2022/7/15作成ー
2022年6月30日に『組織として「アンラーニング」とどう向き合うのか?―事業開発と組織開発の観点で考える―』をテーマに、株式会社アイディアポイント 代表取締役岩田徹氏と共に共催セミナーを開催しました。
既存の価値観や行動パターンを手放し、新たな枠組みや習慣を取り入れる、アンラーニング。
変化の激しい昨今のビジネス環境においては、個人単位のみならず、組織単位でアンラーニングを実践していかなければ、変化に適応していくことはもはや不可能となっています。
では、組織単位でアンラーニングを推進していくためには、どのようなアプローチやサポートが鍵となってくるのでしょうか?
「新規事業開発」の支援を行っている株式会社アイディアポイント 代表取締役岩田徹氏をお招きし、事業開発・組織開発の観点から「組織として向き合うアンラーニング」について、パネルディスカッション形式で探求していきました。
当日は、以下のアジェンダでお話をさせていただきました。
・登壇者が今伝えたい!組織としてのアンラーニングへの問題提起
―組織としてアンラーニングをするには、ダブルループ・ラーニングが肝!
~企業事例から、ダブルループ・ラーニングの扱い方を考える~
(アーティエンス(株) 迫間)
―事業開発とアンラーニングー議論の導入としてー((株)アイディアポイント 岩田氏)
・組織として「アンラーニング」とどう向き合うのか?(パネルディスカッション)
・質疑応答
講演後にアンケートにご回答頂きましたので、ご紹介します。
「本セミナーがあなた自身にとって有意義なものであったか、今後活かせる内容であったか?」という問いに、「とても良い時間が過ごせた」~「良い時間ではなかった」という5段階で回答いただいたところ、以下のような結果となりました。
88.9%のご参加者様より「とても良い時間であった・良い時間であった」とのご回答をいただきました。
それぞれの選択肢を付けた理由コメントをみていきます。
アンラーニングの重要性に気が付き、アンラーニングの捉え方に変化があった方が多いようでした。
セミナーのお時間の中で、できるだけ情報をお渡しできればと思い、少し早口になってしまった部分があったかもしれません。頂いたご意見は、次回以降の改善ポイントとして参考にさせていただきます。
ご登壇者をご紹介します。
■登壇者のご紹介:岩田 徹氏 株式会社アイディアポイント 代表取締役社長
![]() | 東京大学大学院工学系研究科修了(工学修士)。 A.T. Kearney、Roland Berger、SAP Japanを経て、セルムグループにて新規事業立ち上げに参画、その後、「新規事業開発」をテーマに株式会社アイディアポイントを創立、代表取締役。 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科 研究員 |
■登壇者のご紹介:迫間 智彦 アーティエンス株式会社 代表取締役
![]() | 2010年にアーティエンス株式会社を設立。 リーダーシップ開発・組織開発を専門に扱っている。 自身も講師・ファシリテーターとして登壇し、研修サービスの企画・運営や組織開発サービスを提供。 お客様企業・受講生の未来と今を考えて、必要なものを共創することをポリシーとして持っている。 |
セミナーでは、パネルディスカッションに入る前の前提情報として、システム思考のダブルループ・ラーニングの扱い方とその事例、そして議論の導入としての事業開発とアンラーニングについてお伝えしました。
まずは、アンラーニングについてお話をするにあたり、アンラーニングの一般的な定義とアーティエンスの定義をお伝えしました。
この上で、組織としてアンラーニングをするにはダブルループ・ラーニングが大切になるということをあるお客様の事例を通してお伝えしました。
システム思考についてより詳しく知りたい方は、下記のコラムもご覧ください。
※参考コラム:眼前にそびえる「複雑な課題」に向き合える思考法─「システム思考」
個人 / チームとして、これまで培ってきた「成功体験」、「勝ちパターン」のうち『邪魔になっている』ものをどのように発見して、どのように手放すのか、手放すことができるのかについてお伝えしました。
本人としては悪気があるわけでなく、良かれと思って行っている成功体験を、自分がどのようにアンラーニングしていく必要があることを受け入れ、対策を考えていけばいいのか、ということをご一緒に考えて頂けたらと思います。
アーティエンスの講義でご紹介した具体的な事例の内容や、アイディアポイント様の講義の具体的な内容が記載されているセミナー投影資料は、下記フォームより無料ダウンロードいただけます。
パネルディスカッションでは、アンラーニングというテーマのもと、流れるままに対話をしていきました。
<迫間>
まず、「アンラーニングができる組織とは、どういった組織なのか」という点に関して、岩田さんはどう思いますか。
<岩田氏>
前向きな明るい組織かなと思っていて、自分たちが正しくて他が間違っているという考え方を持っていると、何か違っているよね、と言われたときにものすごい過剰反応で違わないって言うんですよね。
そうではなくて、確かにそういうところもあるよね、じゃあどうしようかと考えられる組織はアンラーニングできるかなと思います。
世の中的には、自己批判できる組織がアンラーニングできると思われているかもしれませんが、実際は、適切な自信と謙虚さを持ち合わせている人や経営陣がいるような組織が上手に反省をして、色々と受け入れられるのでアンラーニングしやすいです。
もう一つ、アンラーニングできる組織かどうかを見るバロメーターとして、好奇心もあるかなと思います。
経営陣が、我々やコンサルタントからの知らない情報や他社の話に対して、ひと言目に「うちのやり方じゃないね。うちとは違うね」という言葉が出てくると難しいですね。
逆に「おもしろいね」という言葉が出てくると、好奇心、そして健全なプライドと謙虚さを持ち合わせている組織だなと感じます。
<迫間>
岩田さんの話に共感できます。素直に受け止められる方はアンラーニングが強いなと思います。
アンラーニングによって起こる組織の変化として2パターンあると思っていて、一つ目が「アンラーニングしているけどしていることに気付いてなく、ずっと変わり続けている」パターン。このパターンの会社は知的好奇心が高くて、常に学んでいるので「変わっていくこと」が普通になっている状態。
そして二つ目が「大変だから変わらないといけない」という場合です。
この時は素直さが大事になります。
一つ事例をお伝えすると、上場しているあるゲーム会社の社長の方に怒られた経験があります。
この社長は業績が悪くなったときに外から社長として参画し、V字回復を成し遂げました。しかし、その後成長が鈍化し、下降傾向になったときに人事責任者からご相談を頂きました。人事責任者の方と一緒にシステム図を書いて課題を見つけ、社長にお伝えしたところ「君に何が分かるんだ」と激怒されたんです。ですが、その後、社長から「芯を食っていたので苦しかったけど、ちゃんと見ないといけないよね」と謝罪を頂き、その後組織自体も一気に変わってきたという事例もありました。
<岩田氏>
私が最近興味があるのが、怒ってから消化するまでのプロセスって何が必要なのか、どういうことが必要なのかということなんです。
例えば、スタッフに痛いところを突かれるとイラっとしたけど、よく考えたらスタッフが言っていたことの方が正しいなと思うことってあると思うんですよね。
そのプロセス、つまり、自分がこれまで上手くいったからと言って、これからも成功するとは限らないし、自分の考えは一旦アンラーンしてスタッフの言葉を受け入れるまでに何が必要なんですかね。
<迫間>
判断保留ができる人は怒りを消化できるんじゃないでしょうか。
アンラーンというのは、自分が意識していないことを周りからつつかれることになるので、正直きついんですよね。今までその考えで結果を出してきた人は特に。
それに対して判断を保留できる人は怒りを消化することができるのではないかと思いました。
あともう一つ、成人発達理論で言われている垂直的成長があること、というのも必要になるのではないか
と思います。
<岩田氏>
アンガーマネジメントは、自分がどのように怒りを消化するのかに焦点を当てた考え方だと思っていて、それももちろん大事なんですが、自分の健康としてのアンガーマネジメントの他に、ビジネスの意思決定や生産性という観点から根底に何があったのか、どのように消化すればいいのかについて受け入れられないものをどう受け入れるかというのは大事だなと思います。
これがあまりにもできないので、アンラーニングという言葉が流行っているんだろうなと考えていますね。
オンライン上での営業活動やオンラインセミナー等に切り替えている企業も多いと思いますが、今までとのスタイルになるときの葛藤をどう乗り越え、どう受け入れたのかが気になるんですよね。受け入れやすいものと受け入れにくいものはあるのか、ということに興味があります。
<迫間>
今回に関してはオンラインにせざるを得ないという状態で、変わるしかなかったから変わったという方がほどんとだと思いますが、ただ、また戻っている会社もありますよね。
なぜアンラーンできはじめていたのに、元に戻ってしまうのか、アンラーンが続く会社とそうでない会社で何があるんでしょうね。
<岩田氏>
考えが雑だからじゃないですかね。笑
これまでのもので使えるものと、学び直さないといけないものと、忘れるべきものがあって、対面とオンラインの仕事の仕事の仕方があったときに、いい悪いで考えてしまうと全部戻そうとかそのままにしようという話になってしまうんだけど、何だとオンラインでの仕事が活きて、何をあえて忘れないといけないのかという流路がざっくりしているから、適当な意思決定になるんじゃないかと私からは見えますね。
全体を見たら、そんな細かいところのマネジメントはできないという反論もあると思いますが、それは昔の理屈をそのまま引き継いでいるだけなんじゃないかなと思います。
結局は、1つの制度で全部運用しようというのは乱暴で、みんなが使いづらいものを創っている可能性もあるんですよね。
これが本当に会社として目指すべき姿なのか、というのは一度考えた方がいいかもしれないです。
※参考コラム:『平均さん』なんていない話
<迫間>
考えが雑ということについて、組織風土の話に繋がってくると思っていて、組織としてアンラーンしてくるときになぜ考えが雑になるのかを探求できるといいなと思いましたがどうですか。
<岩田氏>
当然反論があることは前提なんですけど、メンタルモデルが古いんだと思います。
「会社が決めたことをみんなが守ることを前提で動いている」、ということだけな気がします。
「意識」と同義で扱われることがありますが、ときにメンタルモデル(認知)は「無意識下」における深層心理で働くこともあります。
ダイバーシティの問題でもよく上がりますが、悪気があるわけではなく昔の感覚で、「こういうものでしょ」とやっていることが問題になっているだけだと思うんですよね。
悪い人がいるわけではなく、「ルールを決めたらみんなで守るもんでしょ」という考えを持っているから起きるのかなと思います。
世の中が変わっていったり、色んな人が柔軟に働けるようになっていることに対して、問題意識を持っていないだけで、「悪気があってやっているわけではない」ということが逆にこの問題の難しさなのかなとも思います。
<迫間>
自分たちが関わる時代までは、一旦はやっていけるので無意識レベルで見逃しているのかなと思いますね。
私たちがこの課題にアプローチしたり、メンタルモデルをどのように扱うとアンラーンのきっかけを作ることができるんでしょうか。
<岩田氏>
本人にアンラーンする気があることを前提にして、色んな人たちの話を聞くことだと思いますね。
大学生や、諸先輩方、自分と近しい人ではない友人と話をして、自分が思っていることが正しくないかもしれないというということを前提にいろんな方に聞いたり、意見をもらったりすることかな。
<迫間>
とても共感できます。自分の見えていないことを広げていくためには、色んな人にあって話を聞くことは重要だと思っています。
アンラーンするための越境も大切かなと思いますが、その点はどうですか。色んな人と会いなさいと言っても行動しない人もいると思うので、組織として越境をつくるときにどうすればいいでしょうか。
<岩田氏>
アンラーニングって言葉が流通することで、何か新しいことに取り組むときにわざわざ忘れないといけないことがあるという考えが広がることは重要だと思います。
越境も同じだと思っていて、「必要があれば外に出て学ぶことは当たり前でしょ」と思いますが、越境という言葉があることで皆が外に出てさらしてみたり、勝負をしてみることが大事なんだと気付けるのであればそれはいいことだし、そういうことに気づくために越境という言葉が出てきているんだろうなと理解していて、そういう意味では大事だなと思います。
ただ今いる所から外に出たら何か学べるよねという考えは凄く雑です。
違う場所に移ったら何か変化あるよね、というのは一つの真実ではあるけど、もう少し丁寧に出ればいいなと思います。
ただ、ずっと同じところにいるよりはいいよねというような考えですね。
<迫間>
考えが雑というところで、「研修すれば変わる」、「システムを入れたら変わる」というわけではなく、その前段階としてデザインをちゃんとしないと効果は出ませんし、逆効果になる場合もありますよね。
アンラーニングをデザインするためのアイデアって何かありますか。
<岩田氏>
まずは、「アンラーニングしないといけないことがあるはずだ」ということを皆で握ることですね。
そのうえで、みんなでやるのは大事だと思っています。ただし弊害もあって、みんなでやると「やっぱり自分たちって正しいよね」という方向になってしまうこともあります。一人では難しいので、みんなの中に多少客観的に組織を見られる人を入れると進みやすくなるんじゃないかなと思いますね。
あとはやることとしては、書き出すしかないかなと思います。
自分たちの成功を引っ張ってきたリソースや強みを手放すべきか、強みとして活かすべきかという意思決定は辛いと思います。
今までのやり方を捨てろというのは簡単ですが、痛みを伴うことになるという覚悟は必要ですね。
<迫間>
アンラーニングは大前提として、始めはパフォーマンスが下がる事が多いということがあるので、このことを知らないと辛くなるかなと思いますね。
<岩田氏>
一歩下がって二歩下がるみたいなことを実際にできますか、というとなかなか覚悟のいる行為ですよね。
<迫間>
「やっぱり自分たちって正しいよね」ということに関してですが、同じ会社の人だけだと限界はあると思うので、そういう際に外部のファシリテーターが入るといいのではないかと思います。
また、越境という点については、越境して戻ってくると、そこで会社の常識が違うという気持ち悪さを感じ、そこから発展していくことがあると思うので、越境や異質の目を入れることは重要かなと思います。
<迫間>
ご質問を頂きました。
「アンラーニングと'成功体験を捨てる'は何が違うのでしょうか?貴社セミナーの例がわかりやすかったのですが、それは成功体験に囚われない、ということと何が違うのでしょうか。」
岩田さん、いかがでしょうか。
<岩田氏>
基本的には同じだと考えて頂いて大丈夫です。
普通は成功体験から学習するので、成功体験をラーンして繰り返していくこともあれば、一方で成功体験としてラーンしたことをアンラーンすることも必要で、成功体験すること=ラーンすることという意味で話していました。
ょうか。
アンラーニングは成功体験に囚われないというより成功体験をあえて忘れる、と理解して頂くといいかなと思います。
<迫間>
大切にした方がいい成功体験ももちろんありますからね。
あと、質問とはズレてしまいますが、アンラーニングした後、ラーニングしないといけないと思うんですね。学びを強化して、それが上手くいかなくなったらまたアンラーンしていくというように繰り返していくことが学習モデルとしてあるのかなと思います。
<岩田氏>
組織としてやるときのコツとして、このままいくとダメだなというときって、責任者が言わないと他の人って言いにくいと思うんですよね。
自分は理系なので、実験が失敗しましたって責任ではなく事実なので、言えるんですが、基本的には言いにくいことだと思います。なので止めた方がいいなというときはある程度責任のあるポジションの人が言って、失敗を攻めないようにするということができるといいかなと思いますね。そのためには責任者がアンラーニングを理解していることが求められるんだろうなと思います。
<迫間>
役職の上の方の方が影響度合いは高いですからね。
ただ、経営層からしか変えれないとなると残念なので、現場からでも変えていけるように、個人として自分がアンラーンした方がいいとか大切にした方がいいと判断できるといいなと思いました。
<岩田氏>
会社の責任者やトップで自分が見落としていることが無いと思わない人はいないと思いますけどね。
<迫間>
この間、ある著名なコンサルタントの方と話していた時に、経営者は変わろうとしているし現場社員との意識の差はあまりないのですが、管理職クラスの人たちはズレがあるように見えると話していたんですが、岩田さんどう思いますか。
<岩田氏>
「管理職が潰しちゃう」問題って良く聞きますが、あらゆる問題を管理職のせいにしている会社も多いなと感じます。
誰が悪いという問題ではないですが、構造上分けて議論できていないことでこのようになってしまっているように思いますね。
<迫間>
基本的に今の管理職の方は、仕事がアドオンされ、明らかに業務量と責任が多くなりすぎているように思います。今の時代に即した管理職の役割定義自体を変えないといけないのではないかということは感じている所ですね。今まで以上にチームで取り組むことが必要になってくると思います。
※参考コラム:
withコロナにより激変するビジネス環境。管理職に生じた新たな課題と役割とは?
そして、それが難しかったり大変だったり、みんなが困っているから注目されるようになると思うので、今回のセミナーをきっかけに、アンラーニングってこんな感じなんだなというのを持って帰ってもらい、自分の会社でどのように行うのかを考えるきっかけになったらなと思います。
ありがとうございました。
まずは、小さなことからで大丈夫ですので、私たちは勉強会も行っているので、越境体験として来ていただけるといいかなと思います。
純粋にアンラーンは大変な部分もありますが、楽しい部分も多いので、少しでも皆さんの素晴らしい変化に繋がって頂けると嬉しく思います。
アーティエンスでは認知を広げるためのファシリテーター研修を実施していて、そのプログラムの中でアンラーニングや認知を広げることを扱っています。
社内ファシリテーターがいることで、会議・勉強会などでの対話・議論が前にすすみやすくなるということもありますので、ぜひご参加頂けると嬉しいなと思います。
ファシリテーター育成はアーティエンスが大切にしているシェアドリーダーシップを体現しているプログラムになります。
組織改革でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。