研修・セミナーレポート

2025年7月15日 関係性構築力研修ー公開講座研修レポート

本内容は、2025年7月15日に開催した「関係性構築力研修」の公開講座研修レポートです。
受講内容や、受講前と後の変化をまとめています。

1)関係性構築力研修 概要

関係性構築力研修の目的

自己理解と他者理解を通じた、円滑なコミュニケーション方法の習得を目的としています。

現在の職場の関係性を振り返りながら、より良好な関係性を築いていくための考え方とスキルを学んでいきます。
その際、ただ単にコミュニケーションのテクニックを覚えるのではなく、関係構築の根幹であり、最も影響を与えるであろう、”自身のあり方”から見つめ直していきます

関係性構築力研修での学びのポイント

良好な関係構築に向けて自己理解を深める

自身が大切にしている価値観などを知り、自己理解を深めます。その上で、自身の価値観は、時にポジティブ、時にネガティブに周囲へ影響を及ぼす可能性があると学びます。

他者への関心を高め、判断保留を身に付ける

一つの出来事であっても、自身と他者とでは認知が異なる場合があることを知ります。自分の枠組みのみで決めつけるのではなく、「判断保留すること」の重要性を理解します。

相手の立場を尊重しつつも、「聞く」「伝える」スキルを習得する

相手の立場や意見を尊重しつつ、自身の主張を正確に伝えるアサーティブコミュニケーションの手法を習得します。

関係性構築力研修 当日のアジェンダ

1. Short Work:関心の質を体験しよう
2. 自身のあり方を考える
3. 他者への関心を高めるには
4. 判断保留を体感する
5. 関心の質を高めるコミュニケーションワーク
6. OST : 上司・トレーナーと素晴らしい関係性を創るために

2)受講者の研修の始めと終わりでの変化

イントロダクション : 研修開始時のコメント

研修開始時、受講生からは下記のようなコメントがあがっていました。

・現状は70点くらい。前よりは仕事のペースがわかってきた

・今の状態は100点。やるべきことに取り組めていると思う

・研修を無事に終え、配属されてからの2日間も問題なく過ごせたから、現状は90点くらい

振り返り : 研修終了時のコメントとレポート

研修終了時の受講生の発言や終了後のアンケートでは、下記コメントがありました。

関わり方次第で、関係性は変えられるんだと実感した

・エルダーには自然にコミュニケーションが取れていたけど、他の先輩には意識できていなかったかもしれない。今後は相手に関わらず、自分から関係を築いていきたい

・上司の評価と自分の自己評価が違う可能性があることを知った。まずは一度受け止めることを意識したい

・1年目ということもあり、コミュニケーションにおいても先輩に甘えているところがあったが、自分も関係性を良くする意識を持って関わっていこうと思った

「関係性は与えられるものではなく、自ら築いていくもの」という意識が芽生えていたことがうかがえます。

3)研修での受講生の動き

1. Short Work:関心の質を体験しよう

関係性を築くうえで欠かせないのが「気持ちのよいコミュニケーション」です。その違いを体験的に理解するために、以下のようなワークを行いました。

参加者は2人1組になり、以下の2パターンで交互に話を聞く体験を行います(各1,2分程度)。

・マイナスのストローク:話を聞く側が、目を合わせず、相槌も打たずに無反応で聞く。
・プラスのストローク:話し手の目を見て、頷きや相槌を打ちながら、興味を持って聞く。

この2つの「聞かれ方の違い」を体感することで、コミュニケーションの質がどれだけ相手に影響するかを実感してもらいます。

この体験をした後の感想では、以下のようなコメントが出ていました。

【参加者コメントの一部】

・1回目は、聞いてくれているのか分からず一方的に感じた。2回目は、興味を持って話を深掘りしてくれて話していて楽しかった。

・1回目は、何をどう話せばいいか迷った。2回目は、質問もしてくれて、ちゃんと会話ができたなという感じがした。

この体験を通して、新入社員たちは、「相手の目を見て、興味を持って話を聞くこと」が、気持ちのよい会話を生み出し、人間関係を築くうえでの第一歩であることに気づきました

2. 自身のあり方を考える

周囲と良好な関係性を築いていくためには、自分自身が「どんな価値観を大切にしているのか」を理解することが重要です。

今回のワークでは、自分の価値観が周囲にポジティブな影響を与えた経験と、逆にネガティブな影響を与えてしまった経験をフラットに振り返ることで、自己理解を深めました

ワーク後は、グループでお互いの気づきをシェアし合いました。その中で多くの参加者が、グループ間での価値観の違いを認識していました。

講師からは「自分にとっては大切な価値観でも、他の人にとっては優先順位が低かったり、時にはネガティブに受け取られることもある」ということをお伝えしています。

社会人として働くうえでは、自分と価値観が異なる人と接する場面も多くなります。どちらかが自分が大切にしている価値観を諦めるのではなく、お互いの価値観を尊重し、バランスをとりながら関係を築いていく姿勢が求められることを理解していました。

3. 他者への関心を高めるには

同じ出来事であっても、自分と相手とでは捉え方が異なり、見えている世界も違うことがあります。そのことを伝えるために、「氷山モデル」を用いて説明を行いました。

その後のワークでは、新入社員自身がこれまでの業務での一場面を丁寧に振り返り、「そのとき自分はどう捉えていたのか」「上司やトレーナーはどのように受け取っていたのか」という視点で、出来事を多面的に見つめ直しました

※研修テキストの一部

このワークを終えての気づきをシェアしてもらいました。下記はその中のコメントの一部です。

【参加者コメントの一部】

・先輩はいつもたくさん褒めてくれる。最初は「なんでこんなに褒めてくれるんだろう?」と思っていたけれど、今回改めて振り返ってみて、「自分に自信を持ってほしい」という想いがあるのかもしれないと感じた。今回のワークで、先輩は自分のことを考えて伝えてくれているとより実感した

・これまでは、忙しそうな上司にアドバイスをもらうたびに「申し訳ないな」と思っていた。でも、上司は味方だからこそ、時間を割いてアドバイスをくれているのかもしれないと思った

・ワークを通して、これまで上司が言っていたことに対して、改めて「確かにその通りだな」と納得することができた

一つの事柄を深く掘り下げて考えることで、普段の業務の中では見過ごしていた気づきを得ている方が多く見られました
その中で、上司やトレーナーとの関係性を築くうえでのヒントを見出している様子も伺えました。

4. 判断保留を体感する

周囲と良好な関係性を築いていくために、「判断保留」という考え方をワークを通じて学びました

判断保留とは、「良い・悪い」「好き・嫌い」などの評価を一旦脇に置き、目の前の出来事をそのまま受け止めることを指します。これができると、相手への興味・関心の質や傾聴の質が高まり、コミュニケーションがスムーズになります。

判断保留を実践するためのヒントとして、「その受け取り方は“事実”か“解釈”か」を区別してみることをお伝えしました。

たとえば、仕事でミスをした際に上司から「これからは、ちゃんと報告しながら仕事を進めてね」と言われたとします。

判断保留ができていないと、つい次のように解釈してしまうかもしれません。

「自分は仕事ができないダメな人間だ」
「上司に見放されたかもしれない」

しかし、これらはすべて“解釈”であって、“事実”ではありません。

実際には、上司は「○○さんならきっとできると思っている」と期待を込めて伝えていた可能性もあります。

判断保留ができていると、次のように捉えることができます。

「上司はミスを減らすために、報告の大切さを伝えてくれている」
「これは、自分の成長につながるアドバイスかもしれない」

このように、判断保留ができるようになると、自分の思い込みや感情に振り回されることが減り、冷静に相手の意図や状況を見ることができるようになります。結果として、仕事もしやすくなり、信頼関係の構築にもつながります。

5. 関心の質を高めるコミュニケーションワーク

関係性の質を高めるには、誰かが我慢するのではなく、誰もがOKと言えるコミュニケーション(アサーティブコミュニケーション)が必要です。そのようなコミュニケーションの必要性を理解してもらうために、上司と部下がお互いの不満を伝える状況を設定し、受講生に上司と部下になりきって話をしてもらうワークを行いました。

ワーク後には以下のようなコメントが出ていました。

・相手の意見をすぐに否定してしまうと、そこで会話が終わってしまい、問題の解決にはつながらない。一旦は相手の意見を受け止めて聞くことの大切さを感じた

・上司と部下の間で認識にズレが生じる場面をワークで体験し、「現場でもこういうことは起きそうだな」とリアルに感じた

・自分も相手も納得できる解決策を考えるのは、想像以上に難しかった。だからこそ、丁寧なコミュニケーションが必要だと思った

その後、I’m OK、You’re OKのために必要なコミュニケーションプロセス、ストローク方法、考え方などをお伝えしました。

6. OST : 上司・トレーナーと素晴らしい関係性を創るために

これまでのワークを通して得た気づきをもとに、最後はOST(Open Space Technology)という手法を用いて、現場で感じている課題や悩みについて、対話を深めていきました

※今回のOSTは簡易版であり、本来の基本的な形式とは異なる形で実施しています。
※OSTとは、数人から数百人が一堂に会し、参加者全員が主体的に話し合うことで、組織や立場を超えた問題解決を促すファシリテーションの手法です。1985年にハリソン・オーエン氏によって提唱されました。

参加者が今自分が心から話し合いたいことをテーマとして持ち寄り、最終的に9つのグループに分かれて対話を実施しました。

各グループからは、現場のリアルな問いや課題意識をもとに、次のようなアウトプットが生まれました。アウトプット発表後には、講師が各グループにコメントをし、それぞれの探求がより深まるよう促しています。

【上司・トレーナーと良好な関係を築くためにビビらずコミュニケーションを取る】

【講師からのコメント】

要件をしっかり定義したうえで仕事を進めようという意識が、とても素晴らしいと感じました。

報連相は上司のためだけでなく、自分自身が安心して仕事を進めるためにも行うものです。
「仕事を効率よく進めるため」「上司が安心して任せられるようにするため」といった認識を持つことで、報連相に対する“怖さ”のような感覚も、少し和らぐのではないかと思います。

【質問するハードルを下げる】

【講師からのコメント】

上司の立場としては、もっと気楽に質問や相談をしてくれたらいいな、と感じることもあります。
そのためにも、良質な関係性が築けていると、自然と質問しやすい雰囲気や環境が整ってくるのではないかと思います。

【上司からのフィードバック】

【講師からのコメント】

判断保留を意識し、物事をフラットに受け止めようとする姿勢がとても素晴らしいと感じました。
また、アクションプランも具体的で、実際に取り組みやすい内容になっていると思います。

【報連相の頻度・伝え方】

【講師からのコメント】

「先輩と話し合って決める」というアプローチは、具体的で実践しやすく、取り組みやすい内容だと思います。

もし自分が上司の立場だったらどのくらいの頻度で、どのような伝え方をすれば伝わりやすいか、という視点でも考えてみると、イメージがしやすくなるかもしれません。

【自己成長のために自ら動こう!考えよう!】

【講師からのコメント】

これまで学んできたことを実際に活用しようとしている姿勢が、とても素晴らしいと感じました。

出してくれたことを一度にすべてを進めようとすると大変になってしまうこともあると思うので、取り組む内容に優先順位をつけて進めていくと、より実行しやすくなるのではないかと思います。

【相手に伝わりやすい報連相を考える】

【講師からのコメント】

事前に準備ができていると、実践の場でも動きやすくなり、とても良いなと思いました。

今後は、自分なりの仮説を持ったうえで、相手がその場で判断しやすいように整理して伝えられることを目指せると、さらによくなりそうです。

また、「胸に刻む」といった表現は少し根性論的に聞こえることもあるので、たとえばメモを取るなど、より具体的な行動に落とし込んでもらえると、実践しやすくなると思います。

【フィードバックの対象を明確にする】

【講師からのコメント】

フィードバックを自ら取りに行こうとする姿勢が、とても素晴らしいと感じました。

どんな目的でフィードバックをもらいたいのかを伝えると、相手もその意図に沿ってフィードバックしやすくなると思います。

【上司と仲良くなるために相互の自己開示を大切にしよう!】

【講師からのコメント】

一方的な自己開示は、相手にとっては圧が強く感じられることもありますが、「相互に」という視点を持っている点がとても良いと思いました。

人と親密な関係を築くためには、学術的に次の3つの条件があるとされています。
・熟知性(よく知っていること)
・類似性(似ていること)
・近接性(よく接点があること)

私自身の体験としても、上司を「一人の人」として見られるようになったときに、自然と仲良くなれたと感じました。

そうした意識を持って接することで、より良い関係性が築けるのではないかと思います。

【1日5分自分と話す時間を】

【講師からのコメント】

アクションプランを考える前に、皆さんでじっくりと内省を深めていた姿がとても印象的でした。

さらに、「何を、どう振り返るのか」を明確にし、たとえば5分間で振り返るための問いまで設定できると、日常の中でも実践しやすくなるのではないかと思います。

4)講師・アテンド所感

今回の研修では、周囲と良好な関係性を築くうえで大切となる「自身のあり方」を見つめ直し、思い込みに気づき、他者の視点を持つことの重要性を体験的に学びました。

人によって大切にしている価値観は異なり、自分が良かれと思って行った行動が、相手にとっては不快に感じられることもあります。

そのような価値観の違いがあることを理解したうえで、相手が何を大切にしているのか、どんな想いを持っているのかに目を向けることで、より良い人間関係が築かれていきます。

今回の受講生の多くは、まだ配属間もなく、人間関係での大きな悩みは感じていない様子でしたが、今後、さまざまな人と出会い、関わりながら仕事を進めていくことになります。

そのときに、今回の研修で得た気づきを思い出し、自ら主体的に良好な関係を築いていってほしいです。

※本研修の内容及び新入社員研修のご案内資料は、下記よりダウンロードいただけます。

研修の詳細について詳しく説明しておりますので、ぜひダウンロードください。

8月以降も、新入社員がその時期ならではの悩みを抱えるタイミングに合わせた研修を提供しています。ぜひご活用ください。

新入社員を対象とした公開講座スケジュールはこちらからご確認いただけます。