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[ コラム ]
活躍できない管理職を変える!管理職に必須な能力要件と支援策を解説
- 「活躍している管理職がいない」「管理職が、本来の役割を果たしていない」──そんな悩みを抱えていませんか?現代の管理職は、業績の達成だけでなく、部下の育成やチーム全体の成長など、実に多くの役割が求められています。上層部からは「すぐに成果を出し
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【事例あり】「仕事をしない管理職」がうまれる3つの理由と対処法
更新日:
「仕事をしない管理職…どう対応すれば良いのか?」
そんな悩みを抱えて、このコラムにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
まず押さえておきたいのは、「管理職が仕事をしない」こと自体が、必ずしも問題とは限らないという点です。
チームが自律的に動き、管理職が細かく関与しなくても業務が滞らず、成果も安定しているのであれば、それはむしろ“マネジメントが機能している良い状態”です。
しかし逆に、
・仕事を丸投げするだけ
・上には忖度し、部下には理不尽に厳しい
・育成に関わらない
・成功は自分の手柄、失敗は部下の責任にする
といった行動が見られる場合は、「組織に悪影響を与える悪いケース」です。
この状態を放置すると、部下の離職、チームの崩壊、業績低下など、組織に深刻なダメージを与えかねません。だからこそ、早い段階で原因を見極め、適切に対応することが重要です。
本コラムでは、「管理職が仕事をしない」悪いケースが生まれる理由、その対処法、そして実際の解決事例をわかりやすく紹介します。
原因を正しく理解し、適切な手を打つことで、組織の停滞を未然に防ぎましょう。
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目次
1)「仕事をしない管理職」がうまれる3つの理由
「仕事をしない管理職」が生まれてしまう背景には、主に3つの理由があります。
① 管理職としての役割認識がズレている
仕事をしない管理職が生まれてしまうのは、そもそも“自分に求められている役割”を勘違いしているためです。
管理職の本来の役割は 「人を通して成果を出すこと」 です。
しかし、一部の管理職は次のように捉えてしまいます。
「管理職なら、部下より大きな成果を出すべきだ」
「育成は部下が勝手に成長するもので、自分が関わる必要はない」
このように役割の理解がズレていると、本人は真面目に働いているつもりでも、周囲からは“働いていない”“育成していない”ように見えてしまう状況が起きます。
② マネジメントに必要な能力・スキルが不足している
2つ目は、マネジメントに必要な能力・スキルが不足しているためです。
役割を理解していても、実際に人を動かしたり育てたりするためには、
・状況を把握する力
・仕事の任せ方
・対話やフィードバックのスキル
・チームをまとめる力 など、多くのマネジメントスキルが必要です。
これらが不足していると、やるべきことは分かっていても行動に移せず、結果として「何もしていない」「頼りない」ように見えてしまいます。
③ 組織の仕組みや環境が管理職を機能させにくくしている
最後は、管理職本人の問題ではなく、会社側の仕組みや環境が管理職を“機能しづらく”している場合です。
例えば、次のような仕組みがあると、管理職は本来の役割を発揮しづらくなります。
・目標が“管理職自身のプレイヤー業務”中心になっている場合
管理職は自分の業績を追うことに時間を取られ、部下に関わるためのマネジメント時間を確保できなくなります。
・部下の成長や昇格が評価項目に含まれていない場合
育成に取り組んでも評価に結びつかないため、どうしても育成の優先度が下がってしまいます。
・降格制度がなく、不適任でも管理職を続けられる仕組みになっている場合
役割に合わない管理職が入れ替わらずに残り続け、結果として組織全体のマネジメント品質が下がってしまいます。
こうした制度的な歪みがあると、どれだけ意識やスキルがあっても管理職としての役割を果たしにくくなります。
このような理由から、「仕事をしない管理職」が生まれている場合があります。
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2)仕事をしない管理職への対処法3選
仕事をしない管理職への対処法を3つ紹介します。
人事や経営としては、管理職の意識だけに任せるのではなく、環境・フィードバック・制度の3つの面から、意図的に関わっていくことが重要です。
①他流試合を体験して、自分を客観視する機会を設ける
仕事をしない管理職に対してまず取り組むべきは、自分を客観視する機会をつくることです。
同じ部署・同じ環境に長くいると、他者との比較ができず、「自分は十分にやれている」という誤った自己評価になりやすいためです。
外の世界に触れ、他者と自分を比べる経験をすることで、自分の役割・行動・姿勢を見直すきっかけが生まれます。
外の視点を得るための具体的な方法は次の3つです。
他部署(特に未経験の部署)への異動
育成の観点で有効なのが、未経験の部署へ異動する機会を与えることです。部署が変わることで、これまでの常識が通用しない場面が生まれ、新しい視点や考え方が求められるようになります。
異動を経験すると、次のような変化が期待できます。
・これまでの前提や仕事観が揺さぶられる
・新しい視座や判断基準が必要になる
・「専門性ではなく、自分自身の価値とは何か?」を見つめ直す機会になる
実際に、管理職になるために「2部署以上の経験」を必須としている企業もあり、異動経験は管理職の成長に直結します。
管理職向けの公開講座への参加
異動が難しい場合に有効なのが、公開型研修を活用して他社の管理職と関わることです。他社の管理職と接することで、自分の振る舞いや姿勢、スキルレベルの客観的な差に気づくことができます。
公開講座に参加することで、以下のような気づきが得られます。
・自分の基準が社内だけのものであったと気づく
・他社の管理職のレベルの高さや努力量を知る
・「自分はできている」という思い込みが崩れる
研修後には、「自分に足りない要素」「自社に求められる管理職像」などのレポートを課すことで、学びの定着がさらに進みます。
※アーティエンスでは会議ファシリテーション研修を公開講座で開催していますのでご検討ください。
越境体験(出向・海外・異業種との協働)
さらに深い変容を促す方法として、越境体験があります。越境体験とは、自分のキャリアや価値観の“境界”を越え、新しい環境に踏み込むことで、これまでの前提そのものが変わるほどの学びを得る体験を指します。
代表的な越境体験には次のようなものがあります。
・他社への出向
・海外でのプロジェクト参加
・異業種との協働や交流
越境体験は「一皮むける体験」とも呼ばれるほど強いインパクトがあり、リーダーシップ開発の重要な要素とされています。
ただし心理的負荷も大きいため、目的の共有と本人の覚悟を得たうえで実施することが大切です。
このように、自分の“外”に触れる機会を意図的につくることで、管理職は初めて自分の行動を客観視し、変わるきっかけを掴めるようになります。
②本人にフィードバックする
仕事をしない管理職の自己認識がズレている場合は、本人に直接フィードバックを行うことが必要です。
他流試合や外部の刺激だけでは、「自分はできている」という思い込みが崩れないケースがあるためです。
環境を変えるだけでは、本人が“自分と周囲の評価のズレ”に気づけないことがあります。
そのため、組織として意図的に「ズレを指摘し、理解を促す機会」をつくる必要があります。
フィードバックの方法は、主に次の3つがあります。
経営者からフィードバックする
経営層に近い役職(例:部長クラスなど)であれば、評価面談や1on1で経営者が直接フィードバックする方法が効果的です。
トップの視点から「組織として期待する管理職像」を伝えることで、本人の認識を大きく揺さぶることができます。
上司からフィードバックする
課長クラスなど、経営者と距離がある役職の場合、直属の上司がフィードバックする方法が適しています。
日常の行動を最もよく見ている上司の言葉は、本人にとって受け入れやすく、改善点のイメージも持ちやすくなります。
多面診断を活用して、認識のズレを“可視化”する
人を介したフィードバックはどうしても主観が入るため、多面診断(360度評価など)で客観的なデータを示す方法も有効です。
ただし、多面診断は本人がショックを受けることもあるため、
・なぜ診断を行うのか
・結果の意味をどう捉えるべきか
を丁寧に説明し、納得感を得るコミュニケーションが欠かせません。
※アーティエンスでも管理職向けパルスサーベイOarを提供しています。よければご覧ください。
【参考】アーティエンスの管理職向けパルスサーベイOarのサンプル

いずれの方法でも大切なのは、「何をどう変えればいいのか」を明確にし、その変化を継続的に追いかけることです。
フィードバックは一度伝えて終わりではなく、改善行動が定着するまで伴走することが重要です。
③人事制度を改定する
労力はかかりますが、管理職の姿勢や行動に最も大きな影響を与えるのは、人事制度の見直しです。
なぜなら、制度は管理職の行動基準や価値観をつくる“土台”になっており、その土台が歪んでいると、いくら意識やスキルを高めても行動が変わらないためです。
仕事をしない管理職を生まないための制度面での対応策としては、次の3点が考えられます。
降格制度を取り入れる
まず考えられるのは「降格制度」の導入です。
すでに採用している企業もありますが、なかには管理職になったら降格がないという会社も存在します。
この仕組みでは、「一度管理職になれば上がり」という意識が生まれやすく、緊張感が薄れてしまいます。
降格制度を導入することで、「管理職として求められる役割を果たせなければ、元の職位に戻る可能性がある」という健全な緊張感をつくることができます。
ただし、降格を機能させるためには次の点が重要です。
・降格前に、改善のチャンスや支援が十分に与えられていたか
・降格後も、再チャレンジできる仕組みやサポートが用意されているか
これらが整っていないと、社員の不安を増幅するだけになってしまいます。
降格制度は慎重な設計が求められるため、可能であれば専門家とともに制度改定を進めることをおすすめします。
昇進・昇格制度を整備し、厳格に運用する
次に考えられることは、昇進・昇格制度を明確にし、厳格に運用することです。
よくある課題は、「このぐらいの年齢だし、そろそろ管理職に上げないと」といった 年齢・年数ベースのなんとなくの管理職登用 です。
この状態では、管理職にふさわしくない人が登用されてしまい、本人だけでなく部下も苦しむ結果につながります。
そこで有効なのが、管理職登用前に プレマネジメント期間を設ける方法です。
この期間で、擬似的に管理職の仕事を経験してもらい、
・管理職に必要な能力があるか
・本人に管理職としての覚悟があるか
・組織と役割の相性はどうか を判断することができます。
この「見極めの仕組み」を整えるだけでも、管理職の品質は大きく変わります。
管理職でなくとも活躍できる制度に変更する
最後のポイントは、管理職以外でもキャリアが築ける制度を整えることです。
制度や風土として「管理職になることがキャリアの正解」という状態になっていると、
・本当は管理職に向いていないのに、無理して管理職を目指してしまう
・管理職以外の強みを持つ人が正当に評価されない
・結果として“消極的な管理職”が増える といった問題が起きやすくなります。
これを防ぐために、スペシャリスト職・マイスター職のような制度を設け、高度な専門性で成果を出すキャリアを選べるようにする企業が増えています。
ただし、これらの職種が「管理職になれない人の逃げ道」にならないように、
・選考基準を明確にする
・役員会などで承認を行う
・求める成果を厳格に設定する などの運用が不可欠です。
管理職以外の選択肢があることで、キャリアの多様性が生まれ、本当に管理職に向いている人が役割を担う状態が実現します。
人事制度は管理職の行動を方向づける“土台”であり、制度が整っていなければ、意識やスキルを高めても行動は変わりません。
降格制度の導入、昇格の厳格運用、専門職キャリアの整備といった制度改定により、管理職の質を高め、適材適所の配置が実現します。
仕事をしない管理職への対応は、これらを組み合わせて進めることがポイントです。
自分を客観視する機会をつくり、具体的な改善点を伝え、仕組みとして望ましい行動を後押しすることで、はじめて管理職の行動は継続的に変わっていきます。
結果として、管理職の質が高まり現場でのマネジメントが機能する組織づくりにつながります。
3)仕事をしない管理職への3つの対応事例
本章では、実際に、仕事をしない管理職に対して実行した施策と結果をご紹介します。
事例1:他流試合で崩れた「自分はできている」という管理職の幻想
公開講座で行った部下育成研修で、参加した管理職の方々の認知が広がり、自身の至らなさに気付いた事例です。
課題:プレイヤーとして優秀なのに“部下への不満が強い”
公開講座に参加した管理職は、個人として成果は出しているものの、「部下が育たない」「主体性がない」といった不満を強く抱えていました。
しかし彼らは同じ環境に長くいたため、“自分は十分にマネジメントできている” という思い込みを持っていた状況でした。
研修中:ロールプレイで露わになった“丸投げ”の実態
研修では、ティーチング・フィードバック・コーチングのロールプレイを実施。
互いに率直な意見を伝え合う中で、次のような気づきが生まれました。
・実は「育成」ではなく“仕事を丸投げ”していた
・部下を見る視点が不足していた
・自分の関わり方が部下の成長を妨げていた
一方で、「現場が忙しい」「能力が低い部下を育成しても意味がない」など、“現場の言い分”も出てきて、場は一時他責の空気に包まれました。
そこで講師が投げかけたひと言が、参加者の思考を止めました。
「この状況が続いたら、皆さんのチームはどうなりますか?」
場が静まり返った後、ある管理職がこう言いました。
「部下も、私たちに同じ不満を持っているのかもしれない…」
部下がダメだという認知から、自分たちにこそ原因があるのではないかと認知が変わった瞬間でした。
研修効果:視点が反転し、“自分が変わる必要性”を自覚
研修後、人事担当者から「本人が『独りよがりの育成が恥ずかしかった』と言っていた」という報告がありました。
他流試合を通じて、
・自分の育成スタイルを客観視できた
・部下への不満の多くが“自分の関わり方”に起因すると気づいた
・“まずは自分が変わる”という姿勢が芽生えた
という認知の変化が生まれました。
事例2:管理職が動かない…を解消したのは、経営陣の変化だった
管理職の課題を解決するために、まず経営陣が変わることが必要な場合があります。
ここでは、経営陣が先に行動を変えたことで、管理職の意識変革が一気に進んだケースをご紹介します。
課題:管理職が動けず、経営者が“現場の管理職”になっていた
あるIT企業から「管理職を変えたい」という依頼がありました。
経営者が日々細かく口出しをするため、管理職が主体性を失い、結果として 経営者が現場のマネジメントまで担ってしまう状態になっていたのです。
インタビューでは、管理職からこんな声が相次ぎました。
「マネジメントしたい気持ちはある。でもどうせ最後は経営者の指示になる」
「自分が関わってもムダだと感じる」
つまり、構造的に管理職の意欲が奪われていた状態でした。
施策:まず“経営陣が変わること”から着手した
この現実を経営者に伝えると、「つい口出ししてしまうけれど、どうしたらいいかわからない」との率直な声が返ってきました。
そこで、管理職研修より前に、経営陣向けのエグゼクティブセッション(3ヶ月)を実施。
「なぜ介入せずにいられないのか?」という内面の思い込みを丁寧に探っていきました。
その中で、ある経営者が抱えていた「すべてを自分の思い通りにしなければ成功しない」という思い込みが明らかになりました。
そこで、
・指示する量を減らす
・出社日数を減らして任せる といった行動を少しずつ実践し、「自分がいなくても会社は回る」「任せても大丈夫」という新しい成功体験を積んでいきました。
効果:経営者の変化を見た管理職が、初めて“自分ごと”にした
経営者の言動が変わり始めると、管理職側にも変化の兆しが訪れました。
「まだぎこちないが、経営者が変わろうとしているのがわかる」
「前は経営者を信頼できなかったが、今は違う」
といった声が出始め、管理職が経営陣の言葉を素直に受け止められる土壌が整っていきました。このタイミングで、ようやく管理職向け研修を実施。
すると今度は部下から、「管理職が話を聞いてくれるようになった」「関わり方がやわらかくなった」といった前向きな変化が報告されるようになりました。
この事例のポイントは、「経営陣がまず変わる姿を見せる」→「その変化を踏まえて管理職へ期待を伝える」という順番で進めたことです。
このプロセスを踏んだことで、管理職が経営陣からの助言を素直に受け入れられる土壌が整いました。
管理職の行動変容を促すには、まず変化を阻む要因を取り除くことが欠かせません。今回でいえば、経営陣の過度な介入が管理職の主体性を奪っていたため、そこを先に解消したことで、管理職自身が変わることができました。
事例3:人事制度改定で“本当に必要な管理職”だけを残す
最後に人事制度の改定を通じて、必要最低限の管理職に絞り込みを行った事例です。
課題:年功序列の結果、管理職の品質が低下していた
この企業では長年、年功序列で管理職に登用してきたため、
・管理職にふさわしくない人が管理職になっている
・経営陣だけでなく部下からも不満が出ている
・組織として管理職層を見直したいという声が強まっている
という状況に陥っていました。
さらに、このまま管理職層が膨張すると人件費が増え続けるリスクも指摘されていました。
施策:スペシャリスト制度の新設と、管理職の再格付け
中期経営計画の見直しに合わせて、人事制度を抜本的に刷新する方針が決まりました。
主なポイントは次の2つです。
・スペシャリスト制度の新設
└ 管理職以外でも専門性でキャリアを築けるルートを用意
・管理職等級を1つ増やし、役割基準を明確化
└ 新たな役割基準と現状のパフォーマンスを照らし合わせ、“再格付け”を実施
この再格付けにより、現行の管理職の中には等級が下がる人が一定数発生しました。
ただし、急激な収入減を避けるために「調整給」を設け、一定期間内に求められる成果を上げれば再昇格できる仕組みにしました。
効果:管理職層に緊張感が生まれ、組織風土が変わり始めた
再格付けの結果、
・“管理職だから安泰”という意識が薄れた
・役割にふさわしい行動が求められるようになった
・パフォーマンスに応じた報酬への納得感が生まれた
といった変化が見られ、管理職層に適度な緊張感が生まれました。
また、管理職に向いていない人がスペシャリストとして活躍できる道ができたことで、無理に管理職を目指す風潮も緩和され、組織風土も徐々に健全化していきました。
人事制度の見直しは大きな経営判断であり、慎重な検討が必要です。
しかしその一方で、制度は組織の行動基準そのものをつくるため、管理職の質や組織文化に与える影響は非常に大きい取り組みです。
「仕事をしない管理職」への対策として、最終手段としての制度改定を検討する価値は十分にあります。
4)仕事をしない管理職への対処法を実施する際に気をつけたい3つの注意点
仕事をしない管理職への対処策は効果が大きい一方で、進め方を誤ると、本人の反発や職場の混乱を招くこともあります。
だからこそ、「どのように伝え、どのように支援し、どのような制度的メッセージを示すか」を丁寧に設計することが欠かせません。
ここでは、施策を実施する際に特に注意したい3つのポイントを解説します。
①本人に意図や目的をしっかり伝える
管理職への研修やフィードバックを実施する際は、最初に「なぜ行うのか?」を明確に伝えることが不可欠です。意図が伝わっていないと、「会社に見放された」「自分は不要だ」と誤解され、逆効果になるためです。
例えば、部下から不満が出ており部署運営に支障が出ている場合、上位者が以下の流れでフィードバックを行うと効果的です。
① フィードバックの狙いを丁寧に伝える
「批判ではなく、成長や変化のチャンスにしてほしい」という意図を繰り返し伝え、本人が受け止められる状態をつくる。
② 事実ベースで、認識のズレを確認する
解釈ではなく事実を具体的に伝える。
例:「厳しく叱ったようだね」ではなく、
「●月●日●時ごろ、●●さんに“どうしてやってないの?”と言ったようだね」。
そのうえで、お互いの認識の違いを明確にする。
③ 今後どうするかを“対話で”決める
上司が一方的に結論を押し付けるのではなく、本人と共に改善策をつくり、合意形成を図る。
④ 最後にフォローの意思を伝えて締める
「今後も支援する」「困ったら相談してほしい」と伝え、継続的なフォローにつなげる。
フィードバックは内容そのものよりも、“どう伝えるか”が行動変容の質を左右します。
意図を丁寧に伝え、事実に基づいてズレを確認し、対話で改善策をつくることで、本人が納得して行動を変えやすくなります。
研修やフィードバックでは、その意図や目的をしっかり伝えておくことが重要です。特に本人にとっては受け入れがたいと感じることを伝える際には、丁寧すぎるぐらいに伝えるのがよいでしょう。
②挽回の機会をあらかじめ用意しておく
降格などの厳しい対応を行う場合には、必ず本人が再挑戦できる機会を用意しておくことが重要です。挽回の道がなければ、制度への納得感が得られず、挑戦意欲も損なわれてしまうためです。
労働法の観点からも、一方的な降格は認められません。その前に「十分な改善支援を行ったか」が必ず問われます。
また、心理的な面でも、ただネガティブな要素だけが提示されると、社員は「どうせ評価されない」「挑戦しても無駄だ」と感じ、行動意欲が大きく低下します。
そのため、厳しさと同じくらい“救済の仕組み”をセットで設計することが欠かせません。
社員の納得感を担保しつつ、健全な緊張感を保つために、以下の仕組みが有効です。
・降格前に、複数回の注意喚起や改善支援を実施する
(改善のチャンスを与えたことを明確にする)
・降格後も、一定期間内に成果を上げれば昇格できるようにする
(挑戦意欲を失わせず、努力が報われる仕組みをつくる)
このように、“痛み”だけでなく“再挑戦”を用意することで、本人の意欲と組織の公平性の両立が可能になります。
さらに、降格プロセスは法律的な判断も絡むため、顧問弁護士や人事制度コンサルティング会社と連携しながら進めることを強く推奨します。
降格は組織にとって大きな決断ですが、挽回のチャンスを事前に設計しておくことで、公平性・納得感を高め、社員の挑戦意欲を守ることができます。
法律面のリスクも避けるため、専門家の知見を借りながら慎重に進めることが大切です。
③管理職でないことが“不利”と誤解されない制度・コミュニケーションを徹底する
スペシャリスト制度を導入する際は、管理職が“上”、スペシャリストが“下”という誤った認識を生まないことが非常に重要です。
この誤解があると、本来は専門職として活躍できる人材が、不要なプレッシャーの中で管理職を目指してしまうからです。
社員に正しく理解してもらうために、次のような取り組みが有効です。
・管理職とスペシャリストで、給与に大きな差を作らない
役割の違いで報酬が決まる仕組みを明確に示す。
・スペシャリストが卓越した成果を出した場合、管理職や経営者以上の報酬を得られる可能性を示す
「どちらの道も評価される」というメッセージになる。
・制度導入時と運用後に、意図と主旨を繰り返し周知する
(研修・説明資料・評価面談の中で継続的に発信する)
これにより、社員に「管理職とスペシャリストは上下ではなく、役割が異なるだけ」という正しい認識が浸透します。
制度をつくるだけでは不十分で、社員がどう受け取るのかを細かく想定したコミュニケーションが不可欠です。
意図を丁寧に伝えることで、多様なキャリアが尊重され、社員が自分に合った道を安心して選べるようになります。
管理職への働きかけを成功させるには、意図を丁寧に伝え、挽回の道を用意し、制度面でも公平なキャリア選択を示すことが重要です。
これらの注意点を押さえることで、本人の納得感が高まり、組織としても健全で継続的な行動変容を促せるようになります。
5)参考|管理職が「仕事をしていないように見えても」成果が高いケースもある
管理職が仕事をしていないように見えるのに、チームの成果が高く、問題も起きていない──そんな状態のケースもあります。
これは①先を見据えた仕事の選択 ②成果への集中 ③古い慣習を手放す姿勢、が徹底されているからです。
成果を上げる管理職は、目の前の仕事に流されず、「どの仕事が本当に必要か」を取捨選択し、未来に向けた仕組みづくりに時間を投資します。
また、自分がどう見られるかより“成果そのもの”に意識を向けるため、部下が自律的に動きやすくなります。
さらに、不要な業務を捨て、新しい取り組みに集中することで、管理職が細かく動かなくても、チーム全体が自然と成果を出す状態が整います。
つまり、成果を出す管理職は「自分が働く量」ではなく、“組織として成果が上がる状態をつくること”に力を注いでいるのです。
その結果、本人が忙しくなくても、チームのパフォーマンスが高くなります。
管理職が仕事をしていないように見えても、ポジティブな影響を生んでいるケースもあるため、状況を踏まえた慎重な判断が必要です。
6)仕事をしない管理職にお悩みの場合は、アーティエンスにご相談ください
「仕事をしない管理職」への対応は、扱い方を誤ると、本人のキャリアにも、組織運営にも大きな悪影響を招く可能性があります。
だからこそ、場当たり的に対応するのではなく、事前に丁寧な設計を行ったうえで進めることが欠かせません。
しかし実際には、組織内部だけで解決するのは難しく、どう進めるべきか迷う場面も多いはずです。
そのような場合は、専門家のサポートを借りることで、より安全かつ効果的に課題解決を進めることができます。
アーティエンスでは、これまで数多くの企業で管理職研修や組織開発を支援し、多様な成功事例を蓄積してきました。
「いろいろ試したが改善しない」「社内に任せられる人がいない」などのお悩みをお持ちの際は、ぜひ一度ご相談ください。
お問い合わせフォームからお気軽にご連絡いただけます。
7)まとめ
管理職は、組織の成果と文化を支える“要”となる存在です。責任と負荷が大きい役割であり、誰もが自然に担えるものではありません。
もし、何らかの事情で「仕事をしない管理職」が生まれてしまうと、チームの停滞や離職、業績への影響など、組織全体に大きな負担をもたらします。
だからこそ、そのような状態が生まれにくい環境をあらかじめつくることが重要です。
なお、仕事をしない管理職への対応には専門性が求められる場面も多く、社内だけで無理に解決しようとすると、かえって状況を悪化させてしまうこともあります。
必要に応じて外部の専門家の力を借りながら、丁寧に進めていくことをおすすめします。
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