2022/6/13作成ー
2022年5月17日に『優秀な若手ほど辞めてしまう会社で何が起きているのか―数値で見る若手社員の離職理由と事例―』をテーマに、リファレンスチェックのback checkで有名な株式会社ROXX 代表取締役の中嶋氏と共に共催セミナーを開催しました。
目次
新型コロナウイルスによって下がっていた求人数が回復傾向にあり、転職市場が活気を取り戻していますが、優秀な若手社員の離職を防ぐために、フォロー施策を行えているでしょうか。
やっと採用できた新入社員が成長し、'いよいよこれから'というときに辞めてしまう。
今回のセミナーでは、このような状態を防ぐために、アーティエンスがこれまで約500社以上の中堅・中小企業の方々と共に組織に向き合ってきた中で見えた若手社員の離職理由から、どのような対策が必要なのかを考え、実際に若手社員の離職率低下&組織エンゲージメント向上した事例をお伝えしました。最後には、ROXX社の中嶋氏とともに質問にも応えていきました。
当日は、以下のアジェンダでお話をさせていただきました。
講演後にアンケートにご回答頂きましたので、どのような意見があったのかご覧ください。
若手社員へのフォローが必要だと考えている方が多いことが分かりました。
若手社員に対してフォローをしないといけないことは理解しているが、具体的に何をすればいいかに悩んでいらっしゃる方が多かったのではないかと思います。
「本講演があなた自身にとって有意義なものだったか?」という問いに、「とても良い時間が過ごせた」~「良い時間ではなかった」という5段階で回答いただいたところ、以下のような結果となりました。
88.6%のご参加者様より「とても良い時間であった・良い時間であった」とのご回答をいただきました。それぞれの選択肢を付けた理由コメントをみていきます。
俯瞰的に考えることのできる様々なデータや、具体的な事例が特にお役立て頂けたようです。
具体的でリアルな事例のご紹介
・理論と実例の両方の側面から解説いただき、非常にわかりやすくためになりました。
・実例も交えて頂き非常にわかりやすかったです。質疑応答の時間も長かったので、他社の質問から学ぶことも多くありました。
講演に主体的にご参加頂く方が多かったため、短い時間の中で、自組織の課題やこれから取り組みたいことを具体的に考えて頂けました。
ぜひ小さなところからでも、実践して頂ければと思います。
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2010年にアーティエンス株式会社を設立。リーダーシップ開発・組織開発を専門に扱っている。自身も講師・ファシリテーターとして登壇し、研修サービスの企画・運営や組織開発サービスを提供。 お客様企業・受講生の未来と今を考えて、必要なものを共創することをポリシーとして持っている。 |
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1992年、東京生まれ。 |
セミナーでは、具体的な数字を用いながら、若手社員が離職してしまう理由をご紹介し、アーティエンスが実際に若手社員の離職に課題を感じていた企業様とどのように向き合い、改善していったのかを具体的にお伝えしていきました。
講演前半は、弊社の調査を含め、様々な研究データを元に、若手社員が離職してしまう理由をご紹介しました。データを見ていくと、「成長したいから辞める」という若手社員の考えと「成長に必要な失敗を避ける」という若手社員の傾向とが対立していることが分かりました。この対立関係をどのように統合していくかが鍵となります。
講演後半では事例をご紹介しました。今回ご紹介した事例の企業様は、「採用では優秀層と言われる新入社員が入社するが、現場のメンバーを見て幻滅し、3年~5年で退職してしまう」という課題があるという状態から弊社との協働によって施策を企画し実行した結果、エンゲージメントが高まり、3年後あたりで若手社員から「自分の会社の商品に誇りを感じる」というような声や「自分の会社が好きだ」というような発言が生まれる、というような状態に変化した企業様です。
今回ご紹介した企業様以外にも様々な事例がありますので、ご興味ある場合はこちらからご連絡ください。
また、セミナー投影資料は下記フォームより無料ダウンロードいただけます。
セミナーではご参加者の皆さまからたくさんのご質問を頂きましたので、頂いた12つのご質問についてご回答致します。
※回答は、基本弊社代表の迫間がしております。なお当日の内容をもとに要約、また補足内容も追記しております。
【回答1】
どのタイミングから実施するか、というご質問ですが、一番大切なのは企画(デザイン)になります。
そのため、企画を丁寧に行えるだけの時間を、確保する必要があります。これは、各組織ごとに変わります。
そして、具体的な内容やスケージュールは配属先の部署に行っていただくことが重要です。
配属先に具体的な内容やスケージュールを行っていただく理由は、現場の当事者意識と主体性を持ってもらうためです。人事が全て用意するとやらされ感を持ってしまいます。ただし、配属先が作成したものを、人事が一旦確認する事も必要です。確認が無くなると、配属先によってオンボーディングの質にばらつきが生まれるためです。
■参考資料
中途社員の早期離職を防ぎ即戦力へ―テレワーク環境でのオンボーディング、どう支援していくべき?
【回答2】
給与の設定や福利厚生に正解はありませんので、自組織のカルチャーに合った内容にするのが良いと思います。ただ、競合他社との比較は出てくるかと思いますので、その情報は知っておく必要はあるかと思います。
ただただ給与を上げることは、私個人としてはあまり良いとは思っておりません。アンダーマイニング効果といって、それまで内発的動機で行っていた行為に対して、報酬などの外発的動機付けが行われることにより、逆にモチベーションが低減してしまう現象が起きる可能性があるためです。
そのため、目的がどこにあるのかを考えて、かなり慎重に設定をされた方がいいかなと思います。
【回答3】
マネジメントの役割は多いため、マネジメントの何を具体的に知りたいかで、回答内容が変わってきますが、共通していることで言えることとしては、withコロナになったタイミングで、管理職の役割が大きく変わってきているということです。
例えば、部下育成について、昔は上司がある程度答えを持っていて、レクチャーするという文脈が大きかったですが、withコロナやVUCAという時間の流れが早い時代には共に学んでいく、という姿勢が大切になります。
これについては参考資料としてコラムをお送りしますので、ぜひご覧ください。
■参考資料
withコロナにより激変するビジネス環境。管理職に生じた新たな課題と役割とは?
【登壇者からの回答】
離職をゼロにすることは不可能ですし、離職が無いことも問題です。離職が全くないと、組織がよどみます。いわゆるぬるま湯の状態の可能性が高く、組織としての発展性が無くなります。許容に関しては、カルチャーフィットしていない社員は、いたしかたないケースもあります。ただし、ここで注意が必要なこととしては、自組織に合わないから排除するような対応はよくありません。理由は、多様性を受け入れておらず、時代に逆行することと、また多様性がない組織はイノベーションが起きなかったり、パフォーマンスも高まらないということもあるためです。多様性がないと、さまざまな意見が出ないため、視野視点が広がらないですし、意見の衝突も起きないため、発展的なことは起きずらくなります。カルチャーフィットをしながら、カルチャーアッド(カルチャーを育む)ができる人材を探していくことが重要です。
【回答5】
成長に必要な要素(失敗・不明瞭な仕事・達成感のなさ)を避ける傾向は、過去と比較して高まっています。これは、先ほど(講演部分)で説明した内容と重なりますが、時代背景がそうしている部分もあります。
失敗を例に挙げると、世の中が、失敗を許さなくなっているということもあります。例えば、私(アーティエンス迫間)は45歳ですが、私が若手のころに個人情報保護法ができました。今のようにコンプライアンスなどもうるさくなかったので、世の中として失敗が許容されていました。今は、失敗が許されないため、若手社員も失敗を恐れます。
失敗の概念や、グロースマインドセットという考え方を知って、若手社員への育成や関わりを持つことが必要です。
<失敗の概念>
出典:「チームが機能するとはどういうことか」 エイミー・C・エドモンドソン 英知出版
<グロースマインドセット>
■参考資料
若手社員の挑戦を阻む壁とは?
【回答6】
評価(給与のみ)の不満が強い場合は、自組織の人事制度と乖離がある場合は、引き留めることは難しいですし、引き留めても周囲に悪影響を与えます。ただし、若手社員との対話で、モチベーションの源泉を把握しておくことは必要だと思います。
その点を、組織がどう扱っているかを伝えていくだけでも、若手社員の認知が変わる場合があります。
また不満がなくなることはありません。不満が無くなるときは、人が死ぬ時だと言われています。組織の課題が無くなるときは、倒産するときだと言われています。そのため、不満を解消しようとすることに注力するだけではなく、自組織のポジティブな面を、若手社員と共に見に行くことが必要です。(条件としては、最低限の衛生要因が満たされていることが条件です。)
自組織のポジティブな面を見に行く際に、なかなか若手社員に伝わらない場合もあるので、一つの方法として、他社との交流(合同研修など)を通して、自組織の素晴らしさを知ることで、認知が広がることも多いです。
【回答7】
※ モデレーターの中嶋氏が回答
ネガティブな内容も様々ですが、例えば、給与や成長によって転職したという方については、給与や成長がお互い求めている内容と合致しているかが大切になりますので、その内容を元に採用後の活躍に繋げて頂けるかなと思います。本当は何を求めているのかということろのズレが無いようにする、という目的で活用頂けるといいのかなと思います。
【回答8】
絶対行ってはいけないことは、「臭いものに蓋をする」です。「隠す」、「ごまかす」などをすると、余計組織に対して不信感が出ます。私たちがご支援した企業さまの事例で、IPOやMAで離脱があるなどでの例をお伝えいたします。IPOはIPOがゴールになっている社員もいますし、MAは混乱が生まれたり経営者への不信感で離脱するケースも多いです。一番必要なのは、起きる前に対処することです。ただし、起きてしまった場合は、その状況をオープンにして、社員と対話する場を設けるのは一つの方法です。経営者が自身の弱さや未熟さをオープンに話して、残った社員と共にどうやって乗り越えていくか、これからどのような組織を創っていくかなどを考えていきます。そのような場(ワークショップなど)を持って対応することは可能です。
【回答9】
生々しい質問ですね(笑)
組織が変わるときは、三つのパターンがあります。一つは、経営者が変わる。実際に経営者が変わったときや、経営者が研修など何かしらの影響を受けた時です。二つ目は、部分で変わる。これは、営業部や管理職などです。部分で変わると、他の部署や階層なども、変わることに対して前向きになっていきます。最後に、一人の人で変わる。これは、その人が中心になって、組織が変わっていきます。ただなかなか難しさもあるので、簡単ですが、二つアドバイスがあります。一つは仲間を創ること、そしてもう一つはプロトタイプやスモールスタートで実施して、それを拡大していくことです。
【回答10】
精神的成長と言われるもので、難易度があります。若手社員に対してのアプローチも重要ですが、それ以上に効果的なのは、組織(経営者)の成熟度や、管理職の成熟度にアプローチしていくほうが効果的です。
下記コラムも参考にしてくださいませ。
今、管理職に渡すべき'課題の分け方・向き合い方'ー技術的問題と適応課題ー
また若手社員は、視野狭窄にも陥りやすいので、他社の若手社員との対話をして、認知を広げるのは一つの方法です。自分の未熟さに気付くことも多いです。
【回答11】
会社によって、実施することは異なります。人がそれぞれ個性があるように、組織もすべて違うためです。ただし、まずちゃんとやったほうがいいのは、「採用をしっかり行う」、「人材育成やオンボーディングの企画をしっかり行う」です。
【回答12】
成長実感を持つことで、インサイドアウトを促すことができます。ただし、人それぞれ価値観があるので、成長の機会をどのように渡していくかは注意が必要です。また参考として、ワークライフインテグレーションという考え方があります。ワークライフバランスは、ワークとライフを分離しています。ワークライフインテグレーションは、統合するので、人生は豊かになってきます。
また成長には、技術的成長と、精神的成長という考え方があります。どのようにアプローチしていくかを考えていくといいでしょう。
■株式会社ROXX 中嶋氏
この度はお忙しい中、貴重なお時間を割いてセミナーにご参加いただき誠にありがとうございました。
昨今の売り手市場において、雇用の流動性は更に高まると予測されます。
・大手企業がベンチャー出身のDX人材を採用
・スタートアップが大手企業出身者を採用
いずれにしても、既存社員にはないスキルや発想力を持つ人を異業種から迎え入れるにあたって、「採用ミスマッチ」「定着から活躍推進」は永遠の人事課題です。
人事課題に直面した際に、本セミナーの内容が少しでもお役に立てることができれば幸いです。
■アーティエンス株式会社 迫間
ご質問が多く、最後メッセージが伝えられなかったので、レポートを通して、お伝えできればと思います。
若手社員は機械ではありませんので、「これをやったから、離職が無くなる」ということはありません。また離職が全くなくなることもできませんし、それはいいことでもありません。(もちろん高いのは良くありませんが。。。)自組織でパフォーマンスを上げて、周囲に素晴らしい影響を与えていただく若手社員と共に、組織を強くしていくことが重要です。
そのためには、講演の最後でお渡ししたフォーマットを使って、まずは自組織と若手社員のことを考えていただきたいと思います。
本セミナー(本レポート)の内容が、みなさんの組織の若手社員の離職低下やエンゲージメント向上につながる内容であればとてもうれしく思います。
アーティエンスの若手フォロー研修では、インサイドアウトを促し、自身がどうありたいかを考えるきっかけを作ることができます。
自身がどうありたいかを考え、その上で、現場で実際にどのように行動するのかを決めてもらうことで、研修後「周囲へのポジティブ・インパクトを与え、会社と向き合う」状態を目指しています。
そのように主体的に行動することができるようになると、離職率低下やエンゲージメント向上にも影響があります。
若手社員の育成に対してお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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また、離職を防ぐためには、採用時から、客観的な視点も含めてその人材についてよく理解しておくことも重要です。
オンライン型リファレンスチェックサービスのback checkを活用いただくと、「採用候補者の働く姿」について、一緒に働いたことのある候補者の元上司や同僚から評価を集めることで、採用のミスマッチを未然に防ぐことができます。
特に入社後のミスマッチで離職を生んでいる可能性があると感じる方は、お役立て頂けると思いますので、ぜひご検討ください。
back checkの詳細はコチラ