25卒新入社員には「仕事のリアル」を細分化して伝えよう【ネオキャリア橋本氏:インタビュー】

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25卒新入社員の採用プロセスで起こっている変化、そして受け入れ時に大切にすべき点について、就職エージェントとして日々学生と向き合っている株式会社ネオキャリアの橋本さんにお伺いしました。

【インタビュイー】
株式会社ネオキャリア マーケティング本部 部長
橋本 健一(はしもと けんいち)
関西外国語大学を卒業後、新卒で金融業界に入社。営業を経験したのち人事を経験。2004年通信業界で人事として勤務し、2005年就職エージェント株式会社の創業に関わり事業の拡大を担う。現在は大学生向けの就活セミナーや企業の新人研修などの講師の他YouTubeやTwitter(@hashimoto_sa)で学生向けに就活お役立ち情報を発信している。
【インタビュアー・執筆者】
アーティエンス株式会社 近藤 ゆみ
アーティエンス(株)にて、研修講師、組織開発・人材育成のコンサルタント、コラムの監修・執筆などに従事。
前職の大手人材紹介会社では、転職希望者のキャリアカウンセリングから転職サポートまでを一貫して担当。

内定をもらっても就活継続が当たり前に

近藤:
本日はインタビューのご協力ありがとうございます。早速本題ですが、25卒新入社員(現在大学4年生)への就職支援を通して感じる傾向・特徴や変化などはありますか?

橋本氏:
まず前提として、価値観や考えの多様化が進んでいるため、年次ごとに明確な特徴を端的に示すことは難しくなっています。複数に枝分かれしているような印象です。

そのため、世代の特徴というよりか、就職活動全般を通じて感じている学生側の変化を提示しながら、入社後に人事担当や育成担当の方々に気を付けてほしいことなどをお話ししますね。

まず、内定をもらっても就職活動を続ける学生が増えました。もちろん、これまでもそういった学生は一定数いましたよね。

ただ、私個人的には、24卒と25卒は狭間の年というか、内定をもらっても就活を続ける学生が、今まで以上に無視できないくらいの割合になってくるんじゃないかと思います。

数年前までは、内定後の活動継続はあまり表立って言いにくい世の中でした。

企業側には内緒で、大学のキャリアセンターにだけこっそり「実はまだ受けてまして…」と相談するといった雰囲気だったように思います。

しかし、今はメディア等でも「内定後も活動を継続する学生が多い」というような情報を発信が流れていますし、キャリアセンター側も納得いくまで活動を継続するよう背中を後押しするところが増えたのではないかと思います。実際に就活生の声を聞き、これまでの風潮とは違いを感じています。

内定を出しても、「就活は続けてもいいんですよね?」と、人事にオープンに聞いてくるような学生も増えていると聞いています。

近藤:
そうなんですね。その背景には何があるのでしょうか?

橋本氏:
一つは、「オワハラ」という言葉が広く認知されたこと。内定を承諾してもらえるかを確認することは、企業も慎重にしなければならない環境になっています。

少しでも内定承諾を迫るような話に持っていくと、「あの会社でこういう風にオワハラされた」といった情報が拡散してしまう可能性もあり、企業側はとてもナーバスになっているようです。

とある企業の人事担当の方は、「『承諾してね』なんて怖くて言えません」と仰っていました。

ですので、企業は内定承諾を求める前に、学生が他の企業も受けられるようにしています。

内定を出す際、「そうだよね、他の企業も気になるよね。じゃあ、いろいろ見て比較してから最終的にうちを選んでくれたら嬉しいな」といったニュアンスで応募学生が充分に他社と比較してから判断できるようにしている企業が増えています。

学生や大学のキャリアセンターの間で、オワハラなどのネガティブな噂が立ってしまうと今後の採用活動に大きく響いてしまいますからね。

あと、もっと根深いところでは、少子化という問題もあると思いますね。学生の全体数もどんどん減っていて、昔と比べて就活生の一人ひとりが貴重な時代となっています。新卒売り手市場は今後も続いていくでしょう。

近藤:
なるほど…。少し前の世代とは、学生と企業の立場がだいぶ違ってきていますね。
こういった状況は、この先にどのような影響を与えると考えていますか?

橋本氏:
まず10月の内定式で、予想以上に人数が集まらない事態に直面する企業が増える可能性があります。複数社から内定をもらっている学生が多いということは、企業側としては内定後の辞退が増える可能性が高いことを示しています。

結果的に一つの解決手段として、新卒採用を諦めて、第二新卒や中途採用にシフトする企業も増えてくると思います。

4月以降の入社後においては、メリットもデメリットもありますね。

メリットとしては、学生側はしっかり比較検討をして納得感を持って入社することが多くなるため、早期の離職率は下がるかもしれませんね。

「ここ(入社先)しか見てませんでした」という状況は少なくなるかと思います。

デメリットとしては、その一方でという側面なのですが、入社後、嫌なことやちょっとでも合わないと感じたことがあれば、すぐに辞めてしまう可能性もあります。

 

なぜなら、就活を通じて自分たちの希少価値を理解しているからですね。

また、先ほどもお伝えしたように、新卒採用を諦めた企業が、第二新卒や中途社員の採用枠を広げる可能性があるんですよね。そういった求人が増加することで、離職もしやすくなるのかなと。

近藤:
なるほど。今のメリット・デメリットをお伺いすると、やはり、入社後の企業側の定着支援が大きなポイントになりそうですね。

橋本氏:
はい、そこが大きな分かれ道になるように思います。
例えば、内定式や入社式などの節目のタイミングで改めて、「なぜこの会社に入社するのか?」という入社理由や「この会社で何を成し遂げたいのか?」といった想いを一緒に言語化することも大切ですね。

そして、その内容を配属先の上司やトレーナーにも共有し、定期的にすり合わせるなどのフォローも重要です。

近藤:
そうですね。アーティエンスでも、24年度から新入社員向けに「仕事と自己成長をつなぐ研修」というコンテンツの提供を新たに開始しました。24年度の公開講座では5月に実施しています。

研修を通じて、入社前後で感じたギャップを棚卸して自分なりに意味付けをしたり、事前ワークでは自社の2~4年目の先輩社員にインタビューを行い、入社理由/1年目に感じた壁とそれをどう乗り越えたか/どのように周囲とコミュニケーションをとっていったのか、などを探求してもらいました。

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今の橋本さんのお話を聴いて、25卒新入社員には、そういった支援がより必要になってくると感じました!笑

橋本氏:
うん、それ絶対にやったほうがいいですね!私も人事経験ありますけど、新入社員が入社後にどんなことにギャップを感じているのかとかめちゃくちゃ知りたいです!笑

リアルな体験機会の減少から加速する二極化

近藤:
その他、就職支援を通じて感じる変化や特徴などはありますか?

橋本氏:
もちろん、全員がそうというわけではないのですが、アルバイト経験のない学生が増えているように思います。

その背景には、コロナ禍での学生生活の変化がありますね。

ストレートで大学入学・卒業する場合、25卒の子たちは大学1~2年生の時は、オンライン授業がほとんどでした。

そのため、都内の大学に通う地方出身の子でも、実家暮らしをしていることが結構多いんですよね。3~4年生になると授業に出る頻度も少なくなるので、例えば、そのまま遠方の実家から都心の大学に通う、なんて子も少なくありません。

コロナ禍で何かと行動制限もある期間でしたし、実家暮らしであればアルバイトをしなくても何とかなることも多いのかなと。

我々世代だと、「学生は普通アルバイトをする」という考えがベースにありますが、そういった考えがベースにはない子も一定数いるという点は、受け入れる側として知っておいた方がいいと思います。

近藤:
そうなんですね。アルバイト経験から学ぶことは多いですもんね。
その他に感じる変化や特徴はありますか?

橋本氏:
高校~大学という多感な時期にオンラインコミュニケーション中心だったため、リアルなコミュニケーションが求められる場面を苦手とする若者が増えたように感じます。

オンライン上だと、趣味や価値観が合う人たちだけのコミュニティになってしまうことが多く、偶然な出会いというのは発生しにくいですね。

意見や価値観の異なる人との交流機会は減っていて、そういった意味でのコミュニケーション能力は下がってしまっていると思います。

近藤:
たしかに、その傾向は新入社員研修を実施していても感じる部分です。

その一方で、積極的に他者と関わってコミュニケーションを取ろうとしている新入社員もいるように感じます。

橋本氏:
そうそう、それに関してもこのあと伝えたいなと思っていました!

全員が全員、コミュニケーション能力が低いわけではなく、コロナ禍だからこそ行動を強化していったタイプの学生もいます。

我々も含めて多くの人が「コロナのせいで仕方がなかった」と捉えがちだと思うんですが、「このままだとマズイ…」と考えて、自ら積極的に行動に移していった子もいるんですよね。

そういう子たちはアルバイトもですし、何かしら社会経験を積もうと取り組み、コミュニケーションも自ら取りにいくような子が多いですね。初めてのことに対しても恐れを感じつつも、一歩踏み出そうとしています

近藤:
なるほど。学生の中でも二極化というか、グラデーションが大きくなっているようなイメージですかね。

採用・育成時のポイントは「リアルを細分化して見せること」

近藤:
25卒の変化や特徴について、ポジティブ・ネガティブの両面をお伺いしてきましたが、受け入れる企業側はどのようなことに注意すべきだと思いますか?

橋本氏:
しっかりとリアルを見せることです。これは入社前も大事ですが、入社後も継続して取り組むことがポイントです。

長らくオンラインで過ごしてきた25卒の子たちは、仕事の背景にはこんなことがあるだろうという想像が難しいことが多いと思います。

かなり極端な例を出しますが…笑

新入社員が先輩と営業同行に行くとします。帰りの車の中で、先輩が「あのお客様、ちょっと話しにくいんだよね…」とポロっと言うとしますと。もちろん、お客様のことをネガティブに言うことは良くないことですが、人間ですからつい出てしまうこともありますよね。

でもそこで、極端な話、「え、そんなこと言っていいんですか…」と新入社員はショックを受けてしまう可能性が大きくなっています。

リアルなコミュニケーションの機会が少ないと、「こうあるべき」という正しい解しか知らず、「こんな上司や先輩で大丈夫なのか?」や「こんな会社で続けていていいのか?」といったネガティブな考えに発展してしまうことが起こり得るんです。

近藤:
純粋なので、そのままの文脈で受け止めてしまうということですね。アルバイトの経験有無も大きく影響しそうですね。

橋本氏:
そうなんです。例えば飲食店のアルバイトで、店長がクレーム対応でお客様の前では「申し訳ございません」と深々謝罪しているけど、裏側に戻ってきたら文句を言うとか…あるじゃないですか。笑

もちろん、良くないことではあるんですが、そういった場面を目の当たりにすることで、仕事の裏側を知ったり、大変な思いを共有したり、いろんな意味で鍛えられていく

でもそういった経験をする機会が少なかったので、社会人になってからそういった場面に出くわしても、どう処理してよいのかわからず、そのままの文脈で受け取ってしまうと。

そういった状況を回避していくためにも、仕事のリアルな部分を事前に伝えておくことは重要です。仕事のキラキラした一部だけでなく、そこに至るまでのステップや泥臭い努力なんかもセットで見せることが重要です。

近藤:
どのようにリアルを提示していくとよいでしょうか?

橋本氏:
例えば、うちのキャリアカウンセラーだと、求人紹介の際に徹底的に仕事内容をイメージさせていますね。

「入社半年後には何をしていると思う?7ヶ月目はどう?8ヶ月目は?じゃあ、2年目の6月だとどうかな?」

…といった具合に細分化して、リアルに具体的に仕事内容を思い描いてもらうんです。
その中で、「この月だと、こういう嫌なことがあるかもしれないね。その次の月は、こんな大変なことにも直面するかもしれないよね。こんなお客様がいるかもしれないから、こういうことを訓練しておく必要もありそうだよね」

…と、リアルな話やあえてネガティブな状況もイメージしてもらうんです。

近藤:
なるほど…。そこまで細かくリアルにイメージしてもらうことがポイントなんですね。

橋本氏:
そうなんです。そうしておくと「聞いていなかった」というのをかなり防ぐことができます。入社後、マイナスに感じるギャップも軽減できます

もちろん、人事の方から伝えているとは思いますが、例えば人事経験がまだ浅い方ですと、「そこまで細かくは言えていなかった」や「志望度が下がるのを恐れて言わなかった」といったこともあります。

新卒の退職代行利用などのニュースを観ていると、「入社前にそんなこと聞いてなかった。でもそんなもんだよね」と受け入れていた世代とは、少し変わってきていますね。

その背景には、やはりオンライン中心だった学生生活が大きく影響をしているのかと。

学生時代にアルバイトなどを通じて、仕事の裏側や嫌な部分、辛かったり大変なことを実際に見たり、聞いたりという経験が少ないんですよね。

その結果、入社前後のギャップが大きくなってしまったり、ちょっとしたことで仕事や上司・先輩、会社に対してもネガティブに感じてしまう可能性が高くなります。

近藤:
なるほど…受け入れる企業側としては、その点は十分に配慮しておいた方が良いですね。

橋本氏:
そうですね。あとは、先ほどの話にもつながりますが、「辞めても何とかなる」という情報もありますしね。

企業側としては、マイナス要素もポジティブな部分とセットで『リアル』を伝えることが大切です。内定者の間にリアルな部分を意識的に開示していき、本人たちの「聞いていなかった」を減らしていきましょう

近藤:
企業側が考えているよりも細分化して『リアル』を丁寧に見せることの重要性を痛感しました…!インタビューへのご協力、誠にありがとうございました。