【Q&A付】上司が身に付けるべき「傾聴力」とは|部下の主体性を高める指導方法

更新日:

作成日:2023.12.15

上司 傾聴

「上司として、部下をどのように傾聴すれば良いのかわからない」というお悩みをよく伺います。

傾聴とは、相手を尊重し理解しようとして聴くことです。ただなんとなく聴くのではなく、相手がどのような価値観を持っているのか、何が相手を不安にさせているのか、などを考えながら聴くことで、相手は新たな気づきを得られます。

そこで本コラムでは、上司としてできるようになってほしい3つの傾聴の手法とポイントをお伝えします。傾聴することで相手を深く理解し、より良い関係性を構築し、話し手の主体性を促せるようにしましょう。

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    執筆者プロフィール
    迫間 智彦
    X:@tohaza_atc youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル
    大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

    専門性:ファシリテーター管理職組織開発・組織変革

    1)傾聴の3つの手法と上司としての活用方法

    傾聴には大きく3つの手法があります。

    傾聴の3つの手法とは
    ●話し手の発言をただ受け止める、受動的傾聴
    ●話し手の表情や発言を反映する、反映的傾聴
    ●話し手に問いを投げたり、メッセージを伝える、積極的傾聴

    です。

    これらの手法を柔軟に活用することで話し手の話を深く理解し、新たな気づきを得られます。
    順番に説明します。

    話し手の発言をただ受け止める(受動的傾聴)

    1つ目は、話し手の発言を受け入れることに主眼を置いた、受動的傾聴というスタイルです。これは積極的に質問をしたり、意見を述べたりするのではなく、話し手の言葉や感情に注意を向け、ただ静かに聴くことに焦点を当てます。注意深い観察で、相手の表情やジェスチャー、声のトーンなどを注意深く捉え、部下の感情やニュアンスを理解しようとする姿勢が求められます。

    受動的傾聴によって話し手への理解と共感を示し、話し手が自分の意見や感情を自由に表現できるようにすることが目的です。

    受動的傾聴のための具体的な方法を2つお伝えします。

    相手を見て聴く

    当たり前のことですが、話し手を見て話を聞きましょう。話し手以外のところに目線が動くと、聴いてくれていない感じを受けるためです。

    他のことを行っていると、オンライン上でも話し手に伝わります。
    話し手の話を聞きながら自分も話し手と同じ気持ちを体感するために目を瞑ること自体は問題ありませんが、基本的には話し手を見て話しを聞きましょう。

    ただ話し手を見るのではなく、相手の表情や目線の動き、手や体の動き、声のトーンなど細かく観察する意識を持って相手と向き合うことが大切です。

    例えば部下と話していて、Aプロジェクトの話をしたときに表情が曇ったということを感じたら、そこから部下の心情を深掘りしていけます。

    このように相手を見て聴くようにすることで、真剣に向き合ってくれている感じると共に、相手を理解するためのヒントを得られます。

    聴いていることを相手に伝える

    聴いていることを相手に伝えましょう。具体的には声や動作で相槌を打ったり、表情を変えたりするなどです。そうすることで、話し手はちゃんと自分の話を受け取ってくれていると安心できるためです。

    話し手の中には、自分が話している時に相手の顔を見ない人がいます。そのような人は、何も音がなく動きもないと、ちゃんと聴いてくれているのか不安になってしまいます。そのため、音や動きを出して、聴いていることを話し手が意識しなくてもわかるようにしておきます。

    このときにポイントとなるのは、評価と受け取られる言葉は使わないことです。

    例えば「部下と話していて、この間クライアントから「頼りにしてるよ」と声をかけてもらったんです」という話があったとします。そのときに「よかったね」や「すごいじゃん」という言葉を伝えるのはNGです。これらの言葉には、話を聴いている人の価値観が含まれてしまっているためです。
    そうではなく、ただ「そうなんだ」と受け取り、その後「どう感じたの?」などの問いを投げるようにします。上司としては嬉しかったんだろうな、と思っていても、部下は「ありがたいけど、ちょっと怖くなった」など上司が予想していなかった感情が出てくる可能性があるためです。

    聴いていることを相手に伝えながらも評価にはならないような言葉としては「はい」「へー」「うん」「なるほど」「そうなんだ」などがあります。このような相槌を打つことで、ちゃんと話しを聴いてくれているかという不安がなくなり、自分の話しに没頭できて深い対話をできます。

    このように受動的傾聴を行うことで相手はより開かれた雰囲気で話せて対話が深まります。対話が深まると関係性の構築にもポジティブな影響をもたらします。

    話し手の表情や発言を反映する(反映的傾聴)

    2つ目は、話し手の発言を要約するなど、話し手が出していることをそのまま返す、反映的傾聴というスタイルです。話し手にとってポイントとなりそうな表情や動き、言葉を捉えることで、無意識の領域に入っていきます。

    話し手が言ったことを受け入れ、理解したことを示したり、話し手が無意識的に言った言葉や表情を伝えて新たな気づきを与えることが目的です。

    反映的傾聴のための具体的な方法を3つお伝えします。

    表情を反映する

    話し手の表情を反映する方法です。話し手は自分の表情を見られないため、表情を反映することで自分では気が付かなかった部分を知れます

    例えば、眉間にしわがよって苦しそうにしているしていると感じたら、そのことを伝えてみます。伝え方としては「今、〇〇のことを考えているときに眉間にしわがよっていて苦しそうでしたね」などです。このことを伝えたことで、話し手から「そうなんです。苦しいんですよね。」などと話が深まっていくことがあります。

    動きを反映する

    話し手の動きを反映する方法です。話し手はほぼ無意識に手や目線、体を動かしているため、そのような自分が無意識に行っていることを伝えることで、新たな気づきにつながる可能性があるためです。

    例えば、話し手があることについて説明しているときに手で丸を作っている場面があったとします。そのときに、その手で作っている丸の形が、聴く側として気になったら伝えてみましょう。伝え方としては「今、手で丸を作っているように見えましたが(実際に真似する)、〇〇って丸い感じなんですか」などです。そうすると話し手から「あー確かに丸っぽいかもしれません」などの言葉が返ってきて、話が深まっていくことがあります。

    言葉を反映する

    話し手の言葉を反映する方法です。話し手がふと出した言葉の中に大切な要素が含まれている可能性があるためです。聴き手が話し手の話しを聴いている中で、この言葉はポイントそうだなと思ったら、その言葉を繰り返してみます。

    例えば、話し手が「〜なんかどうでもいいやって思ってしまうんですよね」と話している中で、「どうでもいいや」という言葉が気になったとします。そうしたら、「どうでもいいやって感じなんですね」とか「どうでもいいや、という言葉に力が入っていましたね」などの言葉で伝えてみます。そうすると「どうでもいいや、っていう感じですね。なんか呆れている感じです」など新たな気づきにつながる道筋を作れる場合があります。

    このように反映的傾聴を行うことで、話し手は自分で自覚していない自分を知り、新たな気づきにつながります

    話し手に問いを投げたり、メッセージを伝える(積極的傾聴)

    3つ目は、話し手の話しに対して質問をしたり、聴き手としてのメッセージを伝えたりする、積極的傾聴のスタイルです。話し手の話しを広げたり深めたりするときに行います。

    話し手が自分だけでは考えないような部分に入り、新たな気づきを促すことが目的です。積極的傾聴のための具体的な方法を2つお伝えします。

    問いを投げる

    話し手の話しに対して、話しを広げたり深めたりするために問いを投げます。別の視点から見ることで新たな気づきを得ることがあるためです。

    例えば、部下がキャリアアップしたいけどそのための資格の勉強のやる気が出ない、ということに悩んでいるとします。話し手は頭では資格を取ることでいいことしかないんだから、やったほうがいいと思っているけど、後回しにしてしまう、ということを話してくれていました。その場合、例えば「何が資格を取ることを妨げているんでしょうか」「資格を取らないことで得られていることってなんですか」などの問いを投げてみることで、話し手に新たな気づきにつながる可能性があります。

    問いを投げるときに意識したいポイントは3つです。

    1、簡潔にまとめる

    問いの内容は簡潔にしましょう。簡潔な問いの方が話し手は考えやすくなるためです。

    よくありがちなのは「先ほど〇〇って言っていましたが、それって〜〜ってことですか?それとも△△ですか?」というように補足した問いにしてしまうことです。

    相手が理解しやすいように補足しているのだと思いますが、こんなに長いと理解するまでに時間がかかったり、答える準備をしているのに答えられない、という状況を生み出してしまいます。

    そのため「先ほどの〇〇についてもう少し詳しく教えてくれますか?」などシンプルな問いにするようにしましょう。

    2、オープンクエスチョンにする
    クローズドクエスチョン(回答がYes/Noになるもの)よりも、オープンクエスチョン(回答が Yes/Noに収まらず話し手の考え・想い次第で何通りものケースになるもの)を 意識して質問しましょう。
    例えば、「この業務の優先度は高いですか、低いですか」というクローズドクエスチョンではなく、「この業務が達成されると、どんなメリットがあるでしょう」というオープンクエスチョンで問いを投げます。
    そうすることで、話し手が自由に答えを想像し、話し手ならではの答えを知れます。

    3、What(何を)、How(どうやって)を意識する
    Why(なぜ)よりも、What(何を)、How(どうやって)を意識すると無意識の領域に気づきやすくなります。Why(なぜ)だと、話し手に寄り添うのではなく課題解決になりやすくなるためです。
    例えば、期限を守れないという話の中で「なぜ期限を守れないのでしょうか」と「何が期限内に提出することを妨げているのでしょうか」だと、聞こえ方の印象が違うことがわかります。

    これら3つのポイントを意識して問いを投げることで、話し手の考えや感情を深くみていけます。

    I messageを伝える

    話し手の話しを聴いていて率直に思ったことをI messageとして伝える方法です。他者の意見を聞くことで視野を広げられます

    例えば、話しを聴いている中で、話し手はそのつもりはないかもしれないけど、聴き手としてはできない言い訳をずっとしているなと感じたとします。そのときに「〇〇ができない理由をたくさん伝えてくれているように感じましたが、これを聞いてみてどう感じますか?」などと聴き手が感じたことを伝えてみます。そうすることで、「確かに、言い訳ばかりしている気がする…」ということに気づき、次の段階に進めるようになるかもしれません。

    ただし、「ずっと言い訳していませんか?」など決めつけるような言い方をするのはNGです。あくまでも私はそう聴こえた、と伝えるだけで、話し手はその内容を受け取ってもいいし受け取らなくてもいい、というスタンスを持ちます。
    決めつけたような言い方をすることで相手との信頼関係がなくなってしまうと、その後、話しを深めることが難しくなるため、適切な場面で行うようにしましょう。

    このように積極的傾聴を行うことで話しをより深められ、無意識で自分が行っていたことなど新たな気づきにつながります。そして、そこから主体的な行動に繋がりやすくなります。

    傾聴というと、ただ聴くだけのイメージを持たれている方も多いですが、傾聴にはこのような受動的傾聴、反映的傾聴、積極的傾聴という3つの手法があります。上司として傾聴する際は、受動的傾聴は常に意識して行い、反映的傾聴や積極的傾聴は自身の興味が湧いた内容に対して活かすと良い時間になっていきます。

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    【参考】部下は上司に傾聴を求めている

    2022年に株式会社チームスピリットが実施した調査によると、【自分らしく幸せに感じられる状態(ウェルビーイングな状態)で働くために上司に期待する行動・姿勢】の第1位が「傾聴」でした。

    引用:ビジネスパーソンのウェルビーイングに関する実態調査

    傾聴はただ相手の話を真剣に聴くだけですが、日常の中で自分の話をそんなに真剣に聴いてもらう機会は少ないです。そのため、傾聴してくれること自体に嬉しさを感じる人が多いです。
    また、自分に真剣に向き合って話を聴いてくれることから相手との信頼関係を構築しやすくなります。

    上司としても、傾聴することで部下のことを深く理解できるため、部下をサポートしやすくなります。傾聴は上司にとっても部下にとっても意味のある時間となります。

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    2)傾聴する際に上司に意識してほしいポイント

    傾聴する際に意識したいポイントは以下の4つです。

    ●評価しない
    ●声のトーンやスピードを合わせる
    ●聴き手が話しすぎない
    ●話しやすい環境を整える

    順番に説明します。

    評価しない

    傾聴では評価しないように意識しましょう。評価されているように感じると、話し手は自由に発言しづらくなり、オープンな対話が妨げられてしまうためです。

    特に上司と部下という関係で傾聴する時は、ただの話し手と聴き手になれるわけはなく、どこかに評価する人・評価される人という関係性が出てきやすいです。上司と部下の関係性で傾聴するのは、コーチなどの第三者と行うより難しいと言われています。

    そのため、上司と部下という関係で1on1を行い傾聴する際は、評価しないことを約束してから始めることをおすすめします。
    例えば、「この1on1の時間で聴くことは評価に全く影響しないことを約束します」「この場で聞いた話はあなたの希望がなければ他の人には一切話すことはありません」などを上司が宣言します。
    宣言を聞いて、宣言を守ってくれるだろうなと部下が思えたら、本音が出やすく意味のある時間にしやすいです。

    また、傾聴している際にも評価につながるような伝え方を避ける用意十分に注意する必要もあります。例えば、話し手が自分の考えや感情を打ち明けたときに、「それは違うと思う」と評価的な言葉を使うと、話し手は自分を守るためにそれ以降は本音で話すことはせずに、意味のない時間を過ごすことになることになるでしょう。

    傾聴の目的は話し手の意見や感情を理解し、共感することにあります。何気ない言葉も相手からすると評価されているように受け取られてしまう場合もあるため、評価に繋がらない言い回しや言葉選びに注意し、相手との関係性を築くことで、その後の育成に繋げられるようにしましょう

    声のトーンやスピードを合わせる

    傾聴では声のトーンやスピードを相手に合わせることを意識しましょう。聴き手が自分のペースで話せて、安心感を感じやすくなるためです。

    特に上司の方の中には、頭の回転が早いために話すスピードが早かったり、相手を説得するための少し圧の強い話し方になっている方がいます。
    このことに自分で気がつくのは難しいため、相手の声のトーンやスピードを真似する意識を持つことをおすすめします。

    また、話し手は話の内容によって声のトーンやスピードが変わります。それも同じく真似してみましょう。例えば、相手が嬉しい話しをしていてテンションが上がっている場合は、高めの声で早口になりやすいため、同じように高めなトーンで元気に話すことで、話し手は共感してくれている感覚を覚え話しやすくなります。落ち込んでいる時や不安についての内容の際は暗くてゆっくりなトーンになりやすいです。

    声のトーンやスピードを合わせることで、話し手は共感してくれている感覚を得られ、話し手が心地よく対話できます。そして対話の質が上がることで、関係性が深まります。

    聴き手が話しすぎない

    傾聴では聴き手が話しすぎないことが重要です。話し手の感情や抱えているものを出してもらうことが大切なためです。また、あまりにも聴き手が話しすぎていると、話し手が話したいのに話せないという状況になり、話し手に不満が溜まってしまいます。

    会話量の目安としては、話し手:聴き手=7:3程度です。問いやメッセージは短く簡潔に伝えることを意識することで、この割合に近づきやすくなります。
    なお、話し手である部下と話が重なってしまった場合は、必ず部下に譲りましょう。部下が譲ってくれたとしても、「今日はあなたのための時間だから、あなた優先で大丈夫ですよ」などの声をかけて遠慮なく話してもらえるように工夫しましょう。

    傾聴は、話し手の話しを聞くことが基本です。話し手の話したいという思いを邪魔しないように、話しすぎないように意識しましょう。そうすることで、話し手から「自分の話しを真剣に聞いてもらえて嬉しい」というようなポジティブな感想に繋がり、関係性の向上に影響して行きます。

    話しやすい環境を整える

    話しやすい環境を整えることも重要なポイントです。本音を話してくれることで話を深めていけるためです。
    傾聴するときに意識したいことは以下の通りです。

    周囲が気にならない場所で行う

    周りに人がいると、他の人に聞かれたくないからと話が止まってしまったり、話しに集中できなくなるためです。ただ、密室で他の音がしない静かな場所だと緊張感が高まってしまいやすくなります。そのため、気にならないくらいの雑音や人の動きを感じられる個室がおすすめです。

    オンラインで行う際もカフェなど他の人が近くにいる場所より、自分の部屋かカラオケルームなど一人で自分の心と向き合える場所で行うようにしましょう。

    対面ではなくL字で座る

    座る位置は対面ではなく、L字型で座ることをおすすめします。対面だと心理的な圧迫を感じやすくなりますが、L字のだと自然と視線がずらせ、お互いにリラックスして面談に臨めます。

    オンラインで行う場合は、画面にお互いの顔がしっかりと映るようにカメラの位置を設定しましょう。

    傾聴するときはこれら4つのポイントを意識し、上司として部下と質の良い対話の時間をつくれるようにしましょう。

    3)上司が傾聴する際によくあるQ&A

    傾聴する際に上司の方からよく伺う質問について回答していきます。

    Q1:部下が話してくれなかった時はどう対応したらいい?

    あまりにも警戒心が強いと感じる場合は、一度他の人に依頼した方が良いかもしれません。関係性が築けていない可能性が高く、部下が警戒心を感じている可能性があるためです。

    ただ、信頼関係を作るための時間として、話せない状況をテーマにするのも一つの方法です。例えば、「今どんな感情?」「今発言を押さえ込もうとしているものがありそうだと感じるんだけど、それを聞いてみてどう思う?」というような問いを出してみるなどです。

    もしかしたら部下の一番の悩みは上司との関係性かもしれないため、まずは関係性を築くというところから始めていくことも良いかと思います。

    Q2:沈黙が続くと焦ってしまう。気を付けるべきことは?

    沈黙が起きるのには2つのパターンが考えられるため、それぞれのパターンごとに説明します。

    1つ目は、深く考えているために沈黙が生まれるパターンです。
    この場合の沈黙に焦ってしまう場合は、相手の表情を見ることを意識してみましょう。相手の表情を見ていると、ただ沈黙しているだけでなく、相手は今考えていそうだな、とか適切な言葉を探そうとしているな、など声には出していないだけで頭では色々と考えていることが伝わるためです。相手が考えていそうだということがわかると、考えがまとまるまで少し待ってみようと、落ち着いて待てるようになります。

    何かを考えていることによる沈黙は必要な時間です。居心地が悪く感じるかもしれませんが、相手が考えを整理したり、自分の感情や意見を表現するために時間が必要な場合があるため、その作業をしていると感じた時は待ちましょう。待つことができるのも一つのスキルです。

    2つ目は、話し手が聴き手の問いを待っているために沈黙が生まれるパターンです。
    上司として次の問いが出てこなくて沈黙の状態になってしまう場合もあるでしょう。その場合は頭で考えすぎてしまっている可能性があります。もちろん部下の話を整理しながら、解決できるようにすることを意識することは大切です。しかしそれを頭だけで行うと思考が働きすぎて心に寄り添えなくなります。
    もう少し自分が好奇心を感じたところや、自分の中で矛盾に感じていて気になるという部分について素直になると、自然と問いが湧いてくるようになります。

    次に何を話せばいいのかがわからなくなることもありますが実体験として、上司が問いを考えていることがわかる沈黙は、意外に部下から「ちゃんと自分と向き合ってくれて嬉しい」というような感想を後からもらうことも多いです。
    そのため、意味のある沈黙は生まれてもしょうがないと思って受け入れられると良いでしょう。

    Q3:部下にアドバイスをしたくなった場合はどうしたらいい?

    部下にアドバイスをしたくなった場合の方法として2つあります。

    1つ目は部下にアドバイスをしたくなったら、アドバイスを伝えてもいいか許可をもらうことです。伝え方としては「今の話を聴いていて自分が今思ったことがあるんだけど伝えても良い?」などです。

    2つ目はI messageとして伝えるかの方法を取ることです。具体的な伝え方は「私は〇〇のように感じたけど、これを聴いてみてどう思う?」などです。

    どちらも上司として見えたり感じたりしたことを素直に伝えているだけなので、その内容を受け取っても受け取らなくても部下の自由である、ということは頭に置いておきましょう。

    Q4:部下からアドバイス(答え)を求められた場合どうしたらいい?

    なぜ上司の答えを聞こうとしているのかをテーマに話してみると何らかの気づきがありそうだと感じます。
    例えば「今、私のアドバイスを求めてくれたと思うんだけど、何がそうさせたんだろう?」「私のアドバイスを聴いてどうなりたいんだろうね」などです。
    この問いをすることで、部下が持っている価値観や不安が見えてくる可能性が高そうです。

    他の方法としては、その後の時間の使い方を傾聴ではなくアドバイスの時間として関わり方を変えるという方法です。もし今の部下にアドバイスが必要なのであれば、無理やり傾聴の時間にするのではなく、別の関わり方をしてあげる方が意味のある時間になる可能性が高いです。

    4)上司が傾聴することで新入社員との関係性が築けた事例

    アーティエンスの育成担当者・OJTトレーナー研修を受講したトレーナーの研修前後の変化感を、事例としてご紹介します。

    【研修前】新入社員と週2回、1on1ミーティングを実施しているが、新入社員との距離感が難しいと悩んでいるご様子。

    【研修直後】
    研修で部下の話を傾聴する講師のデモプレイを見て、傾聴のスキルについて学ぶ。
    【参考】育成担当者・OJTトレーナー研修のテキストの一部抜粋

    研修後、「1on1ミーティングで話を引き出そうとしていたつもりだ。でも、客観的に振り返ると、ただ単に詰める姿勢になっていたと気づいた」とのコメントあり。

    【研修後~数か月後】
    後日、人事担当者からトレーナーの様子を伺ったところ、1on1ミーティングでは、「新入社員の話を聞き切る」ことを意識して取り組んでいるとのこと。その結果、新入社員との距離感が以前より近づき、相談しやすくなったとの声があがっていたとのこと。

    もちろん、部下への傾聴を取り入れたからと言って、部下が劇的に成長する、というわけではありません。ただ、傾聴によって部下との関係性や主体的行動が育まれ、より良い育成の循環が回っていきます
    このように上司が傾聴スキルを身につけた上で傾聴することで、部下との良い関係性を育み、部下の主体性を引き出すことにつながります。

    5)まとめ〜アーティエンスではOJT研修で傾聴の学びをサポート〜

    本コラムでは、上司に身につけてほしい3つの傾聴の手法とポイントをお伝えしました。


    傾聴の3つの手法とは
    ●話し手の発言をただ受け止める、受動的傾聴
    ●話し手の表情や発言を反映する、反映的傾聴
    ●話し手に問いを投げたり、メッセージを伝える、積極的傾聴
    です。

    これらの手法を柔軟に活用することで、話し手の話を深く理解し、新たな気づきを得られます。

    傾聴する際に意識したいポイントは以下の4つです。
    ●評価をしない
    ●声のトーンやスピードを合わせる
    ●聴き手が話しすぎない
    ●話しやすい環境を整える

    傾聴するときはこれら4つのポイントを意識し、上司として部下と質の良い対話の時間をつくれるようにしましょう。

    なお、アーティエンスの育成担当者・OJTトレーナー研修では、傾聴を含めた部下育成のために必要なスキルの学びをサポートしています。お気軽にご相談ください。

    傾聴することで上司として部下を深く理解し、より良い関係性の構築と話し手の主体性を促せるようにしましょう。

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