アーティエンスでは、毎年新入社員向けに現時点の社会人としての意識を確認するアンケートを実施しています。今年度(2018年度)も、全53社、449名の新入社員に向けて、アンケートを行いました。
本レポートは、上記アンケートの集計結果と新入社員研修実施時の所感をもとに、2018年度新入社員の特徴や傾向についてまとめております。
新入社員を受け入れる人事ご担当、及びにトレーナー、リーダー、管理職の方々にて、指導・育成の際にご参考いただければ幸いです
・上司・先輩とのコミュニケーションでは、「自律促進型上司」よりも「寄り添い支援型上司」を求める傾向に
2018年の新入社員の特徴としては、上記に挙げた通り「やりがい」、「働きやすさ」に対して高い意識や意欲を持ちつつも、一方で「上司や先輩といった『縦の繋がり』におけるコミュニケーション」に対しては(やや距離感を置きつつも)「寄り添い支援型上司」を求める傾向が顕れました。
また、これら新入社員の意識傾向は、例年高まってきているように見受けられます。
続いては、実際のアンケート集計結果の内容から、これら傾向について説明していきます。
目次
「社会人になることへの期待と不安の大きさ」については、「期待が大きい、やや期待が大きい」と答えた新入社員は全体の75%と、社会人への期待を持つ新入社員の多さ(4人に3人の割合)を確認できました。
社会人になることへの期待感に関するアンケート結果は、例年「期待が大きい」とする新入社員が多く、その傾向は年々ゆるやかな増加傾向にあるようです。
2018年のアンケートで最も多かったのは「やりがいを感じること」(45.4%)でした。次いで多かったのは「新しいチャレンジが出来ること」(32.7%)、「働きやすい職場環境であること」(30.5%)でした。
2016年からの3年推移でみても、上記2項目「やりがいを感じること」および「新しいチャレンジができること」は票が多く、「やりがい」、「チャレンジ」といったキーワードへの関心の高さが伺えます。
一方、「働きやすい職場環境であること」については昨年度、一昨年度から大きくポイントを伸ばしました。
(2016年→25.7%、2017年→25.8%、30.5%)
そのほか、「沢山の人に出会えること」の得票率が年々下降していたりと、傾向の変動が確認できます。
続いては、「社会人になって、不安に思うこと」のアンケート結果です。
例年通り、「ビジネススキル不足」が得票トップ(47.9%)となり、2人に1人が「自身のビジネススキル不足を気にしている」という結果になりました。
また、「仕事に対する自分の適性、相性」(47.7%)と「忙しさ(プライベート時間の確保)」(39.2%)、「先輩や上司とのコミュニケーション」(32.7%)もそれぞれ例年に引き続いての高得票率の傾向が続いています
続いては、2016年度~2018年度の新入社員が、これまでの人間関係でどのような点を期待(重要視)していたかのアンケート結果についても見ていきましょう。
得票を一番集めたのは「余計な気を遣わない」(53.2%)でした。本項目は2017年度より、得票トップの座をキープしています。
次点の「本音を話し合える」(49.0%)、「共通の趣味・話題がある」(40.1%)も例年同様上位にランク付けされています。
一方、「価値観が合う」については2017年度より大きく増加し、本年度もその傾向が一定維持されています。
(2016年度→25.7%、2017年度→34.8%、2018年度33.2%)
例年言われている、新入社員の「ありのままでの自分で付き合える」人間関係を好む傾向は、依然高まりつつあるように感じられます。
続いては、自身の成長のために、新入社員が組織や上司に対してどのような期待や求めるものがあるかについて、見ていきたいと思います。
昨年に続き「上司からは『丁寧な指導をしてくれる』ことを期待したい」という項目が獲得票トップとなり、票率も前年度より若干伸ばしています。
次点は「困った時に助けてくれる」(37.2%)で、こちらは例年票率が向上してきています。
(2016年→31.5%、2017年→35.5%、2018年→37.2%)
また、昨年度2位の票率であった「チャレンジの機会を与えてくれる」は本年度に大きく票率を下げて、4位となりました。
(2016年→35.2%、2017年→41.0%、2018年→33.0%)
前項から変わって、上記「新入社員が考える、自信のパフォーマンスを向上するための上司・先輩からの指導方法で求める点」でのアンケートでは、「自身の改善点を指摘してくれる」ことを求める票が3年連続トップと圧倒的に多く(66.8%)、新入社員は単に「丁寧で優しい上司」を求めている訳ではないことが伺えます。
また、次点の「自分の強みを引き延ばしてくれる」(46.8%)、「目的や意味を明確に提示してくれる」(42.8%)が前年度からやや大きく得票を増やしてきていることも、本年度の一つの傾向として捉えておくべきかもしれません。
ここまでご覧になられて、いかがでしたでしょうか。
再度、冒頭でお話した「2018年度の新入社員の傾向」について触れておきたいと思います。
・上司・先輩とのコミュニケーションでは、「自律促進型上司」よりも「寄り添い支援型上司」を求める傾向に
一点目における「やりがい」や「働きやすさ」は近年よく聴かれるキーワードですが、同時にそれらの解釈や捉え方は組織や人によって大きく開きが生じています。
自組織における「やりがい」や「働きやすさ」の状態と、そしてそれらを新入社員含め周囲の人々がどのように解釈して捉えているのかを「観察・振り返る」ことも、現在多くの企業で求められていることの一つなのでしょう。
また、二点目に挙げられた傾向については、多くの育成担当の方が感じている、新入社員に指導を行う際の「接し方のバランス」を取る難しさにも繋がっているように感じられます。
新入社員育成の場面では「正す、律する」を求められるシーンが多々発生します。
ですが一方で、近年の学生および新入社員は目上の人との接点や指導を受ける経験が少なくなってきており、そのため指摘や指導に対して萎縮してしまうなど、結果本来の力を発揮できなくなってしまうことも少なくありません。
──では、私たち先輩社員は、新入社員にどのように向き合っていくと良いのでしょうか。
上記の課題は、「新入社員が『やりがい』や『働きやすさ』を求めている際に、上司や育成担当はどのように対応するか」というテーマにも密接につながっていきます。
「自律促進型」で行くとすれば、「やりがいや働きやすさは、自分自身(新入社員自身)が見つけていくべきだ」という観点から、新入社員当人たちの自律的かつ能動的な意識・行動によって解決するように指導されることでしょう。
または「寄り添い型」で行くならば、「(新入社員の)やりがい、働き甲斐について一緒に考えていこう」というスタンスを取るかもしれません。
ですが、現在の新入社員の意識傾向から、当人たちが最も求めている指導の在り方は、「やりがい、働きやすさについて、新入社員自身が意識を高め、その為の行動を強化していけるための『安心・安全な場』を提供する」ことにあるように感じられます。
新入社員に限らず、人は「心的安全※」が担保され、かつ対象への当事者意識(責任感)を持てた状態において、高い成長意欲、学習意欲を発揮します。
参照:チームが機能するとはどういうことか ― 「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ
著者: エイミー・C・エドモンドソン、 野津智子
上記図は、人が成長する際に求められる「心的安全」と「責任」の関係図です。
与えられた「心的安全」が高く、一方で「責任」が低い状態では、「快適ゾーン」と言われた所謂「ぬるま湯状態」となりやすく、人はなかなか成長しません。
また、「責任」は多く与えられても「心的安全」が低ければ、「不安ゾーン」となりやはり成長意欲にブレーキがかかってしまいます。
つまり、「人が成長していける場」とは、心的安全と責任双方がバランスよく存在する状態なのです。
新入社員の育成についても、まさにこの図が示す「心的安全」と「責任(≒当事者意識)」のバランスを適切に与えながら指導していくことが、彼女彼らを「学習ゾーン」へといざない、力強い成長を描くうえで大切となるのではないでしょうか。
皆様が新入社員の方々の育成・指導をされていくうえで、今回の記事が少しでもお役に立てることを、心より願っております。
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