管理職の意識改革を加速する3つのプロセスと、7つのポイント

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「管理職が変わり、この危機的な状況を乗り越えていかなければ…」
「組織がさらに成長していくためには、管理職の意識改革が必要だ」

これらの考えをもって、本コラムにたどり着いたのではないでしょうか。

「管理職の意識改革を行うために、厳しい研修をしよう」
「管理職の意識改革を行うために、合宿研修をしよう」

実は、こうした研修を実施するだけでは管理職が変わることはありません。
「一カ月もたたないうちに元に戻ってしまった。費用対効果が全くなかった」といった声をよく聞きます。

厳しい合宿研修では、管理職を極限状態まで追い込む洗脳を用いたアプローチを行う場合があります。そのため瞬間的には変わったり、しばらくは洗脳状態が続くケースもあります。ただし、洗脳は簡単に解けます。

管理職の意識改革を行う上で、無理やり変えるというアプローチは、有効ではありません。
本コラムでは、管理職の意識改革を行う際に押さえるべきアプローチをお伝えします。

最後までお読みいただくと、管理職の意識改革の進め方や、必要なポイントを理解できます。

監修者プロフィール

迫間 智彦

X:@tohaza_atc youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

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1. 前提|管理職自身が、意識改革に対して腹落ちすることが重要

管理職の意識改革を行う上で、大前提として意識すべきことは「管理職自身が、意識改革に対して腹落ちすること」です。

管理職の意識改革を求める組織は、必ず理由があります。理由も伝えられず「変わりなさい」と言っても、混乱や不満を生むだけです。よくお聞きする理由は、

・業績が悪化し、この状況を乗り越えるためにも、管理職に危機感をもって変わってほしい
・事業成長を加速させるためにも、管理職が中心になってほしい
・上場準備に入り、今までのやり方を改めてほしい
・管理職として、問題があるメンバーや、物足りないメンバーを何とかしたい

などです。管理職の意識改革を行う上で、大前提として「管理職自身が、意識変革に対して腹落ちすること」は意識しましょう。

※ 「管理職の意識改革」を行う理由を管理職に伝えていく際には、より解像度を上げていく必要があります。「2-1. 管理職の意識改革が必要な理由・ゴールを明確にする」で、詳しくお伝えしていきます。

2. 管理職の意識変革は3つのプロセスで進める

管理職の意識変革は、下記3つのプロセスで進めていきます。

・管理職の意識改革が必要な理由・ゴールを明確にする
・管理職の意識改革をどのように行うのかを考える
・管理職の意識改革を推進し、支援する

それぞれ詳しく説明していきます。

2-1. 管理職の意識改革が必要な理由・ゴールを明確にする

まず、管理職の意識改革が必要な理由・ゴールを明確にします。
ここでは、可能な限り解像度を上げていくことが必要です。解像度を上げていくことで、管理職がどのように変わっていく必要性があるかを理解しやすくなります。

例えば「管理職が物足りないから変わってほしい」ではなく、「どのような意識変革や行動変容(ゴール)が起きてほしい」かを考えていきます。「管理職がプレイヤーとしてパフォーマンスは高いが、チーム力を上げていく意識を持ってほしい」などです。

下記のように、管理職がどのように変わっていくかのゴールを設定すると良いでしょう。

管理職の意識改革が必要な理由・ゴールを明確にしていきます。

2-2. 管理職の意識改革をどのように行うのかを考える

「管理職の意識改革が必要な理由・ゴールを明確」が決まったら、管理職の意識変革をどのように行うのかを考えます。対策を洗い出し、最も投資対効果がよい方法を考えていきます。
例えば、下記のように対策を洗い出して、対策を決定していきます。

・管理職に対して、1on1や研修を行う
・組織図(組織構造)を変えていく
・システムを入れて、業務フローを見直していく
・管理職の業務調整を行い、新しい仕事にアサインする

このようにして、管理職の意識変革をどのように行うのかを考えます。

2-3.管理職の意識改革を推進し、支援する

ここからは、実行のフェーズです。

いよいよ「管理職の意識改革を推進し、支援する」のプロセスに入っていきます。この時に注意してほしいことは、推進のみではなく、管理職に対して支援することです。人は、変化することに強いストレスを持ちますし、すぐには変わりません。だからこそ、企画メンバーが支援していく必要があります。

推進の進め方は、各施策によって変わってきます。「2-2. 管理職の意識改革をどのように行うのかを考える」で、丁寧に進め方を決めておくといいでしょう。

支援方法は「2-2. 管理職の意識改革をどのように行うのかを考える」で考える必要がありますが、いくつか支援方法例がありますので、ご紹介します。

・企画側や経営陣・事業責任者との1on1や対話の場を設ける
・(新サービスの導入など)予算を多めに取り、管理職への支援に活用する
・外部パートナーのコーチングやカウンセリングを導入する
・普段からコミュニケーションをこまめにとる

上記は一例になります。何ができるかを考えて、支援していくといいでしょう。このようにして、管理職の意識改革を推進し、支援していきます

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3. 管理職の意識改革で必ず押さえたい7つのポイント

管理職の意識改革を行う上で必ず押さえておきたい7つのポイントがあります。

・経営陣から適切なタイミング・伝え方で、管理職の意識改革が必要な理由を伝える
・管理職のインサイドアウトと、健全な危機感を持つ
・管理職自身が手ごたえや成長を感じる機会を設ける
・管理職への支援ができる体制を作る
・個ではなく、全体でとらえる
・アジャイルに動いていく
・(参考)経営者も、部下も、社員全体で変わる

それぞれ説明していきます。

3-1.経営陣から適切なタイミングと伝え方で、管理職の意識改革が必要な理由を伝える

管理職の意識改革で必ず押さえたいポイントとして、「経営陣から適切なタイミングと伝え方で、管理職の意識改革が必要な理由を伝えること」が必要です。

タイミングは、管理職の意識改革を行う対策の連絡の際や、説明会などを設けるといいでしょう。研修などの場合は、研修前の挨拶で行うのも、方法の一つです。
伝え方に関しては、下記ポイントを抑えるといいでしょう。

経営陣の本気度
管理職への配慮

この二つを抑えることで、管理職に寄り添いながらも、組織として強いメッセージを伝えることが可能です。
一例として、当社のお客様が管理職研修を実施する際に送った研修の案内文をご紹介します。
このように「経営陣から適切なタイミングと伝え方で、管理職の意識改革が必要な理由を伝えること」が必要です。

(参考) 研修での挨拶に関して、詳しく知りたい方へ
【場面別・立場別】研修における挨拶とは?具体的な内容・注意点についても説明

3-2.管理職のインサイドアウトと、健全な危機感

管理職の意識改革で必ず押さえたいポイントとして、管理職のインサイドアウトを促し、健全な危機感を持つことが必要です。人は自身がこうありたいと思った時や、変わらないといけないと思った時しか変われません

まずは、管理職自身がどのように変わりたいかというインサイドアウトを、探求していく必要があります。研修でも1on1でも、かまいません。管理職自身のありたい姿を探求し、自組織が求めている管理職の意識変革と統合していく必要があります。始めから完全一致することは難しいため、小さくてもいいので重なる部分をも探し、管理職の当事者意識を促していきます。

管理職のインサイドアウトを促せたら、健全な危機感を持っていく必要があります。ありたい姿のみでは、絵に描いた餅になってしまいます。管理職自身や組織の現実を見て、ありたい姿に向かうためにまず変わらないといけない部分を探求します。

このように「管理職のインサイドアウトを促し、健全な危機感を持つこと」が必要です。

3-3.管理職自身が、手ごたえや成長を感じる機会を設ける

管理職の意識改革で必ず押さえたいポイントとして、管理職自身が、手ごたえや成長を感じる機会を設けることが必要です。人は、手ごたえや成長実感を設けると、より変わろうという意識が強くなります。

具体的な方法としては、振り返り(リフレクション)の機会を設けることが必要です。この時に、他の管理職との対話や、上長との1on1を行うといいでしょう。

注意点としては「対話や1on1」の場がダメ出しの場などにならないようにすることが必要です。小さくてもいいので、ポジティブな変化に目を向けることが必要です。そのためには「対話や1on1」の場の質が上がるように、対話の場をホールドするファシリテーターの育成や、1on1ミーティングの質が上がるためのトレーニングも必要になるでしょう。もちろん、外部にファシリテーションや1on1をお願いするのも一つの方法です。

このように「管理職自身が、手ごたえや成長を感じる機会を設けること」が必要です。

(参考)管理職研修を通して、管理職が手ごたえや成長を感じた事例
あるお客様の管理職研修で、フォロー研修を実施した内容です。

フォロー研修のオープニングでは、ネガティブなコメントが出てきました。

「研修をやったからと言っても、私は変われなかった」
「結局、学んだことを活かせていない」

ただ、そんな中で1名の方が「事前ワークで部下にインタビューした際、部下の変化から自分自身の変化を感じた」と話されてました。それを機に、管理職の皆さん一人ひとりの変化や周りの変化を認知していきました。他者との対話と内省によって、自身の認知は広げることができます。

【フォロー研修の様子】より詳しく本事例を参考にしたい方は、下記コラムをお勧めします。
【Q&A付】効果的な管理職研修の内容とは?失敗しないコツを事例で徹底解説!

3-4.管理職を支援できる体制を作る

管理職の意識改革で必ず押さえたいポイントとして、管理職を支援できる体制を作ることが必要です。意識改革を行うと、管理職自身に負荷が大きくかかります。改革は、枠組みを変えていく行為であるため、否定と破壊があるためです。その時に、管理職への支援がなければ、負担が増えます。最悪、管理職が潰れる可能性もあるでしょう。

支援できる体制としては、企画側が窓口を設けておくといいでしょう。具体的には下記のような対策があげられます。

・企画人や経営陣との1on1や対話の場を設ける
・(新サービスの導入など)予算を多めに取り、管理職への支援に活用する
・外部パートナーのコーチングやカウンセリングを導入する
・普段からコミュニケーションをこまめにとる

このように「管理職を支援できる体制を作ること」が必要です。

(参考) 管理職をつぶさない組織にするために
【管理職が潰れない組織へ】管理職のメンタルヘルス対策

3-5.個ではなく、全体でとらえる

管理職の意識改革で必ず押さえたいポイントとして、個ではなく、全体でとらえることが必要です。「管理職の○○さんがダメだ」や「当社の管理職の能力が低い」ではなく、組織課題としてとらえていくことが必要です。

なぜなら、犯人捜しのように個に焦点をあてると、その場で問題が解決したように見えても根本的な課題は解決されていないことが多いです。管理職がダメなのではなく、管理職がパフォーマンスを発揮できていない環境になっている場合もあります。まずは組織として、管理職がパフォーマンスを発揮できない背景には何があるのかを探していくといいでしょう。

よくあるケースとしては、管理職のパフォーマンスは高いが、経営者がストップをかけているというものです。例えば、管理職が新しいことをしようとしていても、経営陣から下記のようなコメントが出ることもあります。

・リスクが高すぎるのではないか?
・本当に成功できるのか?
・うまくいくイメージがわかない

新しいことはリスクもありますし、成功確率も低いです。それを会社として一体感をもって、どうやって進めていけば良いのかを考えなければならないにもかかわらず、このような発言が出ます。
そうすると、管理職から新しい提案はなくなってきます。提案がなければ経営陣は管理職はダメだというレッテルを張ります。そうして、悪循環が強化されていきます。

管理職がダメだではなく、組織全体としてとらえていくといいでしょう。
このように「個ではなく、全体でとらえる」が必要です。

(参考) 個ではなく、全体でとらえて、管理職の意識改革がうまくいったケースの事例
中小企業におすすめの管理職研修を徹底解説!失敗しない方法とは?

(参考) 全体をとらえていく思考方法
システム思考とは|「複雑な課題」を解決に導く思考法を事例で解説!

3-6.アジャイルに動いていく

管理職の意識改革で必ず押さえたいポイントとして、アジャイルに動いていくことが必要です。管理職の意識改革を行う際、当初企画した内容とずれが起きることは多くあります。

筆者の経験をご紹介します。あるお客様から「当社の管理職は、新しいことにチャレンジしない。チャレンジする意識を醸成したい」というご相談がありました。その後、管理職との対話で出てきたことは「次々と新しい役割や仕事が振られて、自らチャレンジする余裕などない」ということでした。管理職は、とても疲弊していました。

そのため、管理職と経営者との対話を行ったところ、戦略に沿わない経営陣の思い付きの施策が、複数走っていることがわかりました。本来、戦略とは、選択と集中を明確にすることですが、組織のリソースが分散されている状況が見えてきました。経営陣は、管理職に詫び、戦略にそぐわないものは、勇気をもってストップしました。管理職のリソースの確保ができたので、戦略に則したチャレンジを管理職に考えてもらうことになりました。

本事例では「管理職がチャレンジしない。だからチャレンジさせる」のまま進めていては、おそらくより管理職の負担が増え、管理職の意識変革が進まないどころか、既存事業にダメージがあったかもしれません。

このように今の状況にあわせて「アジャイルに動いていくこと」が必要です。

(参考) アジャイルとは
「アジャイル)」とは「素早い」「機敏な」といった意味。「状況の変化に対して素早く対応・適応すること」を表す言葉として、ビジネスで用いられている。

3-7.参考|経営者も、部下も、社員全体で変わる

管理職の意識改革で必ず押さえたいポイントとして、経営者も、部下も、社員全体で変わることが必要です。管理職だけでは、組織は変わることはできません。そのため、まずは管理職が中心に進めたとしても、経営者も、部下も含めた社員全体で変わる内容にしていくといいでしょう。
具体的な方法としては、

・経営陣は管理職の支援やフォローを行うこと
・管理職の意識変革と実業務とを明確につなげ、部下の業務とも連動する内容にすること

です。
このように「経営者も、部下も、社員全体で変わること」が必要です。

4. 【NGポイント】管理職の意識改革が進まないのは、なぜか?

管理職の意識改革が進まない理由には、下記の4つがあります。

・意識改革が押し付けになる
・管理職や企画側が、変化に気づかない
・経営者は変わらない
・助け合う仲間がいない

それぞれ説明していきます。

4-1.意識改革が押し付けになる

意識改革が押し付けになると、管理職は前向きに変わろうとしません。
なぜなら、インサイド・アウト(内発的動機)ではなく、アウトサイド・イン(外発的動機)になるためです。アウトサイド・インは、やらされ感を持ったり、受け身が強くなります。この時点で、意識変革は進まないことが明確です。

押し付けになる代表例として、冒頭で説明した「厳しい管理職への合宿研修」などは、まさにこれが当てはまります。
意識改革が押し付けになると、管理職の意識改革は進みません。

(参考) アウトサイド・インと、インサイド・アウト

4-2.管理職や企画側が、変化に気づかない

理職や企画側が、変化に気付かないと、管理職の意識改革は進みません。
人は、手ごたえや成長を感じると、より変わろうと思います。手ごたえや成長という変化がなければ、管理職の意識改革は進まないでしょう。

よくあるケースとして、管理職研修をしたが、自身やチームの変化に気付かず「自分たちは変われない」や「研修は意味がない」という認知になってしまうケースです。

このように管理職や企画側が、変化に気付かないと、管理職の意識改革は進みません。

4-3.経営者は変わらない

「管理職に変われ」と言いながら、経営者が変わらない場合は、管理職の意識改革は進みません。管理職が変わろうとしていても、経営者が変わらなければ、自分たちのチャレンジや苦労は報われないと思うでしょう。

残念ながら「管理職に昔の成功体験を捨てて、チャレンジしてほしい」といいながら、経営者自身が昔の成功体験に固執し、チャレンジしないなどのケースはよくあります。

このように経営者が変わらなければ、管理職の意識改革は進みません。

3-4.助け合う仲間がいない

助け合う仲間がいないと、管理職の意識改革は進みません。意識改革は、自身の価値観を否定することも多いです。新しい考えに移行する際には、苦労が多くなります。

そのため、管理職自身が変わろうとしながらも、変われずに苦労することが多いです。頭ではわかっているけど、行動がついてこないということです。部下や上司からは、「言っていることとやっていること」が違うととらえられることもあります。このようなときに、ともに支えあい、変わっていく仲間が必要です。

このように助け合う仲間がいないと、管理職の意識変革は進みません。

5.まとめ

本コラムでは、管理職の意識変革についてお伝えしました。

具体的には、下記内容です。

・前提|管理職自身が、意識改革に対して腹落ちすることが重要
・管理職の意識改革の進め方
・管理職の意識改革が進まない理由
・管理職の意識改革で必ず押さえておきたい7つのポイント

管理職が変わることで、組織は大きく変わります。ただし、管理職にかかわらず人が変わるというのは、とても難しいことです。変わるためには、自身を否定し、今までの考え方・やり方を壊さないといけないためです。

「管理職、変われ!」ではなく、企画側や経営陣が、管理職に寄り添いながら、管理職を信じ、かかわり続けてほしいと思います。

もちろん、管理職だけではなく企画側も、苦しいことも悩みも出ると思いますが、その苦しさを乗り越えて、管理職にとっても、皆さんにとっても、素晴らしい未来を切り開いてほしいです。

アーティエンスでは管理職研修を通して、管理職の意識変革や組織変革のご支援をしています。ご興味がある方は、お気軽に弊社までご相談くださいませ。

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