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[ コラム ]
組織の期待通りの成長へ!目的に沿った新入社員研修の内容例【事例付き】
- 「新入社員研修でどんな内容を取り入れれば効果が出るのか知りたい」「毎年新入社員研修をやっているが、成果につながっていない気がする」そんな課題を感じているのではないでしょうか。新入社員が組織の期待通りに成長できるかどうかは、研修の設計次第で大
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定着率を高める新入社員研修「ここで働き続けたい」を実現する5つの要素
更新日:
「採用した新入社員が、気づけば数年で辞めてしまう」──そんな悩みを抱えていませんか?
厚生労働省の最新調査(2024年)によれば、2021年3月卒の新規学卒就職者の3年以内離職率は34.9%にのぼります。売り手市場の加速により、今後さらに離職率が高まる可能性も指摘されています。
「うちの会社では、もう仕方がないのでは…」と感じる方もいるかもしれません。
ですが、新入社員の定着は“個人の適性”だけで決まるわけではありません。
会社側の受け入れ方や研修の設計によって大きく左右されます。
本コラムでは、新入社員が「ここで働き続けたい」と感じるために必要な新入社員研修の要素、1年を見据えた設計ポイントをお伝えします。
さらに、研修だけでは解決できない構造的な課題と対策を、実践事例とあわせて解説します。
新入社員が安心して挑戦でき、組織に活気と前向きなエネルギーが満ちる未来を、一緒に描いていきましょう。
目次
1. 定着につながる新入社員研修に必要な要素
新入社員の定着に必要な要素を6つに整理し、具体的な方法を紹介します。

① マインドセットを整える
新入社員が会社に定着するためには、まず「学生から社会人への意識転換」を早い段階で促すことが欠かせません。
意識が切り替わらないまま現場に出ると、「自分はまだ教えてもらう立場」という受け身の姿勢が残り、主体的に動けなくなります。その結果、周囲の上司や先輩も育成に諦めモードになり、成長機会が減ったり関係性への悩みが発生し、離職リスクを高めてしまいます。
社会人としてのマインドセットを持ってもらうためには、単なる知識伝達ではなく、問いかけや対話を通じて自分ごと化させることが大切です。
たとえばアーティエンスの新入社員研修では、ワールドカフェ形式を取り入れています。
新入社員同士で「会社の一員として自分はどんな役割を担うのか」を考え、語り合うことで、自分の存在意義や責任に気がつき、「自分の行動がチームや組織に影響を与えている」という意識へと自然に切り替わっていきます。
マインドセットの切り替えを早期に行うことで、新入社員が主体的に動けるようになり、現場での信頼関係も築きやすくなります。これこそが、定着の土台を支える大切な要素です。
② 組織とのつながりを実感させる
新入社員が「この会社に居場所がある」と感じられることは、定着の大きな分岐点になります。
会社や上司との心理的距離が縮まらなければ、孤立感や疎外感を抱き「ここではやっていけない」と離職につながるためです。
組織とのつながりを生むためには、理念や事業の理解にとどまらず、先輩や上司と交流し、受け入れられている安心感を持てる場をつくることが大切です。
アーティエンスの新入社員研修では、先輩社員や上司にインタビューするワークを取り入れています。インタビューでは先輩や上司から、自分の言動で助かっていることや、成長を感じていることなどを直接聞くことができます。すると、新入社員は「自分が思っていたより周囲の人は、自分のことを見てくれていた」と実感し、自然と感謝の気持ちが湧き、組織への信頼やつながりが深まります。
早い段階でつながりを実感させることで、新入社員は「ここで頑張ろう」と前向きに働き続けられるようになります。
③ リアリティショックへの対応を行う
理想と現実のギャップに戸惑う「リアリティショック」は、早期離職の大きな要因です。
リアリティショックとは、入社前に抱いていた期待やイメージと、実際に配属された現場での経験とのギャップに直面したときに感じる失望感や戸惑いを指します。
入社前の期待と配属後の実態が大きく異なると、「こんなはずじゃなかった」と意欲を失い、会社を去ってしまうケースも少なくありません。

リアリティショックを防ぐには、現実と向き合う視点を研修の中で与え、困難を成長の糧と捉えられるようにすることが欠かせません。
アーティエンスの新入社員研修で実施している仕事と自己成長をつなぐ研修では、先輩社員の体験談やケースワークを通じて「壁の乗り越え方」や「壁は成長に必要なもの」であることを伝えています。
たとえば、希望していなかった部署に配属された先輩が、数年後にその経験を大きな強みに変えたという経験談を聞くと、新入社員は「今の困難も将来の糧になるかもしれない」と前向きに捉えやすくなります。
失敗やつまずきを「ここから学べる」と前向きに捉える姿勢を養うことで、配属後のショックを軽減します。
リアリティショックを「やめたくなる要因」から「成長の一歩」に変換する仕掛けが、定着を大きく後押しします。
④ 成長実感を持てる仕掛けをつくる
新入社員が自組織での自分を振り返ったときに「この組織で自分は成長してきた」と実感できることが、モチベーションを支える最大の要素です。
成長が見えない状態は「この会社にいても意味がない」という離職理由につながります。
そのためには、研修の中に成長を実感できる仕掛けを組み込むことが大切です。
アーティエンスの新入社員研修では、自分自身のこれまでの経験・行動に対して、他者からフィードバックをもらう研修があります。上司や先輩からのフィードバック、また、同期からのフィードバックを得ることで、自分では気づけなかった成長に目を向けるきっかけになります。
実際に「自分では成長していないと思っていたけれど、意外と○○な部分が伸びていたのだと知った」「当たり前だと思っていた行動が、他者から見ると成長した部分だった」といった声が多くあり、成長実感に繋がっています。
こうした成長実感を持てる仕掛けを設けることで、新入社員は自身を深め「ここで働き続けたい」という意欲に繋がります。
⑤ 定期的に学習機会を提供する
新入社員が定着するためには、学習機会を継続的に提供することが欠かせません。
単発の座学研修だけでは学びが一過性に終わり、現場での成長実感につながりにくいからです。
スキルを習得できる場があると、新入社員は新しい方法を試し、改善活動に取り組むことができます。その結果、日々のチャレンジや小さな変化が積み重なり、「自分は成長している」という実感を得られます。
大切なのは、一度に多くのスキルを詰め込むのではなく、1年間を通じて定期的に学習機会を設けることです。
アーティエンスの新入社員研修の公開講座では、月1回または隔月で研修を開催し、定期的に新しいスキルを習得できる仕組みを整えています。そこでは、新入社員に必要な多様なスキルを、実践を通じて学べるプログラムを用意しています。
継続的な学習と実践の機会を組み込むことで、新入社員は日々の仕事に変化を起こしやすくなり、「ここで働き続けたい」という意欲を高めることができます。
新入社員研修にこれら5つの要素を組み込むことで、新入社員は主体的に動き、現場で信頼を得ながら成長を実感できます。結果として「この会社で頑張りたい」という意欲が育ち、定着率の向上につながります。
2. 定着につながる新入社員研修の設計ポイント
新入社員の定着につながる新入社員研修の設計ポイントとして、以下の3つのことを意識しましょう。

① 1年間を通した研修設計を行う
新入社員の定着を促すためには、入社直後から1年目終了までの新入社員の成長をイメージし、具体的な育成の設計をしておくことが不可欠です。
新入社員は時期によって悩みや不安、壁が変わっていくためです。
入社時だけ研修を行っても、その後の壁を乗り越える支えがなければ、成長実感を失い、離職につながりかねません。
アーティエンスの新入社員研修 公開講座では、新入社員が1年間のどの時期にどのような不安や課題を感じやすいのかを調査し、その時期に応じた年間計画を立てています。現在は、1年間で13回の新入社員向け研修を実施しています。
入社直後は社会人としてのマインドや基礎スキルが足りていない場合が多いため、社会人としての自覚を促す研修や、基本的なビジネススキル、マナーなどを学べるようにしています。
配属直後には、周囲に主体的に働きかける意識とスキルを習得し、受け身の姿勢から脱却できるようにします。
その後、業務に慣れてきた段階では、ロジカルシンキングや問題解決力を鍛える研修を実施し、翌年3月には「この1年での成長」を振り返り、次のステップに向けた自信を得る機会を設けています。
このように段階的に必要な支援を受けることで、成長の手ごたえを感じながら前向きに働き続けられるようになります。
入社直後から1年を通した計画的な育成設計を行うことで、新入社員は成長を実感しやすくなり、「ここで働き続けたい」という意欲につながります。
② 研修と現場を繋ぐ仕組みを入れる
新入社員が組織に定着するためには、研修と実務を往復できる仕組みを設計することが欠かせません。
研修で学んだ内容が実務に活かされなければ、「せっかく学んでも役に立たない」「ここでは成長できない」と感じ、モチベーションを失ってしまうためです。
例えばアーティエンスの新入社員研修では、最後に振り返りシートを用意し、次の問いに答えてもらいます。
・具体的に実務のどの場面で活かせると思うか
・実践を妨げそうな要因は何か
これらを言語化することで、研修での学びを現場で試す準備が整い、配属後に「まずやってみよう」という行動につながります。
このように、研修と現場を繋ぐ仕組みを組み込むことで、新入社員は「ここでなら成長できる」と実感しやすくなり、結果として定着につながります。
③ 研修で見えた特徴を現場フォローに活かす体制を整える
新入社員が組織に定着するには、研修と現場を連携して新入社員を支える体制を整えることが重要です。
研修は知識やスキルを学ぶ場であると同時に、組織にとっては新入社員の状態や特徴を把握できる場でもあります。研修中の態度や発言を丁寧に拾い、そこから得られる気づきを現場でのフォローに活かすことで、新入社員の定着につながります。
アーティエンスの新入社員研修では、講師やアテンドが新入社員の言動を観察し、人事にフィードバックします。
たとえば、
「時間内に課題を終えられないことが多く、理解に時間がかかるタイプかもしれません」
「課題やシミュレーションワークで積極的に発言し、より良いアウトプットを目指す姿勢が見えました」といった情報です。
人事はこれを現場上司に共有し、日常の指導に活かしてもらいます。
たとえば、理解に時間がかかるタイプの方には、仕事を依頼した後に「自分の言葉で説明してもらう」機会を設けることで理解度を確認できるかもしれません。など
意欲的なタイプの方には、具体的に指示を与えるだけでなく「自分で考える余白」を作ると成長を促しやすくなるかもしれません。など
このように、研修と現場が連携する体制を整えることで、新入社員一人ひとりの特性を踏まえた育成がしやすくなり、結果として定着へとつながります。
研修を「点」で終わらせず、「入社から1年間を見据えた設計」と「継続的なフォロー」の両輪で支えることが、新入社員の定着と成長を実現するカギです。
3. 定着率が改善した企業事例|美容器具メーカーの取り組み
ある美容器具メーカーでは、新入社員の定着率の低さが長年の課題となっていました。特に入社1年以内の離職が多く、「職場に相談できる人がいない」「自分の成長が感じられない」といった声が背景にありました。
そこでまず取り入れたのが、成長を実感できる機会を創るための他社との合同研修です。自社だけでは気づきにくい成長を、他社の新入社員と交流・比較することで実感できるようにしました。
研修の場では「自分も着実に成長している」という感覚を持ちやすくなり、同じような悩みを抱える仲間がいることが安心感にもつながりました。
さらに、ブラザーシスター制度を導入。同じ部署の年齢の近い先輩を「兄・姉役」として配置し、業務の進め方だけでなく日々の悩みやキャリアの不安を相談できるようにしました。人事部も定期的にフォロー面談を実施し、新入社員が孤立しない環境を整えました。
こうした取り組みにより、新入社員は「自分の成長を実感できる」「安心して挑戦できる」と感じられるようになり、定着率は確実に改善しました。結果として、現場にも活気が生まれ、育成の好循環が築かれています。
このように新入社員研修と職場フォローを組み合わせる工夫が、離職防止と組織の活性化につながります。
4. 新入社員研修だけでは解決できない。中小企業に多い「定着を妨げる構造的な原因」と対策
新入社員の定着は、研修だけでは解決できません。多くの中小企業では、組織そのものに定着を妨げる構造的な要因が存在しており、それを改善しなければ離職は繰り返されてしまいます。
ここでは代表的な課題とその対策を紹介します。
① OJT任せで育成が属人化している
育成を現場任せにすると、新入社員の定着は難しくなります。上司や先輩によって指導の質にばらつきが出やすく、「上司ガチャにハズレた」と感じる新入社員も出てきます。その結果、「この会社で頑張るより、転職した方が早い」と判断され早期離職につながります。
具体的な対策案は以下のとおりです。
・配属1か月以内に学ぶべき内容を明文化し、最低限の育成方針を会社として定義する
・OJTトレーナー研修を実施し、「どう教えるか」を共通化する
・マニュアルやチェックリストを用意して、育成を属人化させない仕組みを整える
育成を個人任せにせず、会社全体で仕組みを整えることで、新入社員は「上司が誰であっても安心して学べる」と感じやすくなり、定着につながります。
② 役割やキャリアの見通しが示されない
新入社員にキャリアの見通しを示すことは、定着に欠かせません。
「この会社でどう成長できるのか」が見えないと、新入社員から「将来性がない」と判断され、離職につながるからです。特に中小企業ではキャリアパスが言語化されていないことが多く、これが大きな要因になります。
具体的な対策案は以下のとおりです。
・入社時点で「3年後の姿」を示すキャリアマップを提示する
・ロールモデル社員の事例を紹介し、成長の道筋をイメージさせる
・半年ごとにキャリア面談を行い、本人の希望と組織の期待をすり合わせる
キャリアの道筋を明確に示すことで、新入社員は安心して未来を描けるようになり、定着率の向上につながります。
③ フィードバックや対話の機会がない
定期的なフィードバックや対話の機会を設けることが、新入社員の定着を大きく左右します。
管理職や先輩が多忙で1on1や振り返りの機会がないと、新入社員は「評価されているのか分からない」「困っていることを話してよいのか分からない」と孤立感を抱きやすいからです。
具体的な対策案は以下のとおりです。
・月1回の1on1面談を仕組み化し、業務に組み込む
・面談では「よかった点」「改善点」「次の一歩」を必ず伝えるテンプレートを用意する
・先輩社員とのピアメンタリングや、同期同士での振り返り会を設ける
フィードバックと対話の場を仕組み化することで、新入社員は安心して成長できるようになり、会社に定着しやすくなります。
④ 経営層と現場の人材育成意識のズレ
経営層と現場の人材育成に対する意識のギャップを埋めることが、定着の基盤になります。
経営層は「人材育成が重要」と認識していても、現場では「目の前の業務優先」が根強く、育成の時間やコストが削られるからです。その結果、新入社員は十分に育成されないまま放置され、離職リスクが高まってしまいます。
具体的な対策案は以下のとおりです。
・経営層が「人材育成は戦略の一部」であることを繰り返し発信する
・定着率や成長実感アンケートなどの成果を数値化し、現場にも共有する
・育成時間を業務評価に組み込み、上司や先輩の育成行動を正当に評価する
経営層のメッセージ発信と仕組みづくりで意識のズレを埋めることが、新入社員が定着しやすい環境を生み出します。
新入社員研修そのものに力を入れるだけでは、定着は実現できません。
まずは自社にこうした構造的な課題がないかを確認し、研修とあわせて職場環境を整えていくことが重要です。環境と研修が両輪で機能することで、新入社員は「ここで働き続けたい」と感じ、定着と成長を両立できるようになります。
5. まとめ:新入社員が「ここで働きたい」と思える会社へ
新入社員の定着は、「個人の適性」だけでなく、新入社員研修の設計で大きく変わります。
新入社員が組織に定着するためには、以下のことを意識することが必要です。
◆定着につながる新入社員研修を生む5つの要素
・早期のマインドセット転換(学生→社会人)
・つながりの実感(上司・先輩との関係性づくり)
・リアリティショック対応(ギャップを成長に変える視点)
・成長実感の仕掛け(多面的フィードバック)
・定期的な学習機会(実践ベースで継続)
◆ 設計ポイント(仕組み)
・1年を通した設計で“その時期の壁”に合わせて支援する
・研修⇄現場をつなぐ導線(振り返り・実践計画を言語化)
・研修で見えた特徴の現場連携(人事→上司へ観察情報を還元)
ただし、組織の構造に課題が残っている場合は、いくら新入社員研修を効果的に行なっても定着は促されません。そのため、まずは自社に構造的な問題がないかを確認することも重要です。
アーティエンスでは、1年間を通した新入社員研修 公開講座を実施しています。
成長実感を促すシミュレーションワーク、他社との合同研修や定期的な振り返り研修、さらには現場とつなぐ仕組みづくりを組み合わせながら、新入社員が「ここで働き続けたい」と思える環境づくりを支援しています。
「自社に合ったやり方を具体的に相談したい」といった段階からでもご一緒できますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
今回ご紹介した要素と設計ポイントを押さえて新入社員研修を実施することで、新入社員が安心して組織に定着し、組織全体に活気と前向きなエネルギーが生まれる状態を作りましょう。




