研修・セミナーレポート

2025年12月11日 会議での合意形成力 向上研修 ー公開講座研修レポート

本内容は、2025年12月11日に開催した「会議での合意形成力 向上研修」の公開講座研修レポートです。研修概要、終了時のコメント、そして研修内容を時系列に沿ってご紹介します。

 

1)会議での合意形成力 向上研修の概要

議論を構造化し、納得感のある合意形成を促すスキルの習得を目的としています。

3つの学びのポイント

①議論を整理する|構造化が進む4つのフレーム

話し合いの内容や情報を整理し、議論を深めていく手法としてのロジカルシンキングを習得

②合意を引き出す|合意形成を阻む4つの要因と対策

合意形成を阻む4つのプロセス(前提・対立関係・価値観・拒絶)を理解し、それぞれに対処するためのポイントを学びます

③決定事項の実行力を上げる|コミットメントの7段階と対策

納得感のある意思決定を行うために必要な観点を理解し、ワークを通して実践的に身に付けます

④決定事項を実行する|役割分担と現場フォローの方法

決定事項の実行を現場でより加速させるために重要な「役割分担」と「現場フォロー」について学びます。

2)研修で得た気づき・学び

研修終了時のコメント(チェックアウト・アンケートより)

・合意形成に悩んでいたので、解決のヒントが見つかってよかったです。

日々の業務にすぐ活かせる内容が多く、とても学びになりました。迫間さんの引き出しの多さに終始驚き、自分もそうなりたいと思いました。

・ワークでは普段とは違う役を演じることで新鮮な気づきがありました。自分の中でしっかり腹落ちさせて現場で活かしたいと思います。

・介入しすぎてしまう癖があることに気づきました。他社の方と対話できたことも大きな刺激になりました。

日常の会議と結びつけて考えることができ、学びが深まりました。対立構造の場面では過去の経験を思い出し、今日学んだことを今後に活かしたいと思いました。

3)会議での合意形成力 向上研修 内容

①事前講義|ファシリテーターが用いるロジカルシンキングとは?

ファシリテーターに必要なロジカルシンキングを、私たちは次のように定義しています。

ファシリテーターに必要なロジカルシンキングとは、「状況→結論」や「結果→原因」の思考を、できるだけシンプルに、そして誰が聞いても納得できる形で整理することを指しています。

複雑な事象を扱う場では、情報が錯綜しやすく、関係者の認識もバラバラになりがちです。だからこそ、ファシリテーターが論点を構造化し、本質を捉えたうえで整理して伝えることで、参加者全員が同じ理解を持ち、話し合いが前に進む状態をつくることができます。

もしこの整理が行われないまま議論が進むと、「答えありきの議論に陥る」「声の大きさや力関係で論理がゆがむ」「空中戦のまま何も決まらない」といった問題が起こりやすくなります。

つまり、ロジカルに場を整えられないと、参加者の意見や経験が有効に活かされず、結論にもたどりつけなくなってしまうのです。

こうした課題を防ぎ、会議の質を上げていくために、ロジカルシンキングを活用します。
議論を構造化し、参加者それぞれの知識や経験、視点を“つながる形”で整理することで、場全体としてより良い結論へ向かうことができます。

そのために必要となるベーシックスキルは4つに集約されます。

これらの情報を受けて、グループで対話し、その後全体シェアをしました。
出てきた話の一部を紹介します。

【受講者からのコメント】
主語があいまいだったりズレてしまうと、話の焦点そのものが変わってしまうので、主語をきちんと明確にする大切さに気づいた、という声が出ました。また、議論の前提がそろっていないと、結論の方向性までズレてしまうことにも改めて気づいた、というコメントもありました。

特に新規事業に携わる方からは、「状況が変わりやすいぶん、前提がブレやすい」といった声があがり、業務の特性や今の状況によって、優先すべきことが変わってくるのかもしれないという話をしました。

また、「限定合理性を目指すとはどういうことなのか?ある程度納得できる方向性を見つけることなのか?」という問いも共有されました。


【講師コメント】
限定合理性の理解は、概ねその理解で大丈夫です。
いつの時代も何が“正しい”のか、何が“最善”なのかは、明確にわかりません。だからこそ、「ここまで考え抜いてロジックが通っているのであれば、この方針で進みましょう」と判断することが大切です。特に新規事業のように正解のないテーマでは、100%完璧な答えを求めることは現実的ではありません。

そのため、限定合理性という言葉をチームや組織に根付かせ、「このテーマは完璧な答えが出せない前提だから、限定合理性で進めましょう」と伝えると、議論や意思決定を前に進めやすくなります

【受講者からのコメント】
言葉の定義をそろえることの大切さに気づいた、という声が多く出ました。年齢や部署が違うと、同じ言葉でも受け取り方や意味が変わってしまうため、話し合いに入る前に「この言葉は今回どういう意味で使うのか」を確認しておくことが重要だという気づきが共有されました。

また、主語と述語をはっきりさせることも、議論が空中戦にならないために欠かせない、という意見もありました。


【講師コメント】
たとえば、新卒の方とベテランが一緒に参加する会議では、会議の中ですべての定義を説明しようとすると時間が足りなくなってしまいます。そのため、事前に新卒の方へ背景や定義を伝えておくなど、会議以外の場での情報共有が必要になります。

また、以下のフレームワークを使って、キックオフミーティングなどのタイミングで言葉の定義を合わせておくと、その後の議論がとてもスムーズになります。

【受講者からのコメント】
年齢の影響もあってか、話している途中で言葉がすぐに出てこないことがあります。皆さんは、そういうときどう対処していますか?


【他の参加者からのコメント】
言葉が出てこない場面では、少し待つこともありますし、他のメンバーが「もしかして○○のことですか?」と補ってくれることもあります。

【講師コメント】
周りのメンバーに確認してみるやり方も有効です。そうすることで、ほかの人が発言するきっかけが生まれ、議論に主体的に参加しやすくなるからです。

講義と対話によって、議論を進めるうえで必要な“前提のそろえ方”や“合意形成の土台”について理解を深めました。

②実践|議論の構造化

これまで学んだ内容を踏まえ、60分以内に結論を導くことを目標に実践ワークに取り組みました。

各グループで結論を発表したあと、実践を通じて生まれた気づき・発見・もやもやを、個人とチームそれぞれで振り返りました。
出てきた話の一部を紹介します。

【受講者からのコメント】
ギリギリで少し決め打ちのようになってしまったものの、なんとか結論までたどり着けたのは良かったです。
一方で、共有に時間がかかったことや、「もっと良い進め方があったのでは?」というモヤモヤもあります。短時間で最適なフレームワークを選ぶ難しさを感じました。

また、合意形成の場では“可視化”が非常に重要だという気づきました。


【講師コメント】
限られた時間の中で結論を出し切った点は大変素晴らしいと思います。
また、共有にしっかり時間を使っていたのも良い進め方でした。

一方で、会議の目標が“60分で結論を出す”という設定に本当に適していた内容だったかどうかは、調整の余地があるかもしれません。

【受講者からのコメント】
決めたはずの役割を途中で忘れてしまっていました
また、フレームワークを十分に使えず、言葉だけで議論を進めてしまっていたことも反省です。
さらに、前提をもっとしっかり確認しておく必要があったことや、話し合いの中で目標や目的を一度立ち返って設定し直してもよかったかもしれない、という気づきもありました。


【講師コメント】
目標や目的は、議論を進める中で「この設定では難しそうだ」と感じたら、柔軟に調整することも大切です。今回の内容でいうと、「誰が?」を明確にするだけで議論の質は大きく上がったと思います。

【受講者からのコメント】
会議の内容に合わせてフレームワークを適切に使えるよう、さまざまな形式のフレームワークを学びたいと思いました。


【講師コメント】
会議で使えるフレームワークについては、こちらのコラムでいくつか紹介しています。
会議の質を変える!ファシリテーションで使えるフレームワーク6選

よければ参考にしてみてください。自分に合ったフレームワークを見つけられると、会議運営がぐっとやりやすくなります。

今回の実践を通じて受講者は、議論を前に進めるために必要な思考の整理や関係性の調整といった、プロセス面の重要性に気づきを深めていました
また、状況に応じて進め方や枠組みを柔軟に見直すことが、合意形成において欠かせないという理解が育まれていました。

③ 事前講義|合意形成で起きる課題の種類と、プロセスを知る

次に合意形成のプロセスを知り、意思決定の方法を学んでいきます。

職場で、意思決定・合意形成において、どのような問題が出ているかを出してもらいました。
以下のようなコメントがありました。

【受講者からのコメント】
・社内でも社外でも、声が大きい人の影響が出やすい
・上の答えを探してしまって率直な意見が出ない
・発言していない人を巻き込もうとしても、意見を言ってくれない人がいる
・積極的に発言しないメンバーが多いので、納得感がわかりづらい

意思決定・合意形成でよく起きる課題の原因は主に以下の4つです。

1. 前提が異なる場合

2. 対立関係が生まれる場合

3. 価値観が違う場合

4. (参考) 拒絶や、敵対関係がある場合

これらそれぞれに対しての対策方法をお伝えしました。

これらの情報を受けて、グループで対話し、その後全体シェアをしました。
出てきた話の一部を紹介します。

【受講者からのコメント】
・人それぞれ価値観が違うことを前提に、決めつけずに歩み寄る姿勢が大切だと感じました。

・相手の「心の声」を引き出すのは難しく、心理的安全性がないと本音は出てこないのでは、と感じました。質問のバリエーションを増やすために、「今何点くらいですか?」など、言い方の工夫も学びたいと思いました。


【講師コメント】
本音を出してほしい時の方法として他には、メタファー(比喩)で捉えてみる、“理想の未来”と現在のギャップから考えてみる、といったアプローチも効果的です。

【受講者からのコメント】
・価値観はとても踏み込んだ領域なので、相手のメンタルモデルを決めつけないことが大事だと感じました。

・本当はプロジェクトに反対していて、意図的に遅らせているなど、「まさか?」と思うような背景が存在する可能性もあると気づきました。

・拒絶が起きている場合は、もはやファシリテーションだけで解決できる問題ではなく、会議の範囲を超えてしまう難しさを感じました。


【講師コメント】
拒絶が強いケースでは、権限のある人が介入して無理やり状況を改善することもありますが、その場合は組織内に遺恨が残る可能性もあり、慎重な判断が必要です。

合意形成の“見えにくい部分”にも目を向けられるようになり、表面的な意見調整だけではなく、その裏にある前提や価値観まで意識して考えられるようになった、という変化が見られました。

④ケーススタディⅠ|自身の価値観を知る

参加者の皆さんには、自分が大切にしているキーワードを5つの価値観として順位づけし、その価値観がファシリテーションにおいてどんなポジティブ/ネガティブな影響を与えるのかを振り返ってもらいました。

そのうえで、ワークを通じて生まれた気づきやモヤモヤ、感想を共有していただきました。
以下に一部のコメントをご紹介します。

【受講者からのコメント】
・価値観について考えたことはありましたが、それをファシリテーションに結びつけて考える機会はなかったので、難しさを感じました。

・「成長」という価値観をファシリテーションに落とし込むのが難しいと感じました。ポジティブに働くと会議を前に進められますが、ネガティブに働くと結論を急いでしまうかもしれないと思いました。

・「オープン」を選びましたが、自分も相手もオープンでなければ心理的安全性は保てないのではないかと感じました。

・「協調」は場づくりには良い面がありますが、予定調和になってしまう可能性もあると気づきました。

同じ言葉でも、人によってイメージや認識が異なることがありますし、環境によって価値観の影響の出方も変わります
すぐに答えが出るものではありませんが、これからも継続して考えていっていただきたいと思います。

⑤ケーススタディⅡ|「対立関係?価値観の違い?」を乗り越える

次に「対立関係?価値観の違い?」を乗り越えるワークを行いました。
営業の仕方について、訪問の数が重要だ/提案の質にこだわるべきだ の2グループに分かれて議論をしてもらいました。

その後、講師が実際にファシリテーションを行い、具体的な進め方の見本をお見せしました。

2回の実践を通じて生まれた気づき・発見・もやもやを、個人とチームそれぞれで振り返りました。
出てきた話の一部を紹介します。

【受講者からのコメント】
・自分とは異なる立場を演じることで、自分とは違う価値観を理解するきっかけになり、実際の現場でも相手の背景を想像する大切さを実感しました。

話し合いの途中で論点がずれ始めたとき、ファシリテーターが整理してくれるだけで議論が一気に進むことに気づきました。

タスク(結果)とメンテナンス(関係性)のバランスを取ることの難しさを実感しました。

自分の価値観が議論の方向にどれくらい影響しているのかに気づき、会議での関わり方を見直すきっかけになりました。

ファシリテーターが議論の“手綱”を握ってくれている感じがあり、そのおかげで考えることがクリアになりやすいと感じました。

今回のケーススタディを通じて受講者は、対立の背景には価値観や状況理解の違いがあることに気づき、相手の立場に立って考える重要性を実感しました。
また、2人のファシリテーターの進め方を体感したことで、自分自身の関わり方や会議運営における視点が広がったようでした。

4)講師所感

今回の研修では、「合意形成」を単なる会議テクニックとしてではなく、“人と人が理解し合うためのプロセス”として向き合うために必要な内容をお伝えしました

議論を構造化するスキルやフレームワークはもちろん有効ですが、それ以上に重要なのは、前提の違いに気づこうとする姿勢や、相手の価値観に寄り添って思考してみる柔軟さです。こうした姿勢こそが、場の質を大きく左右します。

ケーススタディでは、あえて自分とは異なる立場を演じることで、価値観の違いが生む葛藤や、その背景を想像できた瞬間の視界の広がりを体感していただきました。また、ファシリテーターの介入や論点整理の仕方を見る中で、「議論が前に進むとはどういうことか」を肌で感じていただけたように思います。

合意形成には正解がなく、状況に応じた柔軟な判断が求められます
だからこそ、今回の学びを通して気づいた視点や感覚が、皆さま自身のファシリテーションスタイルを磨き、日々の会議や対話をより良いものにしていく土台となれば嬉しく思います。