現場活用が進む!新入社員研修でのロジカルシンキングの教え方【事例あり】

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「新入社員が自分の考えをうまく伝えられない」
「会議で発言しても説得力に欠ける」
「指示待ちになりがちで主体性が見えない」

新入社員に対して、このような課題に頭を抱える人事・育成担当者の方も多いのではないでしょうか。

新入社員は知識や経験が浅いため、最初から質の高い報連相や提案をするのは難しいものです。しかし、ロジカルシンキングを身につけ、活用できるようになれば、現場で成果を生み出す力を早期に育むことが可能です。

本コラムでは、ロジカルシンキングの新入社員研修での取り入れ方、その効果や成功事例、そして研修を“現場で使えるスキル”にするためのポイントを解説します。

新入社員が自ら考え、周囲と協働し、成果を生み出していく未来を一緒に描いていきましょう。

執筆者プロフィール
近藤 ゆみ
アーティエンス(株)にて、研修講師、組織開発・人材育成のコンサルタント、コラムの監修・執筆などに従事。前職の大手人材紹介会社では、転職希望者のキャリアカウンセリングから転職サポートまでを一貫して担当。
X:@kondo_atc youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル

専門性:新入社員・若手社員、採用・育成

1)ロジカルシンキングはこう教える!新入社員研修への取り入れ方

新入社員に対して実施すべきロジカルシンキング研修は、「相手の期待に応えるために、仲間と共にロジックを創る」ことを目的とした研修です。

そう考えるのは2つの理由があります。

1つ目は、新入社員がまず身につけるべきは「相手の期待を正しく理解する力」だからです。ビジネスの現場では、期待に応えることが最低限求められます。その理解を支えるのがロジカルシンキングです。

2つ目は、新入社員が一人で論理を組み立てるには限界があるからです。知識や経験の浅い新入社員が独力で作るロジックは不十分になりがちです。そのため、周囲と協働して思考の質を高めていく姿勢を同時に育む必要があります

具体的には、以下の5つのポイントを踏まえた流れで教えることが大切です。

1|「なぜ必要なのか?」を納得できる状態をつくる

ロジカルシンキングを“他人事”にせず、自分の仕事とどうつながるかを実感させることが出発点です。

「上司や先輩と認識をそろえるため」「お客様に納得してもらうため」など、仕事における“使いどころ”を具体的に提示することで、学ぶ意義を自分ごととして捉えてもらえます。

アーティエンスのロジカルシンキング研修では、「ロジカルシンキングって何だろう?何の役に立てられるものだろう?」という問いに対して、個人・グループで考え、全体で共有し合う時間を設けています。

自分の言葉で、ロジカルシンキングを学ぶ意味を見つけることができると、研修での学ぶ意欲を引き出せます

2|フレーム(ロジックツリー・マトリックス)の型で教える

ロジカルシンキングの“入口”として、まずは「ロジックツリー」と「マトリックス」の2つの基本フレームをしっかり学ばせることが効果的です。

「どう整理すればいいかわからない」という不安を、フレームという“思考の土台”が支えることで、新入社員は 実践に向けた安心感を得られます。

アーティエンスのロジカルシンキング研修では、ロジカルシンキング活用に向けて、「ロジックツリー」と「マトリックス」の2つのフレームワーク、それらを踏まえた「結論の出し方」を、ショートワークを通じて学びます。

型の使い方を理解した上で、研修の中盤以降にグループワークやシミュレーションに移ると、「使ってみる→気づく→修正する」という循環が生まれやすくなります。

3|個人で考えるだけでなく、チームで考えるワークを設ける

一人で完結するのではなく、仲間や上司と一緒に考える中で思考の質が高まるという経験をします。

「他者との対話を通じて、ロジックが洗練されていく」ことを実感することで、現場でも“協働して考える”姿勢が育ちます。

アーティエンスのロジカルシンキング研修では、4,5名がグループとなり、共に考えながら一つの課題に取り込む設計にしています。

仲間や上司との対話を通じて、自分一人では気づけなかった視点を取り入れ、ロジックが洗練されていく感覚を得たり、異なる意見をうまくまとめるためや、自分の考えを適切に伝えるためにもロジカルシンキングが必要だということに気づきます

4|正解探しではなく「最適解を創る」体験を通じて実践する

ロジカルシンキングは、あらかじめ存在する“正解”を探すためのものではありません。
大切なのは、課題に対して仮説を立て、根拠を持って絞り込み、周囲と検証しながら「最適解を創っていくプロセス」です。

アーティエンスの研修では、このプロセスをシミュレーションワークで体験します。

「CS向上の要因分析」や「原因特定」「企画立案」に取り組み、実際の現場に近い課題を題材にしてロジカルシンキングを使いこなす練習を行います。
さらに、ワークの中で何度も報連相を繰り返し、講師や仲間からフィードバックを受ける仕組みを組み込んでいます。

アウトプットを磨き直すたびにPDCAを回すことになり、短時間でも「成長の手応え」を得られる設計です。その結果、1日の研修でも「できなかったことができるようになった」という自己成長を実感できます。

この成功体験が、研修後の現場で「ロジカルシンキングを使ってみよう」という実践意欲につながります

5|研修での学びを振り返り、現場で活かせる状態にする

ロジカルシンキング研修は、学んだことを現場で活かせてこそ意味があります。
そのためには、単なるトレーニングで終わらせず「現場でどう使うか」まで設計することが重要です。

具体的には、研修の最後に以下のようなプロセスを設けます。

振り返りセッション
研修で得た気づきや成長を言語化し、学びを整理します。

アーティエンスでは、自社オリジナルの振り返りシートを活用しています。
研修で得た気づきや成長の言語化/現場で活かせる具体的な場面の想定/活用を妨げそうな要因と対策の想定

こうした整理を行うことで、研修時点で「どの場面でどう使うか」を具体的にイメージできつため、現場での実践につながりやすくなります。

アクションプラン作成
自分の業務にどう活かすかを具体的に書き出し、翌日から実践できる状態にします。

共有とコミット
仲間や上司に発表し、周囲からの期待やフィードバックを受けることで、実践意欲を高めます。

こうした設計を入れることで、新入社員は「学んだ」で終わらず、「現場で実際に使う」イメージを持った状態で研修を終えられます。結果として、研修効果が持続し、日常の業務にロジカルシンキングが根づいていきます。


新入社員研修でのロジカルシンキング研修は、「相手の期待を理解し、仲間と共に論理を組み立てる力」を養うものです。
個人の思考力だけでなく、周囲と協働しながら成果を創る姿勢を育むことこそが、新入社員にとっての最初の大切な一歩となります。

2)新入社員研修でロジカルシンキングが必要な4つの理由

新入社員がロジカルシンキングを習得できれば、成長スピードは劇的に向上します。ここでは、ロジカルシンキング研修によって特に効果が期待できる4つの変化をご紹介します。

① 報連相がわかりやすく、スムーズなコミュニケーションを取れる

ロジカルシンキングを身につけると、新入社員の報連相が簡潔でわかりやすくなり、コミュニケーションが格段にスムーズになります。

ロジカルシンキングを活用することで、情報を整理して「結論→理由→詳細」という流れで伝えられるようになるためです。これにより、相手にとって理解しやすい報連相ができるようになります。

例えば、「まずは結論から伝える」習慣が身につけば、上司から「で、結局何が言いたいの?」と指摘されることが減ります。報連相が明確になると、上司・先輩も指示やアドバイスを出しやすくなり、業務が円滑に進みます
その結果、新入社員自身も報連相に対する苦手意識が減り、自然と報連相の回数が増える好循環が生まれます。

実際にアーティエンスのロジカルシンキング研修を受講した会社の人事の方から、「報連相の質と量が大きく改善した」という声を多くいただいています。

ロジカルシンキングを習得することは、新入社員の報連相力を高め、上司や先輩との信頼関係を築きやすくするために欠かせません。

② 業務理解が深まり、チームの効率が上がる

ロジカルシンキングを習得すると、新入社員の業務理解が深まり、チーム全体の効率や生産性が高まります。

ロジカルシンキングが身に付けば、依頼内容を的確に理解し、不明点を整理して質問できるようになるためです。その結果、確認のヌケやモレが減り、業務がスムーズに進むようになります。

例えば、上司からの依頼を受けた際に「目的・手順・期待される成果」を論理的に整理できるようになると、認識のズレが減ります。結果として、再確認や手戻りの時間が削減され、生産性が向上します。

また、新入社員が要点を押さえて動けるようになることで、上司や先輩も安心して仕事を任せられるようになります。

ロジカルシンキングの習得は、新入社員の業務理解を深めるだけでなく、チーム全体の効率化にも直結する効果があります。

③ 発言に説得力があり、建設的な意見交換ができる

ロジカルシンキングを習得すると、新入社員の発言に説得力が増し、建設的な意見交換が可能になります。

ロジカルシンキングを活用すると、自分の意見とその根拠を明確にでき、主張がわかりやすくなるためです。

例えば、会議中に「結論→理由→事例」という流れで意見を述べられるようになれば、発言の意図を理解してもらいやすく、相手も納得しやすいです。さらに、論点を素早く整理できるようになるため、議論が深まり、会議内での意思決定や合意形成がスムーズに進みます。
結果として、新入社員も早期から“会議に貢献できる存在”として認識されるようになります。

ロジカルシンキングは単なる思考法ではなく、会議の場で周囲を動かし、組織の意思決定に建設的に関われる力を新入社員に与えるのです。

④ 自ら考えて行動してくれるので成長速度が上がる

ロジカルシンキングを習得すると、新入社員は言われたことをこなすだけでなく、自ら考えて主体的に行動できるようになります。

ロジカルシンキングでは「なぜこれをするのか?」「この行動の結果はどうなるのか?」と理由や仮説を立てながら考える習慣が身につくためです。

例えば、上司から依頼された業務に対して「この目的は〇〇だから、次は△△も準備しておいた方がよい」と自分で先を読み行動できるようになります。こうした姿勢は、単なる指示待ちから脱却し、常に次の一手を考える「主体的な働き方」へとつながります。

ロジカルシンキングは、新入社員を受け身から脱却させ、自ら考え行動する人材へと成長させるための強力な土台となります。


以上のように、ロジカルシンキングを身につけることで、現場で活躍するための基礎が整い、新入社員の早期活躍を後押しします。

3)【事例】ロジカルシンキング研修で新入社員の提案力が向上

今回ご紹介するのは、社員数約200名の中堅美容サロン経営会社の事例です。

毎年20名ほどの新入社員(エステティシャン職)を迎えていましたが、「経験が浅いうちは成果を出すのが難しい」と考えられており、特にお客様への提案力の弱さが大きな課題となっていました。

実際には、お客様へのヒアリングにヌケやモレが多く、本質をとらえた提案ができないことも少なくありませんでした。さらに、提案内容に説得力を欠き、「なんとなく説明している」と受け取られてしまうこともあったのです。
上司や先輩からも「経験を積まなければ仕方ない」という声が多く、新入社員自身も成果を出す自信を持ちにくい状況にありました。

そこで導入したのが、ロジカルシンキング研修です。

研修では「ロジックツリー」や「マトリックス」といったフレームワークを活用し、ヒアリングで得た情報を整理する方法を学びました。さらに、グループワークを通じて「どうすればお客様に納得いただけるか」を考え抜き、実際に提案の練習を繰り返すプログラムを実施しました。

すると研修後は、新入社員の行動に明らかな変化が見られました。

お客様へのヒアリングではヌケ・モレが減り、重要なポイントを押さえられるようになったのです。また、提案時には紙にマトリックスを書き、契約プランのメリット・デメリットを可視化して説明するようになりました。これにより、お客様にも理解しやすい提案ができるようになり、契約につながるケースが増えていきました

「新入社員は経験が浅いから成果は出にくい」という考えは大きく変わり、実際に新入社員のうちから成果を出す事例が次々に生まれました。さらに、学んだフレームワークをチーム内で共有し合うことで、経験に依存しない「学び合う文化」が社内に広がっていきました。

このようにロジカルシンキングは、正しく学んで活用できるようになると、新入社員であっても確かな成果を出せる力を育みます。

4)現場で使えるスキルにする!ロジカルシンキング研修での5つのポイント

ロジカルシンキング研修を現場で実際に活かせるスキルとして根づかせるには、研修の設計や運営で押さえておくべきポイントがあります。

ここでは、その中でも特に重要な5つのポイントをご紹介します。

① 盛り込みすぎない適切な情報精査

ロジカルシンキング研修は、多くを伝えすぎず、内容を精査して提供することが重要です。

情報量が多すぎると受講生が混乱し、「何を学んだのか」を思い出せず、現場で活かせなくなってしまうためです。

例えば、フレームワークを5つも6つも紹介しても、新入社員は定着させられません。むしろ「結局どれを使えばいいのか?」と迷い、使えなくなります。
そのため、ロジックツリーやマトリックスなど、数を絞りましょう。そして、それらを徹底的に使いこなせるように練習を行えば、研修後も自然に再現でき、現場で活用しやすくなります。

伝える情報を精査し、新入社員が持ち帰れる分だけに絞ることこそが、学びを“現場で使える力”へと確実につなげるポイントです。

② チームでロジカルシンキングを活用する超実践的なワークの実施

ロジカルシンキング研修では、個人演習だけでなく、チームで取り組む実践的なワークを取り入れることが効果的です。

一人で考えるだけでは視野が狭くなりがちですが、仲間や上司との対話を通じて新たな視点を得られ、ロジックの質が高まるためです。

ロジカルシンキングは、自身が見えている世界の情報でしか論理構成が創れないという弱点があります。新入社員の場合は特に、持っている知識や情報も上司・先輩よりも少ないため、周囲の力を借りながら、ロジカルシンキングを活用する意識を醸成することが重要です。

チームでの実践的なワークを組み込むことで、ロジカルシンキングは単なる知識ではなく、現場で成果を生み出すスキルとして定着します

③ 適切な実施タイミングでの実施

ロジカルシンキング研修は、入社後2〜3ヵ月経過したタイミングで実施するのが効果的です。

入社直後は実務経験が乏しく、研修内容を実際の業務に結びつけて理解できないためです。また、覚えることが多すぎる時期に研修を詰め込むと、消化不良を起こし、不安感が強まってしまう可能性もあります。

例えば、4月に入社した新入社員にすぐ研修を実施すると、「自分の仕事でどう使えるのか」がわからずに終わってしまいます。しかし、7月ごろであれば一通り業務を経験しているため、「これは会議で役立ちそうだ」「報連相にすぐ活かせそうだ」と具体的にイメージできます。

実務経験をある程度積んだタイミングで研修を実施することで、ロジカルシンキングが自分事化され、現場で活きる力になります。

④ 研修後のフォロー体制

ロジカルシンキング研修は、研修後のフォロー体制を整えることで効果が定着します。

研修時に学んだことも、現場に戻って時間が経てば忘れてしまうためです。振り返りの機会や学びを思い出す仕組みがなければ、「研修で終わり」になってしまいます

アーティエンスでは、毎回研修レポートを作成し社内で共有するなど、研修時のアウトプットや資料を振り返れる仕組みを提供しています。
研修で学んだことを振り返るものや機会があることで、新入社員は学びを定期的に思い出し、現場で実践しやすくなります。

フォロー体制を用意することで「学んだだけ」で終わらず、日常業務で実際に使い続けるスキルに変わります。

⑤ 経験豊富な研修講師をアサイン

ロジカルシンキング研修は、経験豊富な講師が担当することで効果が大きく高まります

講師の実務経験が乏しいと、フィードバックが現実と乖離し「机上の空論」となり、学びが現場で活かせなくなるためです。

例えば、営業経験のない講師が提案の場面を指導しても、具体的な指摘や改善策が乏しく、受講生は「現場でどうすればよいのか」がわかりません。一方、実務経験を積んだ講師であれば、リアルな事例を交えながら的確なフィードバックができ、受講生も納得感を持って学びを吸収できます。
アーティエンスの研修では、登壇経験と実務経験の両方を持つ講師をアサインしています。

講師の実務経験と指導スキルの両方がそろっていることで、ロジカルシンキング研修は「現場で即使える学び」になります。

)まとめ

新入社員にとってロジカルシンキングは、単なる思考法の習得にとどまらず、現場で成果を出せる人材へ成長するための基盤です。

本コラムでは、研修の取り入れ方、必要な理由、具体的な効果、事例、そして現場で活かすための5つのポイントを紹介してきました。

どれも共通して言えるのは、ロジカルシンキング研修は「知識を学んで終わり」ではなく、職場で実際に使えるスキルに変える設計が重要だということです。

そのためにも以下の内容を取り入れた研修になるように意識しましょう。

1|「なぜ必要なのか?」を納得できる状態をつくる
2|フレーム(ロジックツリー・マトリックス)の型で教える
3|個人で考えるだけでなく、チームで考えるワークを設ける
4|正解探しではなく「最適解を創る」体験を通じて実践する
5|研修での学びを振り返り、現場で活かせる状態にする

アーティエンスでは、上記の内容を踏まえたロジカルシンキング研修を実施しています

「自社でも導入してみたい」「もっと詳しく知りたい」と感じられた方は、ぜひアーティエンスまでお気軽にお問い合わせください。具体的なプログラムや、御社の状況に合わせた実施時期・設計についてご相談いただけます。

ロジカルシンキング研修を通して、新入社員が自ら考え、周囲と協働し、成果を生み出していくことで、組織の未来を力強く切り拓いていきましょう。

ロジカルシンキング研修をご検討中の人事責任者様・担当者様へ

ロジカルシンキングを研修で習得するためには、研修内での実践回数の多さと、現場での活用イメージを持てることが重要です。アーティエンスのロジカルシンキングには、以下の特徴があります。

  • ロジカルシンキングを繰り返し活用する演習形式
  • 現場感のある講師からのロジカルなフィードバック
  • 現場での活用イメージの具体化

ロジカルシンキング研修の品質の高さは、多くの企業からご好評頂いています。まずはお気軽にご相談ください。