2022/5/19作成ー
本記事では2022年度新入社員を対象とした月に一度の振り返りツール【Growth】の4月22日〜5月6日の回答の結果(n=88/企業数11)を、回答結果の推移とともに読み解きます。
※アーティエンスでは、新入社員が力強く成長していくために必要な4つの力(業務遂行力、巻き込み力、意義付け力、成長力)をまとめて、セルフマネジメント力と定義しています。Growthは、4つの力にリーダーシップを加えた5つの力への意識を高める設問となっており、日々の業務を振り返り回答することで、セルフマネジメント力とリーダーシップ発揮を促します。
目次
下記は、2021年4月と2022年4月のGrowthの9つの設問の平均値を比較した表です。【表1】
【表1】
※ 9つの設問に対して5段階(“とてもそう思う”=5, “そう思う”=4,“どちらともいえない”=3, “あまりそう思わない”=2, “そう思わない”=1)で回答
※2021年4月n=123、2022年4月n=88
9つの設問のうち、Q7以外は全て21年度の平均値よりも低い平均値となりました。
特に、Q8・Q9のリーダーシップ発揮の意識度合いを確認する設問は、Q8:0.30ポイント、Q9:0.28ポイントと大きく減少しています。
ここで、リーダーシップ発揮を実感できている(Q8・Q9に対して4〜5(そう思う〜とてもそう思う)を付けている)新入社員と実感できていない(Q8・Q9に対して1~2(そう思わない~あまりそう思わない)を付けている)新入社員のフリーコメントを見てみましょう。
・誇れること:周囲のために良いと思ったら行動できること。申し訳なく思うこと:ときどき私がしゃべりすぎてしまうことでほかの人の時間を奪ってしまうことがあったこと。取り組んでいきたいこと:学びを続けること。
・自ら進んでアイデアや意見を出すことができることは誇れる部分です。自らの役割以上のことは果たせなかったので、そこに関する部分は申し訳なく思っています。これから周囲との意見を交わりながら、自分から率先してリーダーシップを発揮し、雰囲気を作ることなどに取り組んでいきたいです。
研修期間、グループワーク等の研修課題への率先した取り組みや、同期への働きかけに対する度合いが、リーダーシップ発揮の実感へと繋がっているようです。
今後、研修期間が終了し、現場配属となる企業も多くなるため、
現場における新入社員のリーダーシップをどのように醸成していくのかは、大切な育成ポイントとなっていきます。
リーダーシップは、学習によって身に着けることが可能な力ですが、誰かに言われてすぐに発揮できるものではありませんので、リーダーシップ開発への取り組みが不可欠になります。より詳細については、下記コラムをご覧下さい。
これから求められる新たな概念”シェアドリーダーシップ”とは ー管理職を起点としたチーム創りを考えるー
若手・新入社員ができる!リーダーシップ発揮を促す3つの取り組みとは 【Growthレポート2月】
下記は、2021年4月と2022年4月のGrowthのQ10の回答内容に出現する単語を、それぞれどちらの回答内容に偏って出現しているのかを示した表です。【表2】
【表2】
「コミュニケーション」という単語は、2021年4月・2022年4月の両方でよく出ている単語ですが、2021年4月は38%、2022年4月は62%と、2022年4月の方の出現割合が、24% 増加しています。
「コミュニケーション」が含まれている、個々人のフリーコメントを抽出すると、大きく3つの文脈で「コミュニケーション」が使用されていることが確認できました。
・コミュニケーションを積極的に取れることが自分の誇れることだと思います。ただ、グループワークでは会話が脱線してしまうこともあったので、そこが申し訳なく思いました。これからは、コミュニケーションを取るときのオンオフをしっかり切り替えて仕事に従事していきたいです。
・誇れることは発言の多さと積極的なコミュニケーションだと思います。申し訳なく思うことは、技術不足、学習の面で理解力にかけることです。プログラミングに対しての苦手意識が生まれてしまったのでそれをなくすように努力していきたいです。
・誇れること→様々な人と臆せず明るくコミュニケーションをとることができること。申し訳なく思うこと→問いかけに対し、自分の考えをまとめて意見するのに時間がかかること。これから取り組んでいきたいこと→研修中にインプットだけでなく、インプットされたことを今後の業務でどう使うか意識しながら発展させる
・社会人になって約3週間経ち、研修の際には感じなかった責任感や社会人であることを実感している。しかし、配属先での自身の力の無さを徐々に改善していきたいと感じた。また、コミュニケーションをとることが重要ではあるが、いまだにうまくコミュニケーションを取れていないので重点的にケアしていきたい。
・まだまだ萎縮しているところがあります。積極的に発言し、チームがよりよい組織となれるようにコミュニケーションを図りたいです。
・私には、まだ積極的に周囲に働きかけたり、コミュニケーションを取るということができていないと感じました。これから先はさらにコミュニケーションが大切になってくると思うので積極的な発言、コミュニケーションを取ることを意識して取り組んでいきたい
と思います。
・積極的にコミュニケーションが取れていないので、今後は改善していきたいです。
・研修中は自分の苦手な分野にも挑戦できたと思います。しかしこれから配属にあたってまだ自分にできることが明確でなく不安が大きいです。これからは積極的にコミュニケーションをとることや周囲を巻き込んで発信するなどの苦手分野にチャレンジしながら、自分のできることを見つけていって早く貢献できるようになりたいです。
・周囲や上司との積極的なコミュニケーションを意識して仕事に取り組んでいきたいと思っています。等々 他多数。
ネガティブ・ポジティブのいずれの文脈もありましたが、「コミュニケーション」への感度の高まりがうかがえます。
なぜ、「コミュニケーション」への感度が高まっているのでしょうか?
これは、新入社員研修を通して見えてきた22年度新入社員の特徴を踏まえた仮説にはなりますが、「コミュニケーションへの感度の高まりは、一種の不安の表れ」かもしれません。
研修中のグループワークやアンケートを通して、「仕事が覚えられるか?うまくできるか?」よりも「職場環境・人間関係に馴染めるか?」といった不安を抱えている新入社員の方が多い傾向にあることが確認できました。
その背景の一つとして、学生時代の就職活動が大きく影響しているのではないかと考えています。オンライン選考が主流となり、選考企業の社風を肌で感じる機会は圧倒的に減っています。
入社の決め手も「働く人・風土が自分にとって魅力的だった」「接点のあった社員にお世話になった」といった理由は以前より弱まり、「自分自身のために十分な情報提供、時間を割いてくれた」「選考がスピーティーに進んだ」など『一個人として大事にされていると感じられるかどうか』が入社を左右する重要な要素となっています。
そのため、どのような社員が働いているのかであったり、組織風土に対する理解にはばらつきが生じており、入社前のイメージとのギャップにすでに直面している新入社員もいるかもしれません。
新入社員としては、そのギャップや不安を埋めるべく、コミュニケーションを積極的に取っていきたい、もしくは周囲からも取ってほしいという気持ちが現れていることが考えられます。
ただし、新入社員が周囲とのコミュニケーションのどのような点に不安、もしくは期待を感じているのかは一人ひとり異なっています。
例えば、
当たり前ですが、コミュニケーションは一方通行では成り立ちません。人事の方々は、新入社員が感じているコミュニケーション上の不安と期待を具体的に紐解いていくこと、そして、そこから現場で想定される課題・壁を受け入れ側にも発信し、協力を得ながら、配属の橋渡しを丁寧に行っていけるとよいかもしれません。
※新入社員との具体的なコミュニケーション施策についてご興味がある方は、下記コラムも御覧くださいませ。
▶Z世代の新入社員・若手社員とのコミュニケーション、とれていますか? パフォーマンスの低下や退職を防ぐ関係性を高める施策案9選
▶新入社員・若手社員の「分かりやすく伝えるコミュニケーション」を促すために人事・上司ができることとは
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