研修・セミナーレポート

VUCAに適応していくために、どのような組織づくりを目指すのか?—学習する組織の視点から、探求する—【セミナーレポート】

VUCAに適応していくために、どのような組織づくりを目指すのか?—学習する組織の視点から、探求する— セミナー

2022/7/8作成ー

 

2022年6月14日に『VUCAに適応していくために、どのような組織づくりを目指すのか?—学習する組織の視点から、探求する—』をテーマに、「学習する組織」を日本に広めているチェンジ・エージェント社のファシリテーターの一人である北見 幸子氏をお招きして探求しました。

1)講演概要

今までのやり方は必ずしも通用せず、予測不可能な世界で事業のかじ取りをする必要に迫られています。

この状況を乗り越えていくには、今までの正解を追い求めるやり方では限界があります。

「自組織の未来と今をどのように扱っていけばいいか?」を、チェンジ・エージェント社の北見 幸子氏とアーティエンス(株) 代表取締役 迫間と共にパネルディスカッションや質疑応答を通して考えていきました。

当日のアジェンダ

当日は、以下のアジェンダでお話をさせていただきました。

・登壇者紹介
・登壇者が今伝えたい!学習する組織への課題意識
ー『学習する組織』の知恵から学び、実践する変化の担い手から学んだこと((有)チェンジ・エージェント北見氏)
ー企業事例 : withコロナという波を、学習する組織で乗りこなす(アーティエンス(株) 迫間)
・VUCAに適応していくために、どのような組織づくりを目指すのか?—学習する組織の視点から、探求する—(パネルディスカッション)
・ご案内

2)ご参加者様の感想

講演後にアンケートにご回答頂きましたので、ご紹介します。

本セミナーに参加して頂いた目的を伺ったところ、「組織変革を推進する具体的な計画があり、そのための情報収集」のためにご参加頂いた方が多いようでした。

組織変革が求められていることが分かります。 セミナー満足度アンケート

 

セミナーの満足度も伺い、「とても良い時間が過ごせた」「良い時間が過ごせた」と回答して頂きました。

 

セミナー満足度アンケート

 

満足度高くご参加頂いた理由の一部をご紹介します。

学習する組織の理解が進んだ

・学習する組織の実践イメージが具体化されました。
・非常にわかりやすいセミナーでした。学習する組織は一人で読んでも難しいと思うので、こうしたセミナーを開催してもらえると読み進めるうえでとても参考になると思いました。

質問に丁寧に回答してもらえた

・経験・知見が豊富な登壇者の皆様から、今後の自分の組織の進め方についてヒントを得ることができた。
・質問に丁寧に回答頂けました

他社の様子を知ることが出来た

・事例を交えたお話が伺えたため
・他社においても人材教育・組織教育はご苦労されているのだという現状を知った。自身のモチベーションを維持できそう。

学習する組織は、理解が難しいと思われるテーマのため、理解を進めることが出来たというコメントを頂き嬉しく思います。

また、アーティエンスのセミナーでは、その場で出てきたものを大切に扱っていて、参加者の皆さまが今知りたい情報をできる限りお伝えするようにしているためより聞きたいことを聞くことが出来たと感じて頂けたのではないかと思います。

 

3)登壇者のご紹介

ご登壇者をご紹介します。

■登壇者の紹介:北見 幸子氏 有限会社チェンジ・エージェント ファシリテーター/マネージャー    

北見 幸子氏 有限会社チェンジ・エージェント ファシリテーター/マネージャー  

人材開発コンサルティング会社に18年間勤務。法人営業・コンサルティング、インストラクター、プロジェクトマネジメント業務など多岐に渡る。

のちに、事業会社での人材開発責任者として自組織の人材育成に携わり、一人ひとりの成長と組織としての成長が不可分であることを痛感。

『学習する組織』の考え方に感銘を受けて、2018年よりチェンジ・エージェントに参画。

 

■登壇者の紹介:迫間 智彦アーティエンス株式会社 代表取締役

迫間 智彦 アーティエンス株式会社 代表取締役   2010年にアーティエンス株式会社を設立。
リーダーシップ開発・組織開発を専門に扱っている。
自身も講師・ファシリテータとして登壇し、研修サービスの企画・運営や組織開発サービスを提供。
お客様企業・受講生の未来と今を考えて、必要なものを共創することをポリシーとして持っている。

 

4)当日の資料一部紹介

セミナーでは、パネルディスカッションに入る前の前提情報として、「学習する組織」の実践者から学んだ変革のポイント、「学習する組織入門」の読書会から組織変革が進みだした事例をお伝えしました。

『学習する組織』の知恵から学び、実践する変化の担い手から学んだこと 講演者:有限会社チェンジ・エージェント 北見氏

『学習する組織』の基本となる考え方と、'変化の担い手'の実践から学んだ具体的な課題や変化についてご説明頂きました。

現実を掘り下げて関係者の意識が同じ方向に向いてから、本来どういう未来を私たちはつくり出したいのか?

未来に向けてどういう構造をつくり出したらよいか、ということをともに話し合い、作り上げていくことをやり続ける組織が学習する組織のアプローチです。

学習する組織のアプローチ ※本セミナー投影資料の一部

 

withコロナという波を、学習する組織で乗りこなす 講演者:アーティエンス株式会社 迫間

変化の激しい時代を、学習する組織がつくれたことによって乗りこなしている事例を具体的にご紹介しました。

組織変革をするにあたって必ず起こる衝突や対立(否定と破壊)が起きながらも、組織を変革するために現在もファシリテーター育成を行い、進み続けています。 ※本セミナー投影資料の一部

こちらに掲載している資料はセミナー投影資料の一部となります。

他にも多くのスライドを使って説明していましたので、全てご覧になりたい方は、ぜひ下記フォームよりダウンロード下さい。

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    5)パネルディスカッション

    次に、北見氏と迫間の対談を行いながら、ご参加者様からの質問にも回答していきました。

    【1】自己変容が大切だとは分かっているものの自己変容って難しいと思います。変わるためのポイントはありますか。


    <北見氏>
    どうしたら変われるのか、なぜ変われないのか、というと、変化することに対する不安や恐れ、失敗したくないなどの感情が生まれることが要因の一つで、特にリーダーなどポジションが高く成功体験を持っている場合には大きいように思います。

    現在のように先が見通せない時代に、これまでの繰り返しでは立ち行かないことはわかっていても、それ以上にリスクのある新たな挑戦に躊躇することも多いのではないでしょうか。

    失敗できない、という呪縛が強いと、これまでのやり方である程度の成果を見通せるのであれば変わらないことを選んでしまう、ということもあるようです。

    そしてまた、変えていく仲間を見いだせないことも難しくしているのではないかと思います。

    組織を見てみると、組織を悪くしようとしている人はおおむねいなくて、それぞれに考えていることはあるんですよね。だけど、何か強い力に巻き込まれてしまう。一人では、いつしか変容に向けた力を失い、自分自身を守る防衛的な態度にさえ落ちていってしまうことがあるのかなと思います。

    <迫間>
    上司が部下に「変われ」ということを言ったりしますが、上司は変われているのかというとそうでもないこともあり、変わること自体が難しいということはありますよね。

    ――変革に共に取り組む仲間を増やしていくには

    <迫間>
    今の北見さんの話に、一人ではなくて仲間というキーワードが出てきましたが、この仲間ってどうやって作っていくといいのか、ということについて、もしよければお話を聞かせて頂きたいなと思います。

    <北見氏>
    組織を変えようとするとき、あの人が変わらないから、と他責にして自分は何もしないこともありますが、一方で自責にしすぎて孤軍奮闘して自分だけ頑張って燃え尽きてしまうこともよくあるんですよね。

    私自身も実はそうで、一番最初の会社はすごく愛してたし、本当にいいものを提供していたと思うんですが、経営について少し疑問を持っていて、結果として燃え尽きて辞めました。このことをあたらめて振り返ると、孤軍奮闘していたなと思っています。

    『学習する組織』のアプローチができていなかったなって思うんですよね。
    繋がりをつくれていたら良かったなって、今では振り返ります。

    その中で私が学んだことは、構造は力を持っているので正攻法でいっても突破するのが難しい、ということです。最初から楯突いて構造に対して反発をして争っても、相手も強い力で反発してきます。

    そうではなくて、遠回りに思うかもしれないですが、自分と同じように組織を変えていきたい、良くしていきたいという問題意識を持っている人を見つけて、その人と共に外枠から働きかけていくのがすごく大事なのではないかなということを、『学習する組織』から学びました。

    個人ではなくむしろ繋がりをたどって共感をどうやって広げていくか、というやり方もあるのかなと思ったりしますね 。


    <迫間>
    今の話を聞いて、ある大手メーカーさんのことを思い浮かべました。

    現場でちょっと小さくやって、ダメだったら闇に葬れみたいなことをしてたって話も聞いたことがあるので、職場で仲間を作って小さくても行動してみるというのは、いいのかなと思いました。

    外の人と話をすると、自分の会社はダメだから変えたいというだけでなく、自社の良さに気づくこともたくさんありますよね。先ほどの講義でもお話があった、AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)もそうですが、強みが分かるとそこに焦点を当てることもできるのかなと思いますが、いかがですか。

    AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)とは:問いや探求(インクワイアリー)により、個人の価値や強み、組織全体の真価を発見し認め(アプリシエイティブ)、それらの価値の可能性を最大限に活かした、最も効果的で能力を高く発揮する仕組みを生み出すプロセスです。

     

    ――自分たちの強みや小さな成功体験を見つけて、フォーカスしていく


    <北見氏>
    迫間さん、それはその通りだと思っています。

    先日、『学習する組織』広めるSoL(ソル)というグローバル団体の講演で当社代表の小田が聞いた話なのですが、外資大手ITの立役者の方がまさに同じことを仰っていたそうです。

    組織を良くしていくことについて、私たちはどうしても課題ばかりに目を取られて自分たちの悪い所をなんとか改善しようとするけれど、でも100%ダメかというとそうではないですよね。

    よく観ると、小さくても上手くいっていることや、上手くいきそうな兆しが見つかることがあります。

    むしろ、その上手くいっていることや、過去の自分たちの上手くいった経験に目を向けて、何が上手くいくポイントになったのかについて目を向けて話し合いましょう、発見しましょうというアプローチの話を聞いたそうです。

    つい目を奪われてしまう自分たちのダメなところばかりではなく、上手くいってることに目を向けて、再現性があるか小さく回して試してみて、学んだことをブラッシュアップしていく方法は一つのやり方だと思います。


    <迫間>
    そうですね。ただ、とは言え、課題に目が行きやすくなってしまうかなと思いますので、強みに目を向けるためにどうしたらいいのかについて、今まで北見さんが見ていてうまくいったエピソードがあれば教えて頂けると嬉しいです。 外部のクライアントの方についてでも大丈夫ですし、御社の公開講座で起きたことでも大丈夫です。


    <北見氏>
    まずは強みに注意を向けることに自覚的になり意識すること。

    その強みを活かして変えることができないかを考えるといいです。

    また、組織の中には、強みを生かして自ら改善行動する方もいます。そのような方がいる場合は、その方のやり方を真似てみる、ほかでも適応してみる、ということはできるのかなと思いました。

    ――1人のメンタルモデルの変容が組織に影響を与える

    <北見氏>
    少し話がズレてしまうかもしれませんが、ひとつお伝えさせてください。

    ある会社で行われたメンタルモデルの変容の事例です。

    その会社には失敗から学ばない風土があり、そのメンタルモデルを変えていくために、あるマネージャーが行ったことです。失敗から学ぶために何をしたかと言うと、自分がミスをしてお客さまに謝らなければいけないときに、敢えて、人に聞こえる場所で謝罪することでした。

    普通は会議室など、他の人の目がないところで電話をしたりすると思うのですが、わざと他の人に聞こえるように謝ることを自分に課していたようです。そうすることで組織の隠蔽体質を変えていくことに取り組んで行きました。そうすると、段々とメンバーも隠蔽しないようになっていったようです。

    一人の行動によって、少しずつ組織風土がかわっていき、メンバーだけでなく、他部署でも同じようなことが行われるようになりました。

    何か突破しよう、勇気を持って変えようということについて、あえて日の目にさらすことができるようになると組織は変わって行くのかなと思いましたので、この事例を本日お伝えできればなと思っていました。


    <迫間>
    素晴らしい事例だなと思ったのと同時に、その事例の中で質問したいことも出てきました。

    役職が高い人がそのようなことをやると組織に素晴らしい影響を与えるだろうなというのは思いますが、日本の会社では、管理職や経営者は強くあるべきだと言われることが多い中で、その方はなぜリスクのある行動を出来たのでしょうか。


    <北見氏>
    いくつか理由はありますが、大きな要因としては経営状況が悪化していたことがあると思います。

    売り上げや利益が悪くなってくるとき、商品サービスそのものよりも、実は組織の状態がどんどん悪化することが良くありますが、この組織も同様でした。

    マネジメントとして、うまくいかない現状を突破するために、失敗から学ぶという組織風土をつくる必要があるという使命感があったのだと思います。『学習する組織』でいう自己マスタリー領域ですね。

    また、その人がリスクテイカーであったこともあると思います。この人の強みですね。

    先ほどの行動をすることによって評価が下がるとか、周りから「失敗しているじゃないか」と言われることをものともせず、やってやるんだというマインドや気質もあったと思います。

    必ずしも組織の風土がそれを支えていたかというと、全然そうではなかったので、あえて空気穴を開けてやろうっていう想いはあったのではないかなと思います。

    経営環境を何とか変えていくためには組織改革風土であり、それを使命として会社を愛していたということからかなと思います。


    <迫間>
    ありがとうございます。いまお話してくださったことからも2点質問したいことがあります。

    一つは、会社への愛情やエンゲージメントが高い状態のないのかもしれませんが、経営環境が悪化している状態でリスクテイカーの方だったら転職するという選択もできると思うんですね。どんな思いを持って仕事と向き合っていたのかっていうところも聞いてみたいなと思いました。

    二つ目は、どんなに強い人でも仲間がいないとしんどくなってくると思うのですが、周りをどう巻き込んでいったのかということも伺いたいなと思いました。


    <北見氏>
    その観点でいうと先ほどの事例は失敗例になります。

    あるところまでは組織風土が変わりましたが、本人が燃え尽きてしまい、残念ながら組織を去ってしまいました。

    なので、どうやったら組織を変えれるかというと、まさに迫間さんがおっしゃった、仲間をつくることだと思うのですが、残念ながらそこまで至らなかったというのがこの例です。

    そのため、長期に持続可能で万能な解決策ではありませんが、時間軸を少し狭めると、ある時間軸の範囲では、組織変容に向けたさざなみを立てることに貢献したとも言えるように思います。

    私もリスクテイカーが良いとは特に思っていなくて、むしろさざ波のように小さな波を立てながら、中長期に向けて組織を変えていくには仲間づくりがものすごく重要だと思うんですね。

    この事例のように、自ら行動して、それに対して反応する人を待つというやり方もありますが、自分から腹を割って話すタイプでないケースのほうが多いですね。

    その場合、仲間を見つけるためには、ミーティングや朝礼でのほかの人の発言に共感するような言葉を聞いた時に、後からでもいいので「あの話にすごく共鳴しました」ということを伝えることが大事だと思います。

    そのことを伝えることで、同じように思ってる人もいる人が、暗闇の中の星のように点々と見つかっていきます。さらに、「あの人もこう言ってたんですよ。今度少し共有しましょうか」というように点を線にして、小さな働きかけから始めていくのも一つのやり方かなと思います。

     

    【2】幹部は研修を嫌がるとおっしゃっていましたが、どのような理由からですか。これは一般的な傾向ですか。また、勉強会なら良い理由はどこにありますか。

    <迫間>

    ご質問ありがとうございます。

    まず、幹部が研修を嫌がる理由について2点お伝えしたいと思います。

    まず一つは、管理職の方は、とても忙しい方が多いので、研修をやるというと研修が通常業務にさらにアドオンされてしまうということです。

    そうすると何でこんな時に研修やらなきゃいけないんだっていう気持ちが大きくなってしまうということがあるのではないかと思います。

    もう一つは、管理職の方というのはそれなりに経験がある方なので、自分達はある程度分かってるよ、という思いも持っているのではないかなと思います。

    アーティエンスでは、お客様が反対してない限りは、研修前に簡単な事前アンケートをしていてそれを見るとどのような想いで臨むのかが結構見えるのですが、結構ネガティブなことが多いです。

    アンケートの設問の一つに「この研修と過去のワークショップに参加する率直な感想・考え・想いを聞かせてください」というような問いがあるのですが、そこには「この忙しい時に経営陣は一体何を考えてるんだ」とか「人事は現場がわかってない」などのコメントや短文で「面白そうだと思います」だけの方もいらっしゃいます。

    何かエビデンスがある内容ではないのですが、私たちの経験からお伝えさせて頂きました。

    ちなみに、この設問は意味があって、オープンになって研修に入ってもらうことを目的としています。

    勉強会とか読書会ならなぜいいのかということについては、研修というと教える・教えられるという文脈になるため、どうしても管理職の方からするとまだ抵抗があるようなのですが、本を読んでみんなで話すぐらいだったら少しライトな気持ちで、「まだそれならと」来てもらいやすいというので、そのような仕立てにしていました。

    もしこの問いや、私の回答について補足があればぜひお願いします。


    <北見氏>
    今までの経験からすると、幹部はむしろ将来の組織を支えるための研修をして欲しいと思っていることが多いですが、むしろ部長クラスに嫌がられた印象があります。

    短期成果を求めたり、あと何年と自分の退任を秒読みする管理職は、事業に関係する技能習得には協力してくれました。それも短時間の研修ですね。研修に1日2日とか取られるのはすごく嫌がられて、研修実施時期とかいろんなことをケアしながら企画したことを思い出しました。

    勉強会はQC活動の一環としてやっていました。実務に紐づくと、みなさん、やる気になってくれます。ただ、残業規制が厳しくなって業務時間内にやるようになると、業務時間を割かれるのでネガティブな反応が観られるようになったということはありました。

    研修とか勉強会のあり方は、その組織がどのように人を育成するかを考えているかにかなり依存するところが多いと思います。

    日本はグローバルに見ると、育成に関して関心が低く投資額も少ないという状態です。

    日本はOff-JTではなくOJT思考が強くて、仕事から学べっていう感覚が強いように思います。

    ただ今はリカレントラーニングや学び直しが言われるようになってきているので、まさに私たちは変革期の中にいるし、チャンスにできるかが問われていると思います。。


    <迫間>
    まさに海外と比べて日本は育成への投資額が少ないっていうところもあると思いますし、OJTに依存してるというのは結構多いなと思います。

    特に中小企業などでは、4月に新入社員研修を行ってそこからしばらく研修が無く、管理職になったら少し研修するなどの企業さんも多いです。

    OJTもOJTという名の放置であったり、現場に丸投げしてしまっていることもあるので、OJTの制度が構築されていないということも見て取れます。

    そうすると、現場と組織の分断が生まれてしまい、本当の意味での学習する組織はつくりづらくなってしまっているように感じます。


    <北見氏>
    そうなんですよね。現場と組織が分断されてしまっていますし、人材開発部門と組織部門がどのように連携していくかというところが大切になりますよね。

    パフォーマンスっていう視点から、人材開発部門はどうやって事業部門と常日頃から会話をできるようにするか、ということはとても大きな課題であり、両方が働きかけなきゃいけないことかなと思いますね 。

    <迫間>
    お互いが働きかけるということですが、OJTの構築は難しいところがあると思いますので、それよりも少しやりやすいかなというところでいうとオンボーディングがいいかなと思っていて、オンボーディングは現場と組織側を繋げるポイントとなるかなと思います。

    オンボーディングのテンプレートを作成して、新たに迎える方が1か月間~3か月でどのように成長して欲しいのかを考え、入社する仲間に対しては、最低でも、必要な予定を一カ月間はGoogle カレンダーなどの予定表に入れておくということを行うといいと思います。

    その時に組織や人事側だけで作成するのではなく、テンプレートを作ったらその後は現場でやってもらうようにします。

    ただし、現場だけでやると、渡しただけでやらないということもあるので、現場が作ったものを人事側とか組織側に送ってもらいます。

    注意点としては、組織側の方がチェックという文脈で見るのではなく支援という形で見て、組織側、人事としてできることはないかということを探していきます。そして現場との連携を取っていくというやり方は、よくお客さんにお伝えしていることになります。


    <北見氏>
    なるほど、そうですね。どうやって事業部門と働きかけて組織や人事と連携をとるかは大事ですよね。やり方については、組織のサイズや風土、関係性によって変わってくると思います。

    今回のセミナーには人事の方もお見えになられているかと思いますので参考までにお伝えします。

    プレイヤーに関する研修をやっても実際キーになるのは、マネージャーの変容だと思っています。研修までにマネジメントレイヤーにプレイヤーの今の現状の課題や期待、強みをヒアリングして、その情報をベースに研修を行います。

    その後、研修後の状況などを、マネージャーとコミュニケーションを取れる場を創ることが重要です。

    またこれらの機会を通して、マネージャーに育成の経験蓄積を積んでもらうようにして、他のマネージャー・プレイヤーや他部門にも広げたり適応したりしていくことが、組織の繋がりに働きかけるっていうことも一つのやり方かなと思ったりします。

    あと、人材開発育成施策は、経営層に対して「去年こういうことをやりました、今年はこういうことをやります」という報告は行うと思いますが、現場にはその情報が届いていないこともあります。

    そういう場合は、部長や課長層まで年次報告をしてみるというのも一つあるのかなと思います。

    去年はこのようなことをやって、それに対して現場ではどのように捉えられたのか、分かった点や課題、まだ残ってることも全部伝え、毎年の企画ミーティングによって、繋がりを組織の中で創っていくという働きかけも重要になってくるのかなと思いました。


    <迫間>
    私からもプレイヤー研修のところと、報告プレゼンのところの二つについて、お伝えできるといいかなと思いました。

    アーティエンスの若手社員向けの研修では、研修前に上司の方にポジティブインタビューをしてきてもらうようにしています。

    例えば、北見さんが私の上司だとしたら、北見さんへのインタビューとして「私に対してどのような支援をして頂きましたか?」などのようなインタビューを行うんですね。

    そうすると、どんな支援をしていたのか上司は考える機会となります。また思ったより支援できていなかったことに気が付くというようなこともありますが、育成支援への意識が高まります。そして何より、これを行うことで関係の質が高まるということがあります。

    そして、このようなインタビューがあると上司も研修で何をやるんだろう、研修頑張ってきてねというような認知になりやすくなり、その認知が根付いていくというようになります。

    報告・プレゼンのところは2つやり方があると思っていて、一つは、現場の方に研修の企画に入ってもらうということです。現場の方が入ると、変化感が見えやすくなります。

    二つ目は経営者の方が変化を見えるようにするために年表を作成するということです。

    経営者の方は今と未来しか見ないので、何か変わったとしても昔からそうだったよという認知で捉えてしまう所があります。

    なので、世の中の流れと、組織で行ったこと(新商品の発売や売り上げなど)そして、人材組織開発として実施したことを年表として書いてみると、変化が可視化されるので「これが効いてこうなってるかもしれないね。だから次回はこうしてみよう」ということを話しやすくなるのかなと思います。


    <北見氏>
    確かに研修と言うと、構えてしまって、お金がかかるとか時間も取られると思ってしまいがちですが、形を変えて現場に馴染むようなやり方を考えるのは必要かも知れませんね。

    現場は育成について悩んではいるのですが、その課題と研修が繋がっているように感じていないこともあるかもしれないので、同じ土俵で自然と会話できる状態にして考えていく、という方法はあるのかなと迫間さんの話を聞いていて思いました。

     

    <迫間>
    北見さんが講演の中で氷山モデルについて話して頂きましたが、私は、対話は一つのきっかけでスタートだと思うんですよね。小さくてもいいのでそこから仲間を作っていくのも一つの方法だと思っています。

    例えば、サーベイをきっかけにされるのもいいと思います。ただ、サーベイもファシリテーターの方がいないと、数値の高い低いという成績表で見られてしまいがちなので、その数値から見える背景とかを対話を通して考えて頂けるといいのかなと思います。そこが学習する組織の入り口になるきがするんですよね。

     

    【3】新規事業のプロジェクトにて離職やメンタル不調などが発生し、HRBPとして組織に介入することになりました。新事業開発は不確実なことが多く上手くいかないことばかりです。その中で事業化に向けてみんなで乗り越えていくために「学習する組織」にヒントがあるのではないかと考えています。小さくはじめていくとしたら、どこからアプローチするとよろしいでしょうか。

     

    <北見氏>
    本当は詳しくお話を伺えるといいのですが、この文面だけ見ると、すごく厳しい組織の状況がありながらも、なんとか新しい世界を開けようと組織に働きかけをされようとしておられるのかなと感じます。クライアントとの関係がどうか分かりませんけれども、一つは解決を急がないということがチャレンジかなと思いました。

    もちろん離職とかメンタル不調っていうのは、既に傷ついている方々がいらっしゃるのでそこは対処しなければいけないと思いますが、対処療法ばかりに目がいってしまうと短期施策ばかりになってしまうんですよね。

    なので今の現実をどのように皆が捉えているのか、という事実に向き合うっていうことがまずスタートになるのかなと思いました。

    学習する組織のアプローチでは、もちろんビジョンをみることをやっていくんですけれども、理想とするところを見るためにもまず、今起こっている現実は何なのかという構造を確認します。

    私が学習する組織で目からウロコだったことの一つは「構造は力を持つ」ってことなんですよね。もし、メンタルダウンとか離職がパターン化して起こっているのであれば、つまり、組織として望ましくない構造を生んでいるかもしれないと見立てられるのであれば、 関係者と共にこの構造を生み出している原因は何だろうか、ということをインタビューや対話、社員のメンタルモデルなどを紡ぎあげて現実を見ることが大切なのかなと思います。

    もしかしたら、組織は早く新規の事業を作ってほしいと思っているかもしれないですが、現実を見ることは時間が掛かります。

    時間は掛かりますが、腰を据えて現実に起こっていることを見ていくのも、チャットの内容を見ると大事なのかなというように思っています。システム思考の素養をお持ちであれば、そこから始めてもいいですし、重要なのは、対話の中でいかに腹を割って話ができるかかなと思います。

     

    <迫間>
    私も北見さんと全く同じ意見ですね。

    学習する組織の誤解されるところは、まず自己マスタリーを見て、共有ビジョンを描いてからなどから始めないといけないように思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではなくて、まず現実を見ることから始めるというのは私も重要だなと思っています。

    私の方からは、ご質問頂いた方と少し似ている状況の事例をお伝えできるかなと思います。

    コンテンツビジネスを行っている企業さんで、メンタル疾患による離職が増え、ストレスチェックが悪かったので管理職研修を行いたいという連絡を頂きました。

    システムズ図を描いていくと、経営陣からの発言から新規サービスいっぱい生み出していたのですが、そうすると失敗が増え、諦めが増え、離脱が増える、また諦めが増えると挑戦への気持ちがなくなって成功体験への依存が強まって守りの姿勢になり、個人での抱え込みが増えてストレスになり離職するという流れが起きていました。

     

    システム図

     

    このシステム図をお客さんと一緒に作成し、現実を見たうえで、アーティエンスとして支援できることを短期的・中長期的の視点から考えていったということがありました。

    詳しくは下記のコラムをご覧頂ければと思います。
    管理職研修を成功と失敗に分けるポイントとは? ~「組織が変わる管理職研修」を実施するために~

    なので、北見さんも仰っていたように、まず初めのアプローチとしては現実を見るということを行うのがいいのではないかと思います。

    6)登壇者からのメッセージ~登壇を終えて~

    最後に、ご参加頂いた方に向けてメッセージをお伝えします。

    北見氏

    お忙しいところにご参加いただいた皆さま、また残念ながらお時間の都合が許さなかった方もいらっしゃるかと思います。ご関心をいただいたことに感謝とお礼を申し上げます。

    『学習する組織』は、書籍で理解しようと思うと、大変厚く、翻訳本で読むとどうしても読みにくいところもあり、難しさを感じる方も多いのではないでしょうか。私もその一人でした(苦笑)

    今回のアーティエンスさんとの共催セミナーでは、現実の職場やチーム、組織で『学習する組織』をどう実践していくかのイメージをもっていただくことを意識しましたがいかがでしたでしょうか。

    ピーター・センゲは「Lead」の語源「leith」のもともとの意味を、「境界を超えて一歩を踏み出すこと、そしてその一歩を妨げるあらゆるものを手放すこと」と紹介しています。(『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー』)

    この機会が、皆さまの問題意識や課題への取り組みの一歩に役立つようでしたら嬉しく思います。

     

    迫間

    時間の関係上、お伝えしきれなかった部分もありますが、本日の内容が少しでもお役に立てたら嬉しいなと思います。

    学習する組織の哲学は素晴らしい考えだなと思いますが、私自身も今でも難しいと感じます。当社も、学習する組織を通して、常に探求しても向き合っています。

    本日の内容を参考にして、学習する組織により関心を持っていただけると嬉しいです。チェンジ・エージェントさんとのコラムや学習する組織入門は読みやすいと思いますので、そこからスタートしていただくといいかもしれません。

    学習する組織は、自分自身も、組織も、世の中も豊かにするものですので、本日の内容をきっかけに小さな一歩を踏み出していただけると嬉しいです。

     

    7)ファシリテーターを育成するために

    アーティエンスではファシリテーター研修を実施しています。

    「会議では何も決まらないことが多い。もしくは決まったことが実行されない」
    「自身や自チーム・自部署のことを優先して部分最適になっている」
    「上層部が全てを決めてしまい、現場社員は指示待ちになっている」

    このような課題を抱えている方におススメです。

    会議・勉強会などでの対話・議論の扱い方としてファシリテーターのベーシックスキルを学びます。

    アーティエンスが大切にしているシェアドリーダーシップを体現しているプログラムになります。 ご一緒に、自組織と向き合い、素晴らしい未来を創っていきませんか?

    組織改革でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

    社内ファシリテーター育成のご案内 社内ファシリテーターが増えることで何が起きるのか

     

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