2022年度新入社員ってどんな人?
~時代にマッチングする新入社員育成を考えるために知っておきたいこと~
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作成日:2021.9.6
2022年度新入社員の採用も落ち着き、内定者フォローや次年度の新入社員育成の企画のために、情報収集をしようと考えていらっしゃる人事の方も多いのではないでしょうか。 コロナ禍2年目を過ごし、自組織にとっての新しい新入社員育成が形になってきた方もいれば、まだまだ模索中という方もいるかもしれません。
そこで、改めて当社からの情報提供と問題提起として、Z世代とも呼ばれている2022年度新入社員の特徴を、歴史・環境から紐解いていきたいと思います。
※ 本レポートでは、高校、大学をストレートで卒業し就職する、1999年生まれの方を22年新入社員を中心に考えています。
目次
1)2022年度新入社員が育った環境
近年の時代の変化は激しく、年齢が10歳違うと育ってきた環境が大きく異なっています。 2022年度新入社員が育った環境はどのようなものだったのでしょうか? 2022年度新入社員の小学生時代から大学時代までに、どんなことが起きていたのか見ていきましょう。
子の問題に親が介入 小学校1-3年生時代(2006-2008)
2007年(8歳)
宮崎県知事の東国原英夫さんが発言した「(宮崎を)どげんかせんといかん」が流行語の年間大賞になった年です。同じく2007年の流行語対象にノミネートされていたの言葉の中に「モンスターペアレント」があります。
学校に対して、言い掛かりといえるような理不尽な要求、苦情、文句、非難などを繰り返す保護者のことをモンスターペアレントと呼び、社会問題となっていました。
尾木 直樹さんの「バカ親って言うな! ──モンスターペアレントの謎 (角川oneテーマ21)」の中ではモンスターペアレントを5タイプに分けており、その中の「我が子中心型」「ネグレクト(育児放棄)型」は親子関係により生まれていました。
(出典)「バカ親って言うな! ──モンスターペアレントの謎 (角川oneテーマ21)」(尾木 直樹)
モンスターペアレントを通して子どもに対しての接し方が話題となっていた時期のため、2022年度新入社員の中にも程よい親子との距離や関係に悩んでいた人もいるかもしれません。
繋がることのへの価値変容 小学校4-6年生時代(2009-2012)
2011年(12歳)
東日本大震災が発生し、「3.11」が流行語になった年です。
昨日まで会っていた人と急に会えなくなるという現状を目の当たりにし、日々の大切さを痛感した時期でした。2022年度新入社員の中にも実際に被災者として経験した人もいるでしょう。
そんな中でボランティア活動が活発になったり、思いやりや絆を大切にしようというメッセージが長い間発せられました。
反対にイベント事は自粛とすることも多く、何となく楽しんではいけない雰囲気を感じていた人もいるかもしれません。 小学6年生から中学生のちょうど思春期と言われるタイミングだったため、皆で助け合い、乗り越えていこうという道徳的観念や日々を大切に生きるという想いを強く持つ反面、日々着実にという意識が強くなり、チャレンジ精神などは弱まったかもしれません。
好きなように生きていくことへの憧れ 中学時代(2012-2015)
2013年(14歳)
オリンピック招致活動の最終プレゼンで日本社会に根付く歓待の精神を日本語で紹介した 滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」が流行語になった年です。
2012年度から全国の中学校では、ゆとり教育で学力の低下が批判されたことを受け、脱ゆとり教育として学習内容が増えました。
(出典)中学教科書、12年度から厚く 「脱ゆとり」で理科4割り増し: 日本経済新聞
ゆとり教育の時代と異なり学力の向上を求められた人も多いかもしれません。 一方で、2014年には「好きなことで、生きていく」というYouTube広告を目にする機会が多くなり、将来自分も好きなことで生きていきたいと思い始めた人も多いのではないでしょうか。
SNSで流行を作る 高校時代(2015-2018)
2016年(17歳)
ピコ太郎さんの「PPAP」が流行語になった年です。
当時の高校生のスマートフォン(通称:スマホ)の所有率は93%となり、ほとんどの高校生がスマホを持つようになりました。スマホの主な使用目的は、LINEやインターネット検索のようです。
(出典)高校生のスマートフォン利用実態調査
多くの人がLINEを使用することになり、「LINEいじめ」という問題も起きました。
例えば、悪口を言っていたLINEのスクリーンショットを撮って送ったり、LINEのグループから外したり、既読スルーするなど、外からは見えにくいじめが発生しました。
狭い空間の中で誰からも見られることのないため、精神的な苦痛が大きく、いじめられないために自分の本音を隠していた2022年度新入社員もいるかもしれません。
また、次々と新たなスマートフォンのアプリがリリースされ、その時々で流行するものが違ったため、初めて触れるものに対して利用していくうちに慣れていくという体験は多く経験しているのではないかと思います。
コロナ禍で激変していく 大学時代(2018-2022)
2019年(20歳)
令和元年を迎え「令和」が流行語になった年です。
若い世代のテレビ離れが顕著に現れるようになりました。それは広告費からもうかがえます。2019年、長らくトップを守り続けていたテレビ広告費をインターネット広告費が上回ったのです。
広告費は消費者が何を見ているかに大きく影響しているため、インターネットの使用時間が長くなったことが伺えます。
(出典)ネットが2兆円でテレビ広告費を抜く 2019年「日本の広告費」が発表に #宣伝会議 | AdverTimes(アドタイ) by 宣伝会議
インターネットの他にも新たなSNSの流行もありました。
今までのSNSはTwitterやInstagramが主流でしたが、それに加えTikTokをはじめとした様々なSNSサービスが誕生し、その選択肢と利用者が大きく増え始めました。
大学ではテレビドラマの話をするより、SNS上で話題になっている動画で盛り上がることが多く、テレビよりもチャンネル数が圧倒的に多いため、話題についてくために様々な投稿を見ている人もいるようでした。
2020年以降のコロナ禍による自粛期間も重なり、インスタライブやYouTubeライブなど、ライブ感のあるオンラインコミュニケーションも盛んになりました。
エンタメサービスが充実しているため、日々を楽しめているのかと思いましたが、約半数以上の大学生が孤独を感じている調査結果が出ています。2022年度新入社員は、大学3年生以降オンライン授業が多くなり、アルバイトも出来なくなる状況が続いたことで、対面コミュニケーションの機会が圧倒的に減ったことが理由として考えられます。
コロナ禍でオンライン面接が急増した2022年度新入社員の就職活動はどうだったでしょうか?
オンライン面接はやりづらいのではないかと思われていましたが、2022年度新入社員にとって最終面接以外ではポジティブなイメージを持っている方が多かったそうです。
(出典)22年卒の6割が「オンライン採用選考」で応募意欲が高まると回答。コロナ禍の就職活動で変化したことは|人事のプロを支援するHRプロ
就職観はというと、安静志向が向上し、やりたい仕事ができるかというポイントは減少していました。
(出典)2022年卒 学生たちの就職観は|NHK就活応援ニュースゼミ
東日本大震災やコロナウイルスというクライシスの経験から、やりたい仕事ではなくても安定的に働けることが大切という価値観になったのではないかと思います。
また、仕事に何を求めているか、という質問に対しても「楽しく働きたい」という想いはあるものの、コロナの影響を受けていない2000年度新入社員の数字と比べると減少していることが分かります。
(出典)2022年卒 学生たちの就職観は|NHK就活応援ニュースゼミ
NHK就活応援ニュースゼミによると、このように「楽しく働きたい」のポイントの減少と「人のためになる仕事をしたい」のポイントの増加減少は、2008年のリーマン・ショックの後や、2011年の東日本大震災の後にも見受けられたそうです。
大きなクライシスの後は、安定志向になり、人の役に立ちたいという想いが強くなる傾向にあるようです。
2022年度新入社員が育ってきた環境を振り返ってみると、学生時代に2回のクライシスを経験していました。そのことによりイノベーションの急速な進化と、価値観が大きく変わることを体感しているのではないかと思います。
・コロナ禍:「授業・就職活動のオンライン化」、「(死が近くにあることから)自分らしく生きるという価値観」
また、2つのクライシスから生まれた共通した価値観は「人のために役に立ちたいという価値観」です。このように環境の変化によって、人の価値観や考え方は変わっていきます。
なお「最近の若手社員の特徴とは?効果的に育成を行う4つのポイントも詳しく解説」の特徴の記事では、より詳しく最近の若手社員(新入社員)の特徴をまとめています。育成を行うポイントも解説していますので、ぜひご覧ください。
2)2022年度新入社員の特徴
育ってきた環境を元に、2022年度新入社員の特徴を5つにまとめてみました。
イノベーションの変化や、価値観が大きく変わる体験によって2022年度新入社員の特徴が生まれていることがよくわかります。
ここまでで、近年の時代の変化の速さにより環境が大きく異なり、2022年度新入社員ならではの特徴を知ることが出来ました。
それでは、これらの特徴を踏まえて2022年度新入社員育成の際に気を付けることを考えましょう。
3)傾向から考えられる2022年度新入社員育成に気を付けること
これらの特徴から、2022年度新入社員を育成する際に気を付けることとして3点挙げられると考えました。
<1. 継続的で前向きなコミュニケーションをとる>
最近の新入社員にも感じているかもしれませんが、2022年度新入社員に対して「何を考えているのかわからない」と思うことがあるかもしれません。
しかし、同じように2022年度新入社員もなぜこのようなことをやらないといけないのかなど、上司・トレーナーの言動を理解できないこともあります。
対面やテキストでのコミュニケーションを強化し、継続的に前向きなコミュニケーションをとり続けましょう。
まずはお互いの違いを理解し、受け入れられるようになると、より良い関係性を築いていけます。企業によっては、内定者と社員でのオンライン交流会や、定期的なメッセージのやり取りなど、入社前からコミュニケーションの機会を作っているようです。
<2. チャレンジ度合いを確認する>
2022年度新入社員の特徴として安定志向や積極的なチャレンジを行わない傾向も感じられます。
出世に興味がなく今の環境のまま過ごせればよいと考えている人もいるようです。そのため、育成担当者が成長を思って新入社員にお願いした仕事に対しても、新入社員にとっては余計な仕事を増やされたとネガティブな印象で受ける可能性もあります。
2022年度新入社員と渡す仕事のチャレンジ度合いが適切かを確認しながら、育成計画をしっかり立てて成長を支援する働きかけは、今まで以上に必要となりそうです。
<3. 個人の価値と組織の価値を統合する>
「昨日まで一緒にいた人が急にいなくなる感覚を持っていること」から自身の生き方を考える機会が多く、またSNSを通して、多様な生き方や価値観に触れることで自身の人生にも影響を受けています。
一つの成功パターンがあるのではなく、様々な道があることを知っているからこそ、自分の人生の価値観と仕事や組織が合っていることが大切です。
仕事を辞めることや転職することが以前に比べてハードルが下がったこともあり、この仕事・上司・会社と合わないなと感じた時点で会社を辞めるという選択肢を持つ人が増えています。安定志向でありながらも、目の前の好き嫌いに流されて、離職する傾向もあります。
早い段階で2022年度新入社員が大切にしている価値を聞き、その価値と仕事や組織がどのように繋がっているのか、また未来と繋がっていくのかを、時には共に考えて、時には指導していくというバランスが必要になってきます。
4)アーティエンスが考える「これからの新入社員育成とは」
彼らの生きてきた歴史を紐解くと、「学生から社会人の切り替え」という躾的な観点だけで新入社員育成を行うと、退職リスクが高まることが想像できます。そのため「社会人への期待」を持たせることも重要です。
まずは一年目のゴールとして自分で自分の生産性を高めモチベーションを維持する、セルフマネジメント力を身につけることを目標とします。
そのために、新入社員と組織が継続的なコミュニケーションをとるための機会・ツールを用意し、成長を支援します。
新入社員が自組織と共に成長実感を持ち、エンゲージメントを高めていくことが必要です。
生きてきた環境が異なると、価値観やスキルに違いが出てくるため、自分と違う人を理解し受け入れることが難しいと思います。多様な人が集まることで、いざこざが生まれることもありますし、やりづらさを感じることもあるでしょう。
しかし私は、多様な人がいるからこそ色んな意見が生まれ、サービスの質が高まることもあると考えています。
一人ひとりの特徴を見て、それぞれの良さを活かして仕事をできると、働いている人にとっても、お客さんにとっても、会社にとっても良い影響を与えると思いますので、一人ひとりと向き合うことを大切にして欲しいと思います。
この記事をきっかけに新入社員全体の特徴を理解し、そこから一人ひとりとどのように向き合っていくかを考えて頂けたら嬉しいです。