研修・セミナーレポート

「共創の探求ワークショップ」全体ダイアログレコード

本レポートは、2018年7月6日に実施された「共創の探求ワークショップ」にて、最後に実施された「ダイアログ」の様相をお伝えするものです。    

「ダイアログ」とは簡単に言うと「対話」という意味です。 
また「ダイアログ」は、会議やディスカッションのように「何か決めなくてはいけない。良し悪しをジャッジする」というものではなく、特定のテーマについて「探求」していく思考・行動を指します。      

組織・チームにおけるチームビルディング、部下育成について関心・課題感を持たれている方には、参考になる内容も多く含まれているかもしれません。    

是非ご覧ください。

    

    

Phase1
成績が出ない部下とどうコミュニケーションをとるか?

「私の会社で営業メンバーの部下が全員で6人いるんですが、3人が4月から新しいメンバーとして入ってきました。  
6人中2人が数字が上がらない状態で、そのうち1人が中途採用で年齢は24歳。  もともとは動画制作会社から今の会社に営業として転職してきて4か月経つんですが、なかなか1件目のお客さんが取れなくて・・・。  
こちらからも話しかけたり個人面談を近くの喫茶店でしたり、ランチに行ったり、会社メンバーで飲みにも行くんですが、なかなか自己開示をしてくれなくて困っています・・・。    

「最近どう?」って聞いても、基本「大丈夫です」とか「そうですね」という返事ばかりで、あまり話が広がらなくて・・・。  
しかも仕事がうまくいってなくて・・・共創とは話がずれちゃいますが、最近の悩みでどうしよう・・・と思っているところです。」

「労働時間はどれくらいなんですか?」
「うちは完全に定時上がりで9時~18時ですね。」
結構忙しいと人の話を聞かなかったりするのでそういうコミュニケーションになりがちですよね。」
あまり忙しくはないと思います・・・。  
営業の新規のテレアポは1日50件かけることにしていて、割と緩い方だと思うんですよね。不動産会社とかだと1日200件とかかけなくちゃいけないですし。」
その人にとって先が見えない状態なのかもしれませんね。  
「大丈夫?」て聞かれると、「ちゃんと仕事やっているのか?」と問い詰められているように感じちゃうのかもしれません。」
「僕も新規の営業したことあるんですけど、結構辛いですよね。 その辛いのが大丈夫な人とそうじゃない人もいると思いますが・・・」
「非常に感覚的なんですが、その部下とは壁がある感じがするなーと思っていて・・・ 
会社の他の方ともあまり話す感じじゃなくて、会社内でも孤立しているみたいで。  
本人も自覚していると思うんですが、その壁をどう破っていくか、1人対全員で破っていくとなると難しいな・・・と思っていて。  
どうやったら打ち解けられるのか、会社とその人にとっての壁をなくせればと思うんですが・・・    

一般的に見れば大丈夫じゃないと思うんですが、本人は「大丈夫」と言ってしまうので。 
「大丈夫?」と聞くと「大丈夫」と返ってきてしまうので、それ以外の引き出し方が必要なのかなと思いました。」

「もう少しその部下について伺いたいのですが、その人は男性と女性どちらですか?」
「女性です。」
「その方の転職をしたきっかけとか背景が知れるといいですね。」
「もともとは動画制作の会社で、前職は深夜まで働いたりと時間的な拘束が強くワークライフバランスが全くとれなくて転職したそうです。  
私の会社は広告代理店なので、動画で広告制作したこともあるということで、興味をもって面接に来てくれました。
面接の際は、営業の仕事なのでテレアポがあることも伝えていて、その上で本人もチャレンジしてみたいということだったんですよね。    

面接の時は明るくてよく喋るしいい子だったんですが、入社してみたら「この子暗いぞ、思っていたのと違ったな・・・」と思ってしまって(笑)」

「もともと明るい人じゃないのかもしれませんね。(笑)」
「もしかしたら入社する前と、実際に入社してからでギャップがあったかもしれませんね。(笑) 
営業が大変なのはわかってたけど思っていたより大変だぞ、という認識があったりとか。そういう認識のずれがなかったかは確認してみた方がいいかもしれませんね。  

その部下は1日のテレアポの必要件数はこなしていて成績があがってないんですか?」

「そうですね。」
「ということは、やり方とか、数以外のところで問題があるのかもしれないですね。」
「とても難しいんですが、その子って愛嬌がないんですよね・・・。 
なので、それって人間性の部分なので、本人に言いにくくて難しいんでよね・・・。」
「愛嬌って話が出ましたが、いい悪いは別ですが、脳の構造で人によって向いている向いてないってあると思います。  
例えば発達障害の人って面接は上手なんですが、実際はコミュニケーションが苦手だったりするので。その部下もコミュニケーションが苦手なのかもしれませんし、今の業務がその部下の不得意分野の可能性はあるのかなと思います。    

今って採用するのも(入社後のギャップがあって)、結構難しいなと思うんですよね。  
あまり言っちゃいけないんですが、発達障害があるかどうかを確認するための試験を弊社では用意していて、それを見て採用の参考にしています。」

「これから発達障害の方と働くことも増えると思いますし、なので共に働く場を配慮したり、多様性が求められていく環境になると思うので、どうコミュニケーションをとっていくのかを考える必要があると私は思います。    

今話を聞いていて特に2つ気になったことがあります。 
1つは、その部下をどう改善していくのか?という『HOW』を話していますが、もっと背景を知ることでアプローチがわかるかな、と思いました。  
2つ目は、その部下の課題ばかりを見ていて、ちょっと残念だなと思いました。多様性という側面でその部下を見るのも必要かと思います。   

その部下がどう価値発揮ができるか、そのために自分たちはどう関わることができるのか、その部下は何を求めて入社してきたんだろう、3年後どうなっていたいんだろう、部下がどうやったら幸せになるのか、という点を考えぬいていくと、もしかしたらジョブチェンジの話も出てくるのかもしれませんね。」

「今まであがった話だと、その部下=“ダメな子”というような話になっていたと思うのですが、もっとその部下がどうあっていきたいのか、を考えることが必要な気がします。  
営業の数字を追うことだけではなくて、この会社で働く意味、というのを考えてあげないと、数字のためだけの働きになってしまうとその部下も辛いのかなと思いました。」
「その子の本心を聞き出したいので、なんで話してほしいのか、どうして気にかけているかを含めて伝えるとこちらの本心も伝わるのかなと思いました。  
伝えようとしているけど相手に伝わっていないと残念なので・・・」

Phase2
部下を信じるとは?

「オープンじゃない人にオープンになってもらうために、どんなことを今していますか?」
「結構タイプが違う営業がいますが、元気な子に対しては他部署や別の島同士で話したりとかしてますね。  中には大人しい子もいるので、その子に対しては個別で喫茶店に行ったり、会議室で個別で話したりしていて、人によって選んで話しています。
「例えばその大人しい営業の子の側に成績の上がらない部下を座らせたり、手本として一緒のチームとかにするといいかもしれないですね。」
「テレアポって10回断られたら心折れませんか・・・?(笑)」
「私は全然ですね。(笑)」
「例えば、テレアポのお客さんがどうだったかとか、その部下に聞いたりしてるんですか?」
「そうですね、テレアポが長かったりするとその部下に状況聞くようにしてますね。」
「営業成績がよくないこととは別で、その子が楽しく仕事をしているかはわからないですよね。」
「仕事が楽しいか正直わからないですね・・・。  
今度質問してみようかなと思うんですが、1件も営業とれていないとなると何を楽しみに仕事しているのかわからなくて、ちょっと聞くのが怖くて・・・
「人がモチベーションを上がるときって、達成感、欲求、没頭のどれかって言いますね。  
3つ目の没頭は社会貢献になっているか、仕事に意義があるか、とかになります。」
「私の会社だと、歩いた分だけ募金をする『歩こう会』というものや、夏はキッズキャンプで職場体験的なものを社内イベントとしてやっていて、そういうイベントを運営するチームを部やチームを越えて募集してたりします。   

普段の部やチームの枠の中だけだとなかなか変わるチャンスがなかったりするので、チームが関係ないところで自分が貢献できることがあると楽しくなるかもしれませんね。」

「楽しくなったら愛嬌も出てきますかね?(笑)」
「余裕は出てくるかもしれませんね。(笑) 
愛嬌ってやっぱり余裕がないと出ないと思うんですよね~。」
「過去に自分が似てる後輩を持ったことがあります。 
僕の部下は安定している仕事につければいいや~という子で、そこまでモチベーションがなく、仕事に対する興味もなく、安定したお金があればいいや、という後輩でした。(笑)  
100%受け身で、自分で何か仕事を見つけてやったり、目標を決めたり、相手の立場に立って考える、ということをしていなくて、会社としてもダメージなので、役割だけ与えて評価する形にしてたんですが、社長からは「そいつをまずは称賛しろ」と指示されました。  
なので、ちょっとずつ部下ができることを増やしてあげながら、そのたびに部下を褒めて、部下の居場所を作ってあげるようにしてました。そうするとちょっとずつコミュニケーションも増えてきて。  
僕が仕事で大変な時にその部下が「何か手伝いますよ」と言ってくれることがあって、「そんなこと言うの!?」と思うくらいに変わってくれて。(笑)    

その部下も志がちょっとずつ高くなっていって、仕事の中で見つけたさらにやりたいことを目指して今は転職したんですが、月に一回会社に遊びに来るくらいに仲良くなりました。    

今思うと、最初は怒りがこみ上げるくらいモチベーションがない子だったんですが、でも人ってアプローチの仕方ですごく変わるんだなって思いました。」

「今の話は『インサイド・アウト』と言って、自分の中からやりたいという気持ちが育まれた話ですね。
どうして彼を信じることができたんですか?」
「僕も最初は生意気な1年生で、社長から怒られても「言っていることわからないんです」って言うような社員だったんです。(笑)  
でも、社長や総務の方が一度僕の殻を壊してくれて、相手の領域まで足を踏み込んでみると見える世界が違うんだな、と知ることができた経験がありました。  

(そういう経験もあって、)さっき話した部下に対しては、最後まで「変われるだろ」という根拠のない自信がありましたね。(笑)  

逆に今自分に課題があるのは中途の人にはできなくて・・・ 
中途で来られた人で前職の成功体験を持っている人に対して、結構考え方とかが浸透しにくいのかな、と思いました。」

「中途の人はどう信じたらいいですかね?(笑)」
「僕は『中途』って言葉が一番嫌いで。(笑) 
自分も中途で入社してきたので、『中途』って中途半端な人みたいに聞こえて好きじゃないです。(笑)    

そもそも中途と新人で分けるのもどうなのかな、って思います。  
たまたま時期が違っただけで、自分たちと違うものを持っている人達だと思うので、お互いの違いを出し合って認め合うことが必要で、人って認め合えると嬉しいし、そうすると仲間意識が芽生えますよね。  
中途の人は途中から入っているという意識が特に強いので、中にいる人たちに一緒だと思ってもらえると、安心感がでると僕は思いますね。」

「中途の人と言葉や数字や時間に対する定義がそもそも違ってたり、熱量の違いとかがあって、1つのものを目指していてもアプローチがばらばらで、求めているものが把握できないことがあります。  

新卒とは違うアプローチで相手を知る必要があると思っていますが、自信があるのかやっぱりプライドが高いので、中途の人を変化させるのが結構難しいです。」

「この前TVで見たんですが、海外だと何か一つが尖っていればいい、それが何人か集まればチームになれるという話でした。  
でも、日本って同じ人が集まっているイメージなんですよね。 なので、何か一つでも尖っているとことがあればそれでいいじゃない、という気持ちで接してあげればと思いますけどね。
一番大事な共通のミッションだけずれないで、とか。」
「私は人事なので、そういう相談を良く受けるんですが、ノウハウ的な話でアンインストール研修というのが流行ってるんですよね。   

中途の人は入社先の文化を知らない中で入るので不安も大きく、かつ早く認められたい気持ちも大きいので、前職の経験を使って早く結果を出そうとします。  なので、入社した段階で丁寧に会社の文化を説明してあげて、前職のスキルとかは一旦横においてもらって、まずは会社に馴染んでもらって、馴染んだ上で応用として前職の経験を生かしてほしい、というのを伝える研修が増えていると聞きました。   

うちの会社はそこまでできてないですが、考え方として中途社員との接し方として柔らかい伝え方を取るのは1つかなと思いました。」

「最初に話していた映像会社から転職してきた部下の子ですが、その子には同期がいるんですか?」
「そうですね、営業出身の男性2人と、新卒の女性が1人同じタイミングで入社していて、一緒に研修も受けています。」
「身近で悩みを言える人がいるといいですよね。」
「人間ってやっぱり感情が大事で、自信と感情って結びついていると思うんですよね。 
感情面を保護できる人がいればと思うんですが・・・」
「同期の新卒の子は既に成果が出てて、映像制作会社から転職してきた子にとっては自分より年下が先に成果を上げているので気にはしていると思います。」
「ビジネスの場の発想じゃないかもしれませんが、人の成長は絶対するが、個人差はあるという話を聞きました。
個人差というのは何かというと、それは人によって時間軸が違う。しかもその時間軸は後世変わらないかもしれないし、一瞬で変わるかもしれない。  
なので、「相手の可能性がないと思うな」と言われました。その人自身が変われないことはない、いつかは変われると捉えたら変われる、という話でした。  

その部下自身も自分が変われると信じきれずにいるかもしれなくて、でも周りに誰か1人でも信じてくれる人がいるだけで、その人自身が変わっていこうと思えるエネルギーになると思うんですよね。 
なので、先輩や誰かが『変われる』と信じてくれることが大事なのかなと思いました。」

「結局その部下ができなかった分の仕事は上司が責任を持つべきだと思うんですよね。数字を共有化するのって結構大変で、部下が取れなかったときの負担があって。  

どれくらい同じ時間を過ごせるのか、一緒につらい時期を過ごしたのか、どれくらい共感できたのか、が大事だと思っていて、そういう時間を一緒に過ごしたことでその人の喜びポイントや性格が見えてくると思うんです。  
なので、共有している時間を増やすのは大事だなと思います。」

    

Phase3
部下の成功体験の積み方とは?

「今日みなさんに相談している部下も含めて、成績が出ない部下は2人目なんです。 
前の子は全然数字が上がらない時期を11か月過ごしていました。  
私も忙しすぎてほとんどその部下の面倒をあまり見れていなくて。質問されたら答えるけど、質問しづらかった気もします。  
その子が10か月くらい経った時に、「辞めたいです」って言われて、その時に部署の体制を変えるから少しだけ待ってと伝えて、私がもう少し上の立場に立てば自分が今担当しているお客さんをその部下に渡せるので待ってもらったんです。  
部署体制が変わった後、私のお客さんをその部下が持ち始めてからがらっと変わって、その子は新規の営業は苦手だけど、既存の営業はすごく向いていて、数字も上げられるようになったんです。そのおかげで転職も踏みとどまってくれました。    

今悩んでいる部下についても、魅力的なお客さんを渡せば数字をちゃんと出せると思うんですけど、でもみんなに同じことはできなくて・・・  
なので、数字をあげられない子を上げられる成功体験は自分の中であるんですが、またお客さんを渡すのか、と思っていて・・・。」

「渡したらうまくいきますかね?」
「やってみないとわからないですね。  
そこにもリスクはあって、渡した後にそのお客さんを伸ばせるかどうか、というのもあるので・・・。」
「今の話を聞いていて思ったのは、まだ部下のことを信じていないですよね。(笑) 
部下の主体性とか当事者意識の発揮を心から信じようと思うことが重要かなと思います。  

自分が信じる、彼らが自分を信じてもらうにはどうしたらいいか、というのはお土産として考えてもらって、今日は終わりたいと思います。」

 
 
以上(ダイアログ参加メンバー 10名 50分間)
 
 

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