成功事例に学ぶ!研修を組み合わせた管理職育成の6ステップ

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管理職研修をしても成果が出ない」
「知識は学んでいるはずなのに、現場のマネジメントに活かされていない」

――そんな悩みを感じていませんか?

多くの企業で、管理職に必要なスキルや知識を学ばせる研修は行われています。しかし実際には、「学んだだけで終わってしまい、行動や成果につながらない」という声が後を絶ちません

実は、管理職育成を成功させるためには、研修だけに頼るのでは不十分です。
米国ロミンガー社の調査によれば、人材育成に寄与するのは 経験が7割、薫陶が2割、研修はわずか1割 というデータが示されています。
つまり、研修はあくまで育成の一部であり、経験や先輩からの学びを組み合わせてこそ「成果につながる管理職」が育つのです。

そこで本コラムでは、数多くの企業と育成施策を企画・実施してきた知見から、管理職育成を成功に導く6つのステップと3つの注意点を具体的に解説します。
さらに、M&Aやコロナ禍といった逆境を乗り越えた成功事例も交え、リアルな変化のプロセスをご紹介します。

この記事を読むことで、管理職育成の全体像を理解し、自社で取り組むべき施策を明確にできるはずです。管理職が成長し、組織全体が成果を出せるようになる未来に向けて、今できる一歩を踏み出しましょう。

執筆者プロフィール
菊地 大翼
組織人事コンサルタント。業界歴15年以上。研修会社に入社し、法人営業で売上トップを達成後、新規商品の開発に従事。現在は人事制度構築支援、成人発達理論に基づいた人材・組織開発のコンサルティングを行っている。

専門性:パフォーマンス・マネジメント、研修開発・ワークショップデザイン、成人発達理論を活用した人材開発・組織開発

1)管理職育成を成功に導く6つのステップ

管理職育成を成功に導くための進め方を6つのステップで紹介します。

①リサーチ

管理職育成を成功させるためには、最初にリサーチを行い、「育成によって管理職にどうなってほしいのか?」を大まかにでも言語化することが欠かせません。

リサーチを怠ると育成の方向性がブレやすく、経営陣の一言で大きく方針が変わったり、現場任せになって会社としての一貫性を示せなかったりするからです。粗くても良いので、最初にリサーチを行って方向性を固めておくことが重要です。

リサーチは「情報収集・材料集め」が目的です。具体的には次の観点で進めます。

① 外部環境
・業界の市場環境の変化
・それを受けて管理職に求められる変化


市場調査は時間をかけすぎないのがポイントです。最大でも3日以内、1日でも十分です。

② 自社の経営方針・経営陣からのリクエスト
・ミッション、ビジョン、戦略
・中期経営計画に基づくマネジメント課題
・経営陣からの要望


このステップで重要なのは、資料やデータだけでなく、経営陣から直接話を聞くことです。情報を得られるだけでなく、その後の育成施策に対するサポートも受けやすくなります。

管理職育成には経営陣の協力が不可欠です。研修での登壇やメンター役など、関与が必要な場面は多くあります。加えて、管理職の上司は経営陣であることが多いため、良好な関係性が成果につながります。

③ 部下からのフィードバックやリクエスト
・メンバーのマネジメントで抱えている悩み
・経営陣や上司との関わりで感じる葛藤
・部下との関わりで感じる課題や悩み
・日頃の業務で課題だと感じていること
・管理職育成に対する期待


方法は、「アンケートを実施する」「何人かを選んでインタビューする」の2つがあります。

理想は両方行うことですが、時間やリソースが限られている場合はインタビューがおすすめです。アンケートでは文面回答が中心となり、どうしても表面的な情報にとどまりがちです。
一方で、マネジメントの課題は多くの要素とつながっているため、深掘りできるインタビューの方が有効です。

④ 最近の育成トレンド
・大きめの書店での経営・ビジネス書チェック
・外部専門家へのヒアリング


WEB情報だけでは偏る可能性があるため、大きめの書店で経営書やビジネス書の棚を見たり、外部の専門家に意見を聞いたりするのが有効です。

リサーチの目的は「完璧に調べること」ではなく、「管理職育成に必要な要素と不要な要素の大まかな方向性を見出すこと」です。
最初にリサーチを行うことで、育成施策の軸がブレず、経営陣や現場からの協力も得やすくなります。

②目的・ゴール設定

管理職育成を効果的に進めるためには、最初に明確な目的・ゴールを設定することが必要です。

ゴールを定めないまま施策を行うと、その成果が「成功だったのかどうか」を判断できません。結果として、経営陣の主観や参加者の満足度だけで評価されてしまい、肝心のゴール達成に目が向かなくなるリスクがあります。

ゴール設定は次のステップで進めていきます。

1, リサーチした情報をもとに、管理職の「ありたい姿」を描く
2, その姿と現状を比較してギャップを確認する
3, ギャップを埋めるために解決すべき課題を明確にし、ゴールを設定する

特に「ありたい姿」を描く際には、リサーチで整理した「どうなってほしいのか」を具体的に言語化することが大切です。このとき、一般的な言葉ではなく、できれば経営陣や管理職から出てきた表現を使うと、現場に浸透しやすくなります。

明確なゴールを設定することで、施策の評価基準がぶれず、リサーチで得た情報を活かした一貫性ある管理職育成が実現します。

【関連記事】管理職研修の種類がわかる!4種類の目的別・おすすめ研修12選

③育成全体像の設計

管理職育成を効果的に進めるために、ゴールに向けた「育成全体像」を設計します。

全体像を設計せずに施策を進めると、必要な要素が抜け落ちたり、特定の施策に偏ったりしてしまいます。結果として、育成が一貫性を欠き、ゴール達成から遠ざかってしまう可能性があります。

設計の際は、「経験」「薫陶」「研修」といった観点から必要な要素を洗い出します。

【各種要素を整理する際のイメージ】

管理職育成のゴール例:共に試し、学び、成長していく

短期的な成果と中長期的な成長を意識し、未来を創っていくチームとなる

観点 必要な要素の例
① 「経験」 部下の育成に加えて、チーム全体の士気向上に向けた取り組み(組織開発)に挑戦してみる
② 「薫陶」 チームスポーツの指導者から、チーム全体の士気が落ちているときに何を考え、何を実行したのか?について話してもらう機会を設ける
③ 「研修」 部下個人の育成だけではなく、チーム全体を活性化していくためのマネジメント手法(対話の重要性、心理的安全性、ビジョン構想)について学ぶ

これにより、育成に必要な取り組みが網羅され、抜け漏れを防ぎやすくなります。
管理職育成に必要な要素の洗い出しを終えると、「何をどの程度進めればよいのか」が明確になり、実行計画を立てやすくなります

④育成計画を立てる

管理職育成を実効性のあるものにするに、リサーチや全体像設計で整理した要素を織り交ぜながら、具体的な育成計画を立てます

計画が曖昧なままでは、経験・薫陶・研修といった要素が場当たり的に実施され、効果が分散してしまいます。また、自社と外部専門家の役割分担や効果検証の視点が欠けると、リソース不足や成果の見えにくさにつながりやすくなります。

育成計画を立てる際には、次の観点を押さえましょう。

経験(OJT・疑似体験)

育成においては、実務経験が最も効果的です。しかし、新任管理職のように「いきなり現場で経験させる」のが難しい場合もあります。そうしたときには、研修におけるワークやケーススタディを通じて疑似体験を提供することが有効です。

研修での育成で特に効果が高いのは、次のようなサイクルを設計することです。

1, 研修で疑似体験を行い、知識や行動のイメージを掴む
2, そこで得た学びを実務で活用してみる
3, その経験を再度研修で振り返り、普遍的な気づきやスキルに昇華させる

この流れを繰り返すことで、単なる体験が学習へと転換され、成長の加速につながります。

薫陶(上司・先輩・対話)

上司や先輩の体験談に加え、研修での参加者同士の対話も有効です。薫陶を効果的に活かすには、目的に応じて配置するタイミングを変えることがポイントです。

・ゴールイメージを明確にしたい場合 → 育成計画の序盤に配置
・実務を経験したうえで乗り越え方を学びたい場合 → 実務経験を経た中盤以降に配置

また、薫陶を単なるインプットで終わらせないことも重要です。
そこで得た気づきや学びを言語化する時間を設けることで、参加者自身の行動に落とし込みやすくなり、定着が進みます。

研修(テーマ設定)

ここまで経験や薫陶の要素を整理できていれば、研修で何を扱うべきかがより明確になります。

【参考】管理職に期待される研修テーマ例

この段階では、必要なテーマを洗い出し、さらに「どこまで自社で行い、どこから外部専門家に依頼するか」を整理することが重要です。

管理職育成は専門性が高く、また「自社のやり方を見直す」場面も多いため、自社だけで完結するのは難しい領域です。一方で、自社の文化や歴史、今後の方向性を語れるのは社内人材だからこそであり、すべてを外部委託するのも望ましくありません。

したがって、専門知識や言いにくいことを伝える場面では外部を活用し、組織の方向性や現場での落とし込みは社内で実施する、という分担が望ましい形となります。

このバランスを意識することで、研修の質を高めながら、組織内での納得感も得やすくなります。

なお、人材育成は成果が目に見えにくいため、効果検証の仕組みをあらかじめ設計しておくことが大切です。もっとも有名なのが「カークパトリックの4段階評価」です。

【カークパトリックの4段階評価】

LV 内容 評価項目 手法 測定タイミング
① 反応 研修に対する印象 満足度・有益度・自己効力感 アンケート本人に対する 施策直後
② 学習 知識・技術の獲得 学習内容・理解度 テスト・ロールプレイ 施策前〜施策中
③ 行動 職場行動変容 行動変容の内容やレベル 成功体験インタビュー・行動観察など 施策数か月後
④ 成果 ビジネス成果 売上・利益・離職率 ビジネス上の成果測定・実験群と統制群の比較 施策数か月後

「レベル4:成果」は、市場の変化や自社の方針など多くの要因が影響するため、成果のすべてを管理職育成だけで説明することはできません。
そのため、このレベルは限定的な活用にとどめるのが現実的です。

「レベル3:行動」に焦点を当て、職場での行動変容の有無を確認するシンプルな調査を行うことをおすすめします。
たとえば、一部の施策に対して「どのようなことを実践しましたか?」と尋ね、その回答を集めるだけでも、行動変容に関するデータを得られます。

実務における行動変容を追いかけるアプローチは「サクセス・ケースメソッド」と呼ばれ、有効性が確認されています。


管理職育成を実効性あるものにするためには、場当たり的に施策を行うのではなく、経験・薫陶・研修の3つの要素を計画的に組み合わせることが欠かせません。

さらに、カークパトリックの4段階評価を活用し、特に「レベル3:行動」に焦点を当てて検証することで、現場での行動変容を捉え、改善の手がかりを得られます。

⑤育成施策の実施

育成施策は、計画通りに進めることが基本ですが、実際には想定通りにいかない場面も多く出てきます。
その際に重要なのは、実施しながら柔軟に調整し、次年度につながる改善点を整理する姿勢です。

以下の観点を押さえて進めましょう。

実施しながらブラッシュアップする

実際に施策を始めてみると、想定外の課題や変更点が必ず出てきます。その場での臨機応変な修正や次回以降に活かすための改善をしていきましょう。

特に外部専門家に依頼している場合は、事前に「どこまで変更に対応できるか」「追加費用の有無」を確認しておくと安心です。

改善点を整理して次回につなげる

施策を進める中では、「あれも改善したい」「ここも変えたい」というアイデアが次々と出てくるものです。しかし、すべてに即対応すると混乱を招き、成果がかえって見えにくくなるリスクがあります。

そこで、問題点をリスト化し、次の2つに分けることが有効です。

・今すぐ対応すべきもの(進行や成果に直結する重要課題)
・次回以降に回せるもの(改善は必要だが、現時点で致命的ではない課題)

後者については必ず次回企画時に確認できるよう、改善点を記録しておきましょう。

施策の実施は、単なる「計画の遂行」ではなく、「実行しながら改善していくプロセス」です。
課題の優先順位を見極め、即対応と次回対応を切り分けることで、現場の負担を抑えつつ、育成施策の質を継続的に高められます

⑥育成施策の効果検証

育成施策を実効性のあるものにするためには、施策の実施後に「④ 育成計画を立てる」で設計した仕組みをもとに効果検証を行い、次につながる改善点を明らかにすることが欠かせません。

効果検証をしないままでは、施策が成果につながったのかどうかが曖昧になり、単なるアンケート結果や印象評価だけで終わってしまいます。背景や原因を掘り下げることで、組織課題の発見や次回の企画改善に活かせます。

効果検証では、以下のようなデータを活用します。
・各種施策のアンケート
・管理職のアクションプラン・成功事例集
・上司や部下からの評判やフィードバック

これらをもとに、次のような流れで振り返りを行います。

1, うまくいったこと、うまくいかなかったことを洗い出す
2, それぞれの背景や理由、原因を分析する
3, 今後に向けて改善策をまとめる

大切なのは、うまくいったこと、うまくいかなかったことの事象だけでなく、その背景や理由、原因まで掘り下げることです。ここで組織課題などが発見できる可能性もあり、今後の企画の参考材料となっていきます。

外部専門家に依頼している場合は、所感やレポートが提出されることが多いですが、そのまま報告するのではなく、自社なりの解釈や「今後どうすべきか」の示唆を加えて経営陣に報告することが望ましいです。


効果検証は単なる結果確認ではなく、原因を分析し、次の改善へとつなげるプロセスです。これを徹底することで、育成施策は年々洗練され、組織全体の成長にも寄与していきます。

2)研修を通じた管理職育成の【成功事例】を6ステップに沿って解説

Webコンテンツ事業を展開する社員数200名規模の企業で、「M&A後の社風の違いによる混乱」と「コロナ禍の業績不振」という二重の困難に直面し乗り越えた事例をご紹介します。

この企業は、ただ「仕方がない」と諦めるのではなく、管理職育成を丁寧に進めることで、組織の混乱を乗り越え、再び成長軌道に乗せることに成功しました。

6ステップに沿って解説します。

① リサーチ

人事マネジャーのTさん(A社出身)から相談を受け、経営陣や現場マネジャーへのヒアリングを通じて状況を把握しました。リサーチの目的は、管理職に期待される役割や課題を事実ベースで確認することです。

背景には、M&Aによる企業統合の影響がありました。対等な合併ではなく、経営陣は吸収したB社出身者のみで構成されていました。その結果、人事制度が大きく変わり、降格や減給を経験した社員も出ていました。
加えて、社員数は吸収されたA社出身者が全体の6割を占め、企業文化の違いも鮮明でした。B社は体育会系の文化、A社はフラットな社風と正反対であり、そのギャップから離職者も出始めていました。

② 目的・ゴール設定

リサーチを経て、育成の目的を明確にする段階に進みました。
Tさん主導で企画会議を開催しましたが、経営陣の参加は難しかったため、代わりにB社出身で経営からの信頼が厚いMさんが参画しました。合計3回の会議を重ね、ゴールを定めていきます。

合意した方向性は、経営と現場の分断を埋め、業績を回復させるために、管理職育成を実施することでした。

ところが、その直後にコロナ禍による緊急事態宣言が発令されます。これにより管理職研修は一時中断されましたが、Tさんの強い意志で再設計が行われ、7月に企画会議を再開。オンライン前提で改めて目的・ゴールを確認しました。

③ 育成全体像の設計

「経験」「薫陶」「研修」の3要素を軸に、以下のように全体像を設計しました。

④ 育成計画を立てる

研修目的を達成するための育成計画を立てていきます。

計画の中では「研修で疑似体験→実務で試す→研修で振り返る」というサイクルを設計し、単なる知識習得に終わらせず、学びを成長へと転換させる仕組みを整えました。
薫陶のタイミングも工夫し、前半にはゴールイメージ形成を、中盤以降には実務を乗り越える力を学ぶ機会を配置しました。


さらに、Slack上で管理職グループを作り、バトンメール®を用いて研修後の実践共有を継続する仕組みを導入しました。 
バトンメールこれが効果測定の素材としても機能しました。

⑤ 育成施策の実施

研修はオンラインでスタートしました。初日、ブレイクアウトルームでは「この忙しい時に研修をする意味があるのか」と不満が噴出しました。

しかし、対話を重ねる中で「このままではいけない」という危機感が共有され、徐々に一体感が生まれていきました。

管理職研修を重ねていくごとに、管理職通しの関係性が高まり、研修内で率直な意見が出るようになりました。

回数・時期 研修当日の状況
研修1・2日目
(20年8月)
1日目はマネジャーの不満が多く出る。
2日目は「このままではだめだ」という危機感を持ち、マネジャー同士の一体感が出る。
研修3日目
(20年11月)
率直なフィードバックを行うなど、M&Aの影響が見られないほど関係性が高まっていた
研修4日目
(21年1月)
お互いの弱みや悩みを見せ合い、昔からの仲間のような関係性になっていた。
真剣ながらも笑顔で前向きに取り組んでいた。

研修での学びはバトンメール®でシェアされ、現場での実践とつながっていきました。
この循環が、管理職の行動変容を刺激する仕組みとなりました。

⑥ 育成施策の効果検証

効果検証は、研修がすべて終了してから行うのではなく、施策の進行中から観察を行いました。これにより研修内容の調整が可能になり、効果を高めることができました。

効果検証に活用したのは以下のデータです。

・各研修後のアンケート
・研修後の管理職の行動変容(現場での言動やバトンメール®)
・研修後の組織で起きたこと

M&Aによる社風の違いから生じた混乱、さらにコロナ禍による業績不振という二重の逆風の中で、この企業は着実に管理職育成を進め、売上を回復させました。

さらに、これを一過性の取り組みで終わらせず、さらに組織変革を進めるため、2年目の管理職育成へとつなげ、改善と成長を重ねていきました。
途中、withコロナで業績やサーベイの結果が悪化する局面もありましたが、その都度、経営陣や事業部長を巻き込みながら乗り越えていきました。

回数・時期 研修後の行動変容 研修後の組織で起きていたこと
研修1・2日目
(20年8月)
・バトンメールで想定以上の情報共有が活発化
成功・失敗事例が共有される
・マネジャー同士の挨拶や日常会話が増える
売上は減少し、現場では混乱が続く
マネジャー・メンバーともに疲弊
・人事へのリクエストとして「チーム力を高める具体策を知りたい」という声が上がる
※研修3日目はファシリテーション研修に変更
研修3日目
(20年11月)
経営陣への提案が出始める
・事業責任者の存在が明確になり、部下との向き合い方に変化が見られる
売上は引き続き減少し、混乱も続く
マネジャー・メンバーともに疲弊
・一方で、マネジャーを起点にレジリエンス(回復力)が高まり始める
研修4日目
(21年1月)
・経営陣・事業部長から「マネジャーの発言内容が変わった」と評価
発言に明るさ・強さが増す
マネジャー同士が「本音で語れる関係性」に進化
・マネジャー発の提案でサーベイを導入し、対話を実施
売上が回復
マネジャーを中心に変革活動が継続
・さらなる組織変革を進めるため、2年目のマネジャー研修が決定

 


この企業は、M&Aによる文化の違いとコロナ禍の二重苦の中で、管理職育成を通じて組織の混乱を乗り越えました。困難な状況においても、丁寧にプロセスを踏んだ管理職育成によって組織の回復力を高めることができます。

3)研修で管理職育成を行う際に意識すべき3つのポイント

最後に管理職育成に取り組む際の注意点について解説します。

① 知識の詰め込みで終わらせない

管理職育成では、知識の詰め込み型で終わらせないことが大切です。インプットだけでは行動変容にはつながらないためです。

管理職には労務管理や法令対応、リモートワーク下でのマネジメントなど、多岐にわたるテーマが求められます。そのためインプットに偏りがちですが、研修が育成に寄与するのは全体の約1割に過ぎません。

研修で学んだ内容を現場で実践し、他者と対話する場を設けることで、知識が「自分ごと化」され、行動に落とし込まれます

たとえば、ケーススタディやロールプレイを行ったうえで、同僚と意見交換する時間を組み込むと、理解と定着が深まります。

インプット重視の研修ではなく、実践や対話の機会を意識的に設計し、学びを行動に結びつける工夫が必要です。

② 実践と成功体験から持論を育てる

管理職育成では、実践と成功体験を通じて「自分なりの持論」を育てることが重要です。
持論とは複数の経験を元にしながら、自分なりのセオリー(マイセオリー)を導き出していくことを指します。

本や研修で得た知識、経営陣や上司からのフィードバックは多くの場合「一般論」にとどまります。そのままでは応用しにくく、現場で使いこなせません。自分の言葉で整理し、持論化することで初めて使える知恵になります

持論をつくる場・管理職同士の持論を交換する場として対話の機会や研修の場を持つことが有効です。

例えば、初回は対面研修、その後はオンラインで実践報告と何回も集まりながら、実践報告と持論の作成を行っていくケースも増えています。

知識は使って初めて力になります。研修設計では実践と振り返りを組み込み、持論を更新し続けられる仕組みをつくりましょう

③ やることだけでなく、やらないことも決める

管理職育成では「何をやるか」だけでなく、「何をやらないか」も決めることも重要です。

伝えたいことを増やしすぎると、受講者が消化不良を起こしてしまいます。時間は有限であるため、やることを増やすなら、同時にやめることも明確にする必要があります。

これはマネジメントにおいても重要なテーマでもあり、管理職の皆さんに「やらないこと・止めること」を決めてもらうのも、育成の一環として有効です。
たとえば、生産性向上の一環として「不要な会議を減らす」取り組みを行った企業では、数百時間の業務時間を創出できた事例があります。

あれもこれも伝えるのではなく、やらないことを決めてこそ学びが生きます。研修設計においても、取捨選択の視点を意識することが成功のカギです。


管理職育成を研修で進める際には、これらを意識して研修を設計することで、単なる知識習得にとどまらず、実際の行動変容につながる管理職育成が実現します。

4)まとめ|管理職の育成はアーティエンスにおまかせ

管理職育成で扱うべきテーマは多岐にわたりますが、限られた時間とリソースの中で成果を出すためには、すべてを取り込むのではなく、自社にとって本当に必要な施策を絞り込むことが重要です。
特に、管理職研修というインプットだけに頼るのではなく、経験や先輩・上司からの薫陶、そして対話や振り返りの仕組みをうまく組み合わせることで、行動変容につながる実効性ある育成が実現します。

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管理職が育ち、組織全体が前進していくプロセスは簡単ではありませんが、確実に未来を変える力になります。今の一歩が、明日の組織の成長につながっていきます。希望を持って、管理職育成に取り組んでいきましょう。

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