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[ コラム ]
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専門家が教える!レジリエンス研修で押さえるべき3つの内容
更新日:
「レジリエンス研修を導入したいけれど、受講者の心に踏み込むことに怖さを感じる」
そんな不安を抱えていませんか?
レジリエンスとは、心理学の分野で「逆境やストレスに適応し、乗り越える力」とされ、一般的には「精神的な回復力」とも呼ばれます。
変化の激しい時代やストレスの多い職場環境において、レジリエンスを高めることは、社員がしなやかに前進するために欠かせない力として、多くの企業が注目しています。
一方で、レジリエンス研修は「人の心」に深く関わるため、受講者が感情的になったり、過去のつらい経験を思い出して拒否反応を示したりすることもあります。
こうした反応が起きたとき、適切に対応できるようにするには、心理の専門家と連携して研修を設計・運営することがとても重要です。専門家が関わることで、受講者の反応に対して柔軟に対応できるだけでなく、全体の進行にも安心感が生まれます。
さらに、企画側もレジリエンスへの理解を深めておくことで、専門家との連携がスムーズになり、より意味のある研修が実現できます。
本コラムでは、レジリエンス研修を成功させるために、以下のポイントをご紹介します。
・レジリエンス研修の内容で押さえておくべき3つのポイント
・対象別のレジリエンス研修実践例
・レジリエンス研修で外してはいけない「専門家の関与」
・研修以外の対策とセットにすることでレジリエンスを高める施策
この記事を読むことで、専門家と連携した研修の進め方が具体的にイメージでき、講師や研修会社を見極めるポイントも掴めるようになります。
変化やストレスが当たり前になった今、レジリエンスの高い人材は、冷静に困難に対応し、立ち直る力を発揮できる、組織にとって欠かせない存在です。
社員一人ひとりのレジリエンスを育て、組織全体にしなやかな強さを育んでいきましょう。
専門性:インタラクショナルデザインコーチング、キャリア開発、メンタルヘルス/レジリエンス
目次
1)基本的なレジリエンス研修3つの内容
レジリエンス研修では、3つの内容を押さえておく必要があります。

①レジリエンスに関する知識を高める
②レジリエンスに関する技術を高める
③レジリエンスが高まる体験を入れる
なぜこの3つを押さえておく必要があるかは下記の通りです。
①「知識を高める」:まずは土台をつくる
多くの受講者にとって、「レジリエンス」という言葉自体が初耳だったり、漠然としか理解していなかったりします。
そのため、まずはレジリエンスとは何か、なぜ必要なのか、どんな技術があるのかを理解してもらうことが重要です。ここでしっかりと土台を作ることで、後の学びが定着しやすくなります。
②「技術を高める」:実践で使える力を育てる
レジリエンスは、現場のOJTによって自然に獲得する可能性が低い技術です。そのため研修の中で技術を知り、実際に練習し、技術を高めていく必要があります。
③「体験を入れる」:すぐに活かせる状態にする
レジリエンスの実践場面であるトラブルや逆境は実際にいつ体験するか分かりません。そのため、研修を受けても体験するまでに時間が空いてしまっては効果が見込めないのです。
だからこそ研修の中で、シミュレーションやロールプレイを通じて疑似体験を取り入れることが効果的です。
実際の場面を想定しながら体験することで、学んだ内容が「自分ごと」として定着していきます。
このように、「知識・技術・体験」の3つを組み合わせた構成にすることで、レジリエンス研修はより実践的かつ効果の高いものになります。
順番に各内容を具体的に解説していきます。
①レジリエンスに関する知識を高める
レジリエンス研修を設計するうえで最初に重要なのは、「どの理論を軸にするか」を明確にすることです。
レジリエンスには複数の理論があり、どの理論を採用するかによって、受講者に響く内容や実践しやすさが変わってくるためです。
ここでは、「理論の背景が明確であること」「企業での研修で実施する際に使いやすい理論であること」を元に私が選んだ4つの理論をご紹介します。
・アメリカ心理学会(APA)が示す「レジリエンスを築く10の方法」
・カレン・ライビッチ博士「レジリエンスを構成する7つの能力」
・イローナ・ボニウェル博士「SPARKモデル」
・平野真里氏「資質的要因と獲得的要因による分類」
どの理論も活用可能なため、自社の受講者の状況や学びやすさに応じて選定していくことが大切です。
アメリカ心理学会(APA)が示す「レジリエンスを築く10の方法」
アメリカ心理学会(APA)は、以下のような10の具体的行動を通じてレジリエンスを育てることを提案しています。
【アメリカ心理学会(American Psychological Association:APA)】
・レジリエンスを築く10の方法
①家族や友人と良好な関係をつくる
②危機を耐え難い問題とせず、克服できると思う
③変えられない状況を受け入れる
④現実的なゴールをつくり、それに向けて動く
⑤きっぱりと決断してアクションを起こす
⑥喪失の苦しみの後に、自己発見のチャンスを探す
⑦自分自身をポジティブに見る
⑧ストレスの多い出来事を、長い目、大きな視点で見てみる
⑨希望に満ちた見解を持ち続ける
⑩心と体をケアし、自分自身を癒す
これらは「レジリエンスが高い人の特徴」として、受講者にとって非常にイメージしやすい内容です。
研修では冒頭でこの10項目を紹介し、「できていること」「これから強化したいこと」などを自分で整理し、アクションプランを考えるなどのワークが効果的です。
カレン・ライビッチ博士「レジリエンスを構成する7つの能力」
この理論では、レジリエンスを構成する7つの能力を提示しています。どれも後天的に育てられるとされており、トレーニング内容も明示されています。
【カレン・ライビッチ博士『レジリエンスの教科書〜逆境をはね返す世界最強のトレーニング〜』】
・レジリエンスを構成する7つの能力(後天的に育むことができると提示している)
| ①感情調整力 | ②衝動調整力 | ③楽観性 | ④自己効力感 |
| ⑤原因分析力 | ⑥共感力 | ⑦リーチアウト力(他者へ働きかける力) | |
感情や考え方、課題解決力など網羅的な能力向上が期待できます。上記の書籍にはトレーニング方法も記載されていますので、内容として取り入れていくことも有効です。
イローナ・ボニウェル博士「SPARKモデル」
SPARKモデルは、出来事が起こった際の状況認識と解釈のトレーニングに特化したモデルです。以下の5つの視点から、自己の反応を振り返ります。
【イローナ・ボニウェル博士:SPARKモデル】
・認知行動療法を活用したある出来事が起こった時の状況把握の方法
S:出来事・状況(何が起きたかの事実)
P:とらえ方(状況への解釈)
A:感情(内側に湧き上がる感情)
R:反応(状況への態度・行動)
K:認識(〜はこういうものだと記憶)
上記SPARKモデルで書き出した後、とくに「P=とらえ方」をポジティブに変えることで、感情や行動も前向きに変化していきます。SPARKモデルは「物事のとらえ方」のトレーニングとして効果的です。
過去の出来事をSPARKモデルで書き出し、視点の切り替えを体験するワークは、実践的な思考の柔軟性を養うことができます。
平野真里氏「資質的要因と獲得的要因による分類」
この理論では、レジリエンスを先天的な性質の強い資質的要因と、後天的に身につけやすい獲得的要因の2つに分類しています。
【平野真里氏:「レジリエンスの資質的要因・獲得的要因の分類の試み(2010)」】
・先天的な性質の強い資質的要因と、後天的に身につけやすい獲得的要因に分類している
●資質的レジリエンス要因
・楽観性(物事がうまく進み、良いことが生じるだろうというポジティブな見通しや考え方)
・統御力(自分の体調や体力、および感情やユーモアなど、心身をコントロールする力)
・社交性(人との関係をうまく取ることや、社会集団における存在感を得られる性質)
・行動力(物事に対して、努力や意欲を持って粘り強く行動できる能力)
●獲得的レジリエンス要因
・課題解決志向(状況を改善するために、問題を積極的に解決しようとする意志をもち、解決方法を学ぼうとする力)
・自己理解(自分の考えや、自分自身について理解・把握し、自分の特性に合った目標設定や行動ができる力)
・他者心理の理解(他社の心理を理解、もしくは受容する力)
研修では、まず、自分の資質的要因を振り返り、強みとしてどう活かすかを考えます。そして、獲得的要因に関してはトレーニングによって短期的に伸ばすことができるため、重点的に育成対象とするのが効果的です。
以上4つの主要な理論の概要と研修内容としての扱い方を提示しました。
自社の受講生の置かれた環境を鑑み、どの理論を適用し、知識として提示していくかを検討することが大切です。
私がレジリエンス研修を実施する際によく使う理論は、平野真里氏の資質的レジリエンス要因と獲得的レジリエンス要因です。
なぜなら、「獲得的レジリエンスは苦手な人が少ないため研修で扱いやすい」「学ぶことが職場で実践しやすい」からです。他の理論もどれも素晴らしいのですが、私は上記の理由で選んでいます。
②レジリエンスに関する技術を高める
レジリエンス研修では、「知識」だけで終わらせず、実践できる技術を身につけることが重要です。なぜなら、レジリエンスは実践を通じてこそ定着するものだからです。学ぶだけでは行動に移らず、実践の場面がなければスキルは身につきません。
そのため、技術を高めるステップでは、以下の2点を軸に内容を設計することが効果的です。
①どの理論を軸にするか(知識編で紹介したレジリエンス理論の中から)
②対象者が、最も早く実践で使える技術は何か
例えば
①使う理論:平野真里氏の資質的レジリエンス要因と獲得的レジリエンス要因
②対象者:社会人3年目くらいまで
の場合、この対象者層にとって実践的で効果的な技術としては、課題解決志向の考え方や、上司や顧客との関係構築に使える「アサーティブ・コミュニケーション」などが挙げられます。
このように、①使う理論、②対象者と対象者が最も早く実践で使う技術を選定することができたら、下記のように技術の習得を行います。
技術を高めるための具体的な研修構成
■ 研修内でのアプローチ
【講義】「アサーティブ・コミュニケーションとは何か?」を学ぶ
【ワーク】ペアワークなどで、アサーティブコミュニケーションの具体的な話法を実践
【まとめ】「実際の職場で使う場面」を想定し、アクションプランを作成
■ 研修後のフォロー
【事後課題】アクションプランを実践しての振り返りを3ヶ月間実施。人事部などに共有
【管理職の支援】1on1ミーティングで、実践状況の振り返り・内省・工夫を話し合う
このように選定と研修実施、研修後フォローなどを行い、技術を高めていくことが大切です。
さらに定着を強化するのであれば、フォロー研修を実施し、現場でどのように活用したかをリフレクション(内省)する機会を設けることをおすすめします。
現場での実践経験をもとに、受講者が「うまくいったこと」「うまくいかなかったこと」を振り返り、リフレクション(内省)する場を持つことで、レジリエンスの習得はさらに深まります。
このように、理論・対象者・実践可能な技術を意識して設計し、研修とフォローの両面からアプローチすることで、レジリエンスを支える技術は確実に現場に根づいていきます。
③レジリエンスが高まる体験を入れる
レジリエンスが高まる体験を入れる内容を取り入れるには、「こころの安全を確保した上で、ストレスの高い場面を想定した体験を入れる」ということが重要です。
なぜなら、レジリエンスの体験というものは逆境やストレスを扱います。
体験としては、ある程度「きつい体験」を乗り越えることが、レジリエンスに対する自己効力感を高めるためには効果的ですが、一方で逆境やストレスを扱うことは一時的に受講生の心に負荷を与えます。その負荷を安全を確保した上で運営できるようにすることが重要なのです。
具体的には体験を扱うときは3つの場面を使います。
①過去の体験を使う
②現在の出来事から拾う
③未来のシミュレーションを行う
この中で最も安全性が高いのは、③の未来です。まだ起きていない出来事は、客観的に考えやすく、負担も少なくて済むため、研修に取り入れやすいアプローチです。
例えば、対象者が新入社員で、未来を扱う場合は、以下の流れが考えられます。
①先輩の体験談を直接か映像でみる
②もし先輩と同じような立場に置かれたらどのような反応をしそうか書き出す
③今日学んだレジリエンス技術を使えば、どう反応に変わるか検討する
このように、「他者の体験」×「未来の自分」×「技術の適用」という構成にすることで、安全性を保ちながら“きつい場面”を扱うことが可能になります。
一方、「①過去」や「②現在」を扱う場合は、「人に話せるレベルの体験」を本人に選ばせ、安全な体験を扱うように伝えることが大切です。
ここまで、レジリエンス研修の基本構成として大切な3つのポイントを解説してきました。
この3つをバランスよく取り入れることで、レジリエンス研修は「学ぶだけで終わらない、行動につながる学び」へと進化します。
2)対象別|レジリエンス研修のプログラム内容
レジリエンス研修は、「基本の構成」をベースにしながら、対象者の経験値や課題に応じてカスタマイズすることが効果を高めるポイントです。
ここでは、基本の流れと、対象別のプログラム例をご紹介します。
研修の基本の形
理論:平野真里氏の資質的レジリエンス要因と獲得的レジリエンス要因
※9時から17時の一日研修を想定
| 内容 | |
|---|---|
| 1 | イントロダクション |
| 2 | 【知識】レジリエンスとは何か(定義・効果など) |
| 3 | 【知識】資質的・獲得的レジリエンス要因の理解 |
| 4 | 【体験】過去の経験から資質的レジリエンスを探す |
| 5 | 【知識・技術・体験】性格検査を通じた「自己理解・他者理解」 |
| 6 | 【知識・技術】問題解決の考え方 |
| 7 | まとめ・今後の取り組み方 |
この基本構成に、対象ごとの特性や状況に合わせてプログラムを調整していきます。
新入社員向けレジリエンス研修
新入社員は、まだ実際の業務で大きな困難に直面していないケースが多くあります。したがって、未来に起こりうる困難を事前に疑似体験し、対処法を考える力を育てることが重要です。
| 内容 | |
|---|---|
| 1 | イントロダクション |
| 2 | 【知識】レジリエンスとは何か(定義・効果など) |
| 3 | 【体験】先輩の体験談の映像を見るなど疑似体験 |
| 4 | 【知識】資質的レジリエンス要因・獲得的レジリエンス要因の理解 |
| 5 | 【体験】過去の経験から資質的レジリエンスを探す |
| 6 | 【知識・技術・体験】性格検査などによるタイプ診断により「自己理解」「他者心理の理解」 |
| 7 | 【知識・技術】問題解決の考え方(アサーティブコミュニケーション・他人を頼る方法など) |
| 8 | まとめ・今後の取り組み方 |
中堅社員向けレジリエンス研修
中堅社員向けのレジリエンス研修では、「これまでの自分を肯定すること」を大切な軸としてプログラムを設計・実施します。
中堅層は、これまでに数多くの逆境やストレスを経験してきています。その経験を「ただ過ぎた出来事」として片づけるのではなく、乗り越えてきた強みや成長の証として再認識してもらうことが、研修効果を最大限に引き出すポイントです。
過去の経験を振り返り、自分が発揮してきたレジリエンスに気づくことで、自信と自己効力感が高まり、今後のさらなる挑戦にも前向きに取り組む力が育まれていきます。
| No | 内容 |
|---|---|
| 1 | イントロダクション |
| 2 | 【知識】レジリエンスとは何か(定義・効果など) |
| 3 | 【知識】資質的レジリエンス要因・獲得的レジリエンス要因の理解 |
| 4 | 【体験】過去の経験から資質的レジリエンスを探す(特に乗り越え経験) |
| 5 | 【知識・技術・体験】性格検査などによるタイプ診断により「自己理解」「他者心理の理解」 |
| 6 | 【体験】タイプ診断から現在起きている様々な他者との葛藤場面を話し合う |
| 7 | 【知識・技術】問題解決の考え方(アサーティブ・交渉術など) |
| 8 | まとめ・今後の取り組み方 |
管理職向けレジリエンス研修
管理職向けのレジリエンス研修では、「自分のため」だけでなく「部下のため」にも役立つ研修であることを明確にした設計が効果的です。
管理職の多くは、これまでに数々の逆境やストレスを乗り越えてきた経験があります。そのため、実際の研修現場では「自分はもうレジリエンスがあるから大丈夫」という反応が返ってくることも少なくありません。
こうした認識を持つ受講者に対して、「自分のレジリエンスをさらに高める」ことだけを目的にすると、研修への姿勢が受け身になってしまう可能性があります。
そこでポイントとなるのが、「部下のレジリエンスをどう育てるか」という視点の導入です。管理職自身の学びが、部下の成長やチーム全体の安定にもつながるという意義を伝えることで、研修への関心と主体性が高まりやすくなります。
| 内容 | |
|---|---|
| 1 | イントロダクション |
| 2 | 【知識】レジリエンスとは何か(定義・効果など) |
| 3 | 【知識】資質的レジリエンス要因・獲得的レジリエンス要因の理解 |
| 4 | 【体験】過去の経験から資質的レジリエンスを探す |
| 5 | 【知識・技術・体験】部下のレジリエンス傾向を検討する |
| 6 | 【知識・技術・体験】性格検査などによるタイプ診断により「自己理解」「他者心理の理解」 |
| 7 | 【知識・技術・体験】性格検査などによるタイプ診断を元に「部下とのコミュニケーション」を検討する |
| 8 | 【知識・技術】部下育成・ストレスマネジメントの視点での問題解決 |
| 9 | まとめ・今後の取り組み方 |
ご紹介したように、レジリエンス研修は「基本形+対象に応じたカスタマイズ」で設計することで、受講者にとって実感のある、現場で活かせる学びとなります。
・新入社員には「未来の困難に備える力」
・中堅社員には「これまでの経験を肯定し活かす力」
・管理職には「自分と部下のレジリエンスを高める力」
それぞれの立場に応じた設計を行うことで、個人の成長と組織の健やかさの両立が可能になります。
3)レジリエンス研修で専門家が関与しないことのリスク
レジリエンス研修を行う際は、研修の設計段階から実施当日まで「専門家の関与」が必要です。
ここでいう専門家とは、資格でいえば臨床心理士や公認心理師など、心理の専門資格を持つ人、またはカウンセリングなどの現場経験が豊富な実務家を指します。
専門家の関与が必要な理由は、レジリエンス研修が「人のこころ」を扱う研修のためです。
もしこの“こころ”を扱う場に、十分な専門性を持たない人が設計・運営を行った場合、受講者にとって大きな負担やリスクが生じる可能性があります。
以下、実際に起こり得るリスクと、それに対する専門家ならではの対応をご紹介します。
リスク①:体験を深掘りしすぎて、受講者を傷つけてしまう
【起こり得るリスク】
過去の逆境やストレスの話をさせようとして「一番きつかった時のことを思い出してみてくださいね」と何気なく声をかけてしまった結果、受講者がその体験を深く思い出しすぎて、ワーク中に過呼吸を起こしてしまった。
【専門家の対応策】
専門家が講師であれば、受講者の表情や反応を丁寧に観察しながら「どこまで許容できそうか」を想定できます。
「一番きつかった時のことを思い出してみてください。とはいっても難しいなぁという方は無理せず、『これくらいなら大丈夫かな?』という出来事を思い出すくらいにしてください。もし自分で判断しづらい方は一緒に考えましょう。近くに行くので声をかけてくださいね」など幅広い状態に対応できるようにします。
また、設計段階でそういう方がいた場合を想定してテキストなどにも記載しておくこともできます。
リスク②:ストレスに脆弱な受講者に適切に対応できない
【起こり得るリスク】
「自分自身をポジティブに見る」というワークを行った際、受講者のひとりが「どうしても自分をポジティブに見られないんです」と質問。
講師が「少しでもいいから考えてみてね」と返したことで、受講者はそれ以上質問できず、ワークを途中で諦めて書くのをやめてしまった。
【専門家の対応策】
専門家がその場にいれば、こうした質問に対して、時間やその場の状況が許せば受講生の状況や状態を聞き「無理にポジティブにならなくて良い」や「まずそのことを講師に言えたことが良い」など受講生に対して適切な声掛けができます。
また、設計の段階で、「すべての受講者が前向きに取り組めるとは限らない」ことを前提とし、ワーク内容や声かけのトーンに幅を持たせたり、講師に相談しやすい雰囲気づくりを検討したりすることも、専門家の視点があってこそ可能です。
このように、レジリエンス研修では受講者の内面に深く関わる分、感情の動きや個々の状況に柔軟に対応できる力が求められます。
だからこそ、研修の設計段階から講師の配置まで、「人のこころを扱う」専門性と経験をもつファシリテーターの関与が不可欠です。
レジリエンスという力を、受講者が安心して育めるように、専門家との協働を前提にした研修設計をおすすめします。
4)レジリエンス研修をより効果的にする3つのフォロー施策
レジリエンス研修は、研修だけで完結させず、日常のフォローとセットで設計することが重要です。
なぜなら、レジリエンス研修は「人のこころ」に関わる力であり、1日の研修だけで身につくものではないからです。
日々の実践を通じて「少しずつ身についた」「乗り越えられた」という自己効力感を高めていくことが、真の習得につながります。
ここでは、レジリエンスを定着・発揮するための3つの対策をご紹介します。
① レジリエンス体験を増やすための「つながり」支援
② 1on1ミーティングを通じた「乗り越え経験」の自己認識
③ 組織全体のストレス環境を見直し
① レジリエンス体験を増やすための「つながり」支援
学びたての段階では、レジリエンスがまだ十分に身についていないため、一人では困難を乗り越えられないことも少なくありません。そんな時に「頼れる場所」や「相談できる相手」がいることは、実践を継続する大きな支えになります。
そのため、受講生が気軽にアクセスできる「つながり」を組織として用意し、使いやすい形で提供することが大切です。
具体的な支援例としては、以下のような取り組みが効果的です。
・同期同士でつながるコミュニケーションツールの提供
・人事や労働組合など、トラブル時に頼れる相談機関の紹介
・EAP(従業員支援プログラム)など、カウンセリング制度の整備・案内
こうした仕組みがあることで、受講生は安心感を持ちつつ、レジリエンスを実践の中で高めていくことができます。
② 1on1ミーティングを通じた「乗り越え経験」の自己認識
レジリエンスを定着させるには、日々の中で「乗り越えた経験」に自ら気づくことが重要です。そのための効果的な場が、上司との1on1ミーティングです。
1on1では、日々の出来事を振り返り、「大変だったけれど乗り越えられたこと」「少しでも前に進めたこと」を言語化することで、自己効力感を高める支援ができます。
たとえば、次のような対話を取り入れることが有効です。
・今月の出来事や印象的な出来事の共有
・困難を感じた場面と、どう乗り越えたかの振り返り
・上司からの具体的なポジティブフィードバックや承認
このような1on1の積み重ねが、レジリエンスを育みます。
③ 組織全体のストレス環境を見直し
①と②は個人の実践を支える取り組みですが、組織そのもののストレス環境をマネジメントする視点も重要です。
どれだけレジリエンス研修を通じて個人の力を高めても、日常的に過度なプレッシャーや理不尽な状況が続くようでは、意味がありません。
むしろ、「きつい環境でも我慢しろというメッセージなのか?」と受講者に誤解され、会社への不信感を生むリスクを持ちます。
だからこそ、組織側がストレス要因そのものを見直し、改善していく姿勢が不可欠です。
具体的な取り組みとしては以下のことが挙げられます。
・ハラスメントの根絶と、相談しやすい風土づくり
・長時間労働の削減と働き方の見直し
・評価や業務配分など、組織内の不公平感・理不尽さの是正
レジリエンスの定着には、個人への支援と組織全体の環境改善という両輪での取り組みが不可欠です。
レジリエンスは、研修だけで自然に身につくものではありません。
ここまでご紹介した3つのフォロー施策をもとに、日々の支援・対話・組織づくりの中で何ができるかを考えていくことが大切です。
5)まとめ|レジリエンス研修はアーティエンスにおまかせ
本コラムでは、レジリエンス研修に関して、お伝えいたしました。
具体的には、以下の4点を中心にご紹介しました。
・基本的なレジリエンス研修3つの内容
・対象別|レジリエンス研修のプログラム内容
・レジリエンス研修で専門家が関与しないことのリスク
・レジリエンス研修をより効果的にする3つのフォロー施策
これらを通じて、私たちが一貫してお伝えしたいのは、レジリエンス研修は「人のこころ」を扱う研修であるということです。
そのため、知識や技術の伝達だけでなく、「どんな場で、どう届けるか」も含めて、繊細な設計と運営が求められます。そして、受講者の状態に適切に対応するためにも、専門家の関与は欠かせません。
今回のコラムを参考に自社にとっても最も効果的な「レジリエンス研修」を構築してくださると嬉しいです。
私たちアーティエンスでは、組織や社員の特性・課題に合わせて、制度設計からレジリエンス研修の実施まで一貫してサポートしています。
「自社に合ったレジリエンス研修を設計したい」「専門家の視点を取り入れたい」などのお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
レジリエンスが根づく組織づくりを進めていきましょう。
研修でお悩みの方へ
研修は、内容次第で成果が大きく変わります。もしも現在、自社の課題を解決できる最適な研修を探しているのであれば、アーティエンスまでご相談ください。
新入社員研修から管理職研修、組織開発まで、お客様の課題解決にこだわり、多くの実績を生み出してきたプロフェッショナルが、貴社の課題にあわせた最適なプランをご提案させていただきます。


