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導入事例

コロナ禍の新人育成どう進めた?企業インタビューから見えた3つのポイント
アクシスコンサルティング株式会社様

コロナ禍により新入社員の育成環境は大きく変わりました。突然の変化に、どのような対応をすべきか迷っている人事の方々も多いのではないでしょうか。

しかし、そのような変化にも柔軟に対応し、新入社員がめざましく成長した企業も存在します。 画像 アーティエンスではコロナ以後の人材育成のポイントを明確にするべく、2020年に新入社員が大きく成長した企業へインタビューを行いました。

インタビュー企業: アクシスコンサルティング株式会社
「人が活きる、人を活かす~人的資本の最大化・最適化・再配置~」 「HR(ヒューマンリソース)事業を通じて、新しい価値を創造し、 すべての人が活き活きと働く社会創りをめざします」という理念・ビジョンの基、 コンサル業界を中心に転職志望者を支援している。 https://www.axc.ne.jp/

登場人物: ・新入社員…Aさん ・トレーナー…Hさん ・人事…Tさん

今回は、インタビュー記事とあわせて、アーティエンスが考える本企業の3つの育成ポイントをお伝えします。  


1)インタビューでひも解く新入社員の成長(採用・受け入れ)

トレーナーは「ビジョンに対する正しい理解と行動が伴っている人」を選びました

―本日はよろしくお願いします。まずAさん、入社前はどのような気持ちでしたか?
Aさん 入社前の10月頃から週3日アルバイトとして働いていました。
なので、アルバイト業務で関わった社員の方とのコミュニケーションに不安はありませんでした。 ただ、かかわりの薄かった最前線で活躍している方と、関係性をどう深めていけばよいかという不安は持っていましたね。

また、弊社の仕事の意義は理解できていて早く活躍したいと感じていたので、どうすればはやく活躍し会社に還元し、社会に貢献できるだろう…という焦りの気持ちもありました。

―テレワーク下での仕事について、やりづらさや不安はありましたか?
Aさん 重要ではない要件で電話をかけても良いのだろうか…という不安がありました。
オンラインツールをつかったコミュニケーションになったので、重要度が高くない要件をわざわざ連絡すべきか、迷うことが多かったです。出社していれば、相手の様子も見られるので、タイミングをみて話かけられると思うのですが…。

トレーナーのHさんとは頻繁に連絡をとっていたので、迷いも少なかったですが、他の社員に「今こんなことで電話をかけても良いのだろうか…」という気持ちを持っていました。

―トレーナーのHさんは新入社員育成に対してどう感じていましたか?
Hさん 育成者としての責任は強く感じていました。
また、Aさんには、「中長期的にアクシスを引っ張っていく人材」になってほしい、なってもらわないと困る、と思っていました。弊社の新卒組は周囲を引っ張りドライブしていく人たちばかりなので…!

ただ、私自身、メンバーをマネジメントするという経験を積んだことがなく、マネジメントに対する不安はありました。特に、新卒一年目にとっては初めて深く接する社会人が私であり、私のでき次第でAさんのビジネスパーソンとしてのこれからが変わってくるだろうな、というプレッシャー・責任を感じていました。

―人事のTさん、採用時に意識したことはありますか?
Tさん 「弊社のビジョンに心から共感できるか?」を、とても重要視していました。
弊社では、ビジョンと日々の仕事が繋がっています。なので、ビジョンにより深く共感できる人ほど、目の前の仕事に意義やエネルギーをもって取り組めると考えています。

また、既存社員のビジョンへの共感が高いので、上司・斜め上の先輩が新入社員に自分のリソースを割くことを苦と感じないんです。新入社員が成果をだすことは、ビジョンの達成に近づくこと、という意識がありますから。そういった風土があるからこそ、他社と比較して、Aさんが上司・先輩社員が働きかけやすい環境はあると思います。もちろん、Hさんにも日々サポートしてもらっていますがね。

―トレーナーを決めるときにはどのようなことを意識しましたか?
Tさん ビジョンに対する正しい理解と行動が伴っていることですね。
Hさんはビジョンに対する正しい理解と行動が伴っています。育成経験はないけれども、新卒のAさんを任せられると思いました。Hさんがビジョンとそれに紐づいた育成を行い、Aさんが着実に行動を積んでいるからこそ、結果的にAさんの変化率が高くなっていると思います。

2)インタビューでひも解く新入社員の成長(入社後)

「目の前の仕事」と「組織の価値観」をつなげる1on1の機会を設けました

―個人の価値観と組織の価値観とはどのように統合してきましたか?
Tさん 少なくとも週に1日、多いと毎日、「目の前の仕事」と「組織のビジョン」をつなげる1on1の機会を設けてもらいました。

テレワークという働き方において、トレーナーとコミュニケーションが取れる機会を設定すること、仕事とビジョンとのつながりを感じられる状況を用意する必要があると感じていました。採用時には何度もビジョンを伝え、入社後は日々のコミュニケーションによってフォローアップするかたちです。

Hさん 「目の前の業務の先にビジョンがあることを忘れていないか、目の前の業務自体が目的になっていないか」ということを、1on1のスタイルで都度確認していました。Aさんが話やすいように、安全・安心の場を創ることも意識をもって進めました。 また週に1回、代表が全体朝礼も行っています。原点に戻るという感覚ですかね。

【1on1とは?】
上司と部下が1:1で実施する対話を指します。大きな特徴としては下記があげられます。

・週に1回~月に1回程度の短いサイクルで実施
・目的は部下自身の成長であり、上司が仕事管理するための時間ではない
・上司は問いによって内省を促し、成長につなげる


―Aさんは、1on1についてどう感じていますか?
Aさん 日々のミーティングや1on1で、行動の背景を教えてもらえることは助かっています。働く上での安心感や会社が好きという気持ちが保たれているのは、1on1の時間を割いてくださっている、という事実があるからだと思っています。

また、1on1以外でも、普段のミーティングにも同席してもらっていて、期待されているという実感を持っています。

―Hさんは1on1において、どのような工夫をされていますか?
Hさん 期待や指摘を言葉にして伝える、ということを意識しています。なので、我ながら強くいうべき点はかなり強く伝えています…笑

―指摘に苦手意識を持つ新入社員も多いと思います。どのようにされていますか?
Hさん 指摘する時は、「お客様のため・マーケットへの価値貢献を考えたら、やってはいけないよね」という視点で伝えるから納得感高く伝わるのだと思います。これも、やはり 理念・ビジョンへの共感度合いが基礎になっているのだと思います。

あとは、期待も都度しっかりと伝えています。「5年後10年後にアクシスを引っ張ってもらいたい」という言葉は、毎日とは言いませんが、何度も伝えています。

理念・ビジョンとやりたいことが100%重なるわけではない。

―理念・ビジョンへの共感を高めても、完全には重ならないのが現実だと思います。その点について、いかがですか?
Tさん 毎週社長が朝礼の時に15分~30分話をしていて「理念・ビジョンの1メッセージ化」というのはできているのかな、と思いますね。

ただ、お話されている通り、ビジョンとやりたいことが100%重なるわけではないとは思っています。また、そこは無理に強制すべきではないとも感じています。Aさんと初めて話した時に、将来何やりたいとか、そういったことは丁寧に聞きました。WEの視点も大切だけれど、Iの視点も大切に、それらを念頭に置いています。

―具体的にはどのようにバランスをとっていますか?
Tさん そうですね、新入社員の場合はまずWEの視点を大切に日々の仕事に向き合ってもらい、だんだんとIの視点の割合を広げていくという感じですかね。

1on1でもそうですが、WEの視点はしっかり伝えつつ、「どう思う?何かやっていきたことある?」といったIの視点でのコミュニケーションも大切にしています。 この二つの視点を大切にしているのは、弊社のDNAなのかなと思いますね…。

Hさん 新入社員は、正直はじめはインプットすることの方が多いとは思いますね…。

イメージは、WEを9伝えて、Iの部分を1尊重するという感じでしょうか。まずはWEの部分を正しくできるまでちゃんと伴走していく。伴走しながら、状態をみて、Iの部分の範囲を少しずつ広げていく。というバランスで進めていますね。

3)インタビューでひも解く新入社員の成長(―今、振り返ってみて)

まず任せてみる、ただし、フォローできる体制は準備しておく。

―入社から半年たち、改めてどう感じていますか?
Aさん 4月時点と比べて、クライアント・対峙している方とのコミュニケーションは変化したと思います。毎回ミーティングの後に「お客様の期待値ってここだよね」というのをすり合わせ下さるので、お客様の思う期待値と自分の思う期待値がだんだんすり合ってきているのかなと思います。また、一企業担当として動ける部分は増えてきたのかな…と思います!

Hさん 顔つき、話すテンポとかスピード、目つきが変わりましたね。4月と比べて、コミュニケーションスピードは本当に、激変したと思います。鬼のように伝えていましたから…笑

ただ、私の介在価値というよりも、お客様に育ててもらった感覚が強いです。変化した点は本人にも伝えています

Aさんにはこの半年、どんどんチャレンジを積んでもらいました。まず任せてみる、ただし、フォローできる体制は準備しておく。ということを大切にしてきました。安心安全の場を確保しながらもチャレンジできる、という感じでしょうかね。

お客様のため、マーケットに価値・バリューを発揮することにもっと目を向けてほしい

―Aさんへのこれからの期待を教えてください
Hさん 成長へのコミットのレベルをワンステップ上げてほしいですね。具体的には、Aさんの今の成長の目的は自己成長に向いていると思っています。自分が成長するには、活躍するには…というイメージです。

その点を、お客様のため・マーケットに価値・バリューを発揮することにもっと目を向けてほしいです。ここは、まだまだ言い続けなければいけないところだな、と思っています。

そして、何度も伝えていることですが、今後、会社を引っ張っていける人材になってほしいと心から思っています。スキル・専門性は大事だけれども、1年目は理念・ビジョンやアクシスが大切にしている価値観をいかに正しく理解して実践できるようになるか、ということの方が大切だと思っています。なので、お客様への貢献や日々の行動でぜひ、実践を重ねてほしいと思います。

―Aさん、Tさんはいかがですか?
Aさん 目指すべき姿はHさんです。弊社の中でも仕事ができるのは目に見えてわかっていて、1年後、2年後に、Hさんのようになりたいです。そのためにも、お客様に貢献する視点を持ち、それを体現できる、という点を意識しなければいけないと思います。

Tさん お客様の方をもっと向いてほしいですね。それは、実際のお客様もそうですが、社内のステークホルダーも含んでいます。マイペースではなくて相手のペースに合わせる、お客様のペースに合わせる。その意識でやってもらえると嬉しいな思いますね。

―これからが楽しみですね。本日は誠にありがとうございました。

4)本企業における3つの育成ポイント

  企業インタビューを通し、アーティエンスが感じた育成のポイントをまとめました。

1)ビジョンを具体化し、意識を高め続ける

新入社員にとって、ビジョンが具体化され身近に感じられる存在であったこと、そして都度意識する機会があったことが、大きな育成ポイントではないでしょうか。

・理念・ビジョンとはどのようなものか
・理念・ビジョンと仕事はどうつながっているのか
・理念・ビジョンと自身の役割はどう繋がっているのか
・理念・ビジョンと自身の行動はどう繋がっているのか

理念・ビジョンは、多くの企業が持ちながらも、社員一人一人の目の前の仕事と理念・ビジョンとを結び付けられている企業は少ないでしょう。

特に、業務の一端を任されることの多い新入社員はなおさらです。
また、コロナ等のクライシスの際には、自身のキャリアについて考え直す人が多いと言われています。だからこそ、自組織の存在意義を丁寧に伝え、目の前の仕事の意義を明確化することは重要です。

平時よりも有事の時に、より力を発揮するアプローチと言えそうです。トレーナーであるHさんは、日々のコミュニケーションや1on1で理念・ビジョンと新入社員の日々の仕事とを丁寧に繋げ続けていました。

そのため、Aさんもテレワーク下においても、目の前の業務の意義や先にある未来を想像しながら仕事を進められました。目的意識を持つことが良質な経験を多く積むことに繋がり、成長スピードを早めることに繋がったのでしょう。

2)新入社員とトレーナーのコミュニケーション機会の多さ

AさんとHさんはオンラインであっても、日々コミュニケーションとっていました。
みなさんは下記をご存じですか。

【成功循環のサイクルとは?】画像

関係の質が上がるほど、その後の思考・行動・結果の質は上がるといわれています。

本年度の新入社員は特に ・入社時に既存社員と関係性が築けていない ・テレワーク勤務で相手の状況が見えない ということから、既存社員への報連相の抵抗感が増し「こんなことで聞いていいのだろうか…」と迷う場面が増えていると考えられます。

Aさんにも不安があったように、入社直後に、オンライン上で上司・先輩に報連相を行うことに相当な勇気が必要なことは、容易に想像できます。

Hさんが積極的にコミュニケーションの機会を設けたことで、関係の質があがり、その後の思考・行動・結果もどんどん高まっていったと考えられます。

また、1on1などの機会を多くもつことで、迷っている点やつまずきを早期にひろいあげることもできたと考えられます。テレワーク下であっても、しっかりとフォローしてもらえる、という安心感は組織へのエンゲージメントにもつながることでしょう。

3)WEをしっかりと伝えながらもIの視点も大切にし、自他非分離の状態を促進する

「新入社員の初期育成」においては、インプットが多い時期でもあり、Iを明確にできる経験も少ないためWEの視点が大きくなりがちです。

Tさん、Hさんもお話しされている通り、まずはWEの視点をしっかりと伝えることが、その組織で活躍するベースを創ることにもなるでしょう。

しかし、その前提があったとしても「これからどう成長し、どう活躍したいのか」といったことを、新入社員が考えられる機会が定期的にあることは、仕事への意義を内面から見出すことになり、仕事への主体性を高める機会にもつながります。

また、育成側もIの部分を把握しておくことで、「I」の部分を伸ばしながらも、うまく「WE」と統合していく働きかけを行うことができます。また、「I」の明確化と「WE」の統合をはかることは、自他非分離の状態を促進しているともいえます。

【自他非分離とは?】
自身の核となる意思を持ちながらも、他の人ともゆるやかに・開けた関係として繋がっており、相互に作用しあえる状態。 メタファーとして複数の卵を割り入れた1つのボウルで表現されることが多い。

画像

自身の意思をもちながらも、相互に尊重し影響を与え合える状態のため、対立を超えた新しい考えが生みだされやすい。また、全体が繋がっている状態のため、一体感も育まれやすい。

対になる言葉は、自他分離。自身と他人とは境界があり、影響しあえる存在ではないという状態。

自身か他人、どちらかが正であるという対立構造にとどまるため、新たなものが生まれづらい。

自身の意思を明確にもちながらも、周囲と共創しながら成果をだす人材を育てるためには、新入社員時代からチームの一員としての意識(WE)への共感・理解と、自身の意思(I)の精度を上げていくことが大切になってくるのではないでしょうか。

5)今後にむけて

  今回は、コロナ禍に柔軟に対応しながら新入社員育成を進めたアクシスコンサルティング株式会社様にインタビューを行いました。

インタビューを通して強く感じたことは、「新入社員の成長への責任感」や「組織のビジョンを全員で達成したいという強い想い」があるからこそ、コロナ禍という状況のなかでも育成がうまく機能したのだろうということでした。

1on1などの施策ももちろん大切ですが、あくまでそれらは手段であり、大切なことは、育成を支える想いを育むことだと感じました。

変化の渦中にいると、どうしても近視眼的になり、その場しのぎの対応であったり、手っ取り早い解決を求めてしまいます。

改めて「新入社員にどのように活躍してほしいのか、そのために何をすべきなのか」という原点に立ち返って、大きく変えることを恐れずに育成に向き合っていきたい、そう思いました。

インタビューにご協力いただきました、アクシスコンサルティング株式会社のT様、H様、A様、今回は誠にありがとうございました。