中小企業の組織改革・変革【事例6選】|手軽な取組みから大胆な変革まで紹介

更新日:

作成日:2024.2.28

中小企業 若手社員研修

本記事では、中小企業の組織改革・変革の事例を6つご紹介します。
※ 大企業の方であっても、まずは部門から組織変革を進めたい方にもおすすめの事例です

【事例】
・ファシリテーター育成から、組織変革を力強く進めた事例
・コロナ禍をしなやかに乗り越えていくために、経営者勉強会を起点に組織変革をデザインした事例
・管理職が中心になって、M&Aによる敵対関係・部門の壁を乗り越えていった事例
・若手社員が中心になって、組織活性化を促していった事例
・売上の鈍化を新入社員育成で解決していった事例
・パワハラ・セクハラが横行する工場の風土を変えていった事例

組織改革・変革は、一社一社アプローチが異なります。一見同じ問題であっても、今まで培ってきた歴史に違いがあり、パターン化はできません。

ただし「賢者は歴史から学ぶ」という言葉もある通り、事例を知ることで自組織で組織改革・変革を進める際の参考になります。なにより、組織変革のイメージがつき、組織改革・変革を起こせる勇気をもらえます。

本コラムの事例を参考に、ぜひ自組織の組織改革・変革の進め方を考えていただければと思います。

参考|組織改革と組織変革の違い
組織改革は、改善活動や枠組み内での組織の仕組みなどのアップデートを指します。効率性や効果の向上、組織の運営や管理方法の改善、業務プロセスの最適化などを行います。
組織変革は、組織自体の枠組みを変えていく働きかけを行います。組織が新しい状況や環境に適応し、持続可能な競争力を維持するために行われる大規模な変更を行います。組織全体の方向性やビジョンの再構築、文化の変革、新しい戦略の展開などを包括的に取り組みます。
本コラムでは、両方の内容を包括した情報を提供します。

このコラムで分かること

  • 組織改革・変革を進めた企業の成果
  • それぞれの企業で異なる、組織改革・変革の具体的な進め方
  • 自組織で組織改革
執筆者プロフィール
迫間 智彦
大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。

専門性:ファシリテーター管理職組織開発・組織変革

執筆者に直接相談する

組織改革・変革の事例1.|【各部門】のファシリテーター育成から組織変革を力強く進めた事例

項目 詳細
業種 食品メーカー
企業規模 200名程度
実施方法 一ヶ月1回のファシリテーション研修を、一年間合計12回実施
各部門のキーパーソン16名が参加
問題 昔の成功体験への依存と、変化への意識(挑戦がない風土)
年功序列による指示命令(当事者意識と主体性のなさ)
目的 社内ファシリテーターの育成からの組織変革
・会議の質を上げる
・社員一人一人の当事者意識と主体性を解放
得られた効果 ・ファシリテーター起点で、全体会議の見直しが起きる
・新商品開発のプロセスの見直しが行われる
・社員が創る中長期計画プロジェクトが始まる
・営業のやり方を抜本的に見直していく
・マーケティング部が創られる

【組織変革を進めた背景】

経営陣と幹部社員に対して事前に行われた勉強会にて、議論や対話の場の品質はファシリテーターによって変わるという体験しました。そこで、「現場社員間の議論や対話を活性化するために、ファシリテーター力を上げ、組織を変えていこう」といった方針となり、各部門からキーパーソンになるメンバーが16名参加しました。

16名の選出は、性別・役職・年齢(中堅以上)をばらばらにし、組織インパクトが大きくなることを意識して指名しました。組織に対して、ポジティブな感情を持つ人も、ネガティな感情を持つ人も選ばれました。組織の縮図ができるようにしました。
※ 経営者は、全員参加しました。

(参考)組織改革・変革を行う際のメンバーの決定に関して
その組織の縮図を創るといいでしょう。
縮図を創ることで、その組織の状況(メンタルモデル)が見えてきます。例えば、ポジティブな人ばかり集めてしまうと、ポジティブな人から見た組織しか見えなくなるためでです。

【起きていた問題】
コロナ禍になり一年たったが、業績が悪化しており、多くの問題が発生していました。一年間で発生した問題は、

・インバウンドが崩壊して、売上が大幅に減少
・原料確保に対して、輸入先の状況の先読みが不可
・コスト削減のために、派遣社員の契約を終了により、社員の業務負担の増加
・テレワークになり、社員の状況が見えない

等があげられました。

この危機的状況を乗り越えるために、現場が当事者意識をもって主体的に考え、協力しあうことが重要であるという想いが醸成されました。一方、危機感の強い経営陣が現場に強く介入して、経営陣の指示命令でコロナ禍を乗り越えようとする動きもありました。結果、現場社員の当事者意識と主体性が弱くなるという悪循環が生まれていました。

【具体的な打ち手】

一年間強、毎月ファシリテーター育成のための研修を実施し、アクションラーニングとして現場の会議とつなげていきました。
下記スケジュールで行っていきました。

経営陣から参加者に送った事前メールでは、熱い想いが語られました。
※ 事前説明会でも、熱く語られていました。

【組織改革・変革の成果】

記の組織改革・変革が進みました。

・ファシリテーター起点で、会議の見直しが起きる
→ 工数削減と、各会議の質の向上
・新商品開発のプロセスの見直しが行われる
→ 効果と効率を高めるためのプロセス
・社員が創る中長期計画プロジェクトが始まる
→ 経営理念を実現するための行動
・営業のやり方を抜本的に見直していく
→ コロナ禍にあった営業方法
・マーケティング部が創られる
→ 組織力を高めて、仕組みで売れるようにする

この事例から学べることは、会議の質を上げることで、組織は大きく変わるということです。本クライアントは、今もご一緒に組織改革・変革を進めていますが、さまざまな困難に立ち向かっています。

組織改革・変革の事例2|コロナ禍を乗り越えるために、【経営者】勉強会を起点に組織変革をデザインした事例

項目 詳細
業種 食品メーカー
企業規模 200名程度
実施方法 「学習する組織 入門」を用いた勉強会
参加者 : 経営陣と幹部社員
問題 昔の成功体験への依存と、変化への意識(挑戦がない風土)
年功序列による指示命令(当事者意識と主体性のなさ)
目的 with コロナという波を乗りこなすために、自組織をアップデートする
得られた効果 経営陣・幹部社員にとって、意識変革が起き、社内ファシリテーターを育成するという行動に移る
【経営陣・幹部社員の意識変革】
・自組織にとって素晴らしい変革を考えた上で、変えるものと、変えないものを考えていく必要がある。「現状維持を良しとする」のではなく、「変わらないことと、変わること」ということを、全社員に強く打ち出す必要がある。
・ 「素晴らしい年功序列とは何かを?」に対して向き合い、探求し続けて、新しい組織風土を創る。

 

【組織変革を進めた背景】

2018年・2019年の支援で、主体性を発揮する風土に変化が見え更なる強化を図っていたところにコロナ禍が起きました。当初の計画を一度白紙にし、どのように組織創りを行うかを経営陣と共に探求しました。

コロナ禍になった当時は、勉強会を企画した副社長以外はコロナ禍の現状に対して、とてもネガティブでした。「明るい未来が描けない。突然、世界が変わった。すぐに倒産はないとしても、事業縮小という考えも持っておくべきではないか」という考えであり、悲観的でした。何をしたらいいかもわからない状態になっていました。

【起きていた問題】
コロナ禍になり一年たったが、業績は悪化しており、多くの問題が発生していました。発生した問題は、

・インバウンドが崩壊して、売上が大幅に減少
・原料確保に対して、輸入先の状況の先読みが不可
・コスト削減のために、派遣社員の契約を終了により、社員の業務負担の増加
・テレワークになり、社員の状況が見えない

でした。

この危機的状況を乗り越えるために、現場が当事者意識をもって主体的に考え、協力しあうことが重要であるという想いが醸成されました。一方、危機感の強い経営陣が現場に強く介入して、経営陣の指示命令でコロナ禍を乗り越えようとする動きもありました。結果、現場社員の当事者意識と主体性が弱くなるという悪循環が生まれていました。

経営陣も幹部社員も、「どうしたらいいか分からない」という恐れの言葉が出ていました。

【具体的な打ち手】

「学習する組織 入門」の読書会という手軽な方法で実施しました。

システム図も描いていきました。

システム図を描いたことで、経営陣・幹部社員の認知が変わっていきました。
注意│事例のシステム図には一部飛躍している部分もありますが、正確性よりもクライアントの文脈や理解、そしてコミットを大切にしています。

【組織改革・変革の成果】

勉強会を通して意識が変わると共に、自組織の組織改革・変革を力強く進めるための取り組みとして、社内ファシリテーターの育成に方針が定まっていきました。

勉強会にてファシリテーターの存在意義や重要性を体感した結果、でてきた方針です。

具体的には、下記のような意識変革が生まれました。

・自組織にとって素晴らしい変革を考えた上で、変えるもの・変えないものを考える必要がある
・「現状維持を良しとする」のではなく、「変わらないことと、変わること」ということを、全社員に強く打ち出す必要がある
・ 「素晴らしい年功序列とは何かを?」に向き合い、探求し続けて新しい組織風土を創る

監修者からの一言

経営陣・幹部社員は研修を受けることにネガティブな場合も多いです。背景として「未熟な自分を見せたくない」という意識が働くためです。そのため、読書会などライトな方法で経営陣・幹部社員の意識変革を促し、組織改革・変革につなげていくのもいいでしょう。

執筆者に直接相談する
(参考)幹部社員の方からの経営陣・ほかの幹部社員にあてたメール
読書会の最終日の後に、下記のようなメールが送られました。

組織改革・変革の事例3.|【管理職】が中心となり、M&Aによる敵対関係・部門の壁を乗り越えた事例

項目 詳細
業種 Web コンテンツ事業会社(大手メーカーグループ会社)
企業規模 社員数 150 名マネージャー
実施方法 成功循環モデルを用いた管理職のリーダーシップ開発を2年間実施
対象者 : マネージャー職20名
問題 ・M&A後、敵対関係・部門間の壁
・コロナ禍による業績の悪化
目的 ワンチームになるために管理職を起点に、組織改革・変革を進める
得られた効果 ・管理職同士の連携
・組織としての学習習慣
・業績の回復傾向

【組織変革を進めた背景】
親会社の一部門と子会社が統合し、縄張り意識による部門間の壁が今まで以上に高くなっていました。また○○出身という言葉も出ていました。人事制度も新しくなり、不公平感を感じる社員が増えたり、業績悪化もありました。立ち上がるはずだった新規事業もストップになり、不満や恐れなどがふつふつと溜まっている状態でした。

【起きていた問題】

ヒアリングを行う中で部門間の壁・敵対関係や業績悪化以外にも、他にも多くの課題がありました。
・言ったもん負けの文化であり、仕事の押し付け合い
・数・量が多いことが、正しい
・変われないという諦め
・管理職は、多くの業務量があり、いつも疲れている
・抱え込んでいる管理職が多い
・会社の問題を分かっているが、管理職から改善を自らしない

管理職は優秀な人材は多いですが、責任と業務量の多さに疲弊していました。結果、視野狭窄や無意識での他責傾向が生まれていました。

【具体的な打ち手】
人事・経営者の想いで下記3つのポイントを大切にしてに進めていきました。

そして、下記の要件定義を行い、進んでいきました。
中小企業組織開発
具体的には、下記スケジュールで進めていきました。

【組織改革・変革の成果】

下記の組織改革・変革が進みました。

・管理職同士の連携
→ 私たちが一致団結しなければ、組織の問題は解決されないと決意する
・組織としての学習習慣
→ 「目標設定や1on1、会議」の質を上げることで、組織が変わることを実感する
・業績の回復傾向
→ コロナ禍の影響で、良くなったり悪くなったりだが、既存事業を守り止まっていた新規事業も動き始める

管理職にアプローチすると組織へのインパクトは高くなります。インパクトを最大化したい組織は、管理職研修から組織改革・変革を行うといいかもしれません。

組織改革・変革の事例4.|【若手社員】が中心になり、組織活性化を促した事例

項目 詳細
業種 美容器具メーカー
企業規模 300名程度
実施方法 半年後との2日間のフォロー研修(公開講座)
問題 若手社員が、上司や先輩社員を見て、「彼ら・彼女らのようになりたくない」というキャリアへの危機感から、3年目~5年目で若手社員の80%が退職する状態
目的 離職率の低下と、エンゲージメント向上
得られた効果 離職率の低下(ライフイベント以外は、ほぼ離職が無くなる)
自社商品への誇りや、自組織への感謝が研修内で出てくる
部門間の建設的な対立関係

【組織変革を進めた背景】

本企業はヒット商品もあり業績は好調で、財務もよく優良企業でした。福利厚生も充実しており、社員から衛生要因への不満はありません。ただし、ヒット商品があるため、その商品に依存し、がむしゃらに頑張らなくても成果が出る状態でもありました。既存社員は必要以上に頑張ろうとしません。その姿みた若手社員が幻滅して辞めていく状況が起きていました。

【起きていた問題】

組織内はぬるま湯の状態でした。下記のようなシステム(構造)が走っていました。

左下にある「若手の離職」から説明していきます。

「若手が離職する」→「(他の若手が)孤独感を持つ」→「若手社員の想い・やる気が弱くなる」→「組織に対して諦める」→「若手の離職がさらに増える」→「既存社員は、若手社員はどうせ辞めるだろうという不信感を持つ」→「周りからの支援が弱くなる」→「若手社員は孤独になる」という悪循環が起きていました。

そして若手の離職が続けば、右上の「ロールモデルの数と質」も担保できませんし、「若手社員同士で切磋琢磨」する環境もできません。それは「成長機会」も少なくなり、「若手の想い・やる気」が弱まっていきます。「ロールモデルの数と質」が担保できなければ、「若手の想い・やる気」も育まれません。

このように悪循環に陥っていました。

【具体的な打ち手】

この状態を踏まえて人事の課長であったYさんは、研修制度を充実させることを考えました。新入社員研修とOJTトレーナー研修はある程度整っていたものの、次にどこに力を入れるかを考えていました。そこで、新入社員研修とOJTトレーナー研修でご一緒していた当社にお声がかかります。対話を重ねて、管理職研修は難易度が高いと判断し、まずは若手社員に直接アプローチすることになりました。
先ほどのシステムにおいて、「孤独感」と「成長する機会」をアプローチするポイントとしました。

対策の方針として、下記のようにしていきます。

具体的な方法としては、

また、若手社員の育成支援を起点に、既存社員にもアプローチしていきました。

・若手社員研修の事前ワークで、既存社員にポジティブインタビュー(※)を行う
・若手社員のジョブローテーションを活性化させ、異動先の上司には申し送り書を共有する。異動先の上司は申し送り書をもとに受け入れ面談をする

を行いました。インタビューシートを、一部ご紹介します。

また、申し送り書によって従来組織が抱えていた【営業部と開発部の敵対関係】という別の課題が解決されていく現象も起きていました。

申し送り書により、営業部と開発部のコミュニケーション機会が創られ、お互いの背景理解が深まりました。結果、関係の質が上がっていきました。

本取り組みの前は、営業部は「開発部はいいもの創れ!」、開発部は「営業部はちゃんと売ってこい!」といった思いが強く、敵対意識が強化されていました。

申し送り書を通して、お互いの想いや考えを理解するきっかけとなり、関係性が高まり、お互い思っていることを会議で出し始めるきっかけにもなったそうです。
※ 今では、営業部は「もっと顧客のことを考えろ!」、開発部は「マーケット全体のことを考えろ!」という対立関係になっているとのことです。

【組織改革・変革の成果】

下記の組織改革・変革が進みました。

・離職率の低下(ライフイベント以外は、ほぼ離職(5%以下)が無くなる)。
・自社商品への誇りや、自組織への感謝が研修内で出てくる
・部門間の建設的な対立関係

監修者からの一言

若手社員研修という手軽なアプローチでも組織が変わります。あきらめず今できることを、丁寧に行っていくといいでしょう。

執筆者に直接相談する

組織改革・変革の事例5.|新入社員育成によって、売上鈍化を解決していった事例

項目 詳細
業種 不動産
企業規模 100名程度
実施方法 新入社員研修、OJTトレーナー研修、新入社員OJTトレーナー合同フォロー研修
問題 組織が急拡大しているが、売上が上がらない
目的 新入社員の早期戦力化(売り上げの向上)、育成風土の構築
得られた効果 新入社員の受注件数5倍
育成風土の構築

【組織変革を進めた背景】

業績が好調で新入社員の採用を行い始めましたが、一人当たりの売上が減少していました。理由は、新入社員の売上がなかなか見込めないことでした。結果、現場の負担も大きくなっており、現場社員の不満も増えていました。

【起きていた問題】

組織化を進めるため、人事コンサルティング会社を入れて、パッケージ製品の人事制度を導入しました。しかし、導入後は、特に何もしてないという状態でした。下記のようなシステム(構造)が走っていました。

人事コンサルティング会社が入る前は、小さいながらも、社員同士が協力的でアットホームで仕事をしていたようです。しかし、人事制度の導入により「機械的な役割分担」を強引に行ったことで、「当事者意識」が弱まり、悪循環になっていたようです。

・「当事者意識」がないため、「やりがい」がなくなり、「パフォーマンス」も下がり、「成果」も出ず、「成功体験」もできない。さらに「当事者意識」がなくなる
・「当事者意識」がないと、「部門間の壁」も高くなり、「視野・視座」が狭まるので、「思考の質」が下がり、「周りへの働き掛け」もなくなり、「視野・視座」が狭まります
・「思考の質」が低くなれば、「品質」が下がり、「顧客満足」が減るので、「成果」が下がる

新入社員に限らず、組織全体でよどんだ雰囲気になっていて、業績も悪くなっているという話でした。

【具体的な打ち手】

対策の方針として、下記のようにしていきます。

OJTトレーナーへ、コミットが高まる役割分担を行うこと、そして、新入社員に対してOJTトレーナーと共に、「当事者意識」・「やりがい」・「成功体験」をはぐんでいくアプローチをしました。

【組織改革・変革の成果】

下記の組織改革・変革が進みました。

・新入社員の受注件数5倍
→上司・トレーナーの新入社員へのフォローが増えました。また、新入社員からの報連相もふえて、配属4カ月後には新入社員が前年比5倍の受注しました。
・育成風土の構築
→人事責任者の方や経営陣の方が、社員間の日ごろのコミュケーションや報連相の重要性を理解されていました。あわせて、育成文化を創る重要性を理解し、毎月勉強会が行われるようになったそうです

監修者からの一言

新入社員研修から組織変革を行うことも可能です。パッケージをそのまま入れることで、組織の状況が悪くなる場合もあります。自組織の状況を踏まえて、組織改革・変革を行うことが望ましいです。

執筆者に直接相談する

組織改革・変革の事例6|パワハラ・セクハラが横行する工場の風土を変えた事例

項目 詳細
業種 部品メーカー
企業規模 工場50名
実施方法 組織変革プロジェクトとして実施
問題 パワハラ・セクハラが横行しており、離職率も高い
目的 パワハラ・セクハラの撲滅と、エンゲージメント向上
得られた効果 パワハラ・セクハラの撲滅
エンゲージメントの向上

【組織変革を進めた背景】

工場長を中心として、パワハラ・セクハラが起きていました。しかし、工場長はハイパフォーマーであり、組織側の対応が後手後手になっていました。工場長の好き嫌いで現場が回っており、工場としての稼働状態は悪くないが、パワハラ・セクハラの隠ぺいもされている可能性がありました。工場長がかわいがっている社員は、そうでない社員にいじめともとれる行動もしていました。
※ 完全ブラックというより、ブラックに近いグレーゾーンです。

【起きていた問題】

社労士による注意喚起の講習なども役に立っておらず、また工場長の上司でさえ彼に気を遣う状況でした。工場長がいなくなると、工場が回らなくなるという状況でした。ナレッジのブラックボックス化、また、難易度の高い機械も多くあることも要因の一つでした。現場を把握しきれていない本社の社長や役員からの信頼も厚かったです。人事部は、現場のヒアリングを通して危機感を持っていました。

【具体的な打ち手】

情報共有の仕組化による組織力強化という文脈で、組織改革・変革のプロジェクトが発足されました。デザインチームは、さまざまな人に参加してもらいました。

・本社役員
・人事
・工場長
・課長
・中堅メンバー
・若手社員
・契約社員

何度もミーティングを行い、そして工場の全体でのワークショップの実施が決まりました。
ワークショップではOST(オープンスペーステクノロジー)を行い、一日間オフサイトミーティングを行いました。

最後に、工場全体で取り組む施策に対して、工場長一名はかたくなに最後まで拒み続けました。そして、多くの社員がいらだちを見せました。

終了時間になりファシリテーターから、

「本日決まらなかった施策は、一旦デザインチームで今後どのようにするかを企画します。その後、皆さんの意見をぜひお聞かせいただければと思います」

と話を伝え、ワークショップは終了になりました。
ただ次の日の朝礼で、小さな変化が起きました。工場長が朝礼の最後に

「本日も、よろしくお願いします。」と伝えたのです。

今までそのようなことがなく、多くの社員が驚いたそうです。
その後、次の施策のを決めるためのデザインチームに、有志も参加しました。ワークショップで関係の質が上がったこと、そして工場長の小さな変化により、驚くほど速くパワハラ・セクハラがなくなっていったそうです。

【組織改革・変革の成果】

下記の組織改革・変革が進みました。

・パワハラ・セクハラの撲滅
・エンゲージメントの向上

一番驚くのが、工場長の精神的成長です。一年後彼は本社に栄転になりますが「工場のエンゲージメントの向上は、どうしたらいいか?」や、「ナレッジの仕組化」をどう進めるといいかなどを、デザインチームと共に考えていったそうです。

監修者からの一言

「人を信じること」「全体で進めること」は組織変革を進める上で重要です。工場長がセクハラ・パワハラを行うことは許されることではありませんが、背景には、彼への責任の重さや負担などもあったかもしれません。組織全体(今回は工場)で、課題と向き合うことの重要性が分かります。

執筆者に直接相談する

まとめ

本コラムを通して、自組織の組織改革・変革のイメージを持てたのではないでしょうか。

本コラムでは、下記の内容をお伝えしました。

・ファシリテーター育成から、組織変革を力強く進めた事例
・コロナ禍をしなやかに乗り越えていくために、経営者勉強会を起点に組織変革をデザインした事例
・管理職が中心になって、M&Aによる敵対関係・部門の壁を乗り越えていった事例
・若手社員が中心になって、組織活性化を促していった事例
・売上の鈍化を新入社員育成で解決していった事例
・パワハラ・セクハラが横行する工場の風土を変えていった事例

組織改革・変革は、一社一社アプローチが異なります。同じような問題であっても、今まで培ってきた歴史に違いがあり、パターン化できないものです。ただし、先人から学ぶことは可能です。
今回の事例をぜひ参考にしていただければと思います。

当社でも組織改革・変革コンサルティングサービスを提供しておりますので、ご興味があればぜひご連絡ください。本事例でも紹介したとおり、公開講座の研修からでも手軽に実施することも可能です。