2022/6/24作成ー
2022年6月7日に『【Z世代の若手社員向け施策】エンゲージメントを育むために人事は何ができるのか』をテーマに、東京経済大学コミュニケーション学部准教授 小山健太氏をゲストにお招きし、キャリア開発に取り組むOriginal Point(株) 代表取締役高橋氏、リーダーシップ開発に取り組むアーティエンス(株) 代表取締役 迫間の3名で共催セミナーを開催しました。
人事の方から、Z世代に対してどのように従業員エンゲージメントを上げたらいいかわからないというお話をよく聞くようになりました。
今まで以上に、
「言われたことはやるけれども思いや情熱をもって仕事をしない」
「帰属意識が弱くチームへの働きかけが弱い」
「組織の一員として当事者意識が弱く、主体的に動かない」
というような課題意識を持たれています。
withコロナ、VUCAという変化の激しい時代の中で、若手社員の従業員エンゲージメントをどのように育んでいけばいいのでしょうか?
本セミナーでは、東京経済大学コミュニケーション学部准教授 小山健太氏、キャリア開発に取り組むOriginal Point(株) 代表取締役高橋氏、リーダーシップ開発に取り組むアーティエンス(株) 代表取締役 迫間と共に若手社員の従業員エンゲージメント向上についてパネルディスカッションや質疑応答を通して考えていきました。
当日は、以下のアジェンダでお話をさせていただきました。
講演後にアンケートにご回答頂きましたので、一部感想をご紹介します。
ご参加者の皆さまが興味を持たれていたZ世代の理解や、パネルディスカッションで共催セミナーならではの様々な専門家からの視点の回答について特に良かったと感じて頂けたようです。
アーティエンスのセミナーでは、その場で出てきたものを大切に扱っておりますので、参加者の皆さまが今知りたい情報をできる限りお伝えするようにしています。
ご登壇頂いた方をご紹介します。
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小山 健太 人材育成学会奨励賞(研究部門)受賞。キャリアコンサルティング2級技能士(国家資格)。 |
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高橋 政成 |
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迫間 智彦 |
セミナーでは、パネルディスカッションに入る前の前提情報として、エンゲージメントの育み方、
Z世代の傾向、キャリアの考え方に関する情報をお伝えしました。
エンゲージメントの育み方を考えるにあたり、エンゲージメントの定義の確認や、エンゲージメントに関連する人と組織の関係性の移り変わり(カンパニーセンタードからピープルセンタード)についてお伝えしました。
※本セミナー投影資料の一部
高橋氏からは今回のテーマとなっている、Z世代を取り巻く環境と特徴についてお伝え頂きました。
オリジナルポイント社の調査によると、Z世代のエンゲージメントを高めるポイントとしては、利他的な想いや仕事に対しての志をどのように醸成するかがポイントになる、ということが分かったという独自の研究についてもご紹介頂きました。
※本セミナー投影資料の一部
小山氏からは、育成するにあたって、どのような考えを持てばいいのかについてお伝え頂きました。
よくある考え方として、Will,Can,Mustが交わる仕事を見つけましょう、という考え方がありますが、この考え方はキャリア論のなかでは比較的古い考え方であり、またジョブ型雇用に親和性があります。
しかし、日本企業では入社後に多様な仕事経験から成長をすることが必要であり、そのためには、むしろリアリティショックを通して成長するというダイナミック型キャリア論の考え方が重要になるというお話をして頂きました。
※本セミナー投影資料の一部
こちらに掲載している資料はセミナー投影資料の一部となります。
他にも多くのスライドを使って説明していましたので、全てご覧になりたい方は、ぜひ下記フォームよりダウンロード下さい。
セミナーではご参加者の皆さまからたくさんのご質問を頂きましたので、頂いた5つのご質問についてご回答致します。
<高橋氏>
いかに早くいい上司に出会うかが、大事なポイントなのかなと思っていますが、苦手な上司になったことがあるという方は40%にものぼるデータもあるようです。そのため、上司ではなくてもハイパフォーマーな上司の一人の1日に密着した動画を撮影して見てもらうのがいいのではないかと思います。
動画を見て、密着している上司に対して質問を投げかけることで自身の中での良い仕事の仕方について理解が深まっていくと思います。
また、オリジナルポイントがご支援している企業の中で「マイテーマ」という、短期スパンの仕事におけるテーマを設定して更新していこうという取り組みを行っています。
マイテーマを設定してもらうと、新入社員の場合4-6月ごろは自身の成長をテーマにしたものが多いですが、1年後半から2年目には顧客に対してどうするか、ということを掲げている人が多いです。これを見ると、自然のうちに利己から利他に変わっていくのではないかと思います。
<小山氏>
コロナ禍での生活を余儀なくされたためにアルバイト等の経験も少なく、相手の立場にたつという経験が極めて少ない人も多くいます。
ただ、逆に言うと、これは経験数の問題ですから、仕事を通じて「相手の立場に立つ」という経験を意識的にしていくことで、自然と利他の精神は芽生えてくるのではないかと思います。
<高橋氏>
入社前に仕事観察をどれだけできるかどうかがポイントになると思います。
小山さんとリアリティギャップ調査の中で、リアリティギャップを感じず成長している人が入社前にどのような情報に触れていたのかを調査しました。そうすると、社員のリアルな仕事の様子や会社の風土を理解していたことがわかりました。
また、神戸大学の金井先生も、キラキラした背景にある、ドロドロした過程を伝えると、その後の離脱率に変化が見えたとおっしゃっていました。
そのため、採用時に会社や仕事としてのしんどい部分をどれだけ赤裸々にできるのかがポイントになるのではないかと思います。
<小山氏>
高橋さんと同意です。
専門用語でRJP (Realistic Job Preview)という言葉があり、これは採用選考の段階で仕事の厳しさや辛さを伝えることを意味します。
ただ、多くの日本企業はジョブ型ではなく、いわゆるメンバーシップ型ですから、ROP(Realistic Organization Preview)という造語を作ってみました。
ROP、つまり組織文化や組織風土について良いことも改善すべきことも伝えた上で、働きたいと思える組織にしていく必要があるのかなと思います。
<高橋氏>
転職者のほとんどが組織に本音を言って退職しないと言われています。
なので、そもそも本当に賃金が理由なのかということはあるかと思います。
もし本当に賃金が理由だとしたら、転職が当たり前の時代になっていて、転職したほうが給与が上がっていくというイメージを持っている人は多いので、その認知が影響しているのかもしれません。
ただ、職務内容と賃金の歓迎は個々によります。
組織として、業務支援はやれているけど、キャリア支援はできていないことも多いので、上司・先輩が日常の中でどれだけフォローできるかがポイントになるのかなと思います。
<小山氏>
ハーズバーグは、仕事に対する満足をもたらす要因と不満足をもたらす要因があることを示し、前者を動機づけ要因、後者を衛生要因と呼びました。
このとき、職務内容は動機付け要因になりますが、賃金は衛生要因で、賃金を上げても動機付けにはならないことになります。
そのため、もし本当に賃金を理由に辞めたのであれば、職務内容の魅力を伝えきれて無かった可能性があるかなと思います。
職務内容について、Z世代の社員が腹落ちするような支援をすることも、キャリア開発支援の一つとして大切です。
仕事をできるようにするための支援だけでなく、本人にとって自分の仕事の魅力を認識できるようにするための支援(キャリア開発支援)もしている上司だと、その部下の若手社員はエンゲージメント高く働けているように思います。
<迫間>
衛生要因があまりにも下回っている場合はやりがい搾取になってしまうので、人事制度を整えることが大切です。賃金が競合他社と比較して著しく低くないかは確認する必要があるかなと思います。
ただ、賃金は動機付け要因にはなりませんので、人事制度や評価制度、賃金を自組織のカルチャーとどう合わせていくかは考えていくのがいいのかなと思います。
<高橋氏>
他の質問の回答と重なるところもありますが、ロールモデルのキャリア観に触れることかなと思います。
Z世代の社員にとってロールモデルとなる社員の働きぶりを観察すること、そして、どのように利己から利他に変わっていったのかを聞くことによって自然と利他的になっていくことが多いです。
キャリア支援と聞くと、コーチング的なアプローチをイメージしがちですが、上司が語ることも支援になります。
あとは、1on1などの対話の中で、仕事をいかに前向きに捉え直すか、を育むことも利己から利他に変える要因になるのかなと思います。
<小山氏>
先程、迫間さんの説明でもありましたが、今の人と組織の関係はピープル・センタード(※)です。
※従来の会社を中心に捉え、会社の論理に個人を当てはめていくような「カンパニー・センタード(企業中心)」の考え方から脱却し、働く一人ひとりの能力や個性、人間性を中心に考える「ピープル・センタード(従業員中心)」な企業経営へとシフトしていく必要性が高まっている。
このときに、個人の価値観と会社のバリューをいかにすり合わせていくのかが大切になります。
ジョブ型雇用の場合は採用のときにすり合わせをすることができますが、メンバーシップ型雇用の場合は採用のときに細かい業務内容についてすり合わせるところは難しいです。
ただ、日本は部下と上司のコミュニケーションを通じてアサイメントを決めることができる場合が多いので、Z世代の社員が自分の価値観を仕事の中で発揮できるようなアサイメントを設定できれば、自然と利己的から利他的になっていくのではないかと思います。
<迫間>
高橋さん、小山さんが仰っていたように、個人と組織のビジョン・バリューを統合していくことがエンゲージメントに繋がるところになるのかなと思います。
あと、統合よりは話が少し小さくなりますが、弊社では相互作用のところで自利利他を扱うことも行っています。「利他になってください」と言っただけでは何も変わりませんので、リーダーシップ(周囲への影響力)を発揮することを意識してもらうことも良いかなと思います。
例えば、アーティエンスでは日報で、自分が与えたポジティブな影響・ネガティブな影響は何か、自分が受けたポジティブな影響を書いてもらうようにしています。
自分の言動がどのような影響を与え、どのように自身に返ってきているのかを体感できると、自分の事だけでなく周りを見れるようになります。成人発達理論では縦の成長と言われていますが、人としての成熟度を扱っていくと利他的になりやすいと思います。
<高橋氏>
難しいですよね。全ての案件が本質的な所に繋がっていくのかというと、色んな事情や背景によって、繋がらないことも事実あるのかなと思っています。
その時に、Z世代の若手社員が見切りをつける前に、こちらが気付けるかが大事になります。最近の若手は本人の中で意思決定して、その後フォローが出来なくなることも多いためです。そのためにも関係性に気付いておくというのはとても重要です。
若手社員が抱える違和感に対して共感しつつ、上司がどのように乗り越えたのかを伝えられると良いのではないでしょうか。
<小山氏>
新入社員・若手社員は未熟なために、本質を見抜けていないこともあるし、フレッシュな目だから気付ける本質もあるかもしれません。
既存のメンバーからすると前例踏襲の方が楽で、変えることの方が心理的コストが掛かるので、歴史が長い企業ほど、何となく前例踏襲でやってきている部分もあるのではないでしょうか。
もしかしたら本質的でないことをやり続けている可能性もあるので、Z世代の意見を活かして組織変革をしていくのは重要な視点なのだろうと思います。
その時に、Z世代の若手社員の発言について、「わがまま」と「本質的な指摘」を組織側が見抜く目を持つことが大切だと思います。
そのなかで、本質的な意見があれば、ぜひ若手社員の視点を活かして組織改革をできるとよいですね。
<高橋氏>
組織をつくっているのは自分たちでもあるよね、ということで、OODAループというフレームワークを使って、組織に対する自分事の意識を考えて頂く機会はポジティブに働くのかなと思います。
組織の違和感、不満と向き合って、それに対してどのように解決していくかを考える機会を意図的に設計することが大切なのではないでしょうか。
<迫間>
若手社員の負担と負担感を見ていただきたいです。
負担は、仕事の難易度が高すぎたり、単純に抱えている仕事の量が多く残業があることなどで、負担感は、営業やりたくないのにやらされているなど精神的に辛い仕事があるために負担が重く感じられている、ということです。
これらを整理して、調整することは、管理職の役割になってきますし、トレーナーも状況を把握して、管理職に報告することは必要になります。
あとは、小山さんが仰っていたように、フレッシュな人が本質的であることも往々にしてあります。
異質の目が入ると、組織の当たり前が違うということも起こり得るので、本質的なことの場合は受け入れて歓迎できると、組織もアップデートしていけるのではないかと思います。
ただ、わがままとそうでない事の見極めは難しいと思いますので、1on1や対話を通してZ世代の若手の話をしっかり聞いて、保留しながら、どうしていったらいいのかを、若手社員と共に考えていけるといいのかなと思います。
最後に、ご参加頂いた方に向けてメッセージをお伝えします。
本日はありがとうございました。
最初の三年間で働く原点を作れるかが大事だと思っていて、しんどいことがありながらもポジティブな気持ちで終えられると社会人の次のステップや働くことに対するモチベーションも保てるようになると思いますし、逆に最初の3年間が上手くいかないと、そのままズルズルとネガティブな転職が続いてしまうこともあるのかなと思います。
若手社員の方には、自分たちの社会人生活の土台を創ってもらうことを大切にして欲しいですし、その3年間の中で組織や自分と向き合う機会については人事の皆さんにデザインして頂る部分かなと思いますので、本日の内容がそのためのヒントとなれば嬉しく思います。
本日はありがとうございました。
インタラクティブに会話できて楽しかったです。新入社員の従業員エンゲージメントは凄く深いテーマだなと感じました。
最後に皆さまに問題提起したいのは、今の大学3年生の事です。
今の大学3年生はコロナ禍によって、入学式もできず突然オンライン授業で大学生活が始まった学年で、友達がつくれていないとか、大学生らしい生活を出来なかった人も一定数いるのではないかと思います。
この世代を新入社員として迎え入れて、育成していくにあたっては、あらかじめ心づもりと戦略を立てておく必要があると思います。
また、その下の学年も、高校2,3年のときに一斉休校を経験している人が多く、部活が出来なかったり、大会がなくなったり、修学旅行や運動会がなくなったりなど、チャレンジ経験や、仲間と頑張るという経験ができなかったという環境を過ごした若者が多くいます。また大学になってからも、講義を受けるだけの経験しかしていない場合、チームワークやチャレンジ経験が極端に少ない可能性もあります。
このような社会問題について、人事・組織としてどのように取り組むのかが今後重要になってくると思いますので、少しずつでも考え始めていただければと思います。
VUCAが加速している中、私たちも、コロナジェネレーションについて凄く調査して、新入社員育成をどうしたらいいのかを考えています。
今までの成功体験を私たちがどれだけ手放せるか(アンラーニングできるのか)が肝になってくると思いますので、また皆さんとこういう場で交流できることを楽しみにしております。
本日はご質問もいただき、私自身にとっても有意義な時間となりました。ありがとうございました。
アーティエンスでは若手フォロー研修を実施しています。
アーティエンスの若手フォロー研修では、インサイドアウトを促し、自身がどうありたいかを考えるきっかけを作ることができます。
自身がどうありたいかを考え、その上で、現場で実際にどのように行動するのかを決めてもらうことで、研修後「周囲へのポジティブ・インパクトを与え、会社と向き合う」状態を目指しています。
そのように主体的に行動することができるようになると、離職率低下やエンゲージメント向上にも影響があります。
若手社員の育成に対してお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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