研修とは、何か?│能力開発において研修が必要な3つの理由

更新日:

作成日:2017.8.22

先日、とある研究機関で行われた「企業研修についてのワークショップ」という会合に参加してきました。

その会合では、「企業が研修を効果的かつ効率的に進めていくためにはどうすれば良いか」ということについて対話と議論を重ねていきました。
いわば、「研修を考える研修」といったところでしょうか。参加された方々は、私のような研修事業を営む企業の方であったり、または人事部の教育・研修担当の方であったり、どの方も「研修」について四六時中考えているような人たちでした。

その日のワークショップでは非常に興味深い、かつ刺激的な意見が飛び交い、その中でも特に議論が過熱したテーマは、「研修は、そもそも何のために行うのか」ということでした。

あまりにも普通なテーマで、お読みになられている方々の中で「え…そこ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。ですが、最近においてはその「研修の目的」自体が、非常に多様化される傾向にもあるのです。

そこで今回は、研修の目的 ──「企業は、なぜ研修を行うのか」について、お話していきたいと思います。

このコラムで分かること

  • 研修を行うの目的
  • 能力開発において研修が果たす役割
  • 研修の真の目的を達成していくために大切なこと
執筆者プロフィール
迫間 智彦
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

専門性:ファシリテーター管理職組織開発・組織変革

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1)研修の真の目的とは

 端的に言うと、研修は「個人の成長を促していくため」に行います。

これが研修の大きな目的です。そして、企業内研修は、その組織に関与する個人の成長は、組織の成長に繋がっていくという前提のものと行われます。つまり、研修を行うことによって、「個人と企業の成長」が促進されるということですね。

ですが、「個人の成長」を促すのは企業研修の専売特許かというと、言うまでもなくそのようなことはありません。OJTや実践型学習、その他自己啓発だってあります。

例えば、日々の忙しい業務の合間に「研修を受けるために、その期間は終日業務をしない」ことに対してどこまで合理的と捉えられるかは、研修そのもののテーマ性や品質もさることながら、組織や人の研修に対する考え方、価値観によっても変わってきます。

併せて、近年においては人々の働き方の多様性も増し、個人が組織(企業)に抱く意義や期待も変容してきています。「個人の成長」=「組織の成長」という図式が必ずしも全てのシーンで当てはまるかというと、そうとは言い切れないときも少なくないでしょう。 

つまりは、企業研修の目的は、(近年になって特に、)「個人の成長を促していくため」だけではなく、「その他のプラスα」も必要になってきているのです。では、その「プラスα」とは何か。──それこそが、冒頭でお話した「研修を考える研修」の、参加された方々が特に熱量を持って議論・対話された内容でした。 

2)能力開発を行うにあたって、研修の割合は10%?

少し視点を変えて、研修自体も内包される「能力開発」という観点でお話してみたいと思います。

個人の「能力開発」を行うにあたって、どのような要素がどれだけ必要とされるかというと、通常はOJT(仕事での経験)が70%、上司や同僚とのコミュニケーションが20%、そして研修・自己学習の割合は10%程と言われています。

能力開発の構成要素

 図内の構成では、「研修・自己学習」の占める領域はかなり小さめですね。 多くの組織にて、(わずか10%のために)「日々の業務の時間を潰してまで研修を受ける必要は本当にあるのか」という問題提起が出てくるのも、理解できないことではないでしょう。

ですが、この「能力開発の構成要素」の図で意識すべきは、まさにその研修・自己学習が持つ10%の「重み」についてです。

その重みについて、少しだけ想像を働かせてみましょう

例えば、研修・自己学習の領域が10%ということは、10日間働いた際にそのうちの1日分の時間は、研修や自己学習にかけるようにする──それくらいの配分で行うことが、効果的かつ効率的な能力開発になるということです。

もしくは、人が社会人として働く期間を20歳から60歳までの40年間としたときに、研修・自己学習にかける10%の時間は日数で言うと800日、時間数で言うと6,400時間にも及びます(1年間の稼働日を200日とした場合)。

そのように見ていくと、研修・自己学習の「10%」はイメージ以上に大きな領域のものであり、他のOJTや上司・同僚とのコミュニケーションと同等に「相応に重要なもの」として扱っていく必要がある──というふうに、考えもシフトされやすくなるのではないでしょうか。

そして、ここから更に「能力開発の際に、私たちは研修・自己学習になぜこれだけの時間をかける必要があるのか」を考えることが、今回のテーマ「研修の真の目的とは何か」という問いにも繋がっていくのです。        

3)能力開発において、「研修」が必須とされる主な3つの理由

能力開発に研修が必須とされる理由──それは、大きく以下の3点があります。    

 ・実務では経験できないような学び・気付きを得ることが出来るため 

・研修という「非日常」の場から、「日常」(日々の業務)を振り返れるため

・参加者同士で学びを「共創」し、気付き・発見を共有・最大化していけるため  

    これら3つの理由は、そのまま「研修の目的」にもなりえるものです。  
 

そして今回注目すべきは、2点目の「研修という「非日常」の場から、「日常」(日々の業務)を振り返る」ことと、3点目の「参加者同士で学びを「共創」し、気付き・発見を共有・最大化していく」ことです。

情報が日々肥大化されていき、かつ変化・変容の激しさも増し続けている現代社会において、多くの業界・企業で業務の複雑化や困難化が顕著に出るようになりました。
そのような中で、各従業員が日々の業務から離れての「振り返り」の機会を持つことは、殆どの組織において今まで以上に強く求められているところでしょう。

また、個人と組織の関係性が以前のように強固なものでなくなりつつある現代においては、研修の場における「共創」が、参加者間または参加者─組織間の関係性やコミュニケーションの在り方について考えるうってつけの機会にもなります。

つまりは、複雑かつ変容性の高い業務を持つ組織であればあるほど、または組織内における個人との関わり合いが希薄化される傾向にあればあるほど、「研修」が持つ役割・目的は、それらに対応していけるように幅広く形を変えていくものなのでしょう。
この点が、冒頭でお話した「研修の目的が多様化されてきている」とお話した所以です。        

4)具体的な研修の目的は様々。そして、その目的を組織─参加者でしっかり共有していくことが大切。

ビジネススキルからスタンス・マナー、コミュニケーション、トレーナー育成、リーダーシップ、管理職その他さまざまな研修ラインナップがある中、近年では新たに「振り返り」や「共創(関係性)」といったテーマの研修が扱われることも多くなりました。

研修の具体的な目的もまた、「多様化」の一途をたどっています。
   

例えば、皆さんの企業で「新入社員研修」を行う際の目的はどうでしょうか。

「社会人基礎スキルの獲得」から、世代間ギャップを埋めていくための「コミュニケーションスキルの向上」や「組織間の関係性を高める」、「半年間を振り返り、これからのキャリア形成を培う」など、きっと目的は複数で、幅広いものであることでしょう。

そして、目的が複雑で幅広くなるほど、その目的が組織間で適切に共有されることも難しくなっていきます。能力開発の重要な打ち手である「研修」において、目的の解釈が組織内でずれが発生することが無いように、ひとつひとつの研修の要件をしっかり定義して、共有していくこと──これも、研修を成功させていくためのとても重要なポイントです。

言ってしまえば、「研修の目的」または「企業はなぜ研修をおこなうのか」──その問いの解を組織で探求しているところから、すでに企業研修はスタートしている。──研修とは、そのようなものなのかもしれませんね。

皆様が研修の企画・実施を行っていくうえで、今回の記事が少しでもお役に立てることを、心より願っております。

今一度振り返ってみたとき、みなさんは現在の研修の目的をどのように解釈しているでしょうか。また、経営層や研修受講者、送り出す側である現場の管理職・社員に向けて、どのように研修目的を共有しているでしょうか。

アーティエンスでは、研修前後のフォローにも力をいれており、研修目的の共有と、研修後に気づきを育みやすい環境をつくることにも力をいれています。事例を聞いてみたい、相談に乗ってほしいなど、お困りのことがありましたら、お気軽にお問合せ下さい。    

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