ファシリテーターが上手い人が実践する、場の観察と介入テクニック

更新日:

「ファシリテーターが上手な人と自分は何が違うんだろう…?」
「ファシリテーターが上手い人が実践しているテクニックを知りたい!」

そんなふうに思ったことはありませんか?

たとえば——
・進行役を務めたものの、場が静まり返って誰も話し始めなかった…
・意見は出たけれど、結局“いつも通り”の結論に落ち着いてしまった…
・その場は盛り上がったのに、現場では何ひとつ変わらなかった…

会議やワークショップの場づくりに携わる中で、こうした“もやもや”を感じたことがある方は少なくないはずです。

そして、そんな場に「上手いファシリテーター」が入った途端、空気が変わり、参加者が自ら動き出すのを見て、「いったい何が違うんだろう?」と感じたこともあるのではないでしょうか。

実はその違いは、“センス”や“話のうまさ”ではありません。
場の変化を丁寧に観察する力と、状況に応じて適切に介入する力こそが、ファシリテーターとして場を動かす重要なポイントです。

このコラムでは、「ファシリテーターが上手い人」に共通する“観察の視点”と“介入の技術”を、具体例とともにご紹介します。

読み終えるころには、あなたのファシリテーションがさらに一歩、深くなるヒントがきっと見つかるはずです。

ここで紹介する内容を実践し、振り返りを繰り返すことで、ファシリテーターとしてのスキルを磨いていきましょう。

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執筆者プロフィール
迫間 智彦
X:@tohaza_atc youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

専門性:ファシリテーター管理職組織開発・組織変革

1. ファシリテーターが上手い人の共通点は「場を観察し、適切に介入できること」

ファシリテーターが上手い人は、「場の変化を観察しながら、その場に必要な“適切な介入”ができる人」です。

対話や議論の場は、生き物のように常に変化していきます。
その変化に気づかず進行してしまうと、意見が出にくくなったり、納得感のない結論になったりすることがあります。

だからこそ、「今、この場にどんな空気が流れているのか」「誰が置いていかれていないか」などを丁寧に観察しながら、必要なタイミングで声をかけることが重要です。

例えば、ファシリテーターが場を観察できていないと、こんなことが起きます。

・会議の最後になって突然反対意見が出る
 →「もっと早く言ってくれれば…」という後悔や不満が残る

・決まったはずの内容が、現場で実行されない(無言の抵抗)
 →「会議で反対してくれればよかったのに…」というズレが生じる

いずれも、“場に違和感があったのに見過ごしてしまった”ことが原因の一つです。

参加者の空気感に敏感になり、わずかな違和感にも目を向けて、適切に声をかけられるかどうかが、ファシリテーターとしての力量が問われるポイントです。

次章では、その「場の観察」と「適切な介入」をどう実践すればよいのか、具体的にお伝えしていきます。

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    2.「場の観察」で差がつく!上手いファシリテーターが意識する4つの観点

    ファシリテーションが上手い人は、場にコミットしながらもフラットな立場で入り込み、4つの観点から場を丁寧に観察しています。
    ここでは、観察の前提と4つの観点について具体的に解説します。

    (前提)コミット高く、フラットに場に入る
    (1)言動・行動の観点
    (2)思考の観点
    (3)感情の観点
    (4)関係の観点

    (前提)コミット高く、フラットに場に入る

    場を適切に観察するためには、「目的達成への強いコミット」と「フラットな姿勢」の両立が不可欠です。

    この2つのバランスが取れていないと、以下のような問題が起こりやすくなります。

    コミットが高くフラットさがない場合:
    会議の目的達成に強くこだわるあまり、ロジカルシンキングに偏りがちになります。
    その結果、声の大きい人や立場の強い人の意見に引っ張られやすくなり、他の参加者の意見が拾われにくくなります。
    結果として、合意形成が偏り、参加者全体の納得感を損ないやすい場になってしまいます。

    フラットだがコミットが低い場合:
    場の穏やかさを重視するあまり、建設的な意見の衝突を避けてしまいがちです。
    そのため、参加者から多くの意見は出ても、対話が深まらず、結論や意思決定に至らないまま終わってしまう可能性があります。
    成果が得られず、「結局、何も決まらなかった」という印象が残る場になりやすくなります。

    ファシリテーターとして重要なのは、この「高いコミット」と「フラットな姿勢」を同時に持ち、俯瞰した視点から場を観察・運営することです。バランスの取れた姿勢が、質の高い対話と合意形成を生み出します。

    (1)言動・行動の観点で観察

    目の前で起きている事実を、できる限り主観を交えず、フラットに観察することが大切です。

    色眼鏡(認知)を通して物事を捉えると、参加者の本当の状態や意図を見誤る可能性があるためです。先入観を持たずに事実そのものを見ることで、思考や感情、関係性の理解につながります

    たとえば、ある参加者が貧乏ゆすりをしている場面を見たとします。このとき、「ただ貧乏ゆすりをしている」という事実だけを捉えます。「イライラしているのではないか?」など、自身の認知を入れてはいけません。事実をありのままに受け止める姿勢が重要です。

    「言動・行動の観点」では、具体的な事実をフラットに拾っていくことで、参加者の思考・感情・関係を把握できます。

    (2)思考の観点で観察

    参加者の発言や行動の裏にある「思考のプロセス」を丁寧に観にいくことが重要です。
    発言や行動だけでは参加者の本当の意図や考えが見えにくいためです。

    思考のプロセスを丁寧に観ることで、より深い理解と建設的な対話が可能になります。

    思考のプロセスを観る方法は主に2つあります。

    ・アウトプットまでの言動・行動を観る
    ・言動・行動の背景を聴く

    それぞれ説明します。

    アウトプットまでの言動・行動を観る

    グループワークを行った時の発言や立ち振る舞い、個人ワークで書いているメモを観ると分かるでしょう。

    たとえば、経営会議で「○○事業から撤退すべき」と考えている参加者がいたとします。

    その人のメモに、売上の推移や市場分析、SWOTなどのフレームワークが書かれていれば、「どういう根拠でそう考えたのか」が見えてきます。

    さらに、その分析の背景には「現場の疲弊への配慮」や「上司との関係性」など、感情や人間関係が影響している可能性もあるため、そこにも目を向けていくことが大切です。

    言動・行動の背景を聴く

    背景を観たいときは、起きたことや事実ベースを伝えて、何が背景にあるのかを聞くといいでしょう。

    たとえば、
    ・「(発言に対して)よければ、もう少し詳しく背景まで話していただけますか?そのことで、他のみなさんに、より真意や想いが伝わるかもしれません。」
    ・「(行動に対して)みなさん、グループワークのアウトプットの量が少ないようです。どのように時間を使いましたか?」などです。

    「なぜですか?」のような圧を感じやすい聞き方は避けるのがポイントです。

    思考の観察は、表面的な言動だけで判断せず、プロセスや背景に目を向けることが重要です。これにより、対話の質をより高めることができます。

    (3)感情の観点で観察

    感情は思考以上に捉えにくく、場の空気や関係性に大きく影響します。だからこそ、表面的な言動だけでなく、内面の状態にも目を向ける必要があります。

    感情を観る際には、以下の2つの視点があります。

    ・表情・姿勢・声のトーンなど態度・立ち振る舞いを観る
    ・表情・姿勢・声のトーンと言動・行動の一致・不一致を観る

    それぞれ説明します。

    表情・姿勢・声のトーンなど態度・立ち振る舞いを観る

    参加者がどのような感情を抱いているのかは、表情や姿勢、声のトーンなどから見立てることができます。

    たとえば、明るい表情で姿勢も前向きなら、議論や対話の場に積極的に関わろうとしていると考えられます。
    反対に、ずっと下を向いていたり、背中を丸めているような場合は、その場に居心地の悪さや不安を感じているのかもしれません。

    これらの情報は、参加者の状態を知るための“手がかり”として、あくまで一次情報として丁寧に受け止めることが大切です。

    表情・姿勢・声のトーンと言動・行動の一致・不一致を観る

    感情を読み取る際には、「言葉」と「態度」が一致しているかを確認することが大切です。

    たとえば、明るい表情で前向きな発言をしている人がいたとしても、同時にボールペンのボタンをカチカチと押し続けていたり、椅子にだらしなく座っていたりする場合、内心では不安や抵抗感を抱えている可能性もあります。

    このように、言動と態度のズレに気づくことで、表面に出ていない感情のサインを拾うことができます。

    ただし、姿勢などには身体的な事情が関係している場合もあるため、決めつけずに柔軟な姿勢で観察することが大切です。

    感情は捉えにくいからこそ、表情・声・姿勢・行動など多面的に観察し、その“ズレ”や“サイン”に気づく力が、ファシリテーターに求められます。

    (4)関係の観点で観察

    関係性は、チーム内の信頼感や力関係、安心して話せるかどうかといった場の“質”に直結します。やりとりの中ににじみ出る微妙なサインを見逃さず、場づくりに活かしていくことが求められます。

    関係を観察するためには、次のような視点が有効です。

    ・コミュニケーション時の態度・立ち振る舞いを観る
    ・表情や声のトーンと行動の一致・不一致を観る
    ・コミュニケーションを見ている“周囲の人”の様子を観る

    それぞれ説明します。

    コミュニケーション時の態度・立ち振る舞いを観る

    参加者の話の「聞き方」に注目することで、そこにある関係性が見えてくることがあります。

    たとえば、経営陣が話すときには身を乗り出して熱心に聞く一方で、若手社員が話すときには背もたれに寄りかかって聞いている場合、こうした態度の違いからは、上下関係の強い組織文化や、発言の重みに対する無意識の差が感じ取れるかもしれません。

    表情や声のトーンと行動の一致・不一致を観る

    参加者の表情や姿勢、声のトーンが、実際の言動と一致しているかどうかを見ることで、その人の本音や、背後にある関係性が見えてくることがあります。

    たとえば、ある経営者と幹部社員が対話している場面で、常務取締役が「もっと○○すべきだと思う」と強い口調で発言したとします。
    それに対し、部下のAさんは笑顔で「確かにそうですね」と答えていましたが、ちょうどそのタイミングで、開いていた足を急に閉じる動作が見られました。
    表情は明るいものの、身体の反応には緊張のサインが表れていたのです。

    後に話を聞くと、その二人の関係は長年の上下関係が強く、いわゆる“徒弟制度”のような関係性が続いていたとのこと。
    このように、表情だけでは読み取れない関係性も、言動と態度の不一致から見えてくることがあります。

    コミュニケーションを見ている“周囲の人”の様子を観る

    話している本人たちだけでなく、そのやりとりを見ている他の参加者の表情や姿勢にも注目しましょう。

    たとえば、AさんとBさんが議論しているとき、近くにいるCさんがうなずきながら関心を持って聞いていれば、チーム内に良い関係性が築かれている可能性があります。

    反対に、Cさんが腕を組んでいたり、目線をそらしていたりする場合は、無関心や不信感があるのかもしれません。

    関係性は捉えにくいからこそ、会話の当事者だけでなく、周囲の反応にも目を配りながら、相互作用の一つひとつを丁寧に観察していくことが大切です。


    ファシリテーションがうまくいくかどうかは、「場をどれだけ丁寧に観察できるか」に大きく左右されます。

    そのためには、
    言動・行動という“見えている事実”、
    思考という“見えにくい背景”、
    感情という“にじみ出る状態”、
    関係という“場の構造”

    この4つの観点すべてにアンテナを張りながら、偏りなく観ることが求められます。

    また、それらを観察する前提として「高いコミット」と「フラットな姿勢」を両立し、俯瞰した視点で場に関わることが重要です。

    こうした姿勢と観察力を備えたファシリテーターこそが、対話の質を深め、納得感のある合意と次の一歩を生み出す“場”をつくるのです。

    3. 「適切な介入」で変わる!上手いファシリテーターが実践する対応法

    ファシリテーターが上手い人は、会議やワークショップの目的・目標に応じて、適切な“介入”を行うことができます。

    なぜなら、現場では次のような課題が頻繁に起こるためです。

    ・議論が白熱し、本来の目的から逸れて空中戦になる
    ・誰も発言せず、最終的に役職者の意見で意思決定がなされる
    ・参加者が上司の意向をうかがい、本音を言い出せない

    こうした場面に出会ったとき、ファシリテーターには「今、この場に必要なことは何か?」を見極め、目的に立ち返って場を整える“介入”が求められます。

    そのためのアプローチとして有効なのが、Pull(引き出す)とPush(押す)の2つの介入スタイルです。

    • Pull(引き出す):参加者に問いかけたり視点を促したりすることで、内省や気づきを促す介入

    • Push(押す):場に対して明確に指摘したり、あえて揺さぶりをかけたりする介入

    以下、よくあるケース別にファシリテーターの介入の仕方を具体例を紹介します。


    【ケース1】議論が空中戦になっているとき

    • Pull:「この話、目的から少しずれているように見えます。一度○○の視点に立ち戻ってみませんか?○○さんはどう思いますか?」

    • Push:「なぜ目的からズレてしまうのでしょう?私には“意思決定から逃げている”ように見えます。」


    【ケース2】議論が停滞しているとき

    • Pull:「今の議論、社内視点に偏っていませんか?顧客や競合の視点でも考えてみましょう。」

    • Push:「皆さん、本気で考えていますか?この時間をかけて、たった3つの対策案しか出ていません。」


    【ケース3】役職者の意見に場が流されているとき

    • Pull:「私から見て、部長の意見が多く採用されていて、部長の話のみで意思決定が行われるように見えます。この意思決定で、現場は本当に動き出せそうですか?」

    • Push:「この意思決定に、みなさん本気でコミットできますか?仮に部下が離れていったとしても、やりきる覚悟はありますか?」


    優れたファシリテーターは、場の状況に応じてPullとPushを柔軟に使い分けます。ただ、Pushの使用は慎重にすべきです。

    なぜなら、ファシリテーターと参加者の関係性が築けていない段階で強く押すと、無用な反発や表面的な反応を生んでしまうからです。Pushが多すぎると、参加者が受け身になりやすいという副作用もあります。

    そのため、基本はPullをベースに、必要に応じてPushを“選んで”使うことが、上手な介入のポイントです。


    会議やワークショップにおけるファシリテーターの役割は、単に「話をまとめること」ではありません。

    本来の目的に立ち返りながら、参加者が本音で対話し、意味ある意思決定へと進めるよう“場を導くこと”が真の役割です。

    そのためには、PullとPushという介入スタイルを、場の成熟度や参加者との関係性に応じて、柔軟に使い分けることが大切です。

    4. 【プロが回答!】ファシリテーションに関するQ&A

    ファシリテーターの方々からよく伺う質問に、具体的な行動のヒントを含めながらお答えします。

    Q1. 会議の場にフラットな姿勢で入るには、どんな準備をすればいいですか?

    ファシリテーターがフラットな姿勢で場に入るためには、余裕のある心身の状態で臨むことが重要です。
    もし気持ちが焦っていたり、疲れていたりすると、無意識に場をコントロールしようとしてしまい、フラットさを保つのが難しくなります。

    具体的には、会議前に静かな場所でお茶を飲むなど、ゆっくりと気持ちを整える時間を取ると効果的です。
    それが難しい場合でも、会議5分前には一度今の仕事から離れて深呼吸をする、軽くストレッチをするなどの簡単なリセット時間を持つだけでも、場への入り方が変わってきます。

    Q2.  観察しても自分の主観に偏っている気がします。どうすれば観察の質を高められますか?

    ご質問のとおり、言動や行動以外の観察は、どうしても“仮説”になります。特に、思考や感情、関係性といった見えにくい部分は、自分の認知フィルターに影響されやすくなります

    だからこそ、複数の人の目で場を観ることが大切です。たとえば、アテンドスタッフや事務局の方に「今、どんな雰囲気に見えますか?」「あの場面、どう感じましたか?」と聞いてみましょう。自分には見えていなかった視点や気づきが得られることがあります。

    一人で見えることには限界があります。だからこそ、「他の目を借りる」ことが、観察の質をぐっと引き上げるコツです。

    Q3. ファシリテーターとして、いつ介入すればいいのかがわかりません。タイミングの見極め方を教えてください。

    「目的のブレ」と「参加者のコミットの低下」が見えたときが、介入のサインです。
    ファシリテーターの介入は、ただ発言をコントロールするためではなく、“場を整える”ために行うものです。

    その判断の軸となるのが、以下の2つの視点です。

    ・会議やワークショップの目的・目標がブレていないか?
    ・参加者の主体性や納得感が十分にあるか?

    この2点にズレが見えてきたときが、介入のタイミングです。

    たとえば「役職の高い人の意見ばかりが通ってしまう」ような会議では、次の3つのタイミングのいずれかで介入する選択肢があります。

    <タイミングごとの介入例>

    会議の始め
    「会議のグランドルールでは『対等な立場で話す』とありますが、今のままだと経営陣が決めて終わる流れになりそうです。みなさんは、どう感じていますか?」

    会議の中盤
    「ここまでの議論、経営陣の意見で進んでいるように見えます。このままで本当にいいですか?」

    会議の終盤
    「今のままだと、結局また経営側の判断だけで終わる印象があります。本当にそれでいいのでしょうか?」

    ただ、それぞれメリット・デメリットがあります。(あくまで一例になるので、すべてに当てはまるわけではありません。)

    タイミング メリット デメリット
    会議の始め 早い段階で力の偏りにストップをかけられる 参加者自身が気づく機会を奪ってしまう可能性がある
    会議の中盤 参加者が自分たちで気づき、変わるチャンスが持てる 「どうしたらいいの?」という混乱や抵抗が起こることも
    会議の終盤 「このままでは変われない」という危機感が出やすい 会議の流れを止めるリスクがある

    タイミングの正解は一つではありません。

    大切なのは「今この場に必要なのは何か?」を冷静に見極めながら、“目的”と“コミット”の回復に向けた介入を選んでいくことです。

    【参考】グランドルールとは?
    会議やワークショップの冒頭で確認する「みんなで守るルール」のことです。
    たとえば「立場に関係なく発言する」「他人の意見を否定しない」など。
    これがあると、ファシリテーターは「ルールに戻る」形で自然に介入しやすくなり、参加者も納得感を持って場に参加できます。

    グランドルールの作り方・使い方については、こちらのコラムも参考にしてみてください
    【事例あり】会議が進む!ファシリテーションのグランドルール活用術

    Q4. Pull型の介入では、どんな視点で問いかけをすればよいのでしょうか?

    「意見を引き出す視点」と「思考を広げる視点」の2つを意識すると効果的です。

    ① 意見や考えを“引き出す”問い

    参加者の中にあるものを言葉にしてもらうための問いです。主に3つのパターンがあります。

    • 1)意見・考えを引き出す
       例:「○○さんは、どうお考えですか?」

    • 2)本音を引き出す
       例:「そのご意見の背景にある思いを、よければもう少し教えていただけますか?」

    • 3)考えを言語化させていく
       例:「その考えをもう一歩、具体的にするとどうなりますか?」

    ② 思考や認知を“広げる”問い

    視野や思考の枠を広げてもらうための問いです。主に以下の2つの方向性があります。

    • 1)思考を広げ・深める
       例:「もし別の立場だったらどう考えるでしょうか?」

    • 2)認知を広げ、構造を伝える
       例:「この課題の背景には、どんな環境の要因が関係していそうですか?」

    Pull型の問いは、「相手の内側にあるものを引き出す」と同時に、「見えていない景色に目を向けてもらう」役割もあります。

    この2つの視点を意識して問いを立てていくことで、場の対話はより深く、意味あるものになっていきます。

    Q5. ファシリテーターとして、どんな時にPushの問いを使えばよいですか?

    Pushの問いは、「場を動かす必要があるとき」に使います。具体的には、次の3つの場面が代表的です。

    ① 場が停滞しているとき

    対話や議論が止まり、場に動きがないときは、Pushで刺激を与えることが有効です。
    あえて問いを強めに投げかけることで、参加者に危機感が生まれ、思考や発言が活性化されていきます。

    例:「このまま、何も決まらずに終わってしまっても大丈夫ですか?」


    ② アウトプットの質が低いとき

    出てきたアイデアや意見の質が低いと感じたときには、その状態を率直に伝えるためにPushが役立ちます
    課題に対してどれだけ真剣に向き合っているかを問い直し、場の集中度を高める狙いがあります。

    例:「本当にこの3案で、会社を動かせると思いますか?」


    ③ 参加者のコミットが低いとき

    場に「やらされ感」が漂っていたり、当事者意識が薄いときには、参加者に覚悟を促すPushが有効です。
    背中を押すような問いを投げることで、参加者自身の“本気スイッチ”が入るきっかけになります。

    例:「この意思決定に、本気で責任を持てますか?」


    Pushの問いは、強く働きかけるぶん、タイミングと関係性の見極めが重要です。
    「このままでは進まない」と感じたときに、覚悟を問うひとこととして使うのが効果的です。

    5. まとめ

    会議やワークショップを活性化し、参加者の納得感と行動を引き出すには、単なる「進行役」ではなく、“場に働きかける力”を持つファシリテーターが必要です。

    その鍵となるのが、以下の2つの力です。

    ・場を丁寧に観察する力
     → 言動、思考、感情、関係の4つの観点で場を読み解く

    ・目的と場の状態に応じた、適切な介入を行う力
     → PullとPushを使い分け、対話の質を深め、前進を促す

    これらを発揮するには、テクニックだけでなく、「今、この場にとって何が必要か?」を感じ取り、場に寄り添いながら働きかけていく姿勢が欠かせません。

    そうした姿勢のあり方ひとつで、会議や対話の質は大きく変わります。

    もし最近、思うように“場が進まない”感覚があるとしたら、それはファシリテーターの関わり方を見直すサインかもしれません。

    アーティエンスのファシリテーター研修では、「観察」「介入」「場の設計」など、ファシリテーションに必要な本質的スキルを、実践を通して習得いただけます

    「なんとなくうまくいかない」を脱し、本当に“意味ある時間”をつくっていきたい方は、アーティエンスのファシリテーター研修の詳細を、ぜひ一度ご覧ください。

    ご質問や自社に合ったプログラムのご相談があれば、お気軽にお問い合わせください
    あなたの組織に必要な“場づくり”を、一緒にデザインしていきましょう。

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