2021/1/19作成ー
コロナ禍になり、一年程が経ちました。クライシスと呼ばれる危機的状況に陥ると、世の中には大きな変化が起きるので、否応もなく人も組織も変わらざる得ません。
ただし、今までの文化・やり方に囚われ、なかなか変われないという話も聞きます。
例えば、2020年4月の緊急事態宣言以降、テレワークが広がったかと思えば、また毎日全員出社という状況に戻っている会社もあるようです。商工会議所の調査では、テレワークに関して30%程度が「現在取りやめている」と回答し、さらにその半分は「今後も実施する予定はない」となっています。
※参照:テレワーク導入企業の3割が取りやめ 生産性が低下、定着の難しさあらわに
お客様に、テレワークを止めた背景として理由を伺うと、「社員が自己管理できず、さぼって生産性が落ちるのではないか?」という不安や、「顔を見て話す良さが必要で、顔が見えないとモチベーション低下につながる」「コミュニケーション量が減り、自ずとミスが増える」など、さまざまなお話をお聞きします。
もちろん業種・職種によっては、今までの働き方を守らざるを得ない環境もあると思います。
しかしながら、従来の働き方に戻ってしまっている会社の中には、テレワークの導入や、新しい働き方によって起きるコミュニケーションロス、関係性の難しさなど「変わることへの恐れや諦め」から、働き方のシフトにうまく対応できていないということも多いのではないでしょうか。
本記事では、コロナ禍によるクライシスをチャンスと捉え直し、組織変革に挑む方法を一緒に考えていきます。
目次
はじめに「組織変革とは何か?」を説明します。
組織変革とは「組織文化・構造・運営方法などを常に見直し、抜本的に改革し続けること」を指します。
VUCAと言われるこの世界に対応するには、社員の成長(人材育成)だけではなく、組織も成長(組織変革)し続けなければなりません。
そのため、経営者・人事は人材育成にとどまらず「組織変革という観点」を持つ必要があります。
簡単にお伝えすると、「改善行動とは、一定の枠組みの中でのアップデート」になり、「組織変革は枠組み自体の変化」になります。
課題を明確にして、原因を突き止めて、改善していくという論理的なアプローチは改善活動であり、組織変革ではありません。
組織変革は、それまで課題として認識されていなかった、自組織の文化や価値観、成功体験を否定することもあります。その結果、今までの組織構造や運営方法自体を作り直していくことにもあります。
一般的な組織変革の進め方として、「レヴィンの変革プロセス」や「ジョン・コッターの8段階のプロセス」などがありますので、こちらも参考として簡単に説明します。
【レヴィンの変革プロセスとは】 【ジョン・コッターの8段階のプロセス】
この2つのプロセスは、表面的に捉えてしまうと、やり方に囚われることで失敗してしまったというケースもよくお聞きします。
組織変革は枠組みを変えていくため、その中では必ず否定と破壊が起きるので、HOWにとらわれず、目的と現状を丁寧に見つめ、進めていく必要があります。
次に組織変革でよく起きる失敗事例をお伝えします。
前向きに覚悟持って組織変革を進めようとしても、失敗したケースは本当によく聞きます。
お客様からよくお聞きする声としては、以下のようなものがあります。
なぜお金や時間、覚悟を持っても、組織変革は進まず失敗し、結局変われないのでしょうか?
大きく2つの理由があります。
今まで実施してきた組織変革はそれ自体、経営者や一部の人間(PJチーム、外部のコンサルタント)の押しつけになってはいなかったでしょうか?
社員全員が組織変革に対してコミットすることは通常ありえませんが、社員の多くが当事者意識を持たなければ、組織変革は進みません。当事者意識を持つための進め方が必要です。
下記は組織変革のプロセスを表した図です。
図の⇑のように、組織変革を右回りで行おうとすると、失敗します。
組織変革を起こしていくには、これを左回りにしていくことが重要です。
単純な世界・ビジネスモデルの場合には、右回りでも通用したかもしれません。
しかしながら、まさにVUCAである”with コロナ”では、左回りにする必要があるのです。
#上記は、概念的なものなので、具体的な方法は、次の3) 組織変革を起こすプロセスで説明します。
「停滞をどのように乗り越えていくか?」も、組織変革ではとても重要です。
出だしはなかなか手ごたえがあったものの、停滞がはじまり、いつしか諦めてしまうことがあります。
組織変革が停滞する理由を知り、対策を打っていく必要があります。
1)組織変革とは何か?で説明した「レヴィンの変革プロセス」や「ジョン・コッターの8段階のプロセス」は、とてもパワフルな方法ですが、失敗するという話をよくお聞きします。
例として挙げると、「ジョン・コッターの8段階のプロセス」の場合、始めのプロセスである「危機意識(緊迫感)を高める」から、すでに失敗することが多いようです。
人は恐れを原動力にして動き続けるには限界があります。進んでいく途中には「反発がある」、「フリーズする」、「コンフォートゾーン(ぬるま湯)から出られない」などの段階があります。
これは、「レヴィンの変革プロセス」や「ジョン・コッターの8段階のプロセス」を表面的に捉えていたり、コンサルタントの言われるがままシステム・パッケージを入れて失敗するケースです。
当社では、組織変革を丁寧に扱うために、下記のプロセスで進めることが多いです。 もちろんお客様の状況により、順番が前後することや異なるアプローチを行うこともあります。
さらに上記プロセスをどのように具体的に扱っているかを、「4)他社事例 ~with コロナにおいて、「変わる部分・変わらない部分」の探求~」でお伝えしていきます。
ここで、当社が2018年から組織変革を一緒に進めているメーカー様の事例をご紹介します。
「社員が主体性を発揮し、いきいき働く組織にしていきたい」という経営陣の想いから、組織変革のプロジェクトが立ち上がりました。
今までは管理職からの指示を待つ社員が多かった状況でした。組織変革を進めていくにつれ、メンバー自ら他部門へ働きかけるなど部門間の越境が起き始めました。社員の当事者意識・主体性が育まれてきました。
2020年の企画では、組織変革をより一層進めていこうとしていた矢先のコロナ禍で、新しい問題も生まれ、現場は混乱しました。
5月後半に、この状況を打破するため、経営陣と人事の方と課題を整理するためのミーティングを行いました。
まずは、「対話の場を醸成する」ために、率直に今考えていることをシェアしてもらいました。
5人の経営者のうち4人の方がとてもネガティブであり、「ありたい姿を描く」という状況ではなかったため、「現実に目を向ける」のパートに進み、一旦、コロナ禍で起きている課題を見ていくことにしました。
経営陣とミーティングをした時に出てきた課題は
この混乱を収めるために何とか緊急対応をしているが、経営者としては先を見て行動しないといけないという話になり、お客様の取り巻く環境を、共に丁寧に紐解いていきました。
そこで、経営陣と共にシステム図を創っていきました。
# お客様と対話をしながら作っているため、一部内容に飛躍のある部分がございます。
上記システム図について、簡単に説明すると「今までは、プロダクト・クライアント・財務状況などあらゆる面でとても良好で、大きな問題はなかった。だからこそ、変わらなくてもよく、またその状況に甘んじていた。社員は、昔のように指示待ちに戻ってしまっているのではないか?」という状況が浮かび上がってきました。
コロナ禍というクライシスを受け、変化への対応が弱い現実が見えてきたのです。
対話が終わった後に出てきた声としては・・・
その後も対話を重ねた結果、下記のような認知の変化が生まれていきました。
緊急対応として、混乱を収めダメージコントロールをしながらも、中長期を見ていくために、「ありたい姿」や「まず達成したい状態」を探求していくことになりました。
そして出てきた課題に対しては、真摯と向き合っていくことになりました。
システム図から、レバレッジポイント(下記課題意識を今回はレバレッジポイントと捉えています)として、下記に対応していくことになりました。
#レバレッジポイントとは、梃子の作用点。小さい力で大きな効果を生むポイントのことを指します。
まずは経営陣自身が、「年功序列による指示命令が強い状態」を解消していくために、次世代リーダーである事業部長・部長と共に、レバレッジポイントを踏まえながら、「ありたい姿」や「まずは達成したい状態」を考えていくことになりました。
ただし、経営陣と事業部長・部長は現状、「年功序列による指示命令が強い状態」であるため、「withコロナを乗りこなすための組織変革の勉強会」という仕立てで、「対話の醸成」から入っていくことになっています。 本お客様は、さらに大きな組織変革を進めるために前に進んでいるのが、とても楽しみです。
当社は、多くのお客様と組織変革をご一緒しております。
多くのお客様と悩み、共に組織変革を進めていくことを大切にしていますが、常に組織変革の難しさを感じます。
組織変革は、きれいごとでは進めませんし、抵抗も起きます。
組織変革に初めて取り組む会社様では、従業員から”社長が何か始めた”などと、冷ややかな目で見られることもあります。
組織変革を失敗した経験がある会社様では、プロジェクト開始時からやっても意味がないという声が聞こえることもあります。
このような状況で強引に進めても、失敗に終わるケースがほとんどです。理由は、今回のコラムでお伝えしたとおり、右回りの組織変革だからです。
アーティエンスでは、まずは左回りの組織変革をどのように起こしていくかをお客さまと共に対話を通して探求していきます。
with コロナは、まさにVUCAであり正解・不正解がより分からないため、強引に進めるのではなく、対話中心で組織変革を行っていく必要があります。
with コロナと言われるクライシス(危機的状況)により、社会も組織も人も変わらざる得ません。
今までの世の中の仕組みが否定・破壊される、この機会は、変わることが推進されやすい環境だとポジティブに捉えることもできるのです。
この機会を活かし、皆さまが心から望む組織創りを共創できるととてもうれしく思います。 組織変革は、ご紹介した事例のように勉強会から始めることも、管理職研修や新人研修から始めることも可能です。
もちろん丁寧に行うことは必須ですが、ライトな部分から始めることもできます。
まずは当社と対話を行ってみませんか?
本コラムを読み、組織変革に興味を持ち、研修サービスの導入を検討しているお客様に関して、「システム図を作成し、企画を共に考える」時間を無料で提供しています。
また、年に数回、組織開発をテーマとしたセミナーを行っております。
こちらもぜひ、ご参加くださいませ。 今後の注目セミナー・公開講座はこちらから