチング型1on1を行うために最低限持っておきたいコーチングの基本的なスキルは、傾聴、質問、フィードバックのスキルです。これらのスキルがあると、部下の自律を支援できるコーチングを行えます。それぞれ詳しく説明します。

1、傾聴スキル

傾聴は、相手を尊重し理解しようとして聴くことです。傾聴の種類として受動的傾聴と反映的傾聴があるため、それぞれ説明します。

受動的傾聴

受動的傾聴は、話し手の発言を受け入れることに主眼を置いた傾聴のスタイルです。これは積極的に質問をしたり、意見を述べたりするのではなく、話し手の言葉や感情に注意を向け、ただ静かに聴くことに焦点を当てます。注意深い観察で、相手の表情やジェスチャー、声のトーンなどを注意深く捉え、相手の感情やニュアンスを理解しようとする姿勢が求められます。

受動的傾聴によって、相手への理解と承認を示し、話し手が自分の意見や感情を自由に表現できるようにすることが目的です。

受動的傾聴のための具体的な方法を2つお伝えします。

●相手を見て聴く
当たり前のように感じますが、話し手を見て話を聞きましょう。話し手以外のところに目があると、聴いてくれていない感じを受けるためです。

他のことを行っていると、対面ではもちろんですが、オンライン上でも話し手に伝わります。
話し手の話を聞きながら自分も話し手と同じ気持ちを体感するために目を瞑ったりするのは、問題ないですが、基本的には話し手を見て話しを聞きましょう。
そして、ただ話し手を見るのではなく、相手の表情や目線の動き、手や体の動き、声のトーンなど細かく観察する意識を持って相手と向き合うことが大切です。そうすることで話し手は自分と真剣に向き合ってくれている感じを受けることができます。

●聴いていることを相手に伝える
聴いていることを相手に伝えましょう。具体的には声や動作で相槌を打ったり、表情を変えたりするなどです。そうすることで、話し手はちゃんと自分の話を受け取ってくれていると安心できるためです。

話し手の中には、自分が話している時に相手の顔を見ない人がいます。そのような人は、何も音がなく動きもないと、ちゃんと聴いてくれているのか不安になってしまいます。そのため、音や動きを出して、聴いていることを話し手が意識しなくてもわかるようにしておきます。

このときにポイントとなるのは、評価と受け取られる言葉は使わないことです。
例えば「この間、営業で2位になったんです」という話があったとします。そのときに「すごいですね」や「惜しかったですね」という言葉を伝えるのはNGです。これらの言葉には、話を聴いている人の価値観が含まれてしまっているためです。そうではなく、ただ「そうなんですね」とだけ伝えます。そうすることで、この後、話し手がどんな感情も安心して出すことができます。

他にもよく使われる相槌の言葉としては「はい」「へー」「うん」「なるほど」などがあります。このような相槌を打つことで、ちゃんと話しを聴いてくれているかという不安がなくなり、自分の話しに没頭できて深い対話をできます。

このように受動的傾聴を行うことで相手は心をオープンにしやすく、対話が深まります。対話が深まることで気づきも生まれやすくなります

反映的傾聴

反映的傾聴は、話し手の発言を要約するなど、話し手が出していることをそのまま返す傾聴のスタイルです。話し手にとってポイントとなりそうな表情や動き、言葉を捉えることで、無意識の領域に入っていきます。

話し手が言ったことを受け入れ、理解したことを示したり、話し手が無意識的に言った言葉や表情を伝えて新たな気づきを与えることが目的です。

反映的傾聴のための具体的な方法を3つお伝えします。

●表情を反映する
話し手の表情を反映する方法です。話し手は自分の表情をじっとは見ていないため、表情を反映することで自分では気が付かなかった部分を知れるためです。

例えば、眉間にしわがよって苦しそうにしているしていると感じたら、そのことを伝えてみます。伝え方としては「今、〇〇のことを考えているときに眉間にしわがよっていて苦しそうでしたね」などです。このことを伝えたことで、話し手から「そうなんです。苦しいんですよね。」などと話しが深くなっていくことがあります。

●動きを反映する
話し手の動きを反映する方法です。話し手はほぼ無意識に手や目線、体を動かしているため、そのような自分が無意識に行っていることを伝えることで、新たな気づきにつながる可能性があるためです。

例えば、話し手があることについて説明しているときに手で丸を作っている場面があったとします。そのときに、その手で作っている丸の形が、聴く側として気になったら伝えてみましょう。伝え方としては「今、手で丸を作っているように見えましたが(実際に真似する)、〇〇って丸い感じなんですか」などです。そうすると話し手から「あー確かに丸っぽいかもしれません」などの言葉が返ってきて、話しが深くなっていくことがあります。

●言葉を反映する
話し手の言葉を反映する方法です。話し手がふと出した言葉の中に大切な要素が含まれている可能性があるためです。聴き手が話し手の話しを聴いている中で、この言葉はポイントそうだなと思ったら、その言葉を繰り返してみます。

例えば、話し手が「〜なんかどうでもいいやって思ってしまうんですよね」と話している中で、「どうでもいいや」という言葉が気になったとします。そうしたら、「どうでもいいやって感じなんですね」とか「どうでもいいや、という言葉に感情が入っていましたね」などの言葉で伝えてみます。そうすると「どうでもいいや、っていう感じですね。なんか寂しい感じです」など新たな気づきにつながる道筋を作ることができる場合があります。

このように反映的傾聴を行うことで、話し手は自分を客観でき、新たな気づきにつながります。そして、話し手が自身で新たな気づきを得ることで、主体的な行動を期待できます。

ただ、これまでお伝えした3つの方法で反映したときに、話し手がその情報を特に求めているわけでなければ、話し手から特にリアクションがないこともあります。その場合は、話し手はこの情報には特にひっかかることはないんだなと思い、また今に集中するようにしましょう。

このように傾聴のスキルがあると、相手を尊重し理解しようとして聴くことができ、対話が深まって気づきを得やすくなったり、関係性が深まります

2、質問スキル

話し手の話しに対して、話しを広げたり深めたりするために問いを投げます。別の視点から見ることで新たな気づきを得ることがあるためです。

例えば、キャリアアップしたいけどそのための資格の勉強のやる気が出ない、ということに悩んでいるとします。話し手は頭では資格を取ることでいいことしかないんだから、やったほうがいいと思っているけど、後回しにしてしまう、ということを話してくれていました。その場合、例えば「何が資格を取ることを妨げているんでしょうか」「資格を取らないことで得られていることってなんですか」などの問いを投げてみることで、話し手に新たな気づきにつながる可能性があります。

問いを投げるときに意識したいポイントは3つです。

1、簡潔にまとめる

問いの内容は簡潔にしましょう。簡潔な問いの方が話し手は考えやすくなるためです。
よくありがちなのは「先ほど〇〇って言っていましたが、それって〜〜ってことですか?それとも△△ですか?」というように補足をたくさんつけた問いにしてしまうことです。
相手が理解しやすいように補足をしているのだと思いますが、こんなに長いと理解するまでに時間がかかったり、答える準備をしているのに答えられない、という状況を生み出してしまいます。そのため「先ほどの〇〇についてもう少し詳しく教えてくれますか?」などシンプルな問いにするようにしましょう。

2、オープンクエスチョンにする

クローズドクエスチョン(回答がYes/Noになるもの)よりも、オープンクエスチョン (回答が Yes/Noに収まらず話し手の考え・想い次第で何通りものケースになるもの)を 意識して質問しましょう。
例えば、「 この業務の優先度は高いですか、低いですか」というクローズドクエスチョンではなく、「この業務が達成されると、どんなメリットがあるでしょう」というオープンクエスチョンで問いを投げます。
そうすることで、話し手が自由に答えを想像することができ、話し手ならではの答えを知ることができます。

3、What(何を)、How(どうやって)を意識する

Why(なぜ)よりも、What(何を)、How(どうやって)を意識すると無意識の領域に気づきやすくなります。Why(なぜ)だと、話し手に寄り添うのではなく課題解決になりやすくなるためです。
例えば、期限を守れないという話の中で「なぜ期限を守れないのでしょうか」と「何が期限内に提出することを妨げているのでしょうか」だと、聞こえ方の印象が違うことがわかります。

これら3つのポイントを意識して問いを投げることで、話し手の考えや感情を深くみていくことができます

3、フィードバックスキル

話し手の話しを聴いていて率直に思ったことをIメッセージとして伝える方法です。話し手は他者の意見を聞くことで視野を広げることができます。

例えば、話しを聴いている中で、できない言い訳をずっとしているなと感じたとします。そのときに「今まで話しを聞いていて私は〇〇ができない理由をたくさん伝えてくれているように感じましたが、これを聞いてみてどう感じますか?」などと聴き手が感じたことを伝えてみます。そうすることで、「確かに、言い訳ばかりしている気がする…」ということに気づき、次の段階に進めるようになるかもしれません。

ただし、「ずっと言い訳していませんか?」など決めつけるような言い方をするのはNGです。あくまでも私はそう聴こえた、と伝えるだけで、話し手はその内容を受け取ってもいいし受け取らなくてもいい、というスタンスを持ちます。
決めつけたような言い方をすることで相手との信頼関係がなくなってしまうと、その後、話しを深めることが難しくなるため、適切な場面で行うようにしましょう。

このようにIメッセージとしてフィードバックを行うことで、話しをより深めることができ、無意識で自分が行っていたことなど新たな気づきにつながります。そして、そこから主体的な行動に繋がりやすくなります。

【参考】「Iメッセージ」と「YOUメッセージ」の違い
Iメッセージは、発信者である「私」を主語とした伝え方で、発信者の気持ちがダイレクトに相手に伝わるのが特徴です。一方、YOUメッセージは受け取り手である「あなた」が主語となっている伝え方です。その内容は発信者の主観によるところが多く、受け取り手からすると指示・命令といった意味合いが強くなる伝え方です。

これら3つのスキルがあることで、部下の自律的な行動を促しやすくなります。

3)コーチング型1on1の具体的な進め方

コーチング型1on1の具体的な進め方について説明します。全体の流れとしては以下の通りです。

1、環境の準備
2、コーチングについて説明
3、「評価をする場ではない」ことを意思表示する
4、チェックイン
5、話したいテーマを確認
6、対話
7、今の感情や気づきを確認
8、チェックアウト

1、環境の準備

コーチングに適切な環境を準備しましょう。いかに部下が安心して話せるかがポイントだからです。安心できる環境を作るために、次のことを取り入れてみることをお勧めします。

周囲が気にならない場所で行う

周りに人がいると、他の人に聞かれたくないからと話が止まってしまったり、話しに集中できなくなるためです。ただ、密室で他の音がしない静かな場所だと緊張感が高まってしまいやすくなります。そのため、気にならないくらいの雑音や人の動きを感じられる個室がおすすめです。

対面ではなくL字で座る

座る位置は対面ではなく、L字型で座ることをおすすめします。対面だと心理的な圧迫を感じやすくなりますが、L字のだと自然と視線がずらせ、お互いにリラックスして面談に臨めます。

オンラインで行う場合は、画面にお互いの顔がしっかりと映るようにカメラの位置を設定しましょう。

室内の温度を適切にする

寒すぎず、暑すぎず、適切な温度を設定しましょう。寒いや暑いなど温度に意識が向くと、話に集中できなくなります。

少しの延長には対応できるようにする

話の内容によっては時間が長引くこともあります。話しが深まっているところで無理やり中断してしまうことがないよう、予定の時間より多めに時間を見積もり、少しの延長には対応できるようにしておきましょう。このような環境を意識して安心して話せる場を作り、テーマに深く入っていける状態を作りましょう。

2、コーチングについて説明

コーチングを行うことが始めての場合は、コーチングについての説明をしましょう。多くの人にとってコーチングは身近になく、理解が曖昧な人が多いためです。
参考として伝え方の例文をお伝えします。

コーチングは、対話を行うことで、〇〇さんが自分の中にある答えに気づき、行動が生まれるようにするためのコミュニケーションです。

コーチングの考え方としては、答えは〇〇さん自身が持っているけど、それに気づけていない状態である、という考え方なので、私は〇〇さんがそのことに気づけるようにサポートしていきます。

ただ、もちろん私が答えを知っているわけではないので、〇〇さんが自分で考えてもらうことが必要です。〇〇さんの中にある答えに気づけるように、一緒にこの場を作っていけたらと思います。

コーチングについて理解ができていないと、上司からアドバイスをもらえる場だと思って、部下が受け身の姿勢で参加してしまうことがあります。しかし、コーチングは、話し手が主体的に関わろうとしないと成り立ちません。
認識の違いによってコーチング型1on1の質が下がってしまうのは勿体無いです。

コーチングについてお互いが共通認識を持ち、話し手が主体的に関わる必要があることを理解してもらいましょう。そうすることで、意味のある1on1の時間がつくられます。

3、「評価をする場ではない」ことを意思表示する

この場で話すことは評価に影響しないことを伝えましょう。「評価につながったらどうしよう」「他の人に聞かれていたらどうしよう」などの不安があると思考が遮断され、集中して話に入っていけないためです。参考として伝え方の例文をお伝えします。

これから話すことは、評価には一切関係しないことを約束します。基本的にここで話したことは、他の人に勝手に話すことはないので、そこについては安心してもらえたらと思います。

部下が話したいことや聞きたいことを自由に話して良いというメッセージを伝え、安心して話せる場をつくります。

なお、評価する場ではないこと以外に事前に伝えておきたいことがある場合は、必要に応じてグランドルールを作ることもお勧めです。ルールとしてまとめてあることで、安心して参加できます。例えば、アーティエンスがグループでの対話を深めたいときには次のようなグランドルールを事前に伝えるようにしています。

コーチング型の1on1を実施するときはこれだけは守ってほしいというルールについては、人事で作成し、展開することでコーチングの文化が根付いていきやすくもなります。

4、チェックイン

次にチェックインをします。チェックインとは、本題に入る前に「その場に入る」ために用いられる導入ワークです。チェックインで、今の状態や先に出しておきたいことを伝えることができ、自身が安心した状態で場に入ることができます。
参考として伝え方の例文をお伝えします。

●チェックインに慣れている場合
それではチェックインから始めましょう。どちらからでも、準備ができた人からお願いします。

●チェックインに慣れていない場合
まずチェックインから始めようと思います。チェックインの目的としては今思っていること、頭にあることを一旦出して、場に入れるようにすることです。ですので、例えば「風邪気味で話している途中に咳が出て、聞きにくいかもしれません」とか「さっきまでやっていた仕事が気になっています」など、何でも構いません。順番は決めず、話したいと思ったときに話してみましょう。

チェックインを行うことで、本題に入る準備を行いましょう。

5、話したいテーマを確認

話したいテーマを確認します。部下が話したいことを話す時間だからです。
参考として伝え方の例文をお伝えします。

早速本題に入っていけたらと思いますが、〇〇さんが今話したいことは何かありますか?

この後に返ってきた答えが抽象的だったりテーマが大きい場合は、もう少し深く聞いてみます。参考として伝え方の例文をお伝えします。

・△△について気になっているんですね。△△についてもう少し詳しく教えてもらえますか?
・△△の何が気になっているんですか。
・△△について話したいと思ったのには、どのような背景がありますか?

このような問いを投げてテーマを明確にしていきます。コーチングで扱う内容は、共通の答えがなく、自分の中にしか答えがないようなテーマに対して機能しやすいです。

例)悩み、不安、怒り、妬み、生きづらさ、自己理解、自分の将来など

以下が会話のイメージです。

■上司:そしたら早速入っていけたらと思いますが、〇〇さんが今話したいことは何かありますか?

▶︎部下:なんか最近、A社との打ち合わせがあると嫌だなって思うようになってきてしまって…。でもA社はウチにとって大切なお客さんなので、丁寧に対応しないといけないし…。なんかこの状態であることが嫌だなって思います。

■上司:A社を大切にしないといけないけど、なんか嫌だなって思うことがあるんだね。何で今、このことが気になっているんだろうね。

▶︎部下:うーん、何ででしょう。嫌だなって思いながら仕事をしたくないからかな。いい仕事をするためには、ネガティブな思いを持っていたらダメな気がする。

■上司:そっか。いい仕事をするためには、ネガティブな思いを持っていたらダメだと思っているんだね。そしたら、今の時間はそのことについて話してみる?もし他に話したいことがあれば教えて欲しいけど。

▶︎部下:そうですね。そのことについて話してみようと思います。

部下から話したいテーマが出てこない場合

もし、部下から話したいテーマがなかなか出てこない場合は、次のように問いかけてテーマを決めるサポートをしましょう。

●話すことを戸惑っている場合
この場は何を話しても良いので、もし頭の中に出てきているものがあればどんな内容でも大丈夫です。

●話したいテーマがなさそうな場合
・仕事でもプライベートでも「もっとこうなればいいのにな…」と思っていることは何かありますか?
・今の状態は、〇〇さんの中で10点満点中何点くらいですか?(点数を付けた理由を深堀りしていく)

テーマの認識がズレていると、上司は部下に寄り添うことができなくなるため、テーマの認識についてお互いに理解しあえてから対話に入っていきましょう。

6、対話

傾聴、質問、フィードバックのスキルを駆使して対話をしていきます。部下に気づきを与えられるようにするためです。対話のときによく使う例文をお伝えします。

●傾聴
・相槌の言葉「そうなんですね」「はい」「へー」「うん」「なるほど」など
・△△だと思ったんですね(話し手の言葉を繰り返す内容)
・△△の時に□□になるんですね(話し手の言葉を繰り返す内容)

●質問
・何が〇〇さんをそうさせるのでしょうか
・その時どのように感じますか
・△△すると、〇〇さんはどうなってしまうのですか
・そのことを考えてみると、どう感じますか
・〇〇さんにとって△△ってどのようなものですか

●フィードバック
・今まで話しを聞いていて私は〇〇さんが△△ように感じましたが、これを聞いてみてどう感じますか?
・私は〇〇さんが△△を大切にする人なんだと感じました
・私は〇〇さんから△△な思いを感じました

以下が会話のイメージです。

■上司:いい仕事をするためには、ネガティブな思いを持っていたらダメだと思っているという話が出てきたけど、それについてもう少し詳しく教えてもらえる?

▶︎部下:そうですね。なぜそう思っているのかと言われると、今すぐには出てこないですが…。なんでしょう。

■上司:(沈黙が続くかもしれないが、部下の思考を止めないように一旦待ってみよう)

▶︎部下:なんか、自分が全力で取り組めていないから、ちょっと自信のなさとか不安があるのかもしれないなって今思いました。

■上司:(もっと話したいことがありそうだなと感じたため受動的反映で対応しよう)そうなんだね

▶︎部下:はい。自分の提案に自信がないと自信を持って成長できないから、さらにその時間が怖くなるっていうか…。

■上司:うん、うん

▶︎部下:なんかちょっと話が変わるかもしれないんですけど、高校の部活をなんか思い出しました。自信がないと試合に出たいけど怖いと感じていて、その状態で試合に出てもあんまりいい結果が出なかったなって。

■上司:良いパフォーマンスをするためには、自分に自信を持てている必要があるって思っているんだね。

▶︎部下:はい。

■上司:自信を持てていない時って、〇〇さんはどんな感情なの?

▶︎部下:なんだろ。怖い、不安、その場から逃げたくなるような感じですかね。

■上司:そうなんだ。それは何がそうさせるんだろう?

▶︎部下:何が?

■上司:うん。わからないけど、例えば、怒られるのが怖いのか、自分の価値がわからなくなってしまうのか…

▶︎部下:あー、なるほど。そうですね。なんだろう?貢献できないことが辛いのかもしれないです。

■上司:貢献できないと辛く感じるんだ

▶︎部下:そうですね。自分がいる意味ってなんなんだろうって思ってしまうかもしれないです。

■上司:なるほどね。そうなんだね。〇〇さんは、周りの人に感謝してもらうことに喜びを感じるのかなって感じたんだけど、これを聞いてみてどう感じる?

▶︎部下:うん、そう思います。感謝してもらえると嬉しいです。あー、だからもしかしたら、嫌だなって思いながら仕事をしていると感謝してもらえないかもしれない、っていうことに不安を感じて、やりたくなくなるっていうループが起きているのかもしれないですね。

■上司:なるほど、そうなんだね。今自分の中で気づきがあったようだけど、ここまで話してみて今何を感じる?

▶︎部下:…続く

気づきを与えようとすると、答えに導くような形になってしまいがちです。無理やり答えを見つけにいこうとしなくても、自然と答えにたどり着くという心を持って、今相手が話している話に好奇心を向けて向き合うことを大切にしましょう。

7、今の感情や気づきを確認

対話をした後の部下の今の感情や気づきを確認します。自身で変化を実感できるようにするためです。参考として伝え方の例文をお伝えします。

・今まで話してみて、どうでしたか?
・今改めて△△(最初のテーマ)についてどう感じますか?
・今、〇〇さんはどんな感覚ですか?

このように対話した後の状態を確認することで、対話の前と違う認識や感覚などに何かした変化が見えます。今答えに辿りつかなくても、ここで得た変化によってその後の日常生活の中でふと答えが見えることもあります。そのため、答えが出なかったとしても、そのことに落ち込まなくて大丈夫です。
最後は、部下が答えを見つけられることを信じて送りだすことも必要です。

8、チェックアウト

最後はチェックアウトをして終了します。チェックアウトでは、面談の感想や、今感じていることなどを伝えます。参考として伝え方の例文をお伝えします。

●チェックアウトに慣れている場合
それでは最後にチェックアウトして終わりましょう。どちらからでも、準備ができた人からお願いします。

●チェックアウトに慣れていない場合
それでは最後にチェックアウトして終わりましょう。今ある感情や思いなど何でも構いません。順番は特に決めませんので、話したいと思った人からはなしましょう。

チェックアウトが終わったら終了し、片付けをして現場に戻ります。

このような流れで進めることで、雑談や無意味に感じる時間になることなく、コーチング型1on1を進めることができます。初めは例文を参考にしながら実施することから始めてみましょう。

4)まとめ〜アーティエンスではOJT研修でコーチングの学びをサポート〜

本コラムでは、コーチング型の1on1の目的や効果を確認した上で、具体的な進め方をお伝えしました。

コーチング型1on1の目的は、部下の自律的な行動を促すことです。そうすることで部下が主体的に仕事に取り組むようになり、成果が出やすくなります。そして結果として、部下自身の成長、さらには組織全体の成長にもつながります。

コーチング型1on1を行うために最低限持っておきたいコーチングの基本的なスキルは、傾聴、質問、フィードバックのスキルです。これらのスキルがあると、部下の自律を支援できるコーチングを行えます。コーチング型1on1の具体的な進め方は以下の通りです。

1、環境の準備
2、コーチングについて説明
3、「評価をする場ではない」ことを意思表示する
4、チェックイン
5、話したいテーマを確認
6、対話
7、今の感情や気づきを確認
8、チェックアウト

このような流れで進めることで、雑談や無意味に感じる時間になることなく、コーチング型1on1を進めることができます。初めは例文を参考にしながら実施することから始めてみましょう。


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部下の自己実現をサポートできるようになるためにも、コーチング型の1on1を習得していきましょう。

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