2022/7/6作成ー
23年卒の内定を徐々に出し始め、内定者フォローの対策を検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、内定者フォローの目的に合わせた対策をご紹介します。
内定者フォローが必要な理由は、「内定辞退の防止」、「早期退職の防止」、そして、「入社後の活躍のために重要となるオンボーディングの時間を増やす」、という大きく3つの理由が挙げられます。
就活生は複数の企業で求職活動を行っているため、現在の内定企業より希望度の高い企業から内定が出ると当たり前ですが内定辞退が起こります。
内定辞退は例年、内定式のある10月にピークを迎えています。
※参照:就職みらい研究所 就職プロセス調査 (2023年卒)「2022年5月1日時点 内定状況」|株式会社リクルート
人事のミカタの調査によると、内定時代の理由の多くは、環境や制度に関するもののため、人事のみで対応することは難しいことが多いです。
しかし、だからと言って対策を行わなくていいかというとそうではなく、3番目の理由として30%の人が回答している「他社での先行が通過した・内定が決まった」ときに自組織を選んでもらえるようにするために、少しでも候補に残るため方法を検討することは必要です。
※参考:辞退の心理 [増補改訂版] 選考・内定辞退を減らす!すぐ真似できる16の手法も紹介!|人事のミカタ by エン・ジャパン|エン人事のミカタ by エンジャパン
なお、他社と判断する際に内定者は口コミサイトの情報を判断材料とする場合もあります。
会社評価の口コミサイトは、人事の方も定期的にチェックし、自社に対する口コミ内容を把握していただくことをお薦めします。
口コミサイトに書かれている内容と事実が異なることもあるとは思いますが、内定後も口コミから不安や懸念を感じていることも多くあります。
企業から正式に出していない情報にもアンテナを張り、必要に応じて正しい情報をお伝えしたり、事実である場合はフォローをすることも考えましょう。
企業に対する安心感は、内定辞退の確率を少なく抑えることに繋がります。
内定後の期間を活用することで、早期離職の防止に繋げることもできます。
近年、新卒1年目以内で転職する人は珍しくありません。
厚生労働省が公表した2021年度の新規学卒就職者の就職後3年以内の離職状況によると、新規大卒就業者の1年以内の離職率は10.6%とのことです。
ビズヒッツ社の「転職理由に関する意識調査」によると、早期離職の主な原因は次の通りです。
※参照:新卒1年目の転職は厳しい?転職理由やタイミングを381人にアンケート調査
これらは特に、内定者のイメージと現実にギャップが大きいほど離職に直結していきます。 このことをリアリティショックと言います。
※当社Growth Meeting 2021年12月の投影資料より抜粋
例えば、長期労働であるかとか、有給が取りづらいということを事前に知っていて、そのことを理解した上で入社した場合は、内定者と現実の差が小さいため、そのことが原因で離職に繋がる可能性は低くなるということです。
内定者が企業に抱くイメージと現実をすり合わせていくことを、内定後のフォローとして行うことができると、リアリティショックが小さくなるため早期離職を防ぐことに繋がります。
もし、現実を伝えていく中で、内定辞退が増えた場合は、採用の際にお伝えしている内容と現実に差がある、ということになりますので、採用で伝える内容の見直しを行ってみてください。
企業として、就活生に対してより魅力的にみえるようにしたいという思いは十分理解できますが、その後、早期離職されてしまうのであれば意味がありませんし、採用コストも割高になります。
就活生や内定者がイメージとのギャップで苦しむことがないように魅せ方や伝え方には注意が必要です。
最後は、入社後に活躍してもらいやすくするための土台作りをしておくということです。
新入社員は、学生生活から大きく環境が変わり、新たにたくさんのこと学ぶことになります。皆さんも経験している通り、環境が変わることによる負担はとても大きいもので、慣れるまでに時間が掛かります。
この慣れるまでの期間を内定者フォローである程度行っておくと、環境の変化が緩やかになり負担が軽減され、その分業務に集中しやすくなるということです。
例えば、IT企業であれば、入社時に新入社員のITスキルを均一化するために、スキルの無い新入社員に対してフォローする支援を行う会社もあります。
また、会社に慣れてもらったり、適性に合わせた配属ができるようにとインターンを実施して入社前から一緒に業務を行う、ということを実施している企業もあります。
ディスコ社による2019年の調査を見てみると、内定期間中に課題や研修があったという方は全体の74.6%、そして課題や研修の内容として多かったのは通信教育でした。
このように、内定者フォローは内定辞退の防止、早期退職の防止、そして、入社後の活躍のために重要なのです。
ここまでで内定者フォローの重要性が理解できたかと思いますので、続いて具体的な対策案をいくつかご紹介します。
内定者フォローの対策は、企業によってさまざまあるかと思いますが、今回は次の3つの目的にそった対策をご紹介します。
同期の繋がりという横の関係を作ることは、仕事を進めていく中で相談しあえたり、助け合う関係性になるために必要です。
特に、配属して同期と同じ場所で働く機会が少ないと余計に、それまでに横のつながりを作っておく必要があります。
同期同士の繋がりを強めるためにおススメな対策は、
です。
同期同士が自由にコミュニケーションを取れる場所をつくっておくと、自発的なコミュニケーションが生まれ、仲を深めることができます。
人事を含めた内定者のグループも、連絡事項のために作成されている方もいると思いますが、それとは別に、内定者のみでのグループもつくることをお勧めします。
人事とまだ関係性ができていないと、発言がしにくくなってしまうためです。
さらに人事がおぜん立てするというよりも、内定者同士でできるような導線を創るとよいでしょう。
例えば、入社までにグループワークで課題を出すと、グループごとにオンラインチャットができ自然と会話が生まれるようになります。
ランチに限定しなくてもいいのですが、一緒の時間を過ごす時間を意図的に作ることで、接点を作ることが目的です。
まだ関係性が築けていないうちは、コミュニケーションが取りやすい対面で行えるといいのですが、ご時世的に難しい場合は、オンラインでも行うことができます。
指定の時間までにそれぞれでご飯を用意し、オンラインツールを繋ぎながらご飯を食べるというやり方になります。
ご飯を食べながらなので、雑談が生まれやすくなる、というのが特徴です。
お題を決めて、ブレイクアウトルームを活用したり、先輩社員に参加してもらうこともいいでしょう。
内定式は対面で行う企業もあるかと思います。
内定者同士が対面で会う機会は少ないので、この内定式の機会は活用しましょう。
内定式におすすめなワークショップは、内定者同士や社内の雰囲気を知るためのワークショップです。
例えば、
などが考えられます。
続いて、組織風土を知るための対策をご紹介します。
具体的には
・先輩社員に1日密着(シャドーイング)
・先輩社員との交流会
がおススメです。
人事が新入社員のローモデルとなって欲しい方の仕事の様子を密着するという内容です。
1日密着してもらうことで、仕事の進め方はもちろん、会社の人とどのようなやり取りをしているのかなども見ることができ、自分が仕事をしているイメージを持ちやすくなります。
密着も、もちろん会社で実際に仕事をしている後ろから見ることができると、他の社員の方の様子も見ることができるため一気に会社の雰囲気を感じることができます。
しかし、それが難しい場合は、新入社員のローモデルとなって欲しい人の1日に密着した動画を撮影して見てもらい、見た後に感想や質問を共有する時間を作ることができると、会社の雰囲気を知るきっかけになります。
新入社員のロールモデルとなって欲しい方と内定者が自由にコミュニケーションを取ることのできる交流会を設置するのもおススメです。
内定者の8割は内定後も不安を抱えた状態だと言われています。
※参照:【内定者1,004人の意識調査】77.2%の内定者が入社に向けて不安を抱えていることが判明|新着情報|人材育成・社員研修|ラーニングエージェンシー
内定者が気になることを自由に質問してもらい、内定者の不安を解消すると共に、その中でリアルな仕事の話を先輩から伝えてもらうと、社会人として働くイメージを持ちやすくなります。
また、先輩社員と交流することで、憧れやロールモデルになる人が見つかると、目指す人が見つかりモチベーションに繋がります。先輩社員との関係性を高めると、何かあったときに相談できる相手として安心感も持てるようになるでしょう。
これら2つの対策を行う上で注意して頂きたいのは、できる限りオープンにそのままを見てもらう、ということです。
仕事は楽しいだけではなく、苦しいことも辛いことも大変なことも起こります。
これはどの企業でも同じです。
そのため、できる限りオープンにありのままを見てもらい、内定者が思い描いている何となくのイメージの社会人から、より現実的な社会人や、働き方のイメージを持ってもらえると、内定者にとっても心構えができるようになります。
最後は、働く準備を目的とした対策です。
対策案として下記のようなことが考えられるかと思います。
インターンとして働いてもらうことで、コミュニケーションやメール、電話の対応などを身につけてもらうことができるようになります。
また、実際に先輩方と業務を進める中で、仕事の雰囲気や関係性も築くことができます。
組織にある程度慣れた状態で新入社員として参加することができるため、リアリティショックや環境の変化による負担が少なくなり、業務に集中しやすい環境を作ることができます。
ただ、1点注意しなければいけないのは、インターンと社会人の切替をしっかりと行う必要があることです。
そうでないと、インターンから何となく肩書だけ社会人となったものの、インターン感覚が抜けなくなってしまいます。
インターンから社会人としての意識変化は意図的に行うことは覚えておいて頂きたいです。
入社前に長期インターンを実施しながらも、学生から社会人の意識変革がスムーズに行った会社様の事例を下記にご紹介いたします。
自組織だけではなく社会で通用する新入社員育成 ~ベンチャー企業を選んでくれた新卒一期生への感謝を込めて~株式会社one様
働くための準備として、課題を用意することも場合によっては内定者に安心感を与えることに繋がります。というのも、内定者は自分が仕事についていけるのか、ということについて特に不安の感情をもっているためです。
(出典)【内定者1,004人の意識調査】77.2%の内定者が入社に向けて不安を抱えていることが判明|新着情報|人材育成・社員研修|ラーニングエージェンシー
仕事についていけるかを不安に思っている内定者にとっては、仕事の準備をしておけるということが不安を軽減することに繋がります。
社会人として読んでおいて欲しい本を課題図書として出したり、専門的な職種で業務内容がある程度分かっている方に対しては、そのスキルを高めるための勉強や資格の取得などを課題としても良いでしょう。
ただし、不安を解消できる内定者の方もいれば一方で、課題が負担に感じてしまう方もいます。
そのため、課題については必須ではなく、任意で行うことなど負担も考えて、計画することが重要です。
社会人として必ず必要になる基本的なビジネスマナーやスキルを身につけてもらうためのワークショップを行うことも、社会人としての心構えをしやすくなります。
ワークショップ形式で行うことで、同期の横の繋がりを強くすることもできることもポイントです。
このワークショップを行う場合は、ポイントとなるのがタイミングです。入社から早く実施してしまうとせっかく学んだことを忘れてしまいますし、社会人としてのプレッシャーを感じてしまいネガティブに感じてしまう方もいるかもしれません。
社会人となるのが楽しみだなと思える内容で、適切な時期を考えて実施を検討してみてください。
ここまで様々な対策をご紹介してきましたが、自組織で実践してみたい対策はありましたか。
今回ご紹介した対策を元に、自組織にフィットした方法を考えていけると良いですね。
今回ご紹介した対策の中でも
はワークショップ形式になり、企画がとても大切になります。
ワークショップの企画について難しさを感じていらっしゃる方もいると思いますので、皆さんで一緒に時間をつくって企画を創るための勉強会をご用意しました。
この勉強会には、様々な企業の人事、経営者の方が参加します。自組織にフィットしたワークショップを考える際に、他社が実践している事や他社の方の考えがヒントとなることが往々にありますので、新たな視点を持って企画をすることができるようになるかと思います。
また、人材開発・組織開発の専門家にすぐに質問することもできますので、企画をスピード感を持って考えることもできます。
ぜひ一緒に内定者フォローのためのワークショップを創りませんか?
ご興味のある方は、ぜひこちらから詳細をご覧ください。
◆勉強会概要
テーマ:自組織にあった内定者フォローのワークショップを作ってみよう
日時 :2022年8月25日(木)13:00-14:30
場所 :オンライン(ZOOM使用)
参加費:1000円
※ お支払いいただいた参加費は、Peatixの手数料を除いた上で、慈善団体に全額寄付します。
詳細・お申込:https://artience0825.peatix.com/
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手間やコストをかけてせっかく採用した内定者も、入社前に辞退してしまうことがあっては採用活動が水の泡となってしまいます。
また、前準備もなく、いきなり会社に入ってしまうと、入社前のイメージや理想とのギャップが大きくなり、早期離職に繋がる可能性も高まります。
そういったリスクを軽減し、入社後の新入社員の成長と活躍を後押しするためにも、内定者へのフォローは必要不可欠です。
しかしながら、ただ定期的にコミュニケーションを取ったり、会社の情報提供を行うだけでは、効果的な内定者フォローとは言えません。
今回の勉強会では、内定者向けワークショップの企画をテーマに、企画時に抑えたいポイントや具体例などをお伝えしながら、自組織と内定者の未来へと繋がる内定者フォローについて、探求していきたいと思います。
◆このようなお悩み・想いをお持ちの方におすすめです
・23卒の内定者フォローについて情報収集・検討している人方
・内定者辞退を防止し、入社後の早期活躍に繋げていきたい方
・「組織をより良くしていきたい」「その人らしく活躍できる人材を育成したい」という想いを持った仲間とつながりたい方
◆メインファシリテーター
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アーティエンス株式会社 代表取締役 迫間 智彦
2010年にアーティエンス(株)を設立。「学習する組織」や「シェアドリーダーシップ」の哲学・方法論をベースに顧客との共創・協働を大切にしている。自身も組織変革ファシリテーターとして従事。顧客の未来を考えて、今必要なものを共に探求し、実践することをポリシーとして持っている。 |
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アーティエンス株式会社 菊地 大翼 大学卒業後、アルー株式会社に入社。法人研修の営業・コンサルティングに従事。主要クライアントとして、主に大手生命保険会社、大手証券会社、大手グローバルメーカー、大手エンターテイメント企業など、幅広く担当し自社内でトップの売上を達成。その後、商品開発部に異動し、新規商品の企画開発業務に従事。成人発達理論を活用した研修や、オンライン研修プログラムなどを開発。現在は、組織人事コンサルタントとして、人事制度の構築支援、成人発達理論をベースにした人材開発や組織開発コンサルティングに従事している。 |