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[ コラム ]
すぐ使える!ファシリテーション手法を公開!│成功循環モデルを強化する
- ✓会議が非効率で参加者の意欲が低い✓会議を開いても意見が出ない✓意見の対立が解決せず、実行に移せない会議やワークショップの進行に悩んでいる方は、すぐ使えるファシリテーション手法を取り入れることをおすすめします。「成功の循環モデル(より良い組
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会議の質を変える!ファシリテーションで使えるフレームワーク6選
更新日:
「議論が途中で止まってしまう…」
「『自由に話してください』と言っても、誰も発言しない…」
「話し合っているのに、結局“本音”が出てこない…」
ファシリテーションをしていて、そんなもどかしさを感じたことはありませんか?
多くのファシリテーターが同じような悩みを抱えています。
実は、「自由に議論・対話をしましょう」だけでは、参加者の思考は深まりません。自由すぎる場では“何をどう話せばいいのか”が分からなくなってしまうからです。
そこで役立つのが、ファシリテーションにおけるフレームワークです。
フレームワークを上手に使うことで、議論が整理されるだけでなく、参加者の思考が可視化され、相互理解と共創が生まれます。
本コラムでは、ファシリテーション時に活用したい6つのフレームワークと、それらをパワフルにする3つのポイントを具体的に紹介します。
適切なフレームワークを取り入れることで、議論・対話の質は格段に高まります。
会議やワークショップが「話して終わり」ではなく、目的を達成し、行動が生まれる場へと変えるために、フレームワークを上手に活用できるようにしましょう。
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。
目次
1)ファシリテーション時に使いこなしたいフレームワーク6選
ファシリテーションを行う際に押さえておきたいフレームワークを6つを取り上げます。
場のフェーズ(事前準備・導入・整理・設計・振り返り)に応じて使い分ければ、議論は焦点が定まり、意思決定と実行が進みます。
ファシリテーションをする際に、まずは知っておいてほしいフレームワークを6つ紹介します。
①OARR
「OARR(オール)」とは、デイビッド・シベッツ氏が提唱した会議やワークショップをスムーズに進めるためのフレームワークです。
ファシリテーションを行う上で欠かせない、基本かつ実践的なツールと言えます。
OARRは、ファシリテーションの場に入る前の準備段階で作成する必要があります。
この準備を丁寧に行うことで、会議の目的・進め方・役割分担が明確になり、ファシリテーターは安心して場をリードできます。
結果として、会議やワークショップの質を格段に高めることができます。
例えば、OARRに記載のOutocome(目的・目標)を、下記のA社B社で比較してみてください。どちらのほうが会議の質が高まるかは一目瞭然です。
| A社の営業会議 | B社の営業会議 | |
|---|---|---|
| 目的 | 売上達成のため、目標と現状の差分を明確にする。 そして、事業戦略・戦術のPDCAを回すための情報収集と整理を行う |
今期の売上達成 |
| 目標 | 事業戦略・方針のもと、顧客に素晴らしい価値を提供するための営業アプローチを、チーム全体で考える | 現状を確認し、達成するためのアプローチを決める |
このように、目的や目標を具体的に言語化しておくかどうかで、会議の質は大きく変わります。
以下は実際の経営会議で使用された「Agenda(アジェンダ)」と「Rule(ルール)」の事例です。参考までに紹介します。


※このミーティングでは「Role(ロール)」はファシリテーターのみでしたが、書記やタイムキーパーなどを設定しても良いでしょう。
▶フレームワークも学べる!ファシリテーション研修公開講座(オンライン)・講師派遣型について詳しくみる
OARRを事前に整理しておくことで、会議の目的が共有され、参加者全員が同じ方向を向いて話し合えるようになります。
ファシリテーションの質を高め、会議の成果を最大化するうえで、OARRの活用は非常に有効です。
②分かっていること、分からないこと
「分かっていること・分からないこと」は、対話や議論の冒頭で活用することで、参加者同士の背景理解を深められるフレームワークです。
このフレームワークを使うと、各自の知識や認識の違いが明確になり、参加者全員の認知が広がります。また、深い対話を行う前の「準備段階」として位置づけることで、話し合いの方向性を共有しやすくなります。
互いの認識を可視化し、議論の質を高めるために有効です。
下記のような表を用意し、参加者に「分かっていること」と「分からないこと」を整理してもらいます。
実施の流れは以下の通りです。
1. 個人で考える(約3分)
言語化の時間を取ることで、思考が整理されます。
2.「分かっていること」を順番を決めずに全員がシェアする
3.「分かっていないこと」を順番を決めずに全員がシェアする
4. 全体で表を見ながら感想や質問、新たに出てきたことを話し合う
このように一つひとつ丁寧に共有していくことで、「共に創る感覚(共創)」が自然と生まれます。
「分かっていること・分からないこと」を整理し共有することは、すぐに大きな変化をもたらすものではありません。
しかし、お互いの背景を理解し合うことで、その後の対話や議論の深まりに大きな影響を与える重要なフレームワークです。
③マトリックス
マトリックスは、2つ(もしくはそれ以上)の軸で情報や状態を分類する万能型のフレームワークです。
縦軸と横軸、あるいは上下左右に基準を置いて構造化することで、感覚的な議論を可視化し、論点の整理や判断の基盤を整えることができます。議論や対話の整理から意思決定まで、幅広い場面で活用できます。
たとえば、自身の状態を整理する際にもマトリックスは有効です。
① 状態整理での活用例
弊社の研修では、教室内の床をマトリックスとして区分けし、参加者が「今の自分の状態」に近い位置へ移動するという方法を取り入れています。
このように、位置で自分の状態を表現することで、他者との違いや共通点を直感的に理解できます。
マトリックスは、意思決定の際にも有効です。
② 意思決定での活用例
下記のように複数の施策を「Quality」「Cost」「Delivery」といった評価軸で整理し、比較・検討を行うことができます。
| Quality | Cost | Delivery | |
|---|---|---|---|
| 施策A | |||
| 施策B | |||
| 施策C |
このように視覚的に整理することで、どの施策が最もバランスが取れているか、判断しやすくなります。
マトリックスを活用すると、参加者同士の背景や考え方の違いが見え、対話が深まります。
また、思考の整理・意思決定・振り返りなど、あらゆる場面で活用できる汎用性の高いフレームワークです。
目的に応じて軸を設定し、ぜひ柔軟に活用してみてください。
④プロセス図
プロセス図は、さまざまな場面で活用できる万能型のフレームワークです。
プロセス図を活用することで、目標までの道筋や課題を可視化でき、チーム全体で現状認識を共有しやすくなります。段階ごとに「何を・どのように進めるか」を整理できるため、行動の抜け漏れや思考の偏りを防ぐことができます。
事業推進のゴール設定から、業務の振り返りまで幅広く応用できます。
たとえば、新規事業を推進する際には、以下のようにプロセス図を活用できます。
【新規事業のゴール設定での活用例】
ビジョン:
| Phase1 | Phase2 | Phase3 | |
|---|---|---|---|
| ゴール | |||
| 目標 | |||
| 具体的な内容 | |||
| 期間 |
このように段階ごとに整理することで、ゴールまでの全体像が明確になります。
また、振り返りの場面でも以下のように活用できます。
【クレームの振り返りでの活用例】
| 営業時 | 企画時 | 納品時 | |
|---|---|---|---|
| 顧客の反応 | |||
| 営業部の対応 | |||
| 開発部の対応 |
このようにプロセスを可視化することで、どの段階で課題が生じたのか、今後どのように改善できるのかを具体的に検討できます。
プロセス図は、「計画」と「振り返り」の両方で活用できる汎用的なフレームワークです。
状況に応じて柔軟に使うことで、組織やチームの思考を整理し、より質の高い議論や行動につなげることができます。
⑤KPT
KPTとは、次の3つの観点から振り返るフレームワークです。
| 項目 | 意味 | 内容 |
|---|---|---|
| KEEP | 続けること | 成果を上げた要素、良かった取り組み |
| PROBLEM | 改善すること | 課題・上手くいかなかった点 |
| TRY | 試すこと | 次に挑戦してみたいこと、新たな行動 |
この3つの視点を整理することで、過去の活動を単なる「反省」ではなく、次の行動につながる学びに変えることができます。
振り返りの際にフレームワークがないと、感想の共有や反省に終始してしまい、次に活かせる議論になりにくくなりますが、KPTを使うことで「何を続け、何を改善し、次に何を試すか」という整理ができ、前向きで実践的な対話が可能になります。
シンプルで使いやすく、個人・チーム・組織など、あらゆるレベルでの振り返りに活用できます。
当社では、研修やファシリテーションの実施後に必ずKPTを行っています。
KPTを用いることで、振り返りに一定の枠組みが生まれ、誰もが意見を出しやすく、建設的な議論が自然に進みます。
KPTは、シンプルながらも実践的な振り返りの仕組みです。
「KEEP」「PROBLEM」「TRY」の3つの観点で対話することで、前向きな気づきと行動が生まれ、チームの成長サイクルを加速させます。
⑥ ビジネスフレームワーク
ビジネスフレームワークは数多く存在し、ファシリテーションを行う場の目的に合わせて使い分けることが重要です。
会議やワークショップでは、テーマや目的によって求められる思考の整理方法が異なります。
そのため、どのフレームワークを使うかによって、議論の方向性や深まり方が変わります。
状況に応じて適切なフレームワークを活用することで、議論の質と生産性が大きく高まります。
たとえば、会議やワークショップのテーマによって以下のように使い分けると効果的です。
| 会議・テーマ | 活用できるビジネスフレームワーク |
|---|---|
| マーケティング会議 | STP、4P、AIDMA など |
| 問題解決会議 | ロジックツリー、5WHY、PDCA など |
このように、目的に応じて適切な枠組みを選ぶことで、議論の焦点が明確になり、結論までのプロセスが整理されやすくなります。
ビジネスフレームワークは、ファシリテーションを支える強力な道具です。
会議の目的や状況に合わせて使い分けることで、より構造的で納得感のある議論を実現できます。
その時々の目的に応じてフレームワークを理解し、積極的に活用していきましょう。
会議やワークショップを「なんとなく」進めると、目的が曖昧なまま時間だけが過ぎ、合意も行動も生まれません。
場の目的を明確にし、思考を可視化し、合意形成までの道筋を整えるフレームワークを活用しましょう。
会議を効率的に進行したいと考えている方へ
会議やミーティングにおいて建設的な議論が進まないことで、成果が得られずに悩んでいませんか?実践的なファシリテーションのトレーニングをすることで、会議の質を劇的に改善することが可能です。
- 会議の生産性が向上する
- 新しいアイデアが出やすくなる
- 会議の内容を上手く整理できる
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2)ファシリテーションをよりパワフルにする3つのポイント
ファシリテーションでフレームワークを活用する際、重要なのは「知っていること」よりも「どう使うか」です。同じフレームワークでも、使い方次第で場のエネルギーは大きく変わります。
ここでは、フレームワークをよりパワフルに活かすための3つのポイントを紹介します。
フレームワークに囚われないこと
ファシリテーションにおいては、フレームワークに囚われ過ぎないことが大切です。
フレームワークは思考を整理するための「枠組み」ですが、それ自体に固執すると、かえって自由な発想や本質的な対話を妨げることがあります。
特にビジネスフレームワークは構造的で便利な一方、使い方を誤ると、議論が形式的・表面的になりがちです。
たとえば、「5W2H」を活用する際に、すべての項目を埋めようとするあまり、内容が浅くなってしまうケースがあります。
本来の目的は思考を整理することなのに、「枠を埋めること」自体が目的化してしまうと会議の質は下がってしまいます。
フレームワークは、会議やワークショップの質を高め、目的・目標を達成するための“手段”であり、フレームワーク通りに進めることが“目的”ではありません。
会議やワークショップの内容に合わないと感じた場合には、別のフレームワークに切り替える柔軟さも持ち、より創造的で意味のある対話が生まれるようにしましょう。
MECEを意識しながらも、手放すこと
ファシリテーションでフレームワークを活用する際は、MECE(モレなく・ダブりなく)を意識しながらも、必要に応じて手放すことが大切です。
自由な議論や対話の場では、抽象と具体を行き来しながら考えを深めていくことが自然なプロセスです。このとき、多少の重なりや抜けがあるのは健全な状態であり、必ずしも整理しきる必要はありません。
ファシリテーターが「MECEを意識してください」と繰り返し伝えると、参加者は発言をためらい、思考の広がりが止まってしまうことがあります。
たとえば、第1章で紹介したプロセス図を作成する場面を考えてみましょう。
「抜け漏れがないか」「ダブりがないか」といった観点ばかりに意識を向けてしまうと、図を“埋める作業”に終始してしまいます。
本来の目的である「プロセス全体を俯瞰し、改善の糸口を見つける」という視点が失われてしまうのです。
そのため、ファシリテーターはMECEをベースとして意識しつつも、状況に応じてその枠組みを一度手放す柔軟さが求められます。
MECEは整理や構造化の助けになりますが、それに縛られすぎると、参加者の自由な発想や対話の流れを妨げてしまいます。
ファシリテーターは、構造化と創造性のバランスを取りながら、場の流れに応じてフレームワークの使い方を調整することが大切です。
共創・協働を促すこと
ファシリテーションでフレームワークを活用する際は、参加者同士の共創・協働を促すことが何より重要です。
フレームワークを使う目的は、「正しい答えを導くこと」ではなく、「多様な視点をつなぎ合わせ、新しい価値を共に生み出すこと」です。
しかし、それを誤って使うと、「誰が良い・悪い」「誰が言ったか」という評価の道具になり、分断を生み出してしまいます。
その結果、発言しづらい雰囲気が生まれ、対話や学びの可能性が閉ざされてしまうのです。
たとえば、第1章で紹介した「分かっていること・分からないこと」を活用する場面を考えてみましょう。
このフレームワークでは、参加者がそれぞれの理解を共有しますが、その際に「そんなことも分からないの?」といった反応が出てしまうと、以降その人から発言が出なくなります。
こうした事態を防ぐために、順番を決めずに発言してもらうという進め方が効果的です。順番を設けないことで、「誰が言ったか」ではなく「何が出てきたか」に焦点が当たり、共創的な雰囲気が生まれます。
また、誰が発言したかをわからなくする方法として、付箋に書いて貼る方法や、オンラインであればGoogleスライドやJamboardを活用するのも有効です。
フレームワークは評価や判断のためのツールではなく、対話と理解を深め、チームとしての一体感を生むための仕組みです。
ファシリテーターは、評価や序列をつくるのではなく、誰もが安心して意見を出し合える場を設計し、チーム全体で考えを紡ぐ関係性づくりを意識することが大切です。
この3つを意識すれば、フレームワークは単なる整理ツールではなく、組織の知恵をつなぐ強力な推進力となります。
ファシリテーターが柔軟にフレームワークを扱うことで、参加者の主体性とチームの創造性が自然と引き出されるようにしましょう。
3)まとめ
本コラムでは、「ファシリテーションで活用する6つのフレームワーク」と、「フレームワークをパワフルにする3つのポイント」を紹介しました。
フレームワークを活用する目的は、議論・対話の質を上げ、会議・ワークショップの目的・目標を達成することです。
大切なのは“正しく使う”ことよりも、場の目的に合わせて柔軟に“生かす”こと。この視点を持つだけで、フレームは単なる整理枠を超え、組織の知恵をつなぐ推進力になります。
ファシリテーションする際には、紹介したフレームワークを用いて、議論・対話の質を上げていただければと思います。
なお、アーティエンスでは、今回紹介したフレームワークを具体的にどのような場面でどのように活用するかをワークを通して学ぶファシリテーション研修を実施しています。
社内の会議の質を底上げしたい方/社内ファシリテーターを育成したい方は、ぜひお問い合わせください。貴社の状況を伺いながら、課題に合わせた具体的な進め方や改善のヒントを一緒に検討いたします。
適切なフレームワークを取り入れて議論・対話の質を上げ、会議・ワークショップの目的・目標を達成できるようにしましょう。



