コラム

厳しい新入社員研修とは|厳しい新入社員研修が必要と思ったときに考えて欲しいこと

 クエスチョンマークを眺めている男女

2022/12/12作成ー

「厳しい新入社員研修をやりたいが、どんな内容にすれば良いのか?」
「厳しい研修をやったことがないから、一度やってみたい」

このようなご相談は私たちにも多くいただきますが、共通しているのは、新入社員の成長のスピードが期待より下回っていたり、成果へのコミットが見えなかったりして、組織側(人事・経営者・管理職)が「焦り」を感じられていることです。

特に、新入社員には早く成長してもらい、成果に繋がるような働きをして欲しいと思うのは当たり前のことです。そのために、「厳しい」研修で、「学生から社会人への意識変革」や「即戦力化するためのスキルを習得させたい」、そして「一日でも早く成果を出してほしい」や「周りに貢献してほしい」と考えているのではないかと思います。

しかしながら、新入社員に対して「厳しい研修」を実施することはお勧めしません。最近の新入社員の傾向として、いくら厳しい研修を受けても、自身で納得感を持てないと受け取ることができないという特徴を持っているためです。また、厳しい研修を行って新入社員が会社にとってネガティブなイメージを持ってしまうと、そこからポジティブに意識を変化させることは難しいです。最悪、早期退職になり、Webなどでブラック企業などのネガティブキャンペーンをしかねません。

本コラムでは、新入社員に対しての厳しい新入社員研修の例や、厳しい新入社員研修が必要と思ったときに考えて欲しいことをお伝えします。本コラムをお読みいただくことで、厳しさの種類を知り、適切な厳しさを理解した上で、新入社員研修の企画のアイディアを考えることができます。

1)厳しい新入社員研修とは

厳しい新入社員研修とは、「新入社員の大きな変化を求めて強い刺激を与える」研修のことです。なぜ、厳しい新入社員研修が実施されるかというと、新入社員に社会人としての自覚を強く持たせて、できるだけ早い成長を期待しているからです。

たとえば、厳しい新入社員研修には、以下のような研修があります。
※ 本事例は、アーティエンスが実施している研修ではありません。

【例①:滝行や登山などを行う研修】
経済成長が本格化した1960~1970年代に、根性重視、会社への忠誠心を養うことを目的に行われていました。
国民は「一億総中流」に向かい、企業はがむしゃらに働く人を育成方針としていきます。この頃、「深夜の行軍」や「富士登山」、「滝行」といった研修が出始めました。頑張れば頑張るほど成果が出た為、機能した研修でした。

【例②:大きな声での声だしや名刺集めを行う研修】
バブルがはじけた 1990年代に、即戦力になってもらうことを目的に行われていました。
「予算は無い。ただし即戦力になってほしい。」ということで、すぐに成果に直結する研修内容が企画されました。社会人の厳しさを教えるために「駅前での名刺交換100枚」、実践研修としての「飛び込み営業」などです。研修は成長ではなく、成果にスポットが当たり始めたのもこの時代からと言われています。

【例③:絶対できない課題を行う研修】
IT革命が起きた2000年前後に、指示命令を愚直に行う人材育成のために、理不尽な厳しさに耐えることを目的に行われていました。

例えば、会社のビジョン・ミッションを自分の限界まで大きな声を出しながら暗記させます。自分では大きな声を出しているつもりでも、限界まで大きな声ではないと判断されると怒鳴りつけられます。他にも、全員が真面目で気合いの入った体操ができるまで終わらない、過酷なラジオ体操などもありました。
課題に対して、定量的な評価が無いため、過酷なメニューが際限なくエスカレートする可能性があります。できないことに対して、理不尽に詰めることで、精神論を鍛える研修でした。このころから、ブラック企業という言葉も使われ始め、大量採用大量離職なども生まれています。

【例④:社会人・仕事への目線を、強引に上げる研修】
「ゆとり教育」世代と呼ばれる人たちが新入社員になる2000年中盤に、社会人・仕事への目線を強引に上げることを目的に行われており、今でもこの方法は多くの研修会社で見られます。

例えば、個人ワーク・グループワークの際に、納期に間に合わない量のワークを行わせたり、ビジネスマンとして10年戦士でも難しいような難易度のワークを行わせるという内容です。時間に間に合わなかったり、ワークの成果物のレベルが公式の期待に添わないと、厳しいフィードバックをします。

下記のような講師からのコメントを聞いたこともあるのではないでしょうか。 「納期に間に合わなければ、価値はゼロ。君たちの仕事は、0点です」 「このアウトプットは、期待に届いていない。これは、仕事とは言えない。ゴミですね」

正論を盾に、講師から厳しいフィードバックを行い、新入社員は「自身ができない」、「未熟だ」と感じさせる研修です。

このような厳しい新入社員研修では、少しでも力を抜いたり、気が緩むと教師から怒鳴られるということや、新入社員にはとても無理難題なことに対して理不尽なフィードバックが起きていました。

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新入社員育成の歴史と、これからの新入社員育成とは?

2)最近の新入社員には、厳しい新入社員研修はお勧めしません

最近の新入社員には厳しい研修をお勧めしません。なぜなら、厳しい研修を受けたところで新入社員は納得感を持って受け止められず全く意味がないどころか、会社に不信感を持つ、ということが起こりかねないからです。

会社に不信感を抱くことで、下記のようなことにも繋がります。

・組織への信頼が無くなる
・スキルの習得度合いが低くなる
・モチベーションが低下する
・離職の可能性が高くなる
・世の中に対して、ネガティブキャンペーンが行われる

最近の新入社員は、「そもそも、何のために」といった本質的に物事を判断しようとするリアリストなのが特徴です。そのため、本質的に意味があると思えないと、行動しないという判断をします。
また、SNS上での共感、東日本大震災やコロナによって感じた人とのつながり、個を大切にする多様性といった時代背景を考えると、厳しさや集団行動は正反対のため、理解ができないということになるでしょう。

クライアントからお伺いした話ですが、新入社員が厳しいと感じる研修で新入社員のモチベーション低下や社会人の辛さばかりを体験し、ワクワク感の醸成が出来なかったということがあったようです。そして、「学んでほしいことが学べていない」と企画側である人事・経営者は受け止め、現場の上長からも立ち上がりが遅いという話でした。

講師の方は、厳しく伝えた方が良いという判断だったようですが、新入社員からみると講師から暴言・理不尽な発言等があったとのことで、チャレンジして学ぶ場というよりは、緊張してチャレンジできないという場になってしまったとのことでした。
「いいから黙ってやってください」というような発言もあったとのことで、新入社員が、なぜ?を解決できないまま、ただ言われたからやるというような状態になってしまっては、学ぶことは難しいです。

このようなお話を伺い、またクライアントが望む新入社員像などを確認した上で、翌年は当社にて1年間を通して研修を実施させて頂きました。

3)厳しい新入社員研修が必要と思ったときに考える3つのステップ

 考えている会社員 ただ、新入社員の今の現状に何かしらの課題があるから厳しい新入社員研修を実施した方がいいかもしれないという考えに至ったともいますので、なぜ厳しい新入社員研修が必要だと思ったのかを深掘りして考えてみましょう。そうすることで、本当に新入社員研修で実施すべきことが見えてきます。次の3つのステップの順に考えます。

①「なぜ厳しい研修が必要だと思ったのか?」を考える
②「どうなって欲しいか?」を考える
③「どんな研修内容が良いのか?」と手段を考える

具体的に説明します。

①「なぜ厳しい研修が必要だと思ったのか?」を考える

「なぜ厳しい研修が必要だと思ったのか?」を考えると、新入社員に対して課題に感じていることが明らかになってくるためです。

例えば、厳しい研修が必要だと感じた理由が、新入社員が今までのルールや上司から言われたとおりに仕事をせず、自分なりのやり方で仕事を進めるため、現場が混乱し、新入社員が言うことを聞かないとクレームが来ている、というような状況から厳しい研修が必要だと感じたなどです。

このように、「なぜ」を考えると、新入社員に対する課題が見えてきます。

②「どうなって欲しいか?」を考える

新入社員に対する課題に対して、どうなって欲しいかを考えることで、新入社員に望む姿が明らかになるためです。

「①「なぜ厳しい研修が必要だと思ったのか?」を考える」の例では、新入社員が自分なりのやり方で仕事を進め、現場社員は新入社員が言うことを聞かないという認知になっているという状況でした。この状況だと、現場での新入社員と周囲の関係性を築くのが難しく、仕事がやりづらくなることは明らかです。そのため、新入社員が現場で良い関係性を創れるようになり、新入社員も納得したやり方で仕事をできるようにする、ということが新入社員に望む姿になります。

③「どんな研修内容が良いのか?」と手段を考える

新入社員に対する課題と望む姿が明確になったところで、どのような研修を行えばいいのかを考えます。厳しくすることがゴールではなく、望む姿になってもらうことが研修のゴールであるからです。

例えば、先ほどの例だと、仕事のやり方の違いを認め合うことや、自分なりのやり方で行う前に確認することが必要であることを新入社員が理解できると、現場の関係性に影響がありそうだと考えることができます。
厳しい研修だと、「上司は色んな事を考えた上で指示しているのだから、基本的にそのやり方に従うようにしなさい」ということを強いメッセージとして受け取ります。その後、自組織独自の報連相を徹底的に繰り返すような研修が予想されます。そうではなく、新入社員に望む姿になってもらうための研修としては、新入社員が上司の立場に立って考えてみるワークを元に、上司の言い分を理解し、その上で自分なりのやり方を提案する方法を知るような内容を実施できると良いでしょう。

このように、厳しい新入社員研修が必要と思ったときに3つのステップで考えると、本質的に解決したい課題が見えてきて、そこに合致した研修を考えることができるようになります。

4)新入社員研修に取り入れるべき「厳しい」要素

新入社員研修に厳しい要素が必要なときは、自分の役割を全うしていない時です。
例えば、

・法律や会社のルール、ビジネスでの一般常識として行ってはいけないことをしているとき
・目標のレベルを引き上げていこうという意識がないとき
・周囲・組織に迷惑をかけるような課題に対して、誠実に向き合っていないとき

などです。
組織に属し、給与を受け取るからには、組織のために働くことが求められるためです。
新入社員が法律や会社のルール、ビジネスでの一般常識を理解していないと組織として大きなリスクを負いかねませんし、自分の業務と丁寧に向き合い、成長していく意志が無ければ、組織にポジティブな影響を与えることが出来ません。

例えば、会社のルールとして、仕事で得た情報を外部に漏らしてはいけないことをしっかりと新入社員へ伝えられていないと、新入社員が勝手にSNSにクライアントの状況を投稿してしまうというようなことも起こりかねません。これがきっかけで、クライアントとの関係性が悪化したり、組織の信用が低下するということもあります。
このような内容を伝えたい時は、実際にあった事例を元に説明すると状況をイメージしやすくなります。

例えば、ホテルに勤めている時に、「芸能人が来た」と個人のSNSで投稿した場合、どのようなトラブルが起き、組織としてどのようなリスクを抱えることになるか、ということを想像してもらいます。そして、個人で考えたことをグループにシェアして、対話を行い、最終的に実際の対処を伝えることで、問題の大きさを想像しやすくなり、ただ、ダメと言われるより緊張感を持てるようになります。

このように、組織として大きなリスクとなりかねない内容については、具体的にあった事例を伝えながら、新入社員が想像できるようにすることで、会社として厳しく判断していることを伝えることが大切です。

5)厳しさを伝えることは必要

今まで、「厳しい」研修は最近の新入社員に合っていないため、避けた方が良いとお伝えしてきましたが、新入社員に「厳しさ」を伝えることは必要です。

ここでの「厳しさ」というのは、社会人として仕事を行う上で感じる大変なこと、苦労することなど、社会人として乗り越えなければいけない物事を意味しています。
なぜ「厳しさ」を伝える必要があるかというと、困難にぶつかった時に困難を受け止める心の器を作っておくことができるためです。

社会人は、仕事を行う中で楽しいこともあれば辛く厳しい時もあります。新入社員が社会人として様々な困難にぶつかることもあるということをイメージできると、実際に困難にぶつかった時に、「こういうこともあるって言っていたな」と少し冷静になって困難を受け止め、前向きに困難を乗り越えようとできるためです。

もし社会人の楽しさばかりの情報を聞いていると、「こんな苦しいことがあるなんて聞いていない」とパニックになります。どう乗り越えるかではなく、「どうしようという不安に苛まれてしまうこと」や「やっていられないという気持ちになり、不平不満を言う」などが起きます。

厳しさを伝えるための具体的な方法としては、ヒーローズジャーニーという方法があります。

ヒーローズジャーニーとは、米国の神話学者ジョーゼフ・キャンベル氏が世界各地の神話を研究する中で、神話には共通するパターンがあることを発見したことから生まれた手法で、人の内面の葛藤やその葛藤を克服するプロセスをストーリーのように伝える方法です。

先輩方が今まで仕事で乗り越えてきた大変な時期や、仕事内容、失敗談を伝えることで、社会人として厳しいこともあることを新入社員は知ることができます。

例えば、新入社員の時に発注ミスをしてしまって、50個必要なのに20個しか発注できていなかった時は、とても焦ったし、このまま消えてしまいたいと思うくらいだった。実際に納品のスケジュールが間に合わず上司と謝りに行ったり、先輩方に協力してもらって30個かき集めてきて納品した経験があった。この時はもうダメだと思ったけど、その経験をしたからこそ、発注の確認は徹底するようになって、その後同じミスをすることは無くなった、というようなストーリーを話してもらったとします。

新入社員はこの話を聞いて、自分も社会人としての責任があり、組織の人間としてしっかりしなければならないという社会人としてぶつかる厳しさを乗り越える覚悟を持てるようになります。

新入社員が社会人としての自覚を持って仕事に取り組めるようにするためにも、社会人としての厳しさを伝えて、厳しさを乗り越える気持ちを持つことは必要です。新入社員研修の中で、新入社員へ厳しさを乗り越えた先の未来や、愛情から伝えていることだということをメッセージとして伝えることができると、厳しさに屈することなく果敢に乗り越えることができます。

厳しさを伝えた上で、新入社員が厳しさを乗り越えられることをイメージしてもらうようにするためにも、ヒーローズジャーニーで、先輩方が厳しい体験をどう乗り越えて今があるのかということについても伝えるようにします。そのような話を聞くと、新入社員は今より先の未来を見ることができ、厳しさがありながらも成長していけることが理解できるようになります。また、厳しさを乗り越えるための方法として先輩・上司との座談会を開催するという方法もあります。

先輩・上司との座談会では、新入社員が不安に感じていることを、先輩や上司に質問して、先輩たちがどのように乗り越えてきたのかを教えてもらうことができます。

今の悩みや不安に対して先輩からアドバイスをもらうことで、厳しさを乗り越えるための活力となるでしょう。これらを行う場合は、協力してもらう先輩・上司に、新入社員のローモデルとなってもらいたい人を選定すると、新入社員にポジティブな影響を与えることになります。実施時期としては、配属前のタイミングが一番不安を抱えやすく、仕事のイメージもしにくいためお勧めです。また、配属から半年が経ったタイミングも、新入社員は新たな不安や悩みを抱えている時期だと思いますので、新入社員の様子を見ながらタイミングを設定していただけたらと思います。

6)まとめ

新入社員の大きな変化を求めて、強い刺激を与える厳しい新入社員研修は、最近の新入社員にはお勧めしません。
滝行や過酷なノルマ、無理難題なワークなどの厳しい研修を実施したところで新入社員は納得感を持って受け止められず全く意味がないどころか、会社に不信感を持つ、ということが起こりかねないためです。

厳しい新入社員研修が必要だと感じた時は、なぜ厳しい新入社員研修が必要だと思ったのかを深掘りして考えてみましょう。そうすることで、本当に新入社員研修で実施すべきことが見えてきます。

次の3つのステップの順に考えます。

①「なぜ厳しい研修が必要だと思ったのか?」を考える
②「どうなって欲しいか?」を考える
③「どんな研修内容が良いのか?」と手段を考える

3つのステップで考えると、本質的に解決したい課題が見えてきて、そこに合致した研修を考えることができるようになります。新入社員へ適切な研修を実施することで新入社員が活躍できるようにしていきましょう。

なお、当社でも新入社員研修を実施しております。興味のある方は、ご相談からで大丈夫ですので、お気軽にお問い合わせください。  新入社員育成  新入社員研修のコンセプトと3つの仕掛け アーティエンス株式会社 ※ 当社資料より一部抜粋

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