新入社員研修から確認できる!新入社員の評価と、新入社員研修の評価

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作成日:2023.2.2

評価

新入社員研修の中で、新入社員の何をみて評価したらいいのか分からない
新入社員研修が上手くいったか否かをどのような観点で評価すればいいか分からない

そのようなお悩みを抱えて、この記事に辿り着いた方も多いのではないでしょうか。新入社員研修の中で新入社員を評価するポイントを明確にしておかないと、誤った判断をしてしまうことがあります。また、新入社員研修も新入社員にとって意味のある時間になっていたのかをどのように確認したら良いのか分からず、評価が難しいというお話を伺います。

しかし、評価をすることで新入社員の得意不得意や、特徴を新入社員研修の中で見出すことができれば、新入社員に適した配属を考えられたり、活躍を促すための施策を行うことができます。そして、それは、組織の成長にもポジティブな影響を与えることになります。また、新入社員研修も評価をすることで課題を見つけることができれば、より良い研修にするためにアップデートし続けることができます。

そこで今回は、新入社員研修を通した2つの評価方法として、新入社員に対する評価と、新入社員研修に対する評価についてお伝えします。本コラムを最後まで読むと、新入社員研修を通した評価の仕方を理解し、「新入社員の配属先の決定や成長支援」と「次回の新入社員研修のアップデート」が可能になります。

監修者プロフィール

山下 絢加

2013年にアーティエンスに入社。組織開発・人材育成のコンサルタントとして、大手企業から中小企業まで、幅広く研修プログラムの企画・開発・運営を実施。子育てを機に、現在は主にマーケティングプランニングを担当。


1)新入社員研修での評価の目的は2つ

新入社員研修での評価の目的は2つあります。

1つは、新入社員に対する評価をして、理解度や得意不得意を探すこと
2つ目は、新入社員研修に対する評価をして、次回以降の改善に活かすこと

です。

新入社員に対する評価をして、理解度や得意不得意を探すことは、新入社員に適した配属や環境を用意する上で必要になります。

例えば、新しいアイディアを考えるのが得意な新入社員が、マニュアル通りに進めることを求められる事務職に配属されると、せっかくの得意を活かすことが難しくなります。新入社員にとっても組織にとってもネガティブな影響をもたらします。実際に、新入社員で新しいアイディアを考えることが好きで企画を得意としていた方が、事務を行う部署に異動になって離脱してしまったということもありました。

初めは、企画を行う部署に配属されてモチベーション高く前に進もうと努力していましたが、9月頃に事務仕事が多い部署に異動になり、仕事の意義が分からなくなってしまって最終的に離脱してしまった、ということがありました。
※ 入社時・配属時にも、企画業務だという約束もあったようです。

新入社員研修に対する評価をして、次回以降の改善に活かすことは、新入社員研修をアップデートし、より新入社員へ学びを促すために必要になります。

例えば、新入社員研修の中でロジカルシンキング研修を行ったものの、現場でどう活用すればいいかのイメージがわかず、新入社員への学びが弱い内容があったとします。その際に、そのことを振り返って評価せず、そのままにしてしまうと、翌年も同じことを繰り返す羽目になってしまいます。それでは一向に、新入社員がロジカルシンキングを現場で活用することができないため、研修を振り返って評価し、次に繋げることが必要です。

このように、新入社員研修の評価は2つの目的のために行う必要があるのです。

2)【評価項目別】新入社員研修での評価方法

評価項目別に新入社員研修の評価方法をお伝えします。

新入社員に対する評価項目・評価方法

今回は、新入社員に対する評価項目・評価方法として、経済産業省が提唱している社会人基礎力をベースに作成した内容をご紹介します。

新入社員研修で求める姿 評価数値 具体的にどのような言動をとっていたか
考え抜く力 問題発見力 現状を分析し目的や課題を明らかにする力
計画力 課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
創造力 新しい価値を生み出す力
チームで働く力 発信力 自分の意見をわかりやすく伝える力
傾聴力 相手の意見を丁寧に聴く力
柔軟性 意見の違いや立場の違いを理解する力
情報把握力 自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
規律性 社会のルールや人との約束を守る力
ストレスコントロール力 ストレスの発生源に対応する力
前に踏み出す力 主体性 物事に進んで取り組む力
働きかけ力 他人に働きかけ巻き込む力
実行力 目的を設定し確実に行動する力
社会人基礎力とは
2006年に経済産業省が提唱している、社会人にとって必要な力をまとめたもので、「考え抜く力」、「チームで働く力」、「前に踏み出す力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されています。

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これらの項目を評価するためには、グループワークを多く行う研修がおすすめです。講義型や個人ワークのみでは言動が少ないため、全ての項目について評価できるほどの素材が集まらないためです。

各項目ごとの力を新入社員研修で求める基準に合わせると、評価方法は以下のような内容が評価しやすいです。

項目 評価方法
考え抜く力 問題発見力 現状を分析し目的や課題を明らかにする力 課題を明確に把握できているか
計画力 課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力 アウトプットまでの流れを考えられているか
創造力 新しい価値を生み出す力 アイディアや意見を発言しているか
チームで働く力 発信力 自分の意見をわかりやすく伝える力 端的で理解しやすい発言をしているか
傾聴力 相手の意見を丁寧に聴く力 相手が話しているときに遮って自分の話をしていないか
柔軟性 意見の違いや立場の違いを理解する力 自分と意見が異なるときに相手の意見を理解しようとしているか
情報把握力 自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力 ワークの条件や前提情報を理解しているか
規律性 社会のルールや人との約束を守る力 遅刻や研修を受ける態度が社会人としてふさわしいか
ストレスコントロール力 ストレスの発生源に対応する力 研修後半の疲れている状態でも、イライラしたり離脱したりせず参加しているか
前に踏み出す力 主体性 物事に進んで取り組む力 研修への参加意欲が高く、真剣に話を聞いたりワークに取り組んでいるか
働きかけ力 他人に働きかけ巻き込む力 講師に報連相するなどして周りを巻き込めているか
実行力 目的を設定し確実に行動する力 ワークのゴールに向けて常に行動しているか

評価数値は、5段階の数値で行います。数値で表すことで、新入社員の特徴を判断しやすくなるためです。ただ、評価した人たちが、なぜその評価なのかというキャリブレーション(対話による調整)を実施することが必要です。そのときにポイントとなるのが、「具体的にどのような言動をとっていたか」を記載することです。

評価の点数は、あらかじめ評価の基準は定めておくものの、見る人によって判断基準が異なることもあります。その際に、具体的にどのような言動があったのかをメモしてあると、その内容をみて、評価の調整を行うことが出来るためです。

評価を数値だけで行うと、その奥の性質が見えなくなってしまいます。新入社員の評価を行う際は、「具体的にどのような言動をとっていたか」を記載した上で、社会人に必要な社会人基礎力をベースに評価を行うことをお勧めします。

新入社員研修に対する評価項目・評価方法

新入社員研修に対する評価項目・評価方法は下記の内容を確認しましょう。

◎△× 具体的に
何が起きたのか
次回に活かすこと
事前準備 研修前に新入社員の研修意欲を高める施策を行ったか
研修当日のレイアウトや備品に不足はなかったか
研修内容 新入社員に対して研修の目的を果たせていたか
(現場での行動変容で確認)
新入社員がスムーズに学べていたか
研修での学びをどう現場で活用するかを新入社員がイメージできているか
(アンケートや最後の発言で確認)
新入社員が主体的に研修に参加できていたか
グループワークの人数は適切だったか
研修テキストはわかりやすかったか
事務的なオペレーションミスはなかったか
講師 講師の説明や指示の情報量は、適切であったか
場をホールドできていたか
新入社員のインサイドアウトを促せていたか
事後
フォロー
研修後のフォローを行い、新入社員の学びをより深められたか
全体 研修のよかった点

新入社員研修の評価は、研修を細分化して確認していくと、良い点と改善点がわかりやすくなります。しかし、評価方法として、良かった・悪かったという評価だけをするのでは意味がありません。今回の研修を踏まえてより良くするためにどうすればいいかを考えることが大切です。

そのため、具体的にどのようなことが起きたのか、その原因は何かを考えた上で、次にどう活かしていくかを記載する欄を設けましょう。人は、空白をみると埋めたくなる性質があるため、記載する場所をあらかじめ作成しておくことをお勧めします。

例えば、新入社員フォローアップ研修の事前準備として、「研修前に新入社員の研修意欲を高める施策を行ったか」について評価するとします。研修1週間前と1日前に、今回の研修を開催することになった経緯や、組織からの期待を伝える内容を新入社員へビジネスチャットを通して送信していました。

しかし、その内容に対して何かしらのリアクションがあったのは1/3しかなく、また研修当日も何の研修かも理解していない人がいたとします。まず、このことを「具体的に何が起きたのか」の欄に記載します。そして、その事実をみて◎△×の評価をします。今回の場合は△か×になるでしょう。

次に、その事実を元に、次回どうするかを検討します。例えば、内容を読んでくれる人が少ないので、「研修前の連絡の内容を動画で作ったり、文章の書き方を変える」や、「事前ワークを用意して、受講生の状況を観るためのアンケートを取る」などがあるかもしれません。このように、次回どうするかについて考えた内容を「次回に活かすこと」に記載します。

次回に活かすことをやってみて、うまくいかないこともあるかもしれません。ただ、何がうまくいかなかったかの事例を増やして成功しやすくしている、という点で、前には進んでいます。繰り返し評価をして、繰り返すことでより良くアップデートしていくことができますので、ぜひ毎回の研修で行っていただきたいです。

研修内容については、客観的に判断しづらいため、研修後にアンケートを行うとよいです。当社では、下記のような内容について、研修後に新入社員に回答してもらい、研修効果(受講生の認知変容・行動変容)について評価出来るようにしています。アンケートのコメントから、研修効果を観ることで、本当に研修の目的を達成できているのか、ラーニングポイントに落とせているのかを確認することが可能です。

※ アンケートという表現ではなく、ブリッジシートという表現にしているのは、現場につなげるという意味付けをしています。ブリッジシートの方が、受講者である新入社員の内省(リフレクション)が深まるためです。

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このようなフォーマットを用意して、新入社員研修を振り返り、評価することで、研修を行うにつれて研修をより良くすることができます。新入社員が新入社員研修で現場で活用できるスキルを身につけるためにも、新入社員研修を評価してアップデートし続けることが大切です。

新入社員研修を通して新入社員、新入社員研修の評価を上記の項目で行うことで、新入社員の理解度や得意不得意を探し、次回以降により良い研修にしていきましょう。

【参考】研修の参加意欲(レディネス)の高め方に関して
「研修の参加意欲を高める努力」をする必要はありますが、研修の案内文への反応や、事前ワークの提出状況に関して、必要以上に神経質になる必要はありません。研修意欲が高まる工夫をし、アップデートは行いますが、無理やり反応を求めたりすると、研修意欲は下がります。上がったように見えていても、実態はやらされ感で下がってしまうことがあるのです。

参加意欲(レディネス)を高めるために、研修の案内文への反応や、事前ワークの提出状況で意識して欲しい点は、反応や提出率が上がる導線を作り、新入社員へ働きかけることです。

例えば、「研修の案内文に対して反応がないと評価を下げるので、反応するようにしてください」というように無理やり行動を促すのではなく、新入社員の当事者意識・主体性を促す働きかけをします。

「研修の案内文をみたらスタンプで知らせてくれると、読んでくれたことがわかって人事として嬉しいです。」など、強制ではなく、当事者意識・主体性を促しつつ、新入社員に委ねるようにするなどです。

このように、研修の参加意欲(レディネス)を高める働きかけは必要ですが、必要以上に神経質になる必要はありません。

【参考】研修後のアンケートの注意点
研修後のアンケートで、新入社員が新入社員研修に対する評価を点数などスコアで記載する項目は避けたほうがいいです。

研修に没頭し、認知変容が生まれ、行動変容が生まれ始めているときに、「評価」するという文脈になると、客観視する状態になります。「研修の外に出る」という状況が生まれます。そうなると、せっかく起きた研修効果(認知変容・行動変容)への影響が弱まってしまいます。

例えば、新入社員が報連相のワークが思うようにできず、講師の厳しいフィードバックから、大事さを学んだという場面があったとします。その際に「研修満足度は、何点でしたか?」という問いがあると、「学んだこともあったけど、研修のはじめにトラブルがあってバタバタしていたし、テキストももう少しわかりやすくできると思うから7点くらいかな」などと学びに意識が行くのではなく、評価に意識が向きやすくなります。

学術的にも、受講生による研修に対する評価と研修効果(認知変容・行動変容への影響)には、関係性はないという結果が出ています。研修での学びを現場で活かしてもらいやすくするためにも、新入社員研修に対する評価の内容は含めないことをお勧めします。

3)評価を活かす方法

新入社員研修の評価を行うことで、次の2つに活かすことができます。

・新入社員に対する評価 : 成長度合いに合わせたフォローや配属、環境の設定
・新入社員研修に対する評価 : 次年度の研修内容のアップデート、研修内容の調整

具体的にお伝えします。

新入社員に対する評価を活かす方法

新入社員に対する評価は主に3つの場面で活かすことができます。

・新入社員の特性に合わせた配属先のフォロー
・育成環境の設定
・OJTトレーナーや上司の選出

「2)【評価項目別】新入社員研修での評価方法」でお伝えした評価項目と評価方法で評価を行うと、評価の中で新入社員の特徴が見えてくるためです。

例えば、問題解決力は高いが、柔軟性はなくチームで協力し合うことが苦手だという新入社員がいたとしましょう。そのことが分かっていると、事前に配属先のチームに伝えて対策を考えてもらうことができますし、配属側も心の準備をすることもできます。

また育成環境も、新入社員が自身の能力を発揮しつつ、チームで協力することの大切さを理解してもらえるようにどうしたらいいかを考えて設定することができます。この新入社員の場合は、新入社員へ問題解決力が必要な仕事を割り振れて、且つ意見を汲み取ることのできるOJTトレーナーや上司だと関係性がうまくいきそうだなということもわかると思います。

このように、新入社員研修を通して新入社員を評価することで、このような3つの場面で活かすことができます。

新入社員研修に対する評価を活かす方法

新入社員研修に対する評価は主に2つの場面で活かすことができます。

・次年度の研修内容のアップデート
・研修内容の調整

「2)【評価項目別】新入社員研修での評価方法」でお伝えした評価項目と評価方法で評価を行うと、評価の中で新入社員研修の良かった点と改善点が見えてくるためです。

例えば、「研修での学びをどう現場で活用するかを新入社員がイメージできているか」に対して△の評価だったとします。この場合、そのような場面で研修で学んだスキルを活用できるのかの例を記載した方がいいかもしれないとか、スキルを理解するだけのワークではなく、実際の仕事で起きそうな場面を想定したシミュレーションワークを行った方がいいのではないか、など、次回の新入社員研修がより良くなるためのアイディアを考えることができます。

新入社員の特徴は毎年変わるため、このアップデートを行うと、自然と新入社員の特性にあった研修内容にも近づいていくでしょう。新入社員研修を通して新入社員研修を評価することで、このような2つの場面で活かすことができます。

このように新入社員研修を通して新入社員、新入社員研修について評価を行うことで、より良い育成にしていくことができるのです。

また「【24年卒】新入社員研修の内容例&効果を決める5つのポイントを解説」「中小企業のための若手社員研修│離職を防ぎ、成果を上げる若手を育てるためのヒント」の記事では、2024年に入社する新入社員に対して、どのような研修を実施するべきであるかを解説しています。
具体的な研修内容の事例や効果を高めるためのポイントもご紹介しておりますので、研修を成功させるためにもぜひ参考にしてください。

4)まとめ

今回は、新入社員研修を通した2つの評価方法として、新入社員に対する評価と、新入社員研修に対する評価についてお伝えしました。

新入社員に対する評価をして理解度や、得意不得意を探すことは、新入社員に適した配属や環境を用意する上で必要になります。また、新入社員研修に対する評価をして、次回以降の改善に活かすことは、新入社員研修をアップデートし、より新入社員へ学びを促すために必要になります。

新入社員の評価を行う際は、「具体的にどのような言動をとっていたか」を確認した上で、社会人に必要な社会人基礎力をベースに評価を行うことをお勧めします。

新入社員研修の評価を行う際は、研修を細分化して確認し、今回の研修を踏まえてより良くするためにどうすればいいかを考えいただけたらと思います。

新入社員研修を通した評価の仕方を理解し、新入社員の成長を強められるようにできることを願っています。