【実例あり】徹底解説!厳しい管理職研修を成功するために知っておきたいこと

更新日:

「当社の管理職は、だめだ!厳しい管理職研修で、叩き直す!」

このように感じたり考えたりする、経営者の方や人事の方は多いのではないでしょうか。
実際、当社に管理職研修を実施するときに、「厳しい管理職研修をしてほしい」と依頼は多くあります。

管理職は組織のキーパーソンですし、最も高いパフォーマンスを発揮してほしい存在です。ただ期待するほどのパフォーマンスを発揮できていないと考えている経営者は多いようです。

「コロナ禍、生成AIなど時代の流れは速いにもかかわらず、管理職はなかなか変わらない。そのために厳しい研修で変化を与えたい」

このような思考になるのは、当然かもしれません。ただ厳しい管理職研修の実施に関しては、慎重に検討していく必要があります。

厳しい研修は、「受講する管理職に対して強い刺激を与える内容」です。強い刺激はうまくいった時には効果が高いですが、同時に失敗した時のリスクも大きくなるからです。

本コラムでは受講生の具体的な反応もお見せしながら、

・厳しい管理職研修をするということはどういうことか
・厳しい管理職研修の内容は何か
・厳しい管理職研修をするときに気をつけるべきこと

をお伝えします。

本コラムをお読みいただくことで、管理職に厳しい研修を実施する時に考えるべきポイントを網羅的に知ることができ、自社で実施を検討する際に役立ちます。

監修者プロフィール

森川 友晴

チェリッシュグロウ(株)代表。業界歴15年以上。大手外食チェーンにて店舗業務、人事部、教育部などを経験した後、アルー(株)に転職。研修教材やコンテンツ開発のマネジメントを行う。 現在は、研修講師、中学高校や企業のカウンセラーとして企業と個人の支援を行っている。

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1)厳しい管理職研修とは「管理職の大きな変化を求めて強い刺激を与える」研修

厳しい管理職研修とは、「管理職の大きな変化を求めて強い刺激を与える」研修のことです。

管理職が今の状態から大きな変化を、しかも短期間に成し遂げるためには、その分強い刺激を与えることが必要になります。

具体的には、下記の方法が取られることがあり、いくつかの方法を組み合わせる研修が行われています。

※ 本事例はアーティエンスが実施している研修ではありません。

合宿研修

数日間から10日以上と幅がありますが、通常の勤務場所から離れた場所の施設で集中して行う研修です。非日常的な環境や限られたスペースでの集団行動を行うことによる、高い負荷が強い刺激となります。

具体的な研修例としては、5日間の合宿研修の中で、管理職の役割認識と現状の自分を見つめ直すといった研修を行います。

管理職としての自分の働き方や今の自分の問題など、必ずしも正解のない問いに対して、グループで話し合い続けます。また、グループディスカッションをしたり、ディスカッション後に「今の発言をした自分は何を考えていたのか」など内省を繰り返していくといったことを行っていきます。
その際、管理職のアウトプットに対して講師は「○○という視点が抜けている。なぜ抜けたのか」など厳しくフィードバックを行い、ギリギリまで考えていく環境を作ります。

2日間に渡って考え続け、問い続け、内省し続けるといった内容が受講生にとっては強い刺激となります。

こういう研修をすることで、自分に管理職としての軸を作っていくことや自分と向き合っていく強さを身に付けていくことを目的としています。

良い反応としては、「何をすると良いのか覚悟が決まった」「自分に向き合っていくことで、自分という人間がわかってきた」などがあります。
一方「答えのないことを考え続けること」「自分の内側と向き合っていくこと」が受講生にとっては、とてもきつい体験になるといった場合があります。

(参考)合宿研修を詳しく知りたい方へ
【チェックリスト付き】管理職合宿研修で実施すべき内容とは?|効果的で安全な開催方法も解説

難易度の高い課題を課す研修

通常行っている業務よりも格段に高い難易度の課題を考え、アウトプットを出すことで強い刺激となります。制限時間を短く設定したり、課長クラスの受講者に、経営者レベルの課題を与えることで負荷を高めます。

具体的な研修例としては、経営陣の立場に立ち、社会情勢や業界、自社など様々な情報から自社の経営戦略を考える研修を行います。

自分ひとりで考え続け、講師にアウトプットを提出し、講師より情報の荒さや見方の甘さ、アウトプットの精度などのダメ出しをされながら、より良いアウトプットを考え続けます。

研修によっては、他社の優秀な方との合同研修となっており、そういった方々と連携し、また競い合いながらアウトプットを出していきます。

日常で考えてこなかった内容を限られた時間の中で考えること、自分の能力の発揮が試され他者から判断されること、などが受講生にとって強い刺激になります。

良い反応としては、「今までの自分とは全く違う視野を持つことができた」「自分のダメさ加減がわかって危機感が高まった。帰ってすぐに行動したい」などがあります。
一方、「自信が無くなった」「自分の能力の低さに幻滅した。とてもやっていける気がしない」など自分の能力に直面することが、きつい体験となるといった場合があります。

周囲からの厳しいフィードバックを与える研修

360度評価によって、上司や部下、同僚からのフィードバックを伝える方法や、研修を実施する講師やファシリテーターなどの社外の人間からフィードバックを受けることで、受講者が自分への他者評価を受ける強い刺激となります。

具体的な研修例としては、360度フィードバックで上司・部下・同僚から忌憚のないフィードバックを受けます。ポジティブフィードバック、ネガティブフィードバックがありますが、受講生に強い刺激となるのはネガティブフィードバックです。

例えば、下記のようなネガティブフィードバックは、よくあるものです。

「運営をしてくれているとは思っているが経営ではない。ただ日々働いているだけに見えます」

「私たちを守ろうとしている気持ちは理解していますが、結局業務量は変わらないので、意味がないです。声かけしてもらっても仕事は楽になりません」

このような直接的な表現で伝えられることもあります。良い反応としては、「今まで独りよがりであることがわかった」「ショックも受けたが受け止めて自分の行動を変えていきたい」などがあります。
一方、「今まで良かれと思ってやっていたことが全て否定された気がした。今後どうすれば良いか考えられない」「部署のメンバーがこんなことを思っていたなんて思いもしなかった。残念で信頼できなくなった」など自分への否定的感情が大きくなることや、周囲に対する信頼感が低下する体験となるといった場合があります。

2)厳しい管理職研修における3つのリスク

「管理職の大きな変化を求めて強い刺激を与える」ことが厳しい管理職研修なのですが、それにはリスクがあります。このリスクを考慮しない厳しい管理職研修は効果が出ないどころか、かえって悪影響となることがあります。

なぜなら、強い刺激は強い反応となって返ってくるからです。そのため強い刺激を与える、厳しい管理職研修は強い反応が起きやすいのです。

例えば、病気を治すために強い薬を使うと人間は副反応といって、体がその衝撃に反応する状態が生まれます。強い刺激を与える厳しい研修も、その研修を受講した管理職にさまざまな強い反応を呼び起こします。

それが良い反応だけであれば良いのですが、悪い反応が起こることもあります。その悪い反応を知っておき対策を打っておかなければ、厳しい管理職研修を行ったために、行う前よりも状況や状態が悪化してしまったということも起こり得るのです。

具体的には3つのリスクがあります。

反発がおこるリスク

厳しい管理職研修を行うと、受講生の中にそういった研修を実施することや内容に関しての反発が起こるリスクがあります。

会社が厳しい管理職研修を実施するということを受講生となる管理職の方々が、「あなたはできない」「能力が低い」「信頼していない」という会社からのメッセージとして受け取ることがあるからです。受講生の方からすると、「そんなに変化しないといけないような人物と見ているのか?」と感じます。

多くの人は強い刺激を嫌がります。そういった嫌悪感はネガティブな感情に結びつきやすくなります。そのため研修受講中にもネガティブな感情が生まれやすくなるのです。

例えば、高い課題を与えられると、「こんな問題設定、問題自体に無理があるだろう」「どうせ失敗させるための仕掛けがあるんじゃないか」といった疑いを持ったり、講師から痛いところをつくようなフィードバックを受けると「そんなのは外からはなんとでも言えるじゃないか」「いつもの仕事を何も見ていない癖に」といった不満を持つのです。

このように、厳しい管理職研修を実施することは、研修を実施するということに対して会社からのネガティブなメッセージとして受け取るリスクや、研修中の厳しさに対してネガティブな感情が発生しやすいリスクを想定しておく必要があります。

自己効力感が低下するリスク

厳しい管理職研修を行うと、研修を行う前よりもかえって自信を失う、自己効力感が低下するリスクがあります。高い課題に取り組んだ結果、失敗してしまい自信を失うことや、周りからの評価などで自分のできていないところに向き合うことによって自信を失ってしまうからです。

受講生が学んだことを実行しようとするときに推進力となるのは、「自分はこの学んだことを実行できるだろう、できそうだ」という自己効力感です。この推進力が低下してしまえば、「学んだけれど実行しない」という状況になってしまうのです。

【参考】自己効力感を育む4つの源
自己効力感を高めるためには、4つの方法があると言われています。

【自己効力感を高める4つの源】

成功体験
あることを成し遂げた、やり終えた経験を持つこと。そうすると人は「次もやれるだろう」と思え、それが積み重なると「私はできる」となる

代理体験
他人をモデルとして観察し、獲得するもの。自分と近い人ができるところを見ることで「自分もできるかも」と思うようになる

社会的説得
コミュニケーションによって「君にはできる」と思わせること。言葉によって勇気づけ、なぜそう思うのかを伝えることで「できるかも」と思うようになる

生理的・感情的状態
自己効力感は安定したものではないため、体調や気分に左右される。健康や気持ちの状態が安定しているほど「できるかも」と思えるようになる

上記の方法で自己効力感は育まれていくのですが、厳しい管理職研修を実施する時に特に大事なのが「成功体験」です。厳しい管理職研修を乗り越えると、とても強い「成功体験」となります。「あんなに大変な研修を乗り越えることができたのだから、これからの仕事でも大丈夫だろう」となるのです。

しかしながら、これは「成功体験」ですので、失敗体験では成功体験とならないのです。厳しい管理職研修を実施することは、その課題を成功させることができるかどうかがポイントになります。失敗した場合は、逆に自己効力感が下がってしまうリスクがあることを把握しておく必要があります。

※ 失敗体験でも自己効力感が高まることはありますが、それはある程度の自己効力感がある場合です。

現場で研修で学んだことが反映されないリスク

厳しい管理職研修を行うと、研修実施の現場では成功したように見えたのに、職場に戻った時に学んだことが反映されないリスクがあります。

厳しい管理職研修は、大きな変化を起こすために用意された特別な環境であるために、現場とマッチしていなかったり、実際には学んだことを発揮する場がないために行動することができないということが起きるからです。

具体的にはこのような例があります。

・管理職の意識の変化が起き、積極的に組織変革に取り組んだ。しかしながら現場の変化がともなっていなかったために、管理職が1人で騒いでいるような状況になってしまった。
結局、管理職が現場の仕事を掻き回しただけになってしまい、現場の混乱だけが結果として残った。

・今後、より上級職になった時に必要なレベルを学んだが、実際にそこまでのレベルの仕事をする機会があるわけではなかったため、何も管理職の行動に変化は表れなかった。

厳しい管理職研修を実施したとしても現場の状況とマッチしていなかったり、発揮する場がなければ、学んだことが職場では一切活かされないということが起きるリスクがあるのです。

このように、厳しい管理職研修を行うことは効果が出なかったり、逆効果になってしまうリスクがあることを十分理解しておく必要があります。

3)【受講生の反応実例あり】厳しい管理職研修の実施を検討する時に必要な3ステップ

「管理職に厳しい研修が必要では?」と思った時には、すぐに実施を決めるのではなく3つのポイントを押さえた上で進めていくことが重要です。

厳しい管理職研修を実施することは、とても難易度が高く、やり方によっては逆効果にさえなってしまうことがあるからです。だからこそ、ポイントを押さえながら検討していくことが大事なのです。

具体的に考えるのは下記の3つのステップです。

①「なぜ厳しい研修が必要だと思ったのか?」と目的を考える
②「変化させたいところはどこか?」を特定させる
③「どんな研修内容が良いのか?」と手段を考える

①「なぜ厳しい研修が必要だと思ったのか?」と目的を考える

1つ目のステップは、「なぜ厳しい研修が必要だと思ったのか?」と目的を考えていくことです。

目的を再確認することで、管理職の何を変化させようと考えたのかが明確になり、改めて厳しい研修が必要なのか、それ以外の方法はないのか、厳しい研修が必要であるならば、それはどういう研修の形なのかといった視野の広い判断が可能になるからです。

具体的には下記のように「厳しい研修が必要だと思った場面」を考えていくことをお勧めします。

「コロナ禍によって急速にオンライン営業に変わったり、テレワークで仕事を進めるようになった。もしコロナが収束してもこの変化は止まらないと思う。それなのに、いまだに昔の営業にいつか戻るような話をしている。もういい加減に意識を切り替えてほしい…」

「社長が管理職に向けた話の中でこれからの自社に必要な改革について訴えていたが、管理職の反応が乏しく、表情を見ていると危機感がないように見えた…。現場の管理をするだけではなく、会社の経営側の一員であることをわかってほしい」

「経営状態は悪くない。しかし自分の会社の管理職はぬるま湯にいると思う。他社の同じ年代の人たちと比べると格段に能力が落ちるのにそれに気づいていない・・・どうするべきか」

「働き方改革を実施中だが、管理職が十分に進めているように見えない。社会のスピードを考えたらもっともっとスピード感を持って進めてほしい。」

「ジョブ型への移行とは、会社にとっても社員にとっても大きな影響のある決断だが、管理職の対応が遅すぎる。もっと一気に行動量を増してほしい」

「昔ながらの指導法やマネジメントではもう若手はついてきてくれない。自分の指導法やマネジメントの方法を見直し新しい指導法やマネジメントの方法を受け入れてほしい」

このように「自分がどのような場面を見たり聞いたのか」ということを紙に書き出したり、関係者で話し合っていきます。そうして動機を書き出していくことで「何を変化させたいと思ったのか」といった目的を明確にしていくのです。

②「変化させたいところはどこか?」を特定する

2つ目のステップは、1つ目のステップから見えてきた目的から管理職のどこを「変化させたい」のかを具体的に特定していきます。「変化させたい」ところを特定することで、研修内容がより具体的に考えることができるようになるからです。

例えば、「管理職の意識を変えたい」といったあいまいな表現ではなく、「管理職が現時点の課長職ではなく、部長職の視点を持つ必要性を認識し、能力を高めていこうとする意識を醸成したい」といったように具体化していくことです。

特定することにより、具体的には下記のような変化を促すことができます。

・コンフォートゾーン(ぬるま湯)からの脱却
・視野・視座・視点の転換
・自己評価と他者評価を照らし合わせることでの認知変容

コンフォートゾーン(ぬるま湯)からの脱却

現状に安住するのではなく、ストレッチのかかった状態に移行してほしい、ぬるま湯から抜け出てほしいという変化です。

例としては、今までの営業手法を使うことは、これまでうまくいっていた方法であり安心だが、今後の社会や業界を見据え、まだやったことがない営業手法にチャレンジしたり、全く新しい取り組みを提案するような管理職になっていくことなどです。

視野・視座・視点の転換

今とは違う広い視野、課長レベルから経営者レベルのいう視座の上昇、短期的視点から長期的視点などという変化です。

例としては、自分の課にとっての優先事項だけを考えるのではなく、会社の経営者の視点から自分の課の役割を見直した上で、これからの戦略や戦術を考えることができるような管理職になっていくことなどです。

自己評価と他者評価を照らし合わせることでの認知変容

独りよがりな自己評価ではなく、自分の行動を他者の視点から見直すことができ、自分の行動に反映することができるようになる変化です。

例としては、自分として「これが良い」と思ったことでも、一度立ち止まって周囲からはどのように見えるのか、上司や同僚は、部下たちの視点ではどのように見えるのかを検討した上で、自分の判断や行動を決断できる管理職になっていくことなどです。

このように「変化させたいところはどこか?」を定義することで、より具体的な方策を検討できるようになります。

③「どんな研修内容が良いのか?」と手段を考える

最後のステップは具体的に「どんな研修内容が良いのか?」と手段を考えることです。ここまで具体的に変化させたいことが明確になれば、研修内容もより適切に選択することができる準備が整っているからです。

この最後のステップで研修を考える際には「研修以外」の手法に関しても十分な検討が重要です。

・上司からの指導
・環境面の強化

など研修以外の打ち手も十分に検討すると、実は研修をする必要がなかったり、研修以外の有効な手立てが見つかることがあります。また、このように幅広く検討することが「研修頼り」の育成からの脱却に役立ちます。

具体的には

・ステップ②「『変化させたいところはどこか?』を特定する」で定義をした「変化させたい」ことを踏まえること
・「厳しい=強い刺激」と「ポジティブな感情が起こりやすい刺激」をセットで設計すること

ステップ②で「『変化させたいところはどこか?』を特定する」定義をした「変化させたい」ことを踏まえることで、よりターゲットが明確な研修内容とすることができるようになります。

また、「厳しい=強い刺激」と「ポジティブな感情が起こりやすい刺激」をセットで設計することで、「厳しい=強い刺激」を乗り越えやすくなるとともに、「厳しい=強い刺激」をポジティブな出来事として受け取りやすくなる効果があるからです。

変化させたい項目別の例として下記に書いていきます。

コンフォートゾーンからの脱却

厳しい環境や厳しい課題の中で良い経験をすることを体験する研修内容を実施します。

こういった内容でコンフォートゾーンではない環境を味わうことによって、不快な環境に対する耐性を作ると同時に、良い経験を味わうことによって、「不快な環境は決して悪いことではなく、良いことなのだ」といった認識を持ってもらうことができるのです。下記事例をご紹介します。

・業種・規模 : 食品メーカー、200名規模
・参加者 : 管理職(部長)と、経営陣
・研修の目的 : 次世代リーダーの育成

管理職(部長)が、「経営者の正解を探す」という状況が続き、経営者は物足りないアウトプットであったり、また自分たちが引退した後に次世代リーダーとしての不安がある状態でした。

次世代リーダー育成のために、毎月、管理職が抱えている課題をどのように解決し、事業の発展や組織変革を進める研修(ワークショップ)を行っていました。その時のワークショップで、一人の管理職Sさんから、「私たちだけで話し合っていても、埒が明かない。経営陣としっかり議論・対話をしないといけない」という話が出てきました。

他の管理職の反応ですが、「賛成!このままだと、経営者と私たちの認知の違いが続く」という声もあれば、「どうせわかってくれない。関係が悪化したらどうするんだ」という声もあり、また無言でフリーズする方もいました。

ファシリテーターから、一つの問いがありました。 「みなさんは、変わりたいですか?それとも今のままでいいですか?」

この問いにより、経営陣と共に、事業課題・組織課題について話す場を設けることになりました。 その時、ファシリテーターから提案がありました。 「私も同席しましょうか?同席の理由は、今までの経営者が抑え込む文脈にならないためです。」

そして、ファシリテーターの同席のもと、管理職と経営陣の議論と対話の場が設けられました。

この時に出てきた話は、経営陣が管理職に対して物足りなさを感じていれば、管理職も経営陣の考えがバラバラでその調整にリソースが取られるという話でした。どちらが悪いという話ではなく、なぜこのようなことが起きているかを紐解いていきました。

そして、見えてきた構造は、「経営陣VS管理職」になっていました。管理職が無言の抵抗をしていました。 この無言の抵抗が無くなるように、経営陣と管理職の会議においての進め方のルールを決めていきました。

・各トピックの担当者・責任者を明確にする
・各トピックに対して、必ず目的と目標を明確にする
・目的・目標を達成するための仮案を、担当者と責任者で考えて、会議前に提出する
・経営陣と管理職の会議において、仮案をよりよくするための議論と対話を行う
・問題なければ意思決定をする(意思決定ができない場合は、宿題を必ず渡す)

管理職も経営陣も、お互いの不満を受け止め乗り越えて、アウトプットを出していきました。まさにコンフォートゾーンを脱却したと言っていいでしょう。

<本事例のポイント>
・課題を誤魔化したり、臭いものに蓋にせず、言語化・可視化する
・ただの苦痛にならないように、挑戦を支え、成功体験につなげる
・ファシリテーターが場をホールドする

視野・視座・視点の転換

「経営者体験や、顧客体験などの今の立場とは違った体験の中で、新鮮な発見などの感情が起こる経験をすること」を含む研修内容を実施します。

こういった内容で他者体験を通して「視野・視座・視点の転換の疑似体験」を行います。また、同時に新鮮な発見を伴うことによって「視野・視座・視点を転換していくことは、ワクワクする前向きな行動なのだ」といった認識を持ってもらうことができるのです。

イメージがしやすいように、下記の事例を紹介いたします。

・業種・規模 : 美容系のベンチャー企業、30名規模
・参加者 : 経営者と管理職・チームリーダー
・研修の目的 : 経営視点を持って、スピード感を持って、仕事をしてほしい

プロセスワークという手法を用いて、他者の視点になりきり、ロールプレイングをするワークを行いました。
プロセスワークとは・・・アーノルドミンデルが創始した心理学のアプローチ。

その際に、開発責任者Tさんの立場が悪くなるような問題が多く出てきました。Tさんは、年長者で技術も経験もある方のため、経営陣を始め、他のメンバーは若く経験も浅いため、普段は率直な意見を言えない状況でした。

ファシリテーターの働きかけにより、率直な意見が出てきましたが、Tさんは激怒して、研修途中に出ていきました。そのまま研修は終わり、事後課題の提出の際に、開発責任者Tさんは、変容していきます。

開発責任者Tさんと、当社のファシリテーターのメールでのやりとりをご紹介します。

開発責任者Tさんのメール
途中退席の為、記入事項無し

最低最悪の研修でした。 多数の研修を社会人になってから受講しましたが、御社の研修は最低です。

実業務の内容にこだわり過ぎています。中途入社対象には、内容が間違っています。 私が講師を務めた方が良いかと思っております。

受講者に立腹されて、退席された経験はあなたも、前代未聞でしょう。 十分に反省された方がよいです。費用対効果は今回ゼロですね。

私のレートそして、開発の費用対効果、付加価値、生産性をあなたもコンサルだとしたら、計算してみてください。○○塾福岡の前職経営者とともに参加しました、それとは比にならないバカげた幼稚な内容でした。 「心を伸ばす経営を伸ばす」 以上

当社のファシリテーターからの返信

○○さん ご連絡ありがとうございます。 ファシリテーターの○○です。

ご連絡があったことを、本当に心から嬉しく思います。 私自身、○○さんに対して、フィードバックができるからです。 ○○さんの変容を信じて、想いをもってインラインでお伝えいたします。 ファシリテーター名

【開発責任者Tさん】
途中退席の為、記入事項無し
最低最悪の研修でした。多数の研修を社会人になってから受講しましたが、御社の研修が最低です。

【当社ファシリテーター】
私たちは、○○さんの評価は気にしておりません。
ただし、○○さんの心の中を大きく揺さぶったことは良かったと思っております。
私たちがコミットしていることは、(会社名)の組織変革のみです。

実業務の内容にこだわり過ぎています。中途入社対象には、内容が間違っています。 私が講師を務めた方が良いかと思っております。

厳しい内容ですが、あの場で出てきたことをお伝えします。御社は、マネジメントが全くできておりません。そして、開発責任者として、○○さんの責任はとても大きいです。

要件定義(アウトプットのすり合わせ)・タスク分解・スケジュール管理が全くできておらず、他部署との連携もできていないことが見えました。
「私たち、どうしたらいいの?」という話が、事実として多数出ていました。
開発責任者として、大きな問題として捉えていくことが必要です。

今できていないのであれば、あの場で、仮でもいいので全員で合意形成を取ることが重要です。
仮であれば、やり直しはいくらでもききます。

まさに○○さんの話している「動きながら、進化し続ける会社」ではないでしょうか?
一つのプロジェクトを扱い、やり方を知り、現場に持って帰ることができます。
そして、組織全体の仕事の進め方が変わっていくでしょう。
それは組織の成長に繋がります。
ベンチャー企業はマネジメントがずさんになることが圧倒的に多いので、それを改革・改善していく必要があります。
自分たちの弱さやできないことを認めて、前に進むしかないのです。

変わるチャンスに○○さんが抵抗することで、(会社名)の変革のブレーキになっています。

【開発責任者Tさん】
受講者に立腹されて、退席された経験はあなたも、前代未聞でしょう。
十分に反省された方がよいです。費用対効果は今回ゼロですね。

【当社ファシリテーター】
何度も経験しております。否定と破壊が起きると、混乱は起きます。組織変革では、何か起きたときにこそ、変われるチャンスと捉えます。
私たちにできることは、変われるチャンスが出たときに、その場をどれだけ丁寧に扱い、向き合うかです。
# 反省も内省も省察も、常に行っておりますが、今回の御社の状況が出てきたことはとてもよかったという認知です。

あの後、どのような場になったかをお伝えしますね。
皆さんは、現場での○○さんとのコミュニケーションにおいて、感謝している部分もあれば、パワハラとしてとらえて、とても苦しまれている部分のお話もでてきました。
彼らは勇気をもって話し、彼ら自身も変わろうとしています。
○○さんは、彼らの想いや考えを踏まえて、ご自身を見直すことはありませんか?できない自分・ダメな自分を認めることがスタートです。

ある会社さんの事例をお伝えします。
経営者・部長クラスに対して、経営方針決定のワークショップを行った時の話です。
そのワークショップで、企画を一緒にしていた専務(60代女性)が、激怒して部屋から出ていったことがありました。
# 激怒の対象は、私ではなく営業部長でしたが。ただし、その後、専務は見えた状況を真摯に受け止めて、ご自身が変わりました。

落ち込んでいた売上が、一か月後、売上はV字回復しました。 (会社名)の変革は、○○さんが「変わる、変わらない」で変革のスピードは変わるでしょう。 それほど、○○さんの影響は大きいのです。

私のレートそして、開発の費用対効果、付加価値、生産性をあなたもコンサルだとしたら、計算してみてください。 私たちは、(会社名)の組織変革に対して、コミットしております。
私たちがいただいているフィーはもちろん、参加していただいている方のリソースなどは理解しております。私たちは、(会社名)の組織変革に対して、コミットしております。

第一歩として、マネジメントがワークしていない、その原因も見えてきたのではないでしょうか。
何度も恐縮ですが、マネジメントがワークしていないのは、○○さんの影響がとても大きいです。それを浮き彫りにし、他の方が真剣に向き合ったことには価値があります。そして、ここからが変革のスタートです。○○さん以外の方々は、一体感を持って、変革をしようとしているように見えます。彼らは○○さんとも向き合おうとされています。

私自身も、御社との契約では、○○さんへのメールの返信を丁寧に行うことなど、通常ここまでの対応はしません。なぜここまでしているかというと、(会社名)の変革に外部パートナーであっても可能な限りコミットしているからです。

【開発責任者Tさん】
○○塾福岡の前職経営者とともに参加しました、それとは比にならないバカげた幼稚な内容でした。
「心を伸ばす経営を伸ばす」

【当社ファシリテーター】
他社さんのコンテンツや、やり方はわかりません。ただし、“心を伸ばす”というキーワードから、○○さんの在り方・態度は、(会社名)にどのような影響を与えていますか?ご存知だと思いますが、役職が上がればあがるほど、知識・スキル以上に、自身の在り方や態度と向き合う必要があります。

○○さんは、ご自身の態度・ふるまいなどが、メンバーにどのような影響を与えているか、どの程度認知されていますか? (会社名)・メンバーは○○さんの存在をどのように捉えていますか?○○さん自身が、変容しなければ、恐らく(会社名)でのご自身の立場はなくなっていくように思います。

ベンチャー企業において、幹部社員・管理職の存在はとても大きく、ワークしていないのであれば、遅かれ早かれ組織からの退場するケースはとても多いです。最後になりますが、私たちは○○さんへのネガティブな感情ではなく、(会社名)の変革を願っているためフィードバックをしています。
# 私たちは外部だからこそフラットな立場でお伝えしています。

私自身もこのメールを書いていて、とても苦しいです。厳しいフィードバックは、自身も傷つけますから。

ただし(会社名)の変革による発展と共に、○○さんの人生が豊かになることも、心から願っているのです。
○○さんが、この出てきた状況に逃げずに、真摯にご自身と向き合っていただくことを祈っております。

この後、開発責任者のTさんからの返信はなかったため、他の参加者の事後課題の提出があった後に、再度ファシリテーターから連絡しています。

【ファシリテーターから追記の内容】 ○○さん 追記します。

先ほどブリッジシートの提出(事後課題)で、○○さんへのコメントがありました。  ブリッジシート ○○さんのことを思い、真剣に向き合っている方もいます。

一週間後に、開発責任者のTさんからの返信がありました。 【開発責任者のTさんからの返信】

お世話になります。 (会社名)の○○です。

前回の、研修では大変失礼致しました。
社内に与えた悪影響も、全て私が取った行動からだと、深く反省しております。

今後は、二度とこの様な事の無い様に致します。
次回の研修には、是非とも参加させて頂きたく思っておりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

【当社ファシリテーターからの返信】
○○さん おはようございます。(ファシリテーター名)です。 ご連絡ありがとうございます。 ご連絡いただいたこと、とてもうれしく思います。

ただ、私は謝罪は求めておりません。 ○○さん、御社の未来が豊かになることを願っているのみです。 これから、○○さんの行動・言動など態度と言われるもの、そしてあり方・心根が問われると思っております。 ○○さんは、変容が求められています。

高齢になってからの変容は本当大変だと思いますし、辛いことも多いと思います。 ただし変容できないことはありません。 当社がご支援した上場会社の代表の方(60オーバー)の方が変容されたお話をお伝えしますね。

とても親分肌な方で、倒産しかけていた会社の窮地を救った方でした。 ただその強いリーダーシップだと、現場が受け身になるという状況が生まれていましたし、強引に進めることで、離職率も高く、精神疾患の方も多かったです。事業に関しても、一つのコンテンツに依存している状態で売上も停滞していました。

彼が自身の弱さを認めて、変容したことで、管理職が育ち、新しいサービスが立ち上がり、マネタイズし、停滞していた業績も成長フェーズに入り、株価も緩やかながら上がっているという状況が生まれました。 # 2年程度の期間で変化がありました。

人は変われます。 ○○さんは、現在の役職や年齢による経験数などから、周りに素晴らしい影響を与えていくことを心から願っております。 小さなことでいいので、周りから働き掛けを変えてください。 年齢・役職などに囚われず、相手を敬うことから始められるといいかなと思います。 またご一緒できることを楽しみにしております。

この後、経営者と、開発責任者のTさんは、話し合いの末、本人の意向もあり、降格されたとのことでした。ただし、その後の製品開発などは、とてもスムーズに進み始めたとお話を聞いております。

<本事例のポイント>
・他者視点を頭で理解するだけではなく、体感レベルまで味わう
・苦痛から目を背けることをせずにしながらも、参加者を信じるか
・ファシリテーターが、適切に介入する

自己評価と他者評価を照らし合わせることでの認知変容

「360度評価シートを渡すことや、上司インタビューをすることなどで、他者評価を受け取る機会を持つことや講師から演習実施中の具体的な行動に対する客観的なフィードバックを受け取る機会を持つこと。その評価はポジティブな評価を多めに設計すること。」が必要です。

こういった内容で自己評価と他者評価を照らし合わせる機会を持ってもらいます。その時にポジティブな評価を多めに受け取るようにすることで「自分にはできていることもあるんだ。その上で足りないことも明確になった。」といった認識を持ってもらうことができるのです。

下記事例をご紹介します。

・業種・規模 : 不動産会社、100名規模
・参加者 : 管理職・チームリーダーと、新入社員
・研修の目的 :「自らの成長・変化を実感」し、「どのように成長スピードを上げていくか」を探求する

新入社員の戦力化がとても遅く、そして新入社員の離職率も高い会社でした。 そのため、研修制度を整えて、課題解決を行っていきました。

新入社員には、今まで簡単なマナー研修と、専門知識の研修を1週間程度行ってから、現場配属でしたが、1カ月間の新人研修と、7月に管理職・チームリーダーと合同のフォロー研修を行いました。

管理職とチームリーダーにも、配属前にOJT研修を行い、7月に管理職・チームリーダーと合同のフォロー研修を行いました。

今回は、7月のフォロー研修の際に、「自己評価と他者評価を照らし合わせること」を行いました。
研修の内容としては、まず率直な意見(特に管理職・チームリーダー)を受け止めやすい場を創っていきます。

研修の仕立てとしては、管理職・チームリーダーのクラスと、新入社員のクラスを分けて、研修を受けます。この午前中のワークは、受講生同士のポジティブフィードバックを中心に行っていきます。午後は、管理職・チームリーダーと新入社員が、合同で研修を受けます。

「どのように成長スピードを上げていくか」を始めに探求していきますが、この際は、管理職・チームリーダーも、新入社員も、斜め上の管理職・チームリーダー・新入社員と対話を深めていきます。そして最後に、直属の管理職・チームリーダーと、新入社員がペアを組みます。そして普段言えなかったことを、お互い伝え合います。

この時に耳の痛い発言が出てきます。ただし、それを十分受け止めるだけの場が生まれているので、上司である管理職・チームリーダーは、新入社員からのリクエストをしっかり受け止めていました。

その後、7月の終わりには、昨年新入社員の受注は、1社のみでしたが、3社もされていました。これは、新入社員が変わったのではなく、管理職・チームリーダーの働きかけが変わったためだそうです。

離職率も、12月時点で20名弱の採用で、1名のみとのことでした。 ※ 例年は、30~40%程度だそうです。

<本事例のポイント>
・オープンに話せ、受け止めることができる場を創る
・フィードバックが自身にとって有効であることを理解する
・ファシリテーターが、ポジティブな場を創る

「管理職に厳しい研修が必要では?」と思った時に考える3つのステップについて解説していきました。厳しい管理職研修は、これまで述べてきた通り慎重な対応が必要です。

何のために厳しい管理職研修を実施したいのかを見直していくこと、そこから見えてくる「変化させたい場所」を特定させていくこと、特定させた「変化させたい場所」に最も適切な内容の研修を考えることが大切です。

厳しい管理職研修は、管理職にとって強い刺激となる負担がかかる研修です。設計が甘いまま実施してしまうと「辛い研修だった」という感想だけになってしまう可能性があります。管理職にとっても会社にとっても丁寧に適切に設計した「厳しい管理職研修」を行っていくことをお勧めします。

4)まとめ

管理職に対して「厳しい」研修を実施することは、管理職の意識を一気に変革していくことや会社の大きな変革に繋げていくために有効な手段です。

一方、管理職への「厳しい」研修は強い刺激であるために、その分丁寧に設計を行うこと、担当者、研修会社、講師が強い意志を持って取り組むことが必要になります。

丁寧な設計のためには、下記が必要です。

・厳しい管理職研修における3つのリスク
・「管理職に厳しい研修が必要では?」と思った時に考える3つのステップ

個の内容を踏まえて、効果的な管理職の厳しい研修が設計できます。私たちアーティエンスでは、本当に必要な研修を行うために真剣に取り組むことを目指しています。もし、もっとより詳しく知りたい、一緒に考えてみたいと思った方はご相談ください。 各会社の状況や状態に応じて真剣に対策を一緒に考えていきます。

本コラムが皆さんの助けになれば幸いです。

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