研修・セミナーレポート

2024年8月29日 効率的な会議進行スキル習得研修 ー公開講座研修レポート

本内容は、2024年8月29日に開催した「効率的な会議進行スキル習得研修」の公開講座研修レポートです。研修概要、終了時のコメント、そして研修内容を時系列に沿ってご紹介します。
≫10月10日開催|受付中【公開講座】全員参加の会議づくり研修

1)研修概要

今の会議を迷いなく、効率的に進めるためのスキルを習得することを目的としています。

会議ファシリテーター育成のための【基礎編】として、ファシリテーターの重要性・役割理解と、会議参加者のコミットメントを高めるためのスキルを習得します。

3つの学びのポイント

①議論の流れを掴む|成果を生む5つのプロセス

会議の質と参加者のコミットメントを高めるために、ファシリテーターとしての役割や、成果を生む5のプロセスを理解します。プロセスを理解することで、全体感を持って会議に臨むことができます。

②明確な目標と動きを創る|OARRとアジェンダ

OARR(オール)等の会議における基礎スキルを学びます。研修内での実践を通し、会議の質を上げるためのスキルを習得します。

③問いで引き出す|プッシュとプルのバランス

ファシリテーションの基礎スキルとなる問いのスキル「プッシュとプル」を、ワークを通じて実践的に習得します。

2)研修終了時のコメント(チェックアウト・アンケートより)

研修終了時のコメント(チェックアウト・アンケートより)

・会議の中で目標・目的を明確にしてメンバーで認識を共有することの大切さを感じました。これがないと、論点もぶれていくし、部署間に壁ができてしまう要因にもなると思いました。

言葉ではわかっているつもりでもやってみると全然できないなということに気づき、見直すいいきっかけになりました

普段の会議進行が体系化されていないので、その日の参加者や自分の調子によって会議のアウトプットのムラがあることに気づきました。

会議をデザインするという概念がなく、なんとなくやっていたので、いろいろと学ぶことが多かったです

・今までファシリテーションをあまりやってこなかったのですが、研修で実践してみて、スキルを学ぶだけでなく実践していかないとダメだなと感じました。これから経験する機会があるので、実践を重ねていきたいです

・現場レベルに落とすと、今回の研修に参加しているみなさんのように高いモチベーションを持っているわけではないので難しそうだなと感じています

問いのスキルを高めると良い会議をしていけそうだなというイメージが湧きました

チェックアウトでは、ファシリテーションに対して学びと熱を感じる内容が多く出てきて、これから会議をよりよくしていきたいという意気込みが強くなっていました

3)研修内容

①事前講義|ファシリテーターとは?

まず、チェックインはなぜ行うのか?ということについて、グループで対話しました。対話で出ていた内容の一部を紹介します。

・会議に入る前の準備運動みたいな感じかなと思います

・それぞれの状況を知るために必要な時間じゃないかなと感じます
 ー 例えば、私が急にミュートにしたら犬が吠えているのかなと受け取ってくれそうだなとか

・1,2分だと話すのが苦手な人でも頑張れる時間な気がします

・仕事の話に限定されるわけでないので幅が効かせられるようになるのでは?

・なんでもどうぞという場の方が気が楽に話せますよね

・普段の会議でチェックインってしますか?
 ー 雑談から入るけど、話したい人が話す感じなので、みんなで話すということはできていないな
 ー 雑談も立場が上の人が話がちだなと感じます
 ー 確かに、チェックインだと皆が平等に話す機会が与えられるのがいいなと思います

その後、全体シェアを行う中で、次のような疑問が出てきたので講師がお答えしました。

【受講者からの問い】
会議やミーティングでの参加者の状態を知るとか、緊張をほぐす、という意味においては、テーマが決まっている方が話しやすいのではないかと思いましたが、あえてそうしていない理由はなぜでしょうか。

【講師からの回答】
まず会議の場をオープンで開くことが必要です。テーマがあるというのは枠組みがあるとも捉えられます。会議の参加者が、この会議には枠組みがあると感じると、相手が求めている話をしないといけないという文脈になってしまいやすいです。

また、順番を決めないことにも意味あって、コントロールをしない状態を意味しています。

枠組みやコントールに囚われないようにするために、テーマや順番を決めないでチェクインすることをおすすめします。

【受講者からの問い】
いわゆる営業で違うアイスブレイクとチェックインの違いはありますか。

【講師からの回答】
アイスブレイクは文字通り緊張状態を溶かすことが目的です。また、会議の目的にあったアイスブレイクを行うことで会議の準備を行うこともあります。例えば、会議でアイディアを出したい場合は、アイスブレイクもアイディアを出すようなものを行うのがいいと言われています。

一方、チェックインは枠組みにはまらずオープンに参加してもらうことを目的としています。緊張を溶かすことに意識を向けるのではなく、参加者が場に入ることに焦点を当てています。

ただその中で、緊張している方の口の運動になったり、発言をしやすい環境を作れたりはするので、結果的に緊張を溶かすこともできることにも繋がります。

また、チェックインは、アイスブレイクとは違い、場の質を捉えることも目的の一つです。参加者がどのような状態か、そのことで場がどのようになっているのかをファシリテーターが捉えるための時間にもなります。

ファシリテーターとしてチェックインを行う目的は、場の質を捉えて関係の質を上げることです。場の質を捉えて、ファシリテーターとしてどのように関わることで関係の質を高められるかを考え、実行していきます。

 

そうして関係性の質を高めることで、以下のサイクルで動く成功循環モデルを回していけるようになります。

ここまでの内容で受講者の方から質問が出てきたので、講師から回答しました。

【受講者からの問い】
チェックインでネガティブなことを言う方がいたときに、場の質が悪くなってしまうのではないでしょうか?また、そのような場面の時にどのように対応すればいいでしょうか。

【講師からの回答】
ネガティブな発言が出てくるということはその方がオープンになっているということだと思うので問題ありません。ただ「そうなんですね」という気持ちで受け止めるだけで大丈夫です。

会議に参加している多くの人がネガティブな発言をしているようであれば、もしかしたら、その状態について扱うところから始めてもいいかもしれません。例えば、「この会議を行う意味がわからないという方が多いようなので、そこから考えていきましょうか。」などです。

ただ会議は時間に限りがあるため、一旦傍に置ける場合は、別の場を作って話そうと伝えて、本題の会議に移っていく方法でもいいと思います。

【受講者からの問い】
チェックインを行う理由や目的をしっかり伝えた方がいいのか、曖昧なままでもいいのか、どうでしょうか。

【講師からの回答】
関係の質を高めるため、ということは伝えてもいいですが、場の状態を確認するため、ということは伝えなくても良いと思います。

また、言葉で伝えるのではなく、あえて自分が綺麗に話さなかったり、少し崩した内容を話すように振る舞うと、会議の参加者はそんな感じでも大丈夫なんだという感覚を持てるので、話しやすくなるような場を作れるようになります。

その後、ファシリテーターの役割についてお伝えしました。ファシリテーターの役割は次のようなことです。

アーティエンスではこの定義に収まらなるのではなく、素晴らしいファシリテーターになって欲しいと考えているため、次に素晴らしいファシリテーターについてグループで対話していただきました。

対話で出ていた内容の一部を紹介します。

・迫間さんのファシリテーターを見ていると、全ての発言に対して、少し補足の説明をしながら肯定して受け止めているので、そういう振る舞いは素晴らしなと感じます
 ー おうむ返しも素晴らしいですよね。さらっと要約して皆がわかるように伝えている

・何をしたかがわからないうちに、なんとなくマルッとしてくれる人もすごいなと感じます

・何か疑問が出た時に、他の具体的な内容や事例を補足してくれる知見の広さも関係しそう

・出てきた問いに対して、きちんと返してくれつつも、うまく脱線せずに本筋に戻ってくることができるとすごいなと感じます
 ー でもそれをコントロールしないって難しいですよね…。どうやればいいんだろう?

・場が固まってしまったときや盛り上がりすぎてしまったときの対応をできるとすごいですよね

アーティエンスが考える素晴らしいファシリテーターは次のような人です。

「成果物の品質が高まる」ことと「関係の質が高まる」ことを最大限高めることが重要です。

そのためにも、ファシリテーターとしての「あり方(Be)」と「態度・姿勢」が、とても重要になることをお伝えしました。

全体シェアで出てきた問いを紹介します。

【受講者からの問い】
時間管理もファシリテーターの役割でしょうか?また、場が固まったり、別の話題で盛り上がりすぎてしまった時にコントロールせずに本題に戻すためにはどうしたらいいのでしょうか。

【講師からの回答】
そうですね、タイムマネジメントもします。

場が固まったり、別の話題で盛り上がりすぎてしまった時はコントロールはしませんが、介入はします

例えば別の話題で盛り上がり過ぎている場合は「今回の会議の目的に必要な話し合いでしょうか」という問いを出してみるなどです。逆に場が固まっている場合はその時の状態にもよりますが例えば「この観点で考えてみるといいかもしれませんね」と伝えてみることもあります。

ファシリテーターが勝手に判断することはしないで、あくまでどうするかの判断は参加者に決めてもらうことが重要です。

②ファシリテーターに必要な3つの術

ファシリテーターに必要な3つの術として、

・会議のデザイン
・会議の質を上げる明確な目標
・問いのスキル 

についてお伝えし、ファシリテーターとしての基本的なスキルを学んでいきました。

その前提として押さえておいてほしいことについても2つお伝えしています。

前提①会議体の4つの種類

適切な目標設定をするために、会議には次の4つの種類があることを理解しておく必要があります。

自分がファシリテーターとして入る会議がどの種類に当てはまるのかを理解して臨むことで自身が動きやすくなります

前提②意識すべき2つのポイント

タスク(アウトプットの質が高まっているか?)とメンテナンス(一体感が高まっているか?)という2つのポイントを意識することで、成果物の品質と関係の質を最大限に高めるためにファシリテーターとしてどのように対応していくかを考えられるようになります。

直近で行った会議を振り返り、どの位置にいたのかを振り返ってもらいました。

・自分のチームでの会議では、ある程度関係の質がある状態なので、タスクしか意識していなかったですね

・今振り返りながら「あれ、今誰がボールを持っているんだっけ?」と思ったので、タスクの質が良くないなと思いました

振り返ることで、改善することや意識することが見えてきます。

また、自身がタスクよりかメンテナンスよりかを知ることも重要です。自身の強み・弱みを知ることで、意識的に対応できるようになります。

それぞれの苦手をどのように対応すればいいのかなどの悩みをダイアログしてもらいました。その後、受講者から出てきた問いを共有します。

【受講者からの問い】
タスクが強みの場合、メンテナンスの部分はどのように補えばいいのでしょうか?バランスを取るのが難しく感じます。

【講師からの回答】
一定レベルのメンテナンスに対応できるようなスキルを持っていることは必要です。ただ自分の弱いところに目を向いてしまうと、強みを活かせなくなってしまうこともあります。その場合は、周りに頼っても大丈夫です。

メンテナンスが弱いのであれば、例えば「コミット度合いを点数で表すと難点ですか?」とか「私からみるとそんなにコミット度合いが高くないように感じますが、皆さん自身はどう思いますか?」というような問いを出すとメンテナンスも扱えるようになります。

術①会議のデザイン

ファシリテーターに必要な術の1つ目として会議のデザインの仕方についてお伝えしました。

創造的な議論や対話が生まれるときは、下記のようなプロセスになります。

この流れを理解して会議をデザインすることが必要です。

術②会議の質を上げる明確な目標

ファシリテーターに必要な術の2つ目は、会議の質を上げる明確な目標についてお伝えしました。

明確な目標を設定するために、OARRを明確にしておく必要があります。

今ある会議が、どんな目的・目標で行われていて、どんなことを達成しようとしているのか、どの程度時間をかけているのか、誰が参加しているのか、ということを個人で整理していきました。

その後グループでそこでの気づきを共有しました。対話の一部を紹介します。

・会議を整理していると、「あれ、これなんの目的でやっていたんだっけ?」というものが出てきて、整えなきゃ!となっています

・定例会の回数が思ったよりも多くて、会議以外のやり方で対応できるのもありそうだぞ!?と思っています

・この会議に営業メンバーいらなくない?という気づきがありました

・仲が良いなと感じていた部署は、結構会議で一緒になることが多いことに気づき、このことを他でも活かせるといいなと感じました

・目的や目標は意識せずに、チームがあれば会議をやるものだと思い込んでしまっていたなと気づきました

・定例会議を素晴らしい会議にしていくってどうしたらいいんだろう?というモヤモヤを持っています

その後、OARRの中でも特に重要なアジェンダの作り方について学んでいきました。アジェンダは次の3つを意識して作成する必要があります。

その後、現在の会議のアジェンダをあらためて作成するワークを行いました。

実際に作成してみると、アジェンダ作りの難しさを感じたり、既存の会議の意味が出てこないという方もいました。

目的・目標・アジェンダを作る上で、言葉がとても重要です。目的・目標はパワフルな言葉にしましょう。また、アジェンダも成果と関係の質を高めることを意識した言葉を使うとより良くなります。

例えば「状況の共有」ではなく「〇〇について良かったことと失敗したこと」とすると、タスクだけでなくメンテナンスにも少し触れられます。他には「〇〇を実行する上で難しいことの洗い出し」ではなく「〇〇を実行する上での阻害要因を確認する」という言葉を使う方が乗り越えやすくなります。

【参考】アーティエンスの週次会議の例

◆目的
情報共有を丁寧に行うことで、共創・協働を行う場が活性化する

◆目標
各自、相談ができ、ネクストアクション(考察ポイント)などが明確になること

◆Agenda
・ スケジュール確認
・ 売上報告
・ 戦略
・ マーケティング
┗PV・CV関連
┗youtube
┗GM・コミュニティ・X
・ 納品
┗納品管理表確認
┗ Growth
・ 開発
・ 講師
・ コーポレート
・ to do 確認
・ 気づきと発見の共有

術③問いのスキル

ファシリテーターに必要な術の3つ目として、PullとPushの問いの仕方についてお伝えしました。

PullとPushの問いを行うことでパフォーマンスを発揮できる場面をグループで考えました。

PullとPushの問いを会議の状況に合わせて効果的に使えるようになると、会議の目標を達成しやすくなります。

③実践|会議のファシリテーションをやってみよう

実際にファシリテーションを行うワークを2回行いました。

1回目の後の振り返りでは次のような意見やモヤモヤが出てきていました。一部の意見を紹介します。

・ファシリテーターの方がどうしたら進めやすいのか、という意識を持って参加したいなという思いが芽生えました

・自分は会議の参加者として主体性を持って参加できていたのだろうか?とふと思いました

・聞き出すスキルを身についけていきたいと感じました

・沈黙をもう少し待ってみてもいいかもしれないというフィードバックをもらい、相手の意見をもう少し待つということを意識しないといけないと感じました。ただ、沈黙の時間が怖いと感じてしまします

 【講師からのコメント】

沈黙が怖い場合は、沈黙を恐れないということをグランドルールで入れておくという方法や、バトンを渡すという方法を行うことで、ホールドしやすくなると思います。

2回目の後の振り返りでは次のような意見やモヤモヤが出てきていました。一部の意見を紹介します。

・時間内にアウトプットすることが目的になってしまうと、焦ってしまって参加者が納得できるアウトプットの質にならなかったなと感じました

・なんとなく会議っぽくなっているものも多いんだろうなと感じました



・目的、目標とかアジェンダに縛られ過ぎずに、場を見ながら柔軟に対応することがファシリテーターとしての難しさですね

・今回は研修の場で皆が主体的に参加してくれたのですが、実践の場はそのような場だけではないので、実践の場でどういう風に活かしていこうかな、ということを今イメージ中という感じです

・ファシリテーターをフォローする意識を忘れたらいけないなと感じました


 【講師からのコメント】

ファシリテーターをフォローしたいとメンバーが思うには、ファシリテーターのあり方が大切になります。

ファシリテーターの難しさに気づき、これから練習を重ねていく中で成長していきたい、という気持ちが芽生えている様子を感じました。

4)講師・アテンド所感

それぞれに会議の課題を感じている方が主体的に研修に参加していて、研修の場自体が良い場になっていると感じました。

受講者の方の中には今まで会議をデザインしたことがなかったという方もいましたが、良い会議をするにはしっかりと会議をデザインする必要があります。

会議のデザインは慣れるまでは時間がかかると思います。ただ、1つ良いものを作ると他でも応用できることが多いので、初めはブラッシュアップを繰り返しながら丁寧に作成してみてください。

また、今回は基礎として必ず押さえておきたい3つの術をお伝えしましたが、ファシリテーターとしてそれらのスキルをいくら持っていても、あり方が良くないと場に悪い影響を与えてしまいます。

そのため、今回学んだことを少しずつ実践しながら、自身のあり方についても見つめていただきたいと思います。

今回学んだことをぜひ実践してもらい、会議の質が上がることで、成果と関係の質が高まることを実感していただけると嬉しいです。

≫10月10日開催|受付中【公開講座】全員参加の会議づくり研修