2022/3/23作成ー
入社1年目での転職も珍しくはなくなっているこの時代、会社としてはZ世代とも呼ばれている新入社員・若手社員の離職に課題を感じている方も多いのではないでしょうか。
新入社員・若手社員の離職理由として、労働時間・環境に不満を感じていたからという理由以外にも社内の人間関係が上位に位置しています。
このコラムでは、関係性の課題や、原因として考えられること、そして具体的な施策案をご紹介します。
目次
Z世代と呼ばれる新入社員・若手社員は社内コミュニケーションに難しさを感じていて、社内での関係性を課題に感じている方が多いようです。
具体的にどういう課題を感じているのでしょうか?
アーティエンスで月1回、若手・新入社員向けに行っているパルスサーベイGrowthのフリーコメントから、コミュニケーションに関するコメントをピックアップしてみました。
しかし一方で、「社内のコミュニケーションが面倒臭い、関係性が作れなくても別に仕事はできるし…」という考えをお持ちの若手・新入社員もいるようで、そもそも人間関係を築く意思を持っていない場合もあるかもしれません。
このような状況について、人事担当者様から「若手・新入社員との関係性をつくるのが年々難しくなっている」というご相談をよくいただくこともあります。
新入社員・若手社員と組織での人間関係が上手く築けていないと、お互いにとってストレスの要因となり、パフォーマンスも低下してしまうという悪循環が生じてしまいます。
下記の図は、MIT組織学習協会協働創始者 ダニエル・キム氏が提唱した成功循環モデルを表していて、組織の関係の質が結果の質、つまりパフォーマンスに影響することが表されています。
(参照)アーティエンス 研修資料
私たちは、関係性が悪化する原因として、大きく2つのことが上げられるのではないかと考えています。
1つはテレワークの浸透により、'チームとして'フォローしあうことが難しくなったこと、 そして2つ目は、世代間ギャップによる考え方や価値観ギャップです。
2つの原因について、もう少し深く考えてみます。
テレワークによって、毎日何となく様子を見ることが出来なくなったこともありますが、大きな変化だと感じるのは、1対1の構図が生まれやすくなったことです。
例えば、新入社員・若手社員に特定のトレーナーがついていたとしても、コロナ前は、自チームや別チームのたまたま近くにいた人がフォローすることができていました。しかし、テレワークではそのような状態は起きづらく、新入社員・若手社員とトレーナー・先輩の1対1の構図が生まれやすくなりました。
これにより、新入社員・若手社員の育成をトレーナーに任せきりになってしまったり、他の人からのフォローがないことで関係性のリカバリーが難しくなったりなど、少しずつ関係性にひずみがあわらになってしまうのです。
トレーナーに任せきりにしてしまうと、トレーナーの仕事の状態によっては、新入社員・若手社員の対応に時間が割けず、コミュニケーション不足になっているが、誰も気が付けないという状態になっていることもあると思います。
また、周りからの関係性のリカバリーがないことで、関係性が悪化していても、他の先輩に悩みを相談することもできず、一人で抱え込んでしまうという状況も生まれやすくなります。
※参考 テレワークで高まる育成担当者(上司・トレーナー)の重要性。人事は何をすべき?
時代の変化が早くなり、年代によって育ってきた環境が大きく異なっていることから、お互いどうせ分かり合えないと思ってしまっていることはないでしょうか。
そもそも、分かり合おうとしていない、分かり合うことを諦めている、ということが大きな原因になります。
例えば、トレーナーや上司としては、自分の背中を見て覚えて欲しいと思っているし、それが当たり前だと思っていても、Z世代と呼ばれる新入社員・若手社員にとっては、何で何にも教えてくれないんだ、教えてもらっていないことをやれって言われてもできないよ、というような思いを持っているかもしれません。
お互いにとって当たり前と思っていることが違うがために、思いが相手に届かず、陰で文句を言いながら納得感のないまま仕事をしている状態になっている可能性もあります。
この状態が続くと、パフォーマンスが下がることも容易に想像できると思います。
あなたの組織ではここで見てきたようなことは起こっていませんか?
一度フラットな目で組織を見てみて下さい。
もしかしたら、当てはまることが多いと落ち込んでしまうかもいるかもしれませんが、原因が分かったのであれば、対策をすることができます。
これから、関係の質の高め方と具体的な対策案を見ていきましょう。
ヒューマンバリュー社によると、先ほどお伝えした関係の質には5段階のレベルがあり、基本的にはレベル1から順に関係の質が高まっていくと言われています。
(出典)株式会社ヒューマンバリュー 組織変革ファシリテーター養成コースの資料
関係の質を高めていくために、今回は3つの観点から具体的な施策案を考えていきます。
3つの観点というのは、 ●組織・チームとして、関係の質を高めるための施策案
●上司・先輩など1対1として、関係の質を高めるための施策案
●新入社員・若手社員から、関係の質を高めるための施策案
です。
これらの視点から、新入社員・若手社員との関係の質を高めるための施策案をいくつかご紹介します。
組織・チームとしてできることとしては、下記のようなことが考えられると思います。
●オンボーディング
●トレーナー制度
●ツールの導入
●コミュニケーション機会のスケジュール化
●チームビルディング研修
オンボーディングとは、新たに採用した人材を組織の一員として定着させ、業務遂行を問題なくできるようにさせるまでの受け入れプロセスを意味します。
新入社員や中途採用した社員を自組織で活躍してもらえるように、誰がいつ何のレクチャーを行うかを入社前までに明確にしておき、新しく迎える社員の1か月分のスケジュールが予め決まっているようにできることが望ましいでしょう。 新しい社員も1か月間の過ごし方が明確になり、過ごしやすくなります。
参考までに、アーティエンスで中途社員を新たに迎えたときの受け入れ準備資料を載せておきます。
(参考)アーティエンス オンボーディング資料
また、入社して1か月は毎日30分程度、振り返りや質問できる時間を取れるとよいでしょう。
始めは質問のタイミングや、誰に質問したらいいかなどが分からず、抱え込んでしまう可能性があるためです。
振り返りの担当は、様々な社員と触れ合うという意味でも、今後関わりのある方々が当番制で行えると、関係性の向上にも繋がります。
※参考 中途社員の早期離職を防ぎ即戦力へ―テレワーク環境でのオンボーディング、どう支援していくべき?
トレーナー制度として一般的なのは、新入社員・若手社員1名に対して、トレーナー1名という体制かと思います。
この体制で育成できているようであれば全く問題ないのですが、1対1の関係性でストレスが掛かっているようであれば、改善が必要になります。
最近増えているトレーナー制度としては、新入社員・若手社員1名に対してトレーナーとメンターの2名をつけたり、新入社員・若手社員2名とトレーナー2名にするなどがあります。新入社員・若手社員にとっては相談できる人を増やすことによって、多様な意見を聞くことができますし、トレーナーにとっては育成に割く割合を減らすことができます。 ぜひ自組織に適したトレーナー制度を見つけてみてください。
特にテレワークが多い組織の方に意識して頂きたいのは、ちょっとしたことを気軽に聞けるツールがあるかどうかです。 新入社員・若手社員は些細なことについて不安に思い、先に進めないことが多くあります。
そのため、どんなことでも気軽に聞いていい場をつくることが大切です。
SlackやLINEを活用している組織は多いかもしれません。
ただ、注意が必要なのは、ツールを導入しただけで、上手く使えていないという状態です。どのように使用するかが理解できていないと、せっかくツールを導入しても意味がありません。
ツールの活用方法を明確にして、できる限り1対1ではなくメンバーがいるところで会話をするなどオープンな場にできるといいでしょう。
アーティエンスでは、slackも使用していますが、oViceというツールも導入しています。コアタイムは打合せを除いて入室状態でいる、というルールだけ設け、ちょっとした質問をしやすくしています。
(参考) アーティエンス oViceキャプチャ
テレワークが増えると、気軽に話すことが難しくなり、結果的にコミュニケーション機会が減ってしまっている、という方が多いのではないでしょうか。
そうならないためにも、あらかじめ、コミュニケーションをとる時間をスケジュールとして設定してしまう、という方法になります。
例えば、定期的な1on1やオンラインランチををスケジュールに入れて確保し、必ずコミュニケーション機会を作れるようにするなどです。チームによってはその中で雑談の時間を多くとるようにして、関係の質を高めるようにしているというお話も聞きました。
コミュニケーションの時間を確保し、その中身は、チームや仕事の状況によって変化させていくのがいいかもしれません。
関係性というより、そもそもチームで仕事をするという意識を持てていない、という場合は、なぜチームで仕事を行うことが必要なのか、ということをワークショップを通して学んで頂くのが良いのではないでしょうか。
チームで仕事をする重要性を学び、その後に安心感のあるコミュニケーションの育み方を知ることで、チームに一体感が生まれ、パフォーマンスの向上にも繋がっていくと思います。
チームビルディング・ワークショップ(派遣型)についてのお問い合わせはコチラ
(参考)アーティエンス チームビルディング・ワークショップ資料
上司・先輩としてできることとしては、下記のようなことが考えられると思います。
●1on1
●新人・OJTトレーナー合同研修
1on1はトレーナーや上司が部下の成長をサポートするための時間です。
しかし1on1の時間を設けても、雑談で終わってしまったり、どのような支援を行えるのがいいのかが分からないというお話を伺います。1on1に慣れないうちは、どんな話をすればいいのかが分からないことも多いと思いますので、1on1シートを作成し、それに基づいて話を進めるやり方が良いかと思います。
例えば、目標を記載し、その目標に対しての進捗状況の確認や、目標を達成するために実施したことや困っている事を話してもらい、それに対してポジティブフィードバックと手伝えることを話せると、充実した時間になるのではないかと思います。
アーティエンスでは、パルスサーベイGrowthを実施している方向けに1on1シートを作成しています。
参考にしたい方は、ぜひ下記フォームからダウンロードしてみてください。
より良い関係を築き、新入社員・若手社員の成長を促進するためには、新入社員・若手社員とOJTトレーナーの関係性を改めて見つめ直し、新入社員・若手社員のためにできることが無いかを改めて見直す機会も必要です。
アーティエンスの研修では、他のトレーナー同士や自身が担当していない新入社員との対話を通して視野を広げ、OJTという役割についてや自分が支援できることを改めて考えて頂く時間を設けています。
また、新入社員・若手社員からOJTトレーナーへの感謝の手紙のワークによって、普段言えないことを伝え合い、関係性を深めることも行っています。
新入社員・OJTトレーナー合同研修(公開講座)の詳細はコチラ 新入社員・OJTトレーナー合同研修(派遣型)についてのお問い合わせはコチラ
(参考)アーティエンス 新入社員・OJTトレーナー合同研修 資料
関係性を高めるためには、新入社員・若手社員から働きかけてもらうことも必要です。
そのためにできることとしては、下記のようなことが考えられると思います。
●パルスサーベイ
●関係性構築力研修
パルスサーベイとは、社員の状態を把握するツールの一つです。
簡単な質問を短期スパンで繰り返し回答いただき、継続的にその数値の推移をはかります。
このツールを活用し、新入社員・若手社員に身につけて欲しいスキルに関する質問を定期的に行うことで、新入社員・若手社員に身につけて欲しいスキルを意識してもらうようにすることができます。
アーティエンスが提供しているパルスサーベイGrowthでは、セルフマネジメント力とリーダーシップという点を身につけて頂くために、下記のような設問を投げかけています。
(参考)アーティエンス Growth 資料 巻き込み力やリーダーシップに関する設問によって、新入社員・若手社員が自らコミュニケーションを取ることを意識してもらえるような仕様にしています。
既にパルスサーベイを実施している場合は、問いの中に新入社員・若手社員から積極的にコミュニケーションを促す内容が含まれているか確認してみてください。
新入社員・若手社員は、そもそも関係性を築くことの重要性を理解していないことも多くあります。仕事を行う上で、関係性が大切であることを学び、関係性を高めていく方法を知ることで、新入社員・若手社員から関係の質を高められるように動いてもらうことを期待できます。
関係性構築力研修(公開講座)の詳細はコチラ 関係性構築力研修(派遣型)についてのお問い合わせはコチラ
(参考)アーティエンス 関係性構築力研修 資料
Z世代と呼ばれる近年の新入社員・若手社員の世代の特徴として、LINEなどの会話ツールやSNSの利用により、自分が話したい人とのみのコミュニティーを作って楽しむことが多く、自分が関わりたくない人は関わらない、ということがあります。
そのため、みんなと関係性を築くことに慣れていない人も多くいるということを受け入れて、支援できることを探していただければと思います。
関係性については、お互いの問題でどうしようもないと思われがちな課題ですが、このような施策によって関係性の質を高めていくことはできます。
自組織での関係性について、課題に感じることがあればまずはその原因を丁寧に掘り下げて根幹となっている原因を探し、こちらで示した具体的な施策案を参考にして対策を考えて頂けたらと思います。
関係性が悪化していると、パフォーマンスの低さや離職も起こりかねない、重要な課題です。関係性に課題を感じている場合は、できる限り早めに対応することで、組織が良い方向に進んでいくことを願っています。
アーティエンスでは、自組織に合わせた派遣型の研修も実施しております。
関係性が良くない原因が分からないという場合や、原因は分かったけど、どんな対策が自組織にあっているのか分からないという場合は、ぜひお気軽にご連絡いただければと思います。