2021/6/16作成ー
withコロナになり、経営者・人事の方から、目標管理に関して、
「テレワークで状況が見えず、目標管理が難しくなった」
「今までの人事制度がワークしない」
「市場の変化が激しく、先が読めないのに目標を設定する意味があるのか」
といったお話を聞きます。
しかし、上記内容は、with コロナになったから起きた問題でしょうか?
「より強化された」、「顕在化した」といったほうが、正しいのではないでしょうか。
今回のコラムでは、難易度が上がってきている目標管理に関して、管理職がどのように向き合い、扱っていくかを考えていきたいと思います。
目次
まずはじめに、目標管理は、なぜ行うのでしょうか?
目標管理には、MBO(Management by Objectives)や、KPI(Key Goal Indicator)、OKR(Objective and Key Result)など多くの方法がありますが、上記の達成が目的であることは同じです。
しかし、どのやり方もただのフレームワークとして導入するだけでは、健全に機能しません。
まずは、withコロナで強化・顕在化した目標管理の問題と、その背景を紐解いていきましょう。
今回は、どの目標管理が良い・悪いではなく、目標管理の本質的な課題について、お伝えしていきます。
with コロナで強化・顕在化した目標管理の問題として、下記三点があげられます。
with コロナは、まさにVUCAと言われる世界です。その結果、「今日の正解が明日は不正解になっている」可能性もあります。
そのような状況下で、正しい目標設定はできるのでしょうか。
お客様と対峙するなかで、下記2パターンの組織が見られました。
「戦略や方針が変わり、そして作戦や戦術も変わる中で、目標が日々変わっていく組織」
「市場が変化し続けるにもかかわらず、目標を固定化し、ビジネスの実態と目標管理制度が合わない組織」
テレワーク増加の弊害として、「メンバー同士の支援・助け合い」が少なくなったというお話もよくお聞きします。
一方で、もともとチーム力が高く、支援や助け合いが多い組織・チームではテレワークだからこそ、よりチームメンバーのことを考える意識・行動が高まったというお話をお聞きします。
上記より、テレワークによって問題が加速していき、顕在化した可能性があります。
最後に、「フィードバック・評価の難しさ」です。
評価面談や1on1の際に、メンバーの日々の働きぶりや状況を観ることができていないため、フィードバックや評価ができないというお話もよくお聞きします。目標の管理方法や、人事制度などの問題もあるかもしれませんが、そもそもコロナ禍以前から目標管理が形骸化していたという話もお聞きします。
こちらも、with コロナで加速した問題ではないでしょうか。
管理職が戦略・方針の変更理由や背景を、メンバーに説明できないということがあります。
経営陣が「戦略・方針を変えたから、目標も変わった」のみでは、メンバーの目標へのコミットは高くはなりません。
もちろん、「コロナ禍だから、仕方がない」と思うメンバーがほとんどだとは思いますが、ただ戦略・方針、そして目標が変わったということを伝えただけでは、フラストレーションがたまっていきます。
「行き当たりばったりでよくわからない」、「現場の状況も分からないまま、戦略も目標も変えている」など、よく聞かれた声です。管理職は、今まで以上に、「戦略・方針を丁寧に伝えること」、また「メンバーからの提言を適切に経営陣に上げていくこと」が求められます。
テレワークによりコミュニケーションの量も質も低下していったことは、言うまでもありません。物理的に距離ができ、相手が見えない状況ですと、話しかけにくさは今まで以上になります。従来のマネジメント方法をそのまま持ちこむと、小さいアラートに気付きにくくなるため、チーム内での支援や助け合いは、少なくなるのは必然です。
テレワークにより、管理職はメンバーの状況を観る機会が少なくなりました。状況を把握するために、マイクロマネジメントをすると、管理職・メンバーともに余計な仕事が増えやすくなります。結果、目標達成のために、必要な意識・行動にブレーキがかかり本末転倒になります。
では、これらの問題をどのように解決していけばいいのでしょうか。
アーティエンスでは、パワフルな目標管理には、5つのポイントがあると考えます。
上記はどのような目標管理方法であっても同じです。
どれだけの管理職の方ができていると答えられるでしょうか。自信を持ってできていると答えられる方は、目標管理がとてもワークしているはずです。
一つ一つ見てきましょう。
経営陣から降りてきた目標を、そのままメンバーに落とすというだけでは、メンバーは目標に対して、やる気は上がらずコミットも生まれません。また受け身の姿勢が強化されていきます。
「なぜその目標なのか?」を伝えていくことが重要であり、その数字の背景にある意味を伝えていくことがポイントです。
下記2つのパターンを考えてみてください。
・「君の半期の目標は、売上5,000万です。昨年は4,500万だったから、昨対110%でよろしく」
・「君の半期の目標は、売上5,000万です。理由は、コロナの状況で120%目標は現実的ではないとい分析結果が出ています。110%の成長を行うことは、現実的だと組織は考えています。その状況を作れると、コロナ禍であっても新しいチャレンジができる財務状況になります。この目標が、組織の未来を切り拓いていきます。組織・チーム一丸になって頑張ろう」
戦略・方針の変更により目標が変わった際は、チーム・メンバーに対して背景を丁寧に説明していくことが重要です。
経営陣から説明がない場合は、管理職自身が経営者に確認をする必要がありますし、確認ができない場合は自身で意味づけをしていく必要も出てくるでしょう。
また、テレワークだからこそ、目標への意識を高めるための工夫が必要です。日報や、定例ミーティングなどで管理職からメッセージとして強調することと、メンバーからの質問や対話を通して、意味づけしていくのもいいでしょう。
目標の根拠や背景を丁寧に伝えて終わりではありません。メンバーの心に火をつけていくことが必要です。
目標を押し付けてやらされ感(アウトサイドイン)として受けとめるのではなく、当事者意識・主体性を持つ(インサイドアウト)ための働きかけが必要です。
インサイドアウトの隠喩で、よく用いられるのは、卵の例えです。
下記の写真を見て頂くと一目瞭然ですが、「中から殻を破る」ととてもエネルギーが高くパワフルです。ただし、外から強く叩くと死んでしまいます。
インサイドアウトを促すために、チームミーティングや1on1の対話から始めていくのはいかがでしょうか。
テレワークが多くなるからこそ、自チームの可能性やメンバーの強み・やりがいを、成功体験をもとに言語化していくといいでしょう。
# 下記コラムなども参考にしてください。
テレワークにおいても効果的な1on1を進め、定着させていく方法とは?
テレワークで高まる育成担当者(上司・トレーナー)の重要性。人事は何をすべき?
目標が変更されると、組織と現場の対立関係や他部署との衝突、経営陣とメンバーの認知の違いによる衝突も出てくる可能性があります。このような状況を乗り越えていくには、ファシリテーションスキルが必要です。
対立関係・衝突が生まれたときは、まず下記図のどの位置にいるのか、そしてどのように対立関係と向き合っていくかを考えることが必要です。
# 当社、意思発信ワークショップより抜粋
また、認知の違いに関しては、お互いの認知を知り、その上で解決策を探っていきます。
こちらも、ファシリテーションスキルが必要です。
経営陣の言葉、メンバーの反応を表面的に捉えるのではなく、彼らの認知(大切にしている信念や哲学など)を紐解き、統合・癒合していく、もしくは限定合理性を探していくことが重要です。
目標と自身の想いがつながり、インサイドアウトが促されたら、責任範囲を明確化していくことが必要です。
責任範囲を言語化し、明確に伝えていきます。もちろん年次や役割によって、責任範囲は異なってきます。
当社のOJT研修に、責任範囲に関して、分かりやすい説明をしている内容がありますので、ご紹介します。下記を参考にしていただき、責任範囲を伝えていただくといいでしょう。
責任範囲を明確に伝えることで、テレワークであっても、メンバー自身がセルフマネジメントを行いやすくなります。メンバーの当事者意識・主体性を育むこともできます。
管理職も、マイクロマネジメントを行わなくてもいいでしょう。また当事者意識・主体性が育まれると、部下も自身で考えるため、責任範囲があいまいな部分に関して、自分で確認したり、越境が起き、協力体制がうながされる場合もあります。
目標の説明も終わり、コミットも高まり、責任範囲も明確になったので、あとはメンバーに任せて終わり…ではありません。
目標達成を、個人のものにするのではなく、チームのものとして扱っていくことが大切です。
個人だけで目標を追うことは孤独になり、心が折れることもあるかもしれません。チームで助け合うことで、個人もモチベートされますし、想像以上の結果に繋がる場合もあるでしょう。
なぜチームで行う必要があるのでしょうか?
# 当社「チームビルディングワークショップ」より抜粋
チーム力を上げていくには、まず関係の質や心理的安全を高めていくことが必要です。それが助け合う風土を創っていきます。
チームの心理的安全性に必要な要素は、「話しやすさ、助け合い、挑戦、新奇歓迎」と言われています。
(参考)日本におけるチームの心理的安全性の4つの因子を、株式会社ZENTechと慶応義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授によって開発
「話しやすさ、助け合い、挑戦、新奇歓迎」の4つを、丁寧に扱う職場にしていく必要があります。
さらに詳しい内容は、「テレワークだからこそ求められる管理職の”チームの心理的安全性”の創り方」に記載しておりますので、こちらをご確認ください。
タムラ・チャンドラー氏は自身の著書「時代遅れの人事評価制度を刷新する」において、四半期・半期に一回の面談の評価・フィードバックではなく、「頻繁なカンバセーション」が必要だと言っています。
ここでいうカンバセーションは、ただの会話ではなく、「こまめに気軽なフィードバックを取ること」と捉えていただくとよいでしょう。
「頻繁なカンバセーション」を増やすことによって、メンバー自身が軌道修正を早く行うことも可能になりますし、自身の成長実感も持ちやすくなります。成長実感が高まると、エンゲージメントも高まり、成果へのインパクトが高くなります。
もちろん、評価面談においても納得度合いが高くなります。実際、普段からフィードバックをしているため、評価面談でのフィードバックは少なくなります。そして工数削減だけではなく、管理職・メンバーともに心的負担も少なくなります。
そして、この「頻繁なカンバセーション」の素晴らしさは、目標を達成したから終わりではなく、さらによりよくするという意識も醸成していきます。
テレワークだから、「頻繁なカンバセーション」はできないといわれる方もいると思います。その際は、仕組みに落としていくことも可能です。
例えば当社は、20年9月末にオフィスを手放し、基本テレワークです。対面で会うのは、週一回会議室を借りて、集合するだけです。それでも、コミュニケーションは、多い方だと思います。
仕組みとしては、2点行っています。
# 詳細は、「テレワークだからこそ求められる管理職の”チームの心理的安全性”の創り方」をご確認ください。
テレワークであっても、しっかりコミュニケーションをデザインすることで、「頻繁なカンバセーション」は可能です。
目標管理は、組織・個人の成長ともに、とてもポジティブな影響を与えます。ただし、扱い方を間違えれば、毒にもなります。
最近のトレンドでは、ティール組織や、アジャイルという言葉も頻繁に聞くようになりました。目標自体を無くし、管理をせずにメンバーに目標設定からすべてゆだねるとういう組織も生まれてきています。
ティール組織や、アジャイルも素晴らしいものではありますが、トレンドをただ取り入れるのは危険です。自組織にあった組織創り・目標管理を行っていく必要があります。本コラムの5つのポイントは、全ての目標管理に対応が可能です。
アーティエンスでは、パワフルな目標管理の内容も含めた半年間にわたる管理職研修を提供しております。
困難を乗り越えるチームを創る管理職の育成
withコロナであっても、テレワークであっても、パワフルな目標管理はできます。素晴らしい未来を切り拓くためにも、まずは管理職の育成から始めませんか?
ご興味がある方は、ぜひお問い合わせいただければと思います。