管理職育成の効果を最大化!成功事例で学ぶ6ステップに沿って学ぶ実践法

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まずはじめに、管理職育成のゴールは、「管理職にふさわしい意識・スキルを伝え、実際のマネジメントで活かしていて、成果を上げている状態」にすることです。

どれだけインプットをしても、実際のマネジメントで活かされていない、もしくはそれが成果に繋がっていないということであれば、管理職として期待されるパフォーマンスを上げているとは言えないからです。

管理職としてふさわしい意識とスキルを持つことが必要です。

しかし、意識とスキルだけでは成果が上がりません。マネジメントは常に目の前の事象に対して、どのように判断するか、臨機応変に対応が必要です。そのためには意識やスキルのインプットを、マネジメントの実践を経ながら、現実に則した持論として育んでいくことが求められます。

そして最後の要素は「事業や組織に関する成果」につなげることです。多くの会社では管理職は結果で評価されます。どれだけ意識やスキルが高く、実践が豊富でも、実際に成果に反映されていないようであれば、管理職としてパフォーマンスしているとは言えません。

つまり、管理職が育成されている状態とは、上記の3つの要素を満たされていること、と言えます。

管理職の育成を単なる知識やスキルのインプットで終わらせずに、成果までつなげていくためには、経験・薫陶・研修が必要だと言われています。

米国の人事コンサルティング会社ロミンガー社の調査によると、人材育成に寄与する要素として、仕事における経験が7割、上司や先輩からの薫陶が2割、研修が1割の役割を占めているという結果が出ています。

本人が自分の仕事経験を通じて成長する機会がもっとも多く、続いて、上位者や先輩などから仕事上の体験を聞き、その体験から学ぶこと、最後に研修を通じた学習となります。

本データから言えることとしては、育成施策として掲げられがちな研修はあくまで一要素であり、その他の要素もバランスよく盛り込む必要があります。

上記内容を踏まえて、本コラムでは、多くの企業と研修を企画する中で見えてきた、管理職育成を成功に導くためのステップをお伝えします。

管理職育成を成功に導く6つのステップ
①リサーチ
②目的・ゴール設定
③育成全体像の設計
④育成計画を立てる
⑤育成施策の実施
⑥育成施策の効果検証

管理職育成を成功に導く6つのステップの詳細と3つの注意点は、本文内で詳しく解説しています。成功事例を交えたリアルな変化の様子も紹介します。

この記事を読むことで、管理職育成の進め方の全体像を把握し、具体的な行動を起こすことができるでしょう。組織が期待する管理職に育成し、組織としての成長を促せるようにしましょう。

監修者プロフィール

菊地 大翼

組織人事コンサルタント。業界歴15年以上。研修会社に入社し、法人営業で売上トップを達成後、新規商品の開発に従事。現在は人事制度構築支援、成人発達理論に基づいた人材・組織開発のコンサルティングを行っている。

1)管理職育成を成功に導く6つのステップ

ここからは管理職育成の進め方について触れていきます。全体像は以下になります。

①リサーチ

まず「①リサーチ」についてです。 ここでのゴールは、「育成を施すことで、誰にどうなってほしいのか?をざっくりでもいいので言語化できること」です。もちろん正確に言語化できるに越したことはありませんが、この段階では言語化するための材料集めが主な狙いなので、大まかなものでも問題ありません。

リサーチが行われないと、管理職育成の方向性がブレやすくなります。

例えば、経営陣の鶴の一声によって方向性が大きく変わる、現場発の意見が中心となり、会社として管理職にどうなってほしいか?を示せないなどが起こりやすくなります。よって、粗くても構わないのでリサーチを行い、おおよその方向性を出していくことが大切です。

さて、まず行うのは情報収集・材料集めです。
具体的には以下のような観点でリサーチを進めていきます。

リサーチの観点と項目の一覧
①外部環境
②自社の経営方針
③経営陣からのリクエスト
④部下からのフィードバックやリクエスト
⑤最近の育成トレンド

外部環境

観点はいくつかありますが、例えば以下のような観点でリサーチします。

外部環境の観点
・業界の市場環境はどのように変化しているか?
・市場環境の変化を受けて、マネジメントのあり方やトレンドに変化はあるか?
・変化の影響を受けて自社の管理職にどのような変化が求められそうか?

このステップで大切なことは、時間を掛け過ぎないことです。市場環境などの調査は時間を掛けようと思えば、いくらでも掛けられますが、ここでのゴールは管理職育成の参考になる情報を集めることです。時間を掛けても最大3日間ぐらい、1日でも十分です。

 

自社の経営方針・経営陣からのリクエスト

こちらは以下のような観点が参考になるでしょう。

経営方針・経営陣からの情報収集の観点
・自社のミッション、ビジョン、戦略は何か?
・自社の中期経営計画の内容は?それを受けてマネジメントに影響が出る要素はあるか?
・経営陣からの管理職に対するリクエストや要望は?

このステップで大切なことは、資料やデータだけでなく、直接経営陣から話を聞く機会をつくることです。
なぜ大切なのかというと、経営陣から有益な情報が得られることに加え、管理職育成の施策を進めていくにあたり、経営陣からサポートを得られやすくする効果があるためです。

管理職育成の成功のためには経営陣からのサポートが不可欠です。
研修に来て話をしてもらう以外にも、管理職のメンターになってもらうなど、経営陣からのサポートが必要な場面は数多くあります。また、管理職の上司は経営陣となることが多く、管理職と経営陣が良好な関係性であることは、管理職が成果を上げていく際にも効果的です。

ただし、いきなり経営陣にサポートをお願いしても、断られるケースもあります。前もってそういったサポートが必要になるかもしれないことを伝える、会社全体として管理職育成は重要なテーマだと認識してもらうなどの事前に働きかけがそのあとの経営陣の受け止め方に大きく影響していきます。

つまり、インタビューを通じて、経営陣の認識を変えることにも繋がるのです。

部下からのフィードバックやリクエスト

方法としては、
1.アンケートを取る
2.何人かをピックアップしてインタビューしてみる
、があります。

本来であれば両方行えることに越したことはありませんが、時間やリソースの関係で難しいのであればインタビューがお勧めです。アンケートはどうしても文面での回答になってしまい、表面的な情報しか集まらないケースがあります。マネジメントの課題は多くの要素とつながっているので、できれば深掘って聞くことのできるインタビューをお勧めしています。

管理職へのインタビュー項目
・メンバーのマネジメントで悩んでおられること
・経営陣や上司の方との関わりにおいて、悩み・葛藤を抱えていること
・部下との関わりにおいて、悩み・葛藤を抱えていること
・その他ご自身が日頃課題に感じておられることやお悩みに感じることなど
・管理職育成への期待

最近の育成トレンド

これは少し大きめの書店に足を運んで経営書やビジネス書の棚を見たり、外部の専門家の意見を仰ぐなどが有効です。
なぜ本や外部の専門家に聞くことが必要なのかというと、WEBの情報は玉石混交であったり、必ずしも最新の情報ではない可能性もあるためです。インターネットだけを情報源とするのは、心もとないと言えます。
リサーチでは、「何が必要で、何が必要でないのか?」の大まかな方向性が出れば良いでしょう。

②目的・ゴール設定

続いて「②目的・ゴール設定」についてです。
ゴール設定を行わないと、施策を行った際に、その施策が成功だったのか否か?の判断ができません。ここがあやふやになると、研修をみた経営陣の主観や、研修に参加した管理職の満足度などで、成果が判断されてしまい、肝心のゴールを達成したか否か?への意識が薄れがちになります。

ゴール設定は以下のステップで進めていきます。

ゴール設定の進め方
・リサーチした情報を元に管理職のありたい姿を決める
・ありたい姿から現状を見るとどうか?
・ありたい姿と現状を見て、課題(ゴール)を決める

まずリサーチした情報も活かして、管理職のありたい姿を決めていきます。
リサーチの際に作成した「誰にどうなってほしいのか?」を具体的に言語化していきます。ここは、一般的な表現ではなく、できれば経営陣や管理職の方かた出てきた言葉を用いると、よりイメージが付きやすくなります。

【関連記事】管理職研修は4種類!種類別の目的とおすすめの研修内容12選

③育成全体像の設計

次に「③育成全体像の設計」です。 こちらでは、ゴールに向かうために必要な要素を洗い出します。たとえば、先ほど挙げた「経験」「薫陶」「研修」などの観点で洗い出すと、抜け漏れを防ぎやすくなるでしょう。


洗い出しが終わると、何をどの程度進めていけば良いのかがはっきりしていきます。

④育成計画を立てる

ここから「④育成計画を立てる」になります。
先ほどまで整理した成長・学びに必要な要素を織り交ぜながら計画を立てていきます。

「経験」についてはOJTもしくは研修を用いての疑似体験となります。実務で経験できることに越したことはありませんが、特に新任管理職などの場合は難しい場合もあるでしょう。その際は研修におけるワークやケーススタディなどで、疑似体験を提供します。

一番望ましいのは、
①実務に向かう前に研修で疑似体験→その学びを活かして実務に取り組む、
もしくは
②実務で一定度経験をして→③研修でその経験を振り返り、普遍的な気づきや能力開発に向けたポイントを明らかにする

です。

「薫陶」については、先ほど述べたような上司や先輩にあたる方の話を聞く以外にも、研修中に他の参加者と対話する機会を設ける、なども有効です。薫陶要素を入れるタイミングは、目的によって変わります。

例えば「まずなりたい姿、ゴールイメージを明確にしてほしい」ということであれば、前半に設けることが有効でしょう。逆にちょっと経験を積んでから、実務における乗り越え方を学んでほしいとのことであれば、半ばもしくは後半に設けることが有効です。

また「薫陶」を単なるインプットに終わらせないためには、そこでの気づきや学びを言語化する時間を持つことが大切です。

最後に「研修」です。ここまで要素が整理されていれば、「研修で何を扱わなければならないか?」はある程度明確になっているため、必要なテーマの洗い出しを行います。


これから具体的な計画に落とし込んでいくことになりますが、その前にこの段階で「どの部分までは自社で行い、どの部分は外部の専門家の協力を仰ぐか?」をある程度決めておけると良いでしょう。

そうしていくと、必要となる予算や、自社でどの程度リソースが必要かも見えてくるでしょう。
こちらも最も望ましいのは自社と外部の専門家で協働することです。

よくあるのは「自社ですべてを完結させる」もしくは「すべてを外部の専門家に委託する」ですが、自社で完結できればそれに越したことはありませんが、特に管理職育成というテーマは、専門知識や立場もありで、すべてを自社でカバーすることは難しいことが多い領域です。

また、管理職育成というテーマ上、これまでの自社の流れを否定することが必要になる場面もあり、自分たちで自分たちのことを否定せざるを得ない場面もあります。

そうなった際に、適切な自己批判が自社だけで可能なのか?は一度考えてみるとよいでしょう。

では、すべてを外部の専門家に委託すればよいかというと、必ずしもそうとは限りません。

自社の特有の事情や歴史は自分たちが一番よく知っていますし、会社がこれからどの方向に向かっていきたいか?をありありと語れるのは、自社の経営陣や人事部の皆さんです。

よって、専門的な知識やスキルを学ぶことが必要になる場合、言いにくいことを伝えなければいけない場面などでは外部の専門家をうまく活用すると良いでしょう。

一方で、なぜ自社にとって管理職育成が大切なのか?

実務におけるフォローアップ・落とし込みといった場面では、社内の方がリードされた方が、管理職の納得感も得られやすく、ひいては育成効果にもよい影響が出るでしょう。計画に落とす手前に、効果検証についても考えておきましょう。

人の育成、成長という目には見えにくいものを扱うこともあり、厳密な効果検証は難しいですが、自社にとってこの施策は有効だったのか?否か?が把握できるレベルの効果検証は可能です。

もっとも有名なのは、カークパトリックの4レベルです。   

LV 内容 評価項目 手法 測定の
タイミング
① 反応 研修に対する
印象
満足度
有益度
自己効力感
自己効力感
本人に対する
アンケート
施策の直後
② 学習 知識・技術の
獲得
学習内容
理解度
テスト
ロールプレイ
施策前~試作中
③ 行動 職場行動変容 行動変容の内容やレベル 成功体験インタビュー
行動観察など
施策数か月後
④ 成果 ビジネス上の
成果
売上・利益
コスト削減
退職率
ビジネス上の成果測定
実験群と統制群の比較
施策数か月後

レベル4まで検証できるのがベストですが、業績に変化が起きた理由には、市場の変化、自社の方針によるもの、などすべてがマネジメントのレベルアップでは説明できるわけではありません。

もちろん精緻な分析を行えば可能な部分もありますが、労あって功少なしとも言え、積極的な活用はお勧めできません。

レベル3の行動変容は厳密に測定をしようとすると、かなりの手間が掛かりますが、たとえば一部の施策に対して、「どのようなことを実践したか?を教えてください」と聞いて、そのデータを集めるだけでも、行動変容に関するデータが集まることになります。

もちろん全員がすぐに行動変容しないこともあるでしょうが、その際もそれが明らかになることで、今後どのように改善していけばいいのか?の当たりをつけることができます。

こういった実務における行動変容を追いかけるアプローチは「サクセス・ケースメソッド」と言われており、有効性も検証されています。

これらを踏まえて、育成の全体像を設計していきます。

⑤育成施策の実施

続いて「⑤育成施策の実施」です。 以下にポイントをまとめました。

育成施策を実施する際のポイント
・施策を実施しながらブラッシュアップしていく
・新たな課題が出てきた時には、どこで扱うか?を決める
・次年度への改善点はまとめておく

基本的には計画に沿って進めていくことになりますが、実際にスタートしてみると、想定通りには行かないところ、予定変更が必要になることが出てくるはずです。
その際には、臨機応変に計画を変更していくことが求められます。

 

外部の専門家に依頼するには、どの程度まで変更に対応できるか?などを事前に相談しておくことがお勧めです。どの程度まで対応するか?できるか?は専門家によっても幅がありますので、いきなり相談してもそれはできませんとなる場合もあります。また、追加の費用が必要になることもあります。
こういった背景から、外部の専門家に依頼している場合は、事前相談を行っておきましょう。

さらに、施策を進めていくと「あれも変えたい、これも変えたい」となる場合があります。もちろん変更が可能であれば問題ありませんが、皆さんの手間や時間も掛かりますし、一つを変えると予想外のところに悪影響を及ぼす可能性があります。

これを防ぐには、問題点のリストアップと対応を切り分けることが有効です。

問題点をリストアップしながら、要対応のものと、そうでないものに分けていきます。

そのうち、「いますぐに対応した方がよいもの」については対応を行い、「改善は必要だが、必ずしも今のタイミングでなくともよいもの」については次回以降に回してもよいでしょう。ただし、その次回に向けた改善点は別途整理しておき、次回の企画時に確認することを予定に入れておきましょう。

⑥育成施策の効果検証

最後のステップは、「⑥育成施策の効果検証」です。 効果検証については先ほども触れましたが、ここまでの段階で以下のようなデータが集まるかと思いますので、そのデータを元に振り返りを行います。

効果検証に使えるデータ(箇条書き)
・各種施策のアンケート
・管理職のアクションプラン・成功事例集
・上司や部下からの評判やフィードバック

振り返りの際には以下のような進め方が良いでしょう。

振り返りの際の進め方
・うまくいったこと、うまくいかなかったことを洗い出す
・うまくいったのはなぜか?うまくいかなかったのはなぜか?を分析する
・今後に向けてどうするかをまとめる

大切なのは、うまくいったこと、うまくいかなかったことの事象だけでなく、その背景や理由、原因まで掘り下げることです。ここで組織課題などが発見できる可能性もあり、今後の企画の参考材料となっていきます。

外部の専門家に依頼した場合は、多くの場合所感やレポートが提出されると思いますが、できればそのレポートをそのまま報告するのではなく、それを自社なりに読み解いて、今後はどうしていくべきか?などの示唆も含めて経営陣に報告ができるとよいでしょう。ここまでが管理職育成の進め方の全体像になります。

次に、これまでアーティエンスが手がけてきた他社事例をご紹介します。

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2)管理職育成の成功事例を6ステップに沿って解説

「M&A後の社風の違いでの混乱とコロナ禍の業績不振」を、丁寧に管理職育成を行うことで乗り越えていった事例を、ご紹介します。
「M&Aで社風が違うから仕方ない」、「コロナ禍だからダメだ」ではなく、企画チームと管理職が組織と向き合うことで、この困難を乗り越えていきました。

 

本事例は、Webコンテンツ事業を行っている社員数200名程度の企業の話です。

対等な合併とは言えず、経営陣は吸収した会社の人間のみでした。人事制度も大きく変わり、降格・減給された社員もいました。そして、吸収された企業の社員の方が人数は、6割強と多いのも特徴でした。企業文化も大きく違い、吸収した会社は体育会系、吸収された会社はフラットな社風でした。離職者も出始めていました。

 

経営者自身も、この状況を重く受け止めて、何かしたら打ち手を打たないといけないと思っていました。
その際、経営陣が出した答えは、現場のキーパーソンであるマネージャーの育成を通して、乗り越えるという話になり、それが人事部のマネジャーTさんにミッションとして渡されました。Tさんは、吸収された企業出身(以下A社)で、経営陣との信頼関係は強くありません。

そして、この状況をどうしたらいいかと当社にご相談がありました。
ご相談は、2019年11月の終わりにご連絡がありました。

 

まず始めにアプローチしたのが、「①リサーチ、②目的・ゴール設計」になります。


Tさんに対して、「①リサーチ、②目的・ゴール設計」の設定を丁寧に行う必要性を伝え、Tさんは経営陣へのヒアリング・現場のマネージャーなどに可能な範囲で行ってきていただきました。

そして、経営者を巻き込んで、「②目的・ゴール設計」を行いたい旨をお伝えしました。

経営陣が企画会議に入るのは難しかったですが、Tさんの頑張りによりバックオフィスの責任者でTさんの上司でもあるMさんが企画会議に参加されることになります。

Mさんは買収した会社(以下B社)の出身で、経営陣の信頼もとても厚い方でした。合計3回の会議で、研修目的とゴールを設定されました。

いよいよ「③育成全体像のデザイン、④育成計画を立てる」を行うタイミングで、コロナ禍により緊急事態宣言が発令されました。

コロナ禍によりこのままうやむやに終わりそうでしたが、Tさんは現場がM&Aだけではなく、コロナ禍でもダメージを受けていることから、何とか管理職育成を進めたいという想いを持って進めていきました。

そして、「①リサーチ、②目的・ゴール設計」があったことと、Tさんの上司であるMさんが企画会議に入っていたので、Tさんと共に経営陣に対して、この状況を打破するには、管理職育成が必要だということ伝えていきました。

コロナ禍という新しい前提ができたため、「①リサーチ、②目的・ゴール設計」から再度丁寧に設計していきました。下記がミーティングの内容のイメージです。

企画会議を再開したのが、7月の頭で、8月の末には実施したいということで、急ピッチで「③育成全体像のデザイン、④育成計画を立てる」を行っていきます。

研修目的(コンセプト)を、「経験」「薫陶」「研修」で支えていきます。

研修目的を達成するための育成計画を立てていきます。

研修の事後フォローとして、slack内で管理職のグループを作り、バトンメール🄬という手法を行いました。

研修での学びを現場でどのように活かしているかをシェアしていきます。これが管理職の行動変容を刺激し続け、そして効果測定としての判断の要素にもなります。

次はいよいよ「⑤育成施策の実施」です。


withコロナであったため、研修はオンラインでスタートしました。一日目、ブレイクアウトルームでは、管理職の不満は爆発していました。
この忙しい時に、研修をやって意味があるのかと。

ただし、その後対話を通して、このままではいけないという危機感が出て、管理職が一体感を持ち終わっていきました。

下記が管理職からのレポート内容にです。

最後に、「⑥効果検証」です。



この時に注意が必要なのは、研修がすべて終わってから効果研修を行うのではなく、管理職の行動変容を見続けていくことが必要です。その行動変容をみることで、時には研修内容を変更し、効果を上げていくこともできます。

本お客様に関しては、下記のような行動変容が起きてました。その際の取り巻く環境に関してもお伝えします。

M&Aでの混乱、そしてコロナ禍という状況でしたが、本お客様はこのような状況をしなやかに乗り越えていきました。

これで終わりするのではなく、さらにドライブをかけるために、2年目の管理職育成に続いていきました。この後、withコロナによりまた業績が悪化したり、サーベイも悪化するなども発生しました。
その状況も、経営陣や事業部長を巻き込み、乗り越えていきました。

そして、M&Aとコロナ禍に一定のめどがつき、本プロジェクトは終了しました。

Tさんは、このプロジェクトにより、経営陣から強い信頼を得ていました。現場の管理職との距離も近くなり、相談を受けるようになり、とても頼られる存在になっていきました。

この事例のように、丁寧に管理職育成を行うことで、組織のありたい姿や組織課題は解決できます。 

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3)管理職育成に取り組む際の3つの注意点

最後に管理職育成に取り組む際の注意点について解説します。

①インプットだけ、理論だけで済ませない

管理職育成においてありがちなのは、ついつい知識の詰め込みになってしまうケースです。
管理職には押さえておくべきテーマが多岐に渡ります。基本的な知識だと、労務管理や法令などですし、最近ですとリモートワークにおけるマネジメントなどへの対応も必要になってきます。

そうなると、ついついインプット重視、詰め込み型の育成になりやすくなります。
しかし、先ほどもご紹介したように、育成に研修が寄与するのは1割ほどです。そのため、インプットだけで済ませるのではなく、実際にアウトプットする機会を設けたり、他者と学びについて対話をしていくなどの施策も盛り込むようにしましょう。

②実践期間を設け、成功体験から持論をつくる・自分の言葉で学びを消化してこそ、定着する

本や研修での学び、経営陣や上司からのアドバイスやフィードバックは、多くの場合一般論に留まりがちです。それを仕事の場面で応用していくためには、学びや気づきを自分なりの言葉で表現し、持論としていくステップが重要です。そのためには、学んだことを実際に試せる機会が必要です。


持論とは複数の経験を元にしながら、自分なりのセオリー(マイセオリー)を導き出していくことを指します。持論は一度つくって終わりではなく、常にアップデートしていきます。持論をつくる場・管理職同士の持論を交換する場として対話の機会や研修の場を持つことも有効です。


一方で理論は既に何らかの根拠で結論が明示されているものです。

持論は経験と理論を統合してつくっていくと、より説得力のある持論になります。
初回は対面研修で、その後はオンライン上で、といったケースで、何回も集まりながら、実践報告と持論の作成を行っていくケースも増えています。

③やることだけではなく、やらないこと・止めることも考えてもらう

管理職育成を企画する立場からすると、つい「あれもこれも」と伝えたいことが増えていきがちです。
しかし「何を扱うか?」と同じぐらい重要なのは「何を扱わないか?」です。やることが増えても時間には限りがあるため、やることを増やすのであれば、止めることも決めないと、消化不良になってしまいます。

これはマネジメントにおいても重要なテーマでもあり、管理職の皆さんに「やらないこと・止めること」を決めてもらうのも、育成の一環として有効です。具体的には生産性の向上の一環として、それまでやっていた施策で効果が薄いもの、不要なものをリストアップし、実際に止めていきます。最近良くテーマに挙がるのが「会議を減らす」です。これだけで延べ数百時間が創出できたというケースもあります。

まとめ

管理職育成で扱うべき事項、テーマは数多くあります。しかし、限られた時間とリソースの中では、すべてをカバーすることは困難です。よって、自社の管理職には何を、どの程度求めるのか?を明確にしたうえで、本当に必要な施策を絞り込む必要があります。

また、人材育成は、ただ研修をすれば、知識をインプットすればできるものでもありません。 経験や他者からの薫陶などの要素をうまくミックスしていくことが重要です。

管理職育成の企画において、本コラムがその一助となれば幸いです。

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