あなたが「ロジカルシンキング」と、もっと仲良くなれるために

更新日:

作成日:2018.7.31

「私は、ロジカルシンキングが苦手です」

 
若手社員、ときに年配社員の方からもよく聞く言葉です。
 
 
その方々に「なぜロジカルシンキングが苦手なのですか?」と訊くと、返ってくる答えは様々ですが、共通して見えてくるのは「ロジカルシンキングを使う機会があまりないから(自分にはあまり必要ない)」という考えです。
 
さて、ロジカルシンキングとは本当に、一定層の人たちには必要のないものなのでしょうか。
 
そして、ロジカルシンキングはどのように有効活用していくことが望ましいのでしょうか。
 
 
──今回は、ロジカルシンキングについてその役割から人々が持つイメージ、その活用法、鍛え方まで、詳しくお話していきたいと思います。是非ご覧ください。
 
 
 
 

目次

 
 
 
 

1)そもそも、ロジカルシンキングとはどのようなものか

 
 
はじめに、「ロジカルシンキングとはどのようなものか」について見ていきましょう。
 
すでにロジカルシンキングについてご理解の進まれている方は、この章を飛ばして次章の「2)多くの人々が持つ、ロジカルシンキングに関する3つの「固定観念」」をご覧いただいて構いません。
 
「ロジカルシンキングをまだあまりよく知らない」、「おさらいも兼ねて、もう一度確認しておきたい」という方はこのままお進みください。
 
 
 
 

ロジカルシンキングの概要

 
ロジカルシンキングは、日本語で言うと「論理的思考」。
(複雑な)情報・状況(課題や問題)を整理・分解し、適切な解決法を見出すための思考法です。
 
例えば、あなたが「ダイエットをして、5kg痩せよう」と決めたとします。
 
その際に、「とにかく痩せよう」とやみくもに運動したり、または絶食したりするのはロジカルシンキング的な思考・行動とは言いにくいでしょう。
 
「5kg痩せるためには、少なくとも『定期的な運動(有酸素運動)』か、『毎日の食事のカロリー制限』のどちらかをしていく必要がある」と考え、「今は仕事が忙しく運動をする時間をなかなか確保できなそうだから、『食事のカロリー制限』をしよう(また、その為の具体的な進め方を決めよう)」と考えていくのがロジカルシンキングです。
 
 
また、ロジカルシンキングは「客観性を身に付けるための思考」と表現されることも多くあります。
 
上に述べたダイエットの進め方でも、後半のロジカルシンキングの例は客観的に見ても「妥当性」、「適切さ」を感じられますよね。
 
一方で、これからダイエットを始めようとする人が「これから1週間絶食する!」と言い出したら、きっと周りの人はびっくりして、そのうちの何人かは考えを改めるように説得してくることでしょう。──つまり、客観性がない(乏しい)と、周囲からの同意・賛同も得られにくくなります。
 
 
このように、ロジカルシンキングは「適切な解決法を見出す」ための思考法であると同時に、「周囲の合意を得やすい見解を導き出す」思考法でもあるのです。
 
 
 
 

ロジカルシンキングの代表的な型

 
さて、ロジカルシンキングは「(複雑な)情報・状況(課題や問題)を整理・分解し、適切な解決法を見出すための思考法」と説明しました。
つまり、そのことを意識した思考でしたらそれは「ロジカルシンキング」と言えます。
 
ですが、ただロジカルシンキングをしただけで「適切な解決法」が見つかるという訳ではありません。
ロジカルシンキングには、扱っていく際に有効な「」がいくつかあり、それらを活用したほうがより「適切な解決法」に辿りつきやすくなるでしょう。
 
代表的な型は、以下の2点です。
 
 

ロジックツリー

 
ロジックツリー」は、ある1つの事象や課題について、その背景にある構造をツリー状に分解し、可視化していく為の手法です。
 
例えば前のダイエットの例ですと、対策に向けての思考をロジックツリーで表すと以下のようになります。
 

上記のロジックツリーで展開された要素から、最適な解決策(対策)を見出していく、ということですね。
 
ツリーで要素を可視化していくことによって、文章または頭の中で対策を考えていくよりも考えがまとまりやすくなります。
 
 
 

マトリックス

 
マトリックスは縦軸と横軸を使い、情報を視覚的に整理する際に活用する手法です。
縦軸、横軸にそれぞれ要素を配置し、重なったところに結果・評価などを記していきます。
 
例えば、ダイエットの例で「定期的な運動」と「毎日の食事のカロリー制限」でどちらが(自分にとって)適切かを見る際に、マトリックスを使ってまとめると以下のようになります。
 

 
マトリックスで表示すると、数ある対策のうち「どれが有効か」が、視覚的にもわかりやすくなりますよね。
 
このように、マトリックスは調査対象の情報を「整理・比較」する際に有効です。
 
 
 
◇ ◇ ◇
 
 
以上、ここまでロジカルシンキングの代表的な型として「ロジックツリー」と「マトリックス」の概要をざっとお話しましたが、「より詳しく勉強したい」という方は、アーティエンスが開催する「ロジカルシンキング・セミナー」にも是非お越しください。
 
 
 
 

2)多くの人々が持つ、ロジカルシンキングに関する3つの「固定観念」

さて、冒頭で挙げた「ロジカルシンキングは、一定層の人たちには必要のないものか」という問いについて今一度振り返ってみましょう。
 
結論から言えば、「ロジカルシンキングは誰でも有効に活用できる」ものです。
 
また、ロジカルシンキングは「適切な解決法を見出す」ための思考法であると同時に、「周囲の合意を得やすい見解を導き出す」思考法であり、これらに対して「私には無関係だ(必要ない)」と考える人は殆どいないでしょう。
 
 
にもかかわらず、ロジカルシンキングに対して少なからずの人が、「必要ない」または「苦手だ」と感じてしまうのは、大きく以下の3つがあるからだと、私は考えています。
 
 

 
「ロジカルシンキングでは、ロジックツリーやマトリックスを覚えないと使えない」という考え
 
「理論派」と「感覚派」の二者択一的な考えから、「自分は感覚派だ」という考え
 
「社会人として、ロジカルシンキングはマスターしないといけない」という考え
 

どういうことか、詳しく見ていきましょう。
 
 
 

「ロジカルシンキングでは、ロジックツリーやマトリックスを覚えないと使えない」という考え

 
非常に多くの方が誤解しているように感じられるのが、「ロジカルシンキングでは、ロジックツリーやマトリックスを覚えないと使えない(使ってはいけない)」といった観念です。
 
 
「ロジカルシンキング」=「ロジックツリーやマトリックス等の型・ツール」という図式を無意識下に持つ人は少なくありません。
 
ですが、「日常生活においてロジックツリーやマトリックスとふんだんに出くわす」という人はやや限られてきます。その為、「ロジックツリーやマトリックスに遭遇することは(あまり)ないから、自分にはロジカルシンキングは必要ない」という考えになりやすくなるのでしょう。
 
 
 
前述の通り、ロジカルシンキングは複雑な情報・状況を整理・分解し、適切な解決法を見出すための思考法です。「複雑な情報や状況」に全く遭遇しない、という人はおそらくいないはずです。
 
そして、人はそのような状況になった際、自ずと「どうしていくのが良いか」と考えます。
──つまり、そこでは皆「ロジカルシンキングを行う」という、大切な機会を持つことになるのです。
 
 
つまり、ロジカルシンキングは「日々起こりえる大切な局面において、適切な対応をしていく為の思考」であって、誰しもが関わるものです。
 
そして、ロジックツリーやマトリックスはその際にロジカルシンキングを上手に行うためのいわば「便利ツール」のようなもの──、そう考えると、ロジカルシンキングに対して、もう少し身近な感覚を持てるのではないでしょうか。
 
 

「理論派」と「感覚派」の二者択一的な考えから、「自分は感覚派だ」という考え

 
「人のタイプ」を分別する際に、よく「理論派」と「感覚派」との2つに分けて議論するケースが見受けられます。
 
例えば、「あの人は理論派だから、物事を順序立てて整理して考えるのが得意」であったり、「あの人は感覚派だから、論理では割り切れないような思考をするのが得意」であったり、似たような台詞を聞いたことがあるという方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
 
そして、自身を「感覚派」と捉える人の中には、「論理的」な要素(≒ロジカルシンキング)に対してやや距離を置くことがあります。
 
 
実際のところで言うと、「理論派」と「感覚派」はきれいに二つに分けられるものではありません。
また、人間は他の動物同様に「感情のある生き物」ですから、どんな素晴らしい理論の考えや企画を生み出す際も、そのきっかけや原動力となるのは「感情」、「感覚」です。
 
逆に、自身の中で芽生えて育みつつある「感情」や「感覚」を身近な人と共有したいと思った際には、「客観的な説明」が求められることも多く出てくるでしょう。
 
つまり、「ロジカルシンキングが出来る」からといってその人が「理論派」とは限らないのです。
多くの人から「感覚派」と思われるような感受性が豊かな人が、「ロジカルシンキングが得意である」というケースは少なくありません。
 
自身が「感覚派」と思うのは自由ですし悪いことではありませんが、それに伴って「ロジカルシンキングは苦手だ/必要ない」と考えてしまうのはやや飛躍的な考えです。
 
その「感覚」を大切に扱っていくうえでも、ときにロジカルシンキングは必要となるのです。
 
 

「職場・業務の為にロジカルシンキングをマスターしないといけない」という考え

 
ロジカルシンキングを「苦手」または「必要ない」と思ってしまう理由として最後に挙げるのが、「職場・業務の為にロジカルシンキングをマスターしなければいけない」という考えです。
 
ロジカルシンキングをはじめ「思考法」というものは、何より「自分の為」に身に付けるものです。
 
一方でロジカルシンキングを「社会人としてマスターすべき『資格』」のようなものとして扱われている企業・研修会社は少なくありません。
ロジカルシンキングの習得を「べき論」で捉えてしまうことによって、却ってその思考法の存在を遠くに感じてしまうこともあるのではないでしょうか。
 
 
もちろん、その企業・チームによっては「業務の性質上、ロジカルシンキング力が求められる」というところもたくさんあるでしょう。その際職員の方々に「ロジカルシンキングの習得」を求めるのは自然のことです。
ですが、そのロジカルシンキングを「業務上で必要な知識」の範疇に留めてしまうのはやや窮屈でしょう。
 
前述した通り、ロジカルシンキングは(社会人云々に関わらず)すべての人に関わりうる思考です。
そして、その思考は「その人の生活・人生をより適切に(豊かに)していく為」にあると考えたほうが適切ではないでしょうか。
 
 

3)ロジカルシンキングはどんなときに活用できる?

ここまで、「ロジカルシンキングが苦手/必要ない」と感じてしまう原因・背景についてお話してきました。
 
ここからは、「では実際に、ロジカルシンキングはどんなときに活用できるか」について見ていきたいと思います。
 
ロジカルシンキングの活用が活性される場面・フェーズとしては、大きく以下の3点が挙げられます
 

 
コミュニケーションの場
 
業務改善(PDCAやトライ&エラー)
 
自身の思考を深めていく際の探求
 

 
それぞれ順を追って見ていきましょう。
 
 

ロジカルシンキングの活用シーンで圧倒的に多いのは、「コミュニケーション」の場

 
ロジカルシンキングの活用シーンで圧倒的に多いのは、「コミュニケーション」の場です。
 
特に職場においては、様々な人たちがまさに「複雑な情報・状況」を伝え合う行為を行っています。
 
その際に、「伝えたい/伝えるべき内容」を「客観的に、かつ相手にわかりやすく」伝えていくうえでロジカルシンキングはとても大切なツールとなるでしょう。
 
ビジネスは、つきつめていくと「意思決定(判断)とコミュニケーションの繰り返し」と表現することができます。そして、その際にロジカルシンキングの活用が業務品質に繋がっていくことは言うまでもないでしょう。
 
 
 

業務の「PDCA」や「トライ&エラー」の取り組み品質を高めていく際

 
ロジカルシンキング的なアプローチで進めた業務は、「再現性を高められる」と言います。
 
どういうことかと言うと、感覚的なものや感性に頼るもの(例えば、「美的センス」等)はどうしても再現性が低く、他人に伝えることはおろか、ときに自分自身でも再現できないこともあります。
 
一方、ロジカルシンキングを使いながら行った業務は、次回同じ業務を行う際もその思考をなぞっていくことができるので、再現性を高められ、かつ効率アップや品質向上も見込められるのです。
 
ですので、PDCAやトライ&エラーが求められる業務においては、ロジカルシンキングの活性を高めていくべきでしょう。その活動は、あなた自身だけでなく周囲の人々の働きにも良い影響を与えていけるはずです。
 
 
 

自身の思考を深めていく探求の際

 
ロジカルシンキングは、物事の「真因」や「最適解」に向けて探求していく際にも有効です。
 
例えばちょっとした気付きや発見、閃いたアイデアは、そのままではまだ価値は高まっていません。
ですが、その気づきや発見、アイデアをロジカルシンキングで深堀りしていくことによって、価値あるものにしていくことができるのです。
 
特にクリエイティブ系の業務をされている方は、「より良いもの」を目指しての探求をされる機会も多々あることでしょう。
 
このように、ロジカルシンキングは自身の思考を深めていく探求の際も役立てられるのです。
 
 
 

4)ロジカルシンキングの鍛え方・練習方法

ここからは、実際にロジカルシンキングを鍛えていく為の手法・考え方についてお話していきます。
 
ロジカルシンキングのスキルを高めていく為に、意識していきたいことは以下の3点です。
 

 
「型」から入ろうとせずに、「どこで活用するか」から入る
 
普段使っているなにげない言葉を、客観的な説明が出来るようにする
 
自分の描いた考えを、ほかの人に観てもらう・聞いてもらう
 

 
それぞれの項目について、具体的に見ていきましょう。
 
 

「型」から入ろうとせずに、「どこで活用するか」から入る

 
前述もしましたが、ロジカルシンキング=「ロジックツリーやマトリックス等のツール」と解釈してしまうと、途端にロジカルシンキングが堅苦しい無機質なものに思えてしまうものです。
 
ロジカルシンキングは「適切な解決法を見出す」ための思考法であり、「周囲の合意を得やすい見解を導き出す」思考法であることを意識して、そのうえで「ロジカルシンキングをどこで活用すると良いか」をまず考えてみましょう。
 
活用シーンの探し方で、一つの目安となるのは「目標」です。
 
例えば、自分自身の「営業力を高めるにはどうしたらよいか」であったり、「コミュニケーションスキルを高めたい」、または「〇〇歳までに3,000万円貯金したい」など、何でも構いません。
 
それら目標に対して、「どうしたら達成できるか」をロジカルシンキングでアプローチしていくのです。
 
その際に一つだけ意識したいことは、「本当に叶えたい」目標を対象とすることです。
 
どうでも良い目標や、現実的に不可能な目標に対してロジカルシンキングでアプローチしようとしても、(当然ではありますが)良い結果には結び付きませんのでご注意ください。
 
 
 

普段使っているなにげない言葉を、客観的な説明が出来るようにする

 
私たちが普段何気なく使っている言葉、──例えば「コミュニケーション」、「営業力」、「プロデューサー」や「マーケティング」。これらの言葉に対して、客観的な説明はできますでしょうか。
 
例えば、「営業力」という言葉について、とある人が以下のようなロジックツリーを創ったとします。

さて、皆さんは上記のロジックツリーを見て、どう思われたでしょうか。
きっと、「もっとこうなんじゃないか」というポイントをいくつか見つけられるのではないかと思います。(例えば、「ヒアリングスキル」は「傾聴力」以外にもあるんじゃないか、、、等)
 
普段使っている言葉でも、こうやってロジカルシンキングで「客観的な説明」をしようとした際に、なかなか難しさを感じるものです。
ときに、同じ言葉でも他人とで大きく捉えが異なり、そのギャップに驚くこともあるでしょう。
 
ですが、そういったギャップに気付けることも、その言葉の意味・概念をより深く把握する上では大切な試みです。併せて、ロジカルシンキングの練習にもなるので、一石二鳥と言えるのではないでしょうか。
 
 
 

自分の描いた考えを、ほかの人に観てもらう・聞いてもらう

 
前に述べました通り、一つの言葉・概念において、その捉え方は人それぞれです。
つまりは、私たちが一つの対象をロジカルシンキングでアプローチした際に、その答え(結論)もまた様々になることもあるでしょう。
 
その際に、「どちらの答えが正しいのか」に目を向けるのではなく、「なぜこういった答え(結論)の違いが出たか」に目を向けるのです。
すると、段々と自身(もしくは相手)の思考の癖が見えてきます。
その「思考の癖」の存在を知ることがロジカルシンキングのスキル向上にも役立つのです。
 
 
ロジカルシンキングは複数人で行っていくことによって探求もより深まると言われています。
 
まずは自身のロジカルシンキングで導き出したプロセスや結果を、「この事柄について、こういう風に考えたんだけど、どう?」といった風に親しい人にも共有してみましょう。 
 
聴いた人の返答から、また思いもしない気付きが産まれ、それがまた思考の深まりに繋がっていくのです。
 
 
 

まとめ) 「あなたのロジカルシンキング」は、あなたの日常と未来を創る

ここまでお読みになられて、いかがでしたでしょうか。
 
ロジカルシンキングは、「誰がやっても答えはひとつ」というものではなく、思考する人の感情や価値観、または周囲に取り巻く状況・環境によっても答え(結果)が変わってくるものです。
 
つまりは、あなたが描いていくロジカルシンキングは、あなたの「個性」も色濃く反映するものなのです。
 
そしてロジカルシンキングで導き出した結果は、必ずあなたの「これから」にも影響していくことでしょう。
 
──そう考えると、ロジカルシンキングについて、もっと身近に感じながら接していこう──そんな気分にはなりませんでしょうか。