2022/6/21作成ー
本内容は、2022年6月9日に開催された「関係性構築力研修」の公開講座研修レポートです。
(参加受講者 : 新入社員・若手社員、参加企業数:6社、参加人数:43名、8グループ、対面型1クラス)
目次
関係性構築力研修は時代に合った内容にするため、本年度からアップデートしました。
関係性構築力を目的とした研修は、ただコミュニケーションのHOWを渡すケースも多くみられますが、現場で習ったHOWを活用して上手くいく場合も上手くいかない場合もあり、上手くいかないと行動変容の継続が難しくなります。
特に最近の若手は習ったHOWを使って上手くいかないとその後やらなくなることも起こります。
そのため、アーティエンスの関係性構築は、自分のあり方(be)や自分がどういう存在かを見ることを通して、自分が周りにどう影響を与えているのかを知ってもらうことから始めます。
そしてその後、相手がどうあるかを見に行くという流れになるよう設計しています。
以前から自分のあり方を見つめるワークは入れていましたが、今の新入社員・若手社員たちの特徴に合わせて、自分を知る時間を強めたところがアップデートポイントです。
・今は人間関係に悩んでいないけど、今後、人間関係について悩むことがあると思うので、その時に備えて学んでいきたい。
・色んな人と関わる仕事なので、関係性は重要になるかと思います。
・堅くなってしまうことがあるので、周りの人と堅くなりすぎずに関係性をつくれるようになりたいです。
・自分は結構一人歩きしがちなので、違う方向に向かっていたら引き留めて欲しい。
・関係性をつくるためには、自己開示も大切だと思ったので、もう少し自分のことも話していけるといいのかなと思いました。
・他人に関心を持つことが重要だと感じました。自分は営業なので、営業のときに活かして行きたいと思います。
・思い込みによって良い関係性がつくれなくなってしまっていることもあるように感じたので、思いこまないということは意識したいです。
・しっかりと話し合うことで良い関係を築けるのではないかと思った。
研修を通して、関係性を築くことで仕事の質も良くなることを理解し、また、どのような言動を取ると関係性を構築することができるのかをしっかりと学んでくれている様子が分かります。
研修に入る前に、前回の研修から今日までの自身の行動や意識について振り返りを行いました。
アーティエンスではパルスサーベイGrowthを提供していて、受講生の多くの方にも実施して頂いているため、Growthの結果を見ながら振り返りを行っていました。
【グループワーク内でのコメント】
・学び続けることは出来たかなと思います
・モチベーションが落ちてきているので、どう維持すればいいかが悩み
・上司の期待が高くて、自分の技術とのギャップが辛いなと感じる
【全体シェアでのコメント】
どういう風に伝えたらいいかを今日学んでもらえると思います。伝えるに当たって、そもそも関係性を構築するのも大切なので、それも学んでもらえると思います。
どっちにもメリットデメリットがあります。同期がいない方はこの場に集まっている人を同期と思ってもらえたらと思います。
質問しづらいということについては、質問したい内容によって、このことはこの人に聞く、という人を決めておくのも一つの方法です。
専門的なことは分からないと思うので、分からないでいいと思いますが、自分の想いなどは発信したほうがいいですね。私はこれを大切にした方がいいと思います、ということは、意見として伝えることができると思います。
カフェで話しているような感覚で、グループを入れ替えながら次の3つのテーマについて対話をしました。
対話を通して素晴らしい関係性を構築するためにできることを、他の人の意見によって視野を広げながら探して頂けていたように思います。
対話を行った後、対話によって気付いたこと・発見したこと・モヤモヤしたことなどを踏まえて、自分自身と上司・トレーナーの関係性の位置を可視化しました。
名前などの記載はしませんでしたが、新入社員の認知としては、上司・トレーナーとの関係性はよいという方が多いという結果になりました。
ただし、この後のワークで、言語化できていなかった上司・トレーナーとの関係性に対しての不安・不満が出てきました。
その中で「気付いていない気持ちに気付けた。見ないふりをしていただけだった。今気づけたのはよかったし、ちゃんと向き合いたい。」という話も出てきていました。
自分が大切にしている価値観と、それによって周囲との関係性に与えたポジティブ・ネガティブな経験を思い出すワークをおこないました。
大切にしている価値観について、このようなコメントがありました。
・大切にしている価値観:愛情
愛情によってお互いに気を遣わない関係、居て気を遣わない関係はつくれるのかなと思う一方、人によっては距離が近すぎるという方もいるのかなと思う。
・大切にしている価値観:心の安定
心が安定しないとすべてにおいてやる気が出ないので大切。心が安定してなくて仕事に集中できないと仕事においてもネガティブな影響が出てしまう。
・大切にしている価値観:余裕
心の余裕とか精神的余裕が無いと人にきつく当たってしまうため。精神的にも行動的にも余裕をもって動けることがポジティブな影響で、余裕を持ちすぎると、大丈夫でしょと思って納期がギリギリになってしまうこともあるのがネガティブな影響かなと思う。
自分がどういう価値観を持っていて、今どういう状態かを知っておくことは重要です。
何においてもポジティブ100%ということはなく、必ずネガティブな面もあるので、自分の価値観が周囲にどのような影響を与えるかを考えられると良いです。
育成で起きるシステムを理解してもらい、その後仕事の中で自身がネガティブな感情になった場面に対して、自分はどう捉えていたのか、そして上司・トレーナーはどう捉えていたと思うかを考えてもらいました。
ワークをやってみての感想として、次のようなコメントがありました。
・フィードバックでモヤモヤした感じが無かったので、もう少し疑問に思うことが出てきたらいいなと思う。
・トレーナーが優しくしてくれていて何でも言い合えるいい関係を築けていることを感じた。いい関係だからこそ、忙しいのに聞きすぎて迷惑してるのかなという思い込みがあった。
意識的に自分とは異なる視点で物事を捉えることで、感じ方に変化が出てきた方もいるように感じました。
判断を保留することで判断の質が上がり、好循環の育成システムを起こすことができることをお伝えし、その後自身と上司・トレーナーのゴール、そして、両者のゴールを考えてもらい、上司・トレーナーがどういう人なのかを良い悪いの判断をせずに、保留するという体験を行いました。
このワークを行ったあと、次のような感想がありました。
【全体シェアの内容】
最終的には聞かないと分からないけど、上司は何を思っていたんだろうと考えることが重要です。判断の質が上がって⇒観察の質⇒傾聴の質⇒関心の質が上がるようになっていきます。
上司の期待に答えるではなく、期待を超えることを意識してもらうといいです。期待に答えようとすると、正解を探すようになってしまうからです。期待に応えることは大前提で、期待を超えることを意識すると、自然と成果がついてくるようになってきます。
期待していないと上司はフィードバックしないです。フィードバックは傷つけるものではなく、皆さんの未来を切り拓いていくものなので、自身で成長の糧にしてもらえたらと思います。
どうすれば気持ちよく話せるのか、気持ちよく話してもらうためにはどうしたらいいのか、そして、相手から話を引き出すにはどうすればいいのか、を体感してもらうために次のワークを行いました。
実際に体験してみて、次のような感想が出てきました。
・何も反応が無いと自分に無関心なのかなと不安になる。迷惑に思っているんじゃないかなという気持ちになった。2回目はもっと話したいなと思ったし、自然と笑顔になれると思った。
特にオンラインは意識して表情をつくらないと伝わらない部分もあるので、オンラインで仕事を行う際はより意識できると良いと思います。
人の話を無視し続けることに辛さを感じている方も多く、反応がないことの虚しさや、話を聞くために意識したいことをそれぞれが気が付いていたように思います。
個人ワークで次のことを考えてもらった後、上司・トレーナーと素晴らしい関係性をつくるために今一番話したいことを考え、上司・トレーナーと素晴らしい関係性をつくるための行動指針・アクションプランの策定をしました。
自分たちで話したいテーマを自身で決め、グループを分け、行動指針・アクションプランを作成してもらいました。
※ OST(オープンスペーステクノロジー)の哲学を大切に、一部内容を活用し、対話を行いました。
■「理想の部下になるために」
<講師からのコメント・問い>
成長に繋げていることが素晴らしいです。
ただ、理想の部下になることだけで、皆さんの未来は明るくなりますか?
会社から求められる要件に答えていく必要はありますが、自分がどうありたいかも大切なので、そこも一緒に考えられるといいと思います。
■「相談しやすい環境、雰囲気作りをするために私たちはどう行動していくか」
<講師からのコメント・問い>
相談しやすい環境を自分たちでつくる、という想いが素晴らしいのと、施策も抽象と具体が考えられていて良いと思います。
ただ、関係作りにはタイムラグがあります。すぐに上手くいかなかったときにどう耐性を整えるのか、どうやったら取り組みを続けられるか、というように上手くいかなかったときのことも考えて頂ければと思います。
■「仕事以外の一面を知ることで、より深い関係性に!!」
<講師からのコメント・問い>
確かに相手のプライベートを知ることで関係性が深まることがあります。
しかし、自分のプライベートなことを話したくない人もいると思います。1,2,3の連動性を考えてもらえるとより良くなりそうかなと思います。
■「互いに自己開示しましょう!」
<講師からのコメント・問い>
「期待されたいけど、期待されすぎると困る」という矛盾に向き合っていることが素晴らしいと思います。
この課題については、自分だけでどうにかしようと思うのではなく、上司・トレーナーと一緒に進めていく(共創・協働)意識を持つといいのかなと思いました。
■「仕事の方向性・目的の再確認‼」
<講師からのコメント・問い>
テーマ設定が素晴らしいと感じました。アジャイル的に動くことは今特に求められているので、良いと思います。
気になったのは具体的に質問する事の中身が仕事の方向性とキャリアビジョンが混ざっていることです。
そこを分けて考えると、分かりやすくなるのではないかなと思います。
■「先輩と本音で語ろう‼」
<講師からのコメント・問い>
環境をつくるときに、話しやすい人からアプローチし、職場の課題と向き合うのは、組織を変える一つのポイントになります。素晴らしいなと感じました。また、悩みや課題をポジティブに捉えている所も良いと思います。
しかし、皆さんの影響力は今はまだそこまで高くないと思うので、より影響を与えていくにはどうしたらいいかも考えられるといいのではないかと思います。
■「私たちのこと…どう思っていますか⁉」
<講師からのコメント・問い>
率直なコミュニケーションが素晴らしい。ランチに誘ってもらえると上司・トレーナーは嬉しいと思います。
この発表を聞いていると、私のことを知ってください、というよりフィードバックが欲しいのではないのかなと思いました。自分のことを知ってもらわないとフィードバックできないということもあると思いますが、そこを組み合わせられるとより豊かな時間を過ごせるのかなと思います。
■「あなたの夢は何ですか⁉」
<講師からのコメント・問い>
相手の夢を知ると皆さんが支援できることもあるかもしれないので、素晴らしいなと思いました。
しかし可能性として、質問した方から「自分は夢が無い」とか、「現実はこうだからね」と言われることもあるかもしれません。その時に未来が不安になってしまうこともあるかもしれないので、過去の成功体験を聞いてみるといいかもしれません。過去の成功体験を聞くことで、自分の夢を掘り起こし、気付くことができる場合もあります。
■「夢・価値観 聞かせてください」
<講師からのコメント・問い>
上司・トレーナーの過去や価値観のことを知ろうとしているのは素晴らしいと思いました。
人間性は知れるかもしれませんが、記載してくれている互いにコミットしあう関係を作りたいということも目指すのであれば、今回の行動指針だけでは難しいのではないでしょうか。お互い助け合い、目標を共に達成するにはどうしたらいいかを考えて頂けるといいかなと思います。
■「自分のコトを知って欲しい!!」
<講師からのコメント・問い>
キャリアのことを考えているのが素晴らしいです。
皆さんに知っておいていただきたいのは、偶発的計画性理論という考えです。
これは、自分の意図していないキャリアの方向に進んだとしても、そこにどれだけ対応できるかによって自分が想像しなかった素晴らしいキャリアが築かれることもある、という考え方です。
自身の期待と異なるキャリアを進むことになった場合にどう向き合うかも考えてもらえるといいかなと思います。
研修で学んだことを現場に繋げてもらうための振り返りシートを記載し、グループでシェアして頂いて終了となりました。
ブリッジシートを一部ご紹介します。
本公開講座では、新入社員・若手社員の方に参加いただきました。
新入社員の方は、4月は8時間の研修に参加するだけでも集中力や体力が持っていない感じを受けましたが、今回は考えることが多いワークが多かったものの、最後まで集中力を持ったまま、参加している様子をみて各々4月から様々な経験をされたんだろうなと感じました。
会社によっては、研修期間の方、配属された方もいらっしゃいましたが、お互いの状況をシェアすることで視野が広がり、自社や自分を俯瞰して見つめることが出来たのではないかと思います。
若いときは、自分視点が強くなりますが、有名な実験である『The Invisible Gorilla(目に見えないゴリラ)』の動画を見てもらった時に、認知への感度があったように見えました。
「自身が注意している事しか見えていないことがある」、「自分が見えているものが、他者は見えていない」ということを体感し、視野を広く持つことを意識してもらえたのではないかと思います。
時間が経つにつれ、研修前半には出てこなかった不安や不満が出始めました。
「採用時に話していたこととの違いへの不満」、「理不尽な上司・先輩への不満」、「希望ではない配属への不満」、「配属後、仕事についていけないのではないという不安」などが見られました。
ワークを進めるにあたって、不安や不満に関して、社会人・組織人として当事者意識を持ちながら、主体的に向き合う方も増えていきました。
これらの不安や不満を乗り越えていくために、最後にお伝えしたことは、二つです。
・キャリアのほとんどは、自分では選択ができない場合が多く、そこに適応していくことで、素晴らしいキャリアが描けると言われている計画的偶発性理論・キャリドリフトという考え方があること
・当事者意識と主体性がなければ、自身の素晴らしい未来は開けていけないこと
新入社員・若手社員のあり方・働きかけで、本人にも周囲にも、ポジティブな影響は与えていきます。
ただし組織としても、新入社員・若手社員と向き合うことも重要です。
本研修のテーマである、関係性構築はとても難しいものです。
コミュニケーションスキルを少し学んだとしても、大きく変わらない場合が多いですし、テクニックだけに溺れると、そのことが透けて見える場合も多くあります。
新入社員・若手社員自身も成長していくことも重要ですが、上司・組織も変容していただけるととてもうれしく思います。
人との関りで、自身の世界は広がりますし、人生は豊かになります。そして社員が他者や外の世界とのかかわりが広がれば、組織としても、世の中との関わり方が変わります。
関係性構築を起点に、素晴らしい世界を広げていただける方が増えることを願っています。
本研修の内容及び22年度新入社員研修のご案内資料は、下記よりダウンロードいただけます。
ご興味をお持ちの方は、ぜひダウンロードください。
※同業者からのお申し込みはお断りしております
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