2022/11/09作成ー
2022年10月27日に『管理職を起点とした従業員エンゲージメントの育み方~採用ミスマッチを解消し、社員のパフォーマンス最大化に向けて~』をテーマに、株式会社ROXX取締役COO 山田氏と共に共催セミナーを開催しました。
目次
どんなに優秀で素晴らしい人材を採用できたとしても、入社後の従業員のエンゲージメントが低いままでは、パフォーマンスが上がらず、成果に結びつかないだけでなく、退職リスクも高まってしまいます。
入社後に期待したパフォーマンスや成果を出し、中長期的に活躍してもらうためには、従業員エンゲージメントの向上が不可欠です。
本セミナーでは、管理職を起点として従業員エンゲージメントの向上に繋げた事例をお伝えしながら、株式会社ROXX取締役COO 山田氏とパネルディスカッション形式で、採用ミスマッチの解消や社員のさらなる活躍に向けて、組織・人事として取り組めることを探求しました。
当日は、以下のアジェンダでお話をさせていただきました。
登壇者:迫間 智彦 アーティエンス株式会社 代表取締役
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2010年にアーティエンス株式会社を設立。 リーダーシップ開発・組織開発を専門に扱っている。 自身も講師・ファシリテーターとして登壇し、研修サービスの企画・運営や組織開発サービスを提供。 お客様企業・受講生の未来と今を考えて、必要なものを共創することをポリシーとして持っている。 |
モデレーター:山田 浩輝(やまだ ひろき)株式会社ROXX 取締役COO
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大学在学中、代表中嶋と株式会社RENO(現株式会社 ROXX)を創業。ROXXではCOOを務める。2017年に新規事業責任者として「SARDINE(現agent bank)」の立ち上げを実行。2019年より新規事業「back check」を統括。累計500社以上の企業に対し採用コンサルティングを実施。 |
講演では、管理職を起点として従業員エンゲージメントを向上させた事例をメインでお伝えしました。
従来の人と組織の関係性は、組織に個人が帰属し、組織を通して社会に価値を生み出していました。会社の視点や都合で決まる組織論理を、個人に当てはめることを「カンパニーセンタード」と言います。
しかしながら、コロナ禍により、人の価値観・働き方や価値の生み出し方が大きく変わってきました。人と組織の関係性も、個人が組織を活用して社会に価値を生み出していくような関係性へとシフトし始めています。これを「ピープルセンタード」と言います。
これからは、従来の「カンパニーセンタード」ではうまくいかず、「ピープルセンタード」な考え方で、組織運営の施策を考えていく必要があります。
※ 当社セミナー投影資料より一部抜粋
「ストレスチェックが悪化している」という内容で、ご相談がありました。本質的な課題を一緒に探求して、根本的解決として管理職研修を行った結果、研修を実施した1年後には従業員エンゲージメントが向上しました。
※ 当社セミナー投影資料より一部抜粋
自組織の本質的な課題を見つけ、その課題に対応した施策を行うことで、従業員エンゲージメントを育むことができるのです。
今回ご紹介した事例について、詳しい情報を記載しているセミナー投影資料を、下記フォームより無料でダウンロードいただけます。具体的な状況が知りたい方はぜひ資料をご覧ください。
従業員エンゲージメントの育み方について、山田氏と迫間でパネルディスカッションを行いました。話の一部をご紹介します。
(迫間)
採用の段階からオンボーディングの設計をしておくことが大切です。
採用の段階は、あくまでオンボーディングの観点を用いる程度ですが、求職者が企業文化に触れる機会が増えます。企業文化と合わない求職者のスクリーニングにもなりますので、ミスマッチが解消されます。もちろん入社後のオンボーディングもスムーズになります。
リアリティショックは入社後のギャップのことで、大なり小なりはありますが、必ず起きます。リアリティショックを避けることは難しいですが、オンラインランチを行ったり、可能な限り情報をオープンにすることで、採用時から緩和することは可能です。入社後は、オンボーディングを丁寧に行うことが必要です。
(山田氏)
オンボーディングは、人事が効果を出せるポイントですよね。人事は採用も既存の従業員エンゲージメントを高めることも求められていて大変ですが、オンボーディングという入社初期のフォローは費用対効果が高い活動に感じます。
※オンボーディングは現場任せになりがちで、上手くいかないという話をよく聞きますが、現場だけでなく人事のリソースを割いて対応していくことは必要だと思います。
■こちらの記事もご覧ください。
中途社員の早期離職を防ぎ即戦力へ―テレワーク環境でのオンボーディング、どう支援していくべき?
※リアリティショックとは、現実と理想のギャップに衝撃を受けることと定義されています。自身が描いていたイメージと、実際の仕事内容や人間関係などに乖離があると、不安感や喪失感、諦めの気持ちを感じ、その度合いによっては早期離職や休職を招く大きな要因になります。
(迫間)
2つの観点があると思います。
1つは、「本当に業務との相性が悪いのか?」を確認することです。例えば、営業という役割の中でも、前職では量をこなす営業で、今の会社ではソリューション提案を行う営業となると内容が異なります。仕事内容が変わっているため、本人が思っているような成果がでないのは当たり前です。ただ本人は、成果が出せないのは自分と業務が合っていないからだ、という考えになっている可能性も考えられます。その場合は、役割を変えるなどの対応が必要になるかと思います。
もう1つは、オンボーディングやOJTの環境が適切に整備されているかを確認することです。組織として中途社員を迎える準備を適切に行い、現場で仕事をしやすい環境を整えていたかを振り返ってみてください。環境によって、力が発揮できない時もあります。
(山田氏)
本人は自分に合っていないと思っているけど、会社は異動させたくないと思っている、という状況だと思いますので、それがなぜかを考えられるといいですよね。
もしかしたら、評価されていないことを不安に思って、自分に今の業務が合っていないのではないかと感じてしまっていることも考えられます。その場合は、成果を出すためにどうすればいいかを一緒に考えられるといいのかなと思います。なぜこのような状況になっているのかの背景を考えて対応しないと、その場しのぎのエンゲージメント向上対策になってしまう場合があるので注意が必要です。
(迫間)
もしかしたら、組織がフィックスト・マインドセット寄りで、ネガティブフィードバックが多い会社なのかもしれません。そうすると、出来ないことに焦点が置かれるため、業務とのミスマッチがあると感じやすいかもしれません。入社直後からパフォーマンスを上げるのは、とても難しいです。組織としてフィックスト・マインドセット寄りの考えが強いと、中途社員も組織も、パフォーマンスが上がっていないと考えてしまうのではないでしょうか。
(山田氏)
確かにフィードバックの仕方によっても影響はでますよね。業務のミスマッチに悩んでいる方と上司がどのようなコミュニケーションを取っているのかを確認して、人事が必要に応じて介入できると解決できるかもしれませんね。
(迫間)
大前提として、そのような場合は採用すべきではないと思いますね。
採用の大原則で、最終面接や経営者の面接で迷った場合は、落とした方がよいと言われています。パフォーマンスは高いけど、企業文化に合わない人は組織にとって悪影響になると言われています。
ただ、新しい事業展開など未来のためにその方を雇っているという場合もあるかと思います。その場合は、役割の期待を現場にしっかりと説明しておくと対応できるのではないかなと思います。
(山田氏)
私がこの状況に立ったらと考えると、事前に「合わない可能性が高いかもしれない」と、入社予定者と配属先の社員の双方に言っておくかもしれません。そうすると、期待値が低く設定されるので、「事前に合わないかもと言われていたし、こんなもんだよな」となりそうです。この状態を一旦つくった上で、お互いにどう歩みより、活かし合えるかという関係性を築けるかがポイントになってくるかなと思います。
両者に定期的に声を掛けて、現状を確認していき、人事としてサポートできることがあれば介入できるといいのではないかと感じます。
(迫間)
対話を通して歩み寄ることは大切ですよね。
同一性だけだと文化は成長しないと言われているため、異質性を入れてカルチャーを育んでいくことは必要です。多様性がある会社は、イノベーションが起きるか、ダメになるかの両極になるという結果が出ているため、イノベーションを起こすためにも対話を通して建設的な衝突を行えるといいのではないかと思います。
(迫間)
時代や状況にあわせて適切にアンラーニングを行い、認知がアップデートされていくことです。カルチャーを育むことで、新しい事業が生まれるということも起きます。
(山田氏)
社内で共有のカルチャーを認識し育もうという意志が大事になるのでしょうか。
(迫間)
それは大事になりますね。まさに、「共有ビジョン」の状態だと思います。
(山田氏)
Googleみたいに世界各地で働いているけど、コアの姿勢は皆同じものを持っているというような状態のことですね。相反するようなものを共存させることが大事で、その中で変革を生んでいくということになるのでしょうか。
(迫間)
まさにその通りだと思います。多様性は表面的には扱えませんし、簡単なものではありません。衝突があるからイノベーションが生まれます。衝突こそがチャンスで、それを乗り越えていくために対話を行うと変革に繋がっていきます。その際に、可能な限り弁証法的な考えを用いた統合的な解決策を持てると、組織のステージが上がるのでイノベーションも生まれやすいです。
(迫間)
金銭だけでは限界があります。
モチベーションの話になりますが、衛生要因と動機づけ要因があり、報酬は衛生要因になります。それが満たされていないと離脱するものです。報酬は衛生要因の一つになるため、一定レベルまでに持っていくと、それ以上は上がらないと言われています。
給与を業界水準に持っていくことなどは大切ですが、エンゲージメントの向上の目的で、インセンティブなどを与えることはお勧めしないですね。給与やインセンティブは一度上げると下げることも難しいので、かなり慎重に設定した方が良いかと思います。
(迫間)
ゴール設定や期間は組織によって変わります。
オンボーディングは現場主体で扱えると良いですが、現場だけでは適切に運用されない可能性もあるので、人事のフォローが必要になります。
例えば、ツールは人事で用意して、1か月ごとの目標設定を現場に行ってもらい、現場が立てた目標設定を人事がレビューするなどです。
最低でも1か月間はしっかり行う必要があると、当社は考えます。新しい環境に入ると、組織の一員になったなどと感じる受容感を持つまでに約2.7か月間かかると言われているので、基本的に3か月間は、オンボーディング期間として捉えていく必要があります。
オンボーディングは、組織社会化の概念を理解し、それに即した内容を検討することがポイントです。
組織社会化では、新規社員が組織に馴染んでいくために、次の3つの軸があるとされています。
この3つの軸に対して、それぞれの支援を考えていけると良いのではないかと思います。■詳しくはコチラのコラムをご覧ください。
新入社員の離職を防ぐ!オンボーディングの具体施策と成功の3つのポイント
(迫間)
リモートワークでのオンボーディングは対面のときより難易度が上がります。
成人発達理論の観点として、人としての成熟度が高い方は、今までのやり方である程度はワークしますが、人としての成熟度が低い場合は、とても丁寧に行わないとワークしなくなります。
当社はほぼリモートワークという状態ですが、新しいメンバーを迎えるときは、オンボーディングとして1か月間は毎日30分1on1を行っています。トレーナーの1名が担当すると負担が大きいため、チームメンバー全員が1on1を持ち回り制で行うようにしています。そこで各メンバーと関係性を築くこともできています。
(迫間)
会社によって考えは様々だと思いますが、カルチャーはパーパスやミッション、ビジョンで創るほうが望ましいと思います。人員の流動の中で、前の職場に戻るということも増えていますが、プロダクトによって戻ってくるというよりも、成し遂げたい世界によって戻ってくる方がカルチャーアッドになると思います。
(山田氏)
プロダクト視点でカルチャーをつくるのは、リスクがあると思います。そのプロダクトで会社経営を何十年やるんですか?という問いが出てきますね。少なくとも売り上げ1千億までこのプロダクトで行くんです、くらい言えないと、プロダクト視点でカルチャーをつくるのは危険だなと思います。
プロダクトは、あくまでもお客さんにより良いサービスを提供するためのものなので、成し遂げたいミッション、ゴールって何だっけ?という側面から、長い時間軸で考える方がいいと思います。
【株式会社ROXX 取締役COO 山田氏より】
今回のセミナーで、エンゲージメントの育み方について少しでもヒントとなることを持ち帰って頂けていると嬉しく思います。エンゲージメントを育むことで、皆さんの会社の未来が明るくなることを願っています。
【アーティエンス株式会社 迫間より】
組織も人も機械ではありませんので、「部品を変える。修理する」などのような対応はできません。社員(求職者も)も組織も、ミスマッチ・従業員エンゲージメントにしっかり向き合えるような採用方法や、組織デザインが必要と言えます。
時代は大きく変わってきているので、本日講演でお伝えした「ピープルセンタード」の考えや、パネルディスカッションでお伝えしたグロース・マインドセットや共有ビジョンなどを大切にしていただけると、ミスマッチの解消や従業員のエンゲージメント向上のアイディアが生まれてくるかもしれません。
アーティエンスの管理職研修では、管理職としての当事者意識の醸成とスキルアップを通してチーム力を高めるアプローチを行います。変化に適応し管理職自身と管理職を含めたチームが今後も成果を出し続け、成長していけるプログラムです。管理職自身が、「管理職としての前向きさと誇り」を持ち、困難な時代を部下や他部署と共に乗り越えていきます。
管理職の育成に対してお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
【新しい管理職が押さえたい3つのポイント】