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ダイアログレポート「マネージャーが、組織を『最適な状態』にしていく為には」

 
 
 
本レポートは、2018年3月5日に実施されたマネジメント(管理職)ワークショップにて、最後に実施された「ダイアログ」の様相をお伝えするものです。
 
「ダイアログ」とは簡単に言うと「対話」という意味です。
また「ダイアログ」は、会議やディスカッションのように「何か決めなくてはいけない。良し悪しをジャッジする」というものではなく、特定のテーマについて「探求」していく対話・話し合いを指します。  
 
今回のダイアログのテーマは、「組織の状態を最適にしていくために、私たちマーネジャーに求められるものは何か?」。
 
組織・チームにおけるマネジメントやチームビルディング、部下育成について関心・課題感を持たれている方には、参考になる内容も多く含まれているかもしれません。
 
是非、ご覧ください。
 
 
 

Phase1
「組織の状態が最適かどうか」は、どうやって判断していくと良いか?

『組織の状態を最適にしていく』という話ですが、まずはこれが何かについて考えてみませんか。
 
今回のワークショップ内で、(マネジメントの働きかけとして)重要なキーワードとなっていたのが、『運用と変革』ですよね。
 
ざっくり考えると『運用』だけ考えていれば済む時というのは、組織が良い感じに回っている時。『変革』は、変えなきゃいけないという時なのかとイメージです。
 
(皆さんそれぞれ違う職場ということもありますし)今回話し合う上では、どんな場面を想定しながら話すのが、活性しそうですかね。

軽く(自身の職場の)背景や、今関心を持っている点をお伝えしながら話すと、スムーズかもしれないですね。
先ほど評価に関するワークをやりましたよね。
その時に思ったのですが、『(組織・上司から)評価されて良かったな』と自分や部下が納得できるような組織でいる時が最適なのかな、と思いました。

なるほど、、、評価していることが、被評価者に認知されているという状態という感じですかね?
結局は、『双方の理解』だと思うんですよね。
『こちらがこうだからこうするべき』、『でもあちらがこうだからこうしよう』というものではなく、評価の際に双方が納得できると、評価された側も、した側も『良かったな』と思えるでしょう。それが『最適』なのか、もしくは『適切』という表現が良いのかわかりませんが、大切だと思います。

そもそも従業員が納得し得る評価って難しいですよね。
いつだったから、人事系のアンケートレポートを観たときに「従業員のだいたい9割以上の人が(評価に)納得していない、といったことが書かれていました(笑)。

 
皆さんは評価する立場でもあると思いますが、自分の会社の評価には納得できていますか?

納得してないです(笑)
では、最適ではないのかもしれないですね(笑)──難しいですよね。
企業はそれぞれ、『目標』、『ビジョン』があって、それによって評価の方針、手法も変わりますよね。そしてその企業ごとに異なる評価を、適切な評価として従業員に納得してもらえるようにするには、そもそもその『目標』や『ビジョン』そして『だから私たちはこういう評価をします』といことをきちんと示さないといけないのかな、と思います。

 
評価を変えていくのであれば、その意思をしっかりと示してあげないといけないのかなと私は思いました。もしかしたらその結果『賛同できません』という従業員がいなくなることもあるかもしれない。でも、それはそれで、ビジョンや考えを示すことは大切だと思います。

企業のビジョンや方向性は経営者にはあって、それをどうしたら現場レベルまで落とし込むかですよね。そこの方針がすり合ってる中で評価が存在しないと、多分意識の齟齬というかすれ違いは出てくるのでしょう。

 
組織が発信しているビジョンと評価の位置づけ、そしてそれらの(従業員側の)理解、このバランスが大切なのかもしれませんね。

Phase2
マネージャーは組織の状態をどう判断していくと良いのか?

ところで、マネージャーは組織の状態を最適であるか否かというのをどのように判断できるのでしょうか?

 
良い状況になっているのか、なっていないのか、を判断する方法は、いろいろなツールがあると思います。従業員サーベイや、それ以外の方法もあるかと思いますが、皆さんの会社で何かやっていたりしていますか?

Tips「従業員サーベイとは」

「従業員サーベイ」とは、企業と従業員の関係性の改善を、データに基づいて推し進めるために行われる調査を指します。

 
多くの場合、「従業員を対象にしたアンケート」を取り、そのアンケート結果から満足要因や不満要因を導き出し、組織の改善を図る──といった形式で進められます。

従業員サーベイをやりたいとは思っていますが、お金がかかりますしね…。
私の会社では、コンサル会社に依頼する場合が多いです。

 
単純に組織の業務・仕事だけに焦点を当てるのであれば評価はそれほど難しくありませんが、人のことが絡んでくると、それでもやっぱり難しいですよね。

私たちの会社ではISOの品質マネジメントに力を入れています。

 
セクションごとにであったり、組織のフロー・流れがちゃんとルール通り動いているかを見て評価して、停滞していたりうまく行っていないようでしたら、どうしたら解決するの?というのを見るようにしています。

Tips「ISOとは」

ISOとは、International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略で、 国際的に通用する「標準」、「仕様」を定義したものです。

 
例えば、ネジの大きさであったり、非常階段のロゴマークであったりは、国ごとにバラバラでなく統一していた方が利用者からすると安心です。
そして、そういった「国際的に通用する標準仕様」を遵守してサービスや製品を提供する企業が、ISO取得企業です(ISOの認証を取得するためには審査および費用が発生します)。

 
ISOは「ISO7010」や「ISO68」といったように、対象の分野ごとに番号が振られており、その範囲は前述のネジやロゴマークだけでなく、たとえば「組織の仕組み」(ISO9001)など、多岐に渡ります。

 
※ このダイアログで出た「ISO」は、恐らく組織の仕組み(マネージメント・システム)の標準仕様を図るISO9001を指していると推測します。

ISOで決められたことをちゃんと回していくことができるかどうかって、組織が機能を発揮できているのかを客観的に判定する手法の1つかもしれないですね。

 
とは言っても型にはまったもので、一概にそれですべて解決できるかというと、難しいかもしれないですよね。それだけで『職場環境が良いのか』ということは図れないでしょうし。

そうすると組織の状態が最適かどうかって、世の企業はどう判定しているんでしょうね?
先ほど話に出た、従業員サーベイは一定の効果があると思います。
例えば質問の中で、『あなたの上長についてどう思いますか?』という項目があって、データを集めると、どこどこチームに関しては、マネージャーに対してみんな信頼感を置けていないっていうデータが出たりして。

 
従業員サーベイは組織の状態を見るうえで1つのツールにはなり得ます。ただ、それだけに頼ってしまう訳にはいかないですけれど。

結局は、いろいろなツールを合わせて、いろんな軸で見ていって、その会社の最適を創っていくしかないのかもれませんね。──あと、『ベスト』ではなくて『ベター』を目指すことが大事なのではないでしょうか。『ベスト』を直接目指すのは、多分難しいのかな、、、と。

 
同じ事柄でも『良い』という人、『悪い』という人が、世の中にはいる。

 
それをどちらかにするのは難しいですよね。ですので、会社としては『一つの軸』を創っておくこと、そして『その軸は何か』といことを伝えていくのが我々なマネージャーの役割なのでしょう。

 
その際は、いろいろな意見を集約して行くという流れは、(私としては)『ベターを導き出す』という表現がしっくりきます。そして、それこそがマネージャーに求められているのかなとも思います。

『そもそも最適ってどう定義するの?』というところは、恐らくそれぞれの会社で違うと思います。

 
視点を変えてみれば、従業員からして見て働きやすい最適な仕事場なのか、経営者からして見て最適なビジネス、最適な組織なのかというところがあって、定義が難しいですよね。

私たちの会社の場合は、まさしく変革の時期で。生まれ変われるとしたら、このタイミングしかない、という状態にいます。

 
ですが、なかなか大変ですね。例えば社員に『これ、どうしてこうなの?』と聞いたときに『今までこうでした。こうやってきました』という答えが返ってきます。

 
つまり、社員はまだ『言われたままの言われた通りにやっていく』状況から脱していない。ここからの意識変革を、マネージャーが自分のチームを『いかに変えていくのか』というところを求められています。

『組織の状態が最適』という感覚の持ち方は人によって違う。ですが、各チームメンバーが組織に対してオーナーシップを持ったり、エンゲージメントが高まっている状態であれば、きっと組織に対して意欲を高く持って、いっぱい仕事をするでしょうね。

 
そういった状態にするのが、『(組織として)最適な状態』なのかなと思いました。

Phase3
組織の「究極的な目的」とは?

最適な状態はそれぞれの会社によって違うとういう話がありましたけど、では組織の活動の究極的な目的というのはなんでしょう?

 
私の考えは2つあって、1つは『組織の永続』。そしてもう1つは『社会の価値貢献』。

 
永続していくこと、その価値貢献をどれだけ広く深くやっていけるかが組織の活動としての究極的な目的なのではと私は考えています。そして、最適な状態には、完全に到達することはなかなか無いかもしれないけど、目指していくことはできる。

 
組織の究極的な目的って、皆さんはどう思いますか?

『永続』というのは多分正しいと思います。──きれいな言葉ですよね。
もっと下世話な言葉で言うと、『金儲け』、『儲ける』みたいな言葉、そういう風に言えることもできます。結局は、儲けなければ永続しないのですから。

 
皆さん方の組織でもきれいな言葉があるかもしれませんが、一言で言うとどういう言葉に繋がるのか。──そういう観点も大事だと思いました。

『永続』と『価値貢献』について、イメージ的にはぴったり同意ですが、よく考えると社会貢献的な価値を出せていない企業も世の中にあると思いました。──なかなかレアケースなのかもしれませんけども。

 
よくニュース等で、『就職した会社が詐欺会社だった』という話があったりしますよね。その会社って何のために存在しているんでしょう。

難しい点は、『詐欺をしている』というのは、本人たちにその自覚がなかったりすることでしょうね。つまり、本人と周囲とで認識のギャップがある。『社会貢献』も同様でしょう。

 
『社会貢献的な価値を出せているか』というのは、きっと信じている人にとっては素晴らしく良いもので、信じていない人にとっては異様に映るようなものなのではないでしょうか。

 
──例えば『武器屋さん』。兵器を作ることは悪いことかもしれない。でも、『自衛』という観点からするとどうなのか…。このように、見た人によって社会の価値というのがなかなか決めにくい部分もありますよね。

 
そこにはいろいろな価値の判断基準が、──もともと会社を創った人たちの、創業した人たちの想いがあるのでしょう。

結局、『企業の目的』は、(最初は)創業者なり、その会社を創った人によるのでしょうね。
だから、創業者ないし起ち上げた方の想いというのが『究極の目的』になることも多いのでしょう。

 
もちろん、それが途中で変わってくることも多いでしょうし。もちろん変わらずにありつづけることもあると思いますが、これだけ世界・時代・いろんなことが変わってきて、それに対していかに『最適』という状態を考えて対応していけるかなんでしょうね。

印象的に思ったことで、SONYのケースがあります。
もともとモノを作ろうと立ち上がった会社でしたが、2000年代で一旦業績が下がっていますよね。

 
そして、現在は売上構成の多くを金融が占めていて、SONYは『製造業』というか『金融屋』になっている。

 
でも、それは決して悪い意味ではなくて。昨今では業績回復してきてから、再度モノ造りに復帰というイメージを打ち出してきています。

 
そうして原点に立ち戻ってきことは、『ビジョン』であったり『創業者の想い』であったり、そういったところが活きているんだろうなと思いました。

Phase4
「組織の最適な状態」では、「共感しあえている」

これが最適である』ということに対して『共感する』ことが大事なんでしょうね。

 
観ようによっては排他的と捉われるかもしれませんが、掲げたビジョンや想いに対して『ついていけない』と思えば(その人は)組織を辞めていくとだろうし、『良いな』と思えば寄り添ってくることでしょう。

 
もちろん、組織は共感を得るための努力もします。その行為は(先ほどお話に挙がった)『ベターを目指す』というイメージが近いような気がします。

よく、『風通しの良い会社』という表現がありますよね。この表現にすごく良いイメージを持つ方も多いと思います。『風通しが良い』=『コミュニケーションが良く取れていてる』といった風に。

 
それで、コミュニケーションを活性するためにも社内のイベント沢山するとか、飲みニケーションを大切にしようとか、そういう話が出てきたりしますよね。でも、中にはそういう働きかけが嫌い(苦手)な人もいる。

 
そういう人の存在を『認める』ことも認めることも大事だと思います。別にそのことに対して良い悪いは判断しない。

そうですね。
組織にとって『排除すべき人』はときに存在すると思いますが、それはレベル感の違いなのかなと。

 
会社のビジョンとかミッションに共感していなくても十分に仕事としてワークする人もいるし、それがなければワークしない人もいるでしょうし。

うちの会社にもいますね、そういう人。全然人とコミュニケーション取らないんですけど、一人でガツガツ営業していって、売り上げの半分上げてくるとか。

 
結局、そういう人も会社にとってはとても必要な人なんですよね。

 
私たちの会社は『船頭』が多い会社で、ある人が『A』と言っても、別の人は『B』と言う。でもそれを認める風土もあります。

 
『この人はAのことをBと言うけれど、それはそれで一理あるのかもしれない』とか、『私はこう思う』ということをきちんと伝えあったり、そういう個々の考え・意見を『認めあう』ことが、組織で活性していけば良いのかなって。

 
そこが『認められない』であったり『ちょっと嫌だ』と言う人は自然と(その企業が)合わなかったとなるのかなと思いますね。

 
また、逆にそこを受け入れて、それを適材適所に寄せてあげることができる人が、『マネージャー』として求められることもあるのでしょう。…でも、それはとても難しい。

Phase5
自律的に「考える」組織を創る

前のワークでも言っていたことですが、(ビジョンや価値観について)『考えられる』組織や人を作るのも大切なのかなと、改めて思いました。ただ、どうやってそれを実現するか・・・
どうやって創るかはわからないが、私がいつも思っていることは、『優秀な上司が一人いて、その上司がいなくなってしまったらどうしよう』ということです。

 
仮に今その上司がいなくなったとして、それで組織が止まったとらしたら、それはダメだということだと思います。

 
じゃあ、そうならないためにどうしようかということを常々考えています。

 
答えはないんですけど(笑)、そういうことを皆で考えていくことが、『考えられる』組織にも繋がると思うんですよね。例えば、部下に『お前の上司が明日いなくなったら、どうする?』って訊いて、考えてもらうとか。

私の部下で、すごく可愛がっていた方がいて、ただ、なかなか出来が悪い子でして(笑)自分でやらせるより、教えた方が早かったんですね。なので1から10まで全部教えていました。

 
そうしていくうちに、全く自分で考えなくなっていったんです。
『これどうしたらいいですか?』と聞いてくるのですが、『え?これ前もやったよね?』といったやりとりが何度も続いて。
そこから(このままでは良くない)と思いまして、面倒なんですけど、時間かかるんですけど、『やらせる』ようにしました。

 
それで、こちらからは『質問』するんですね。持ってきた資料に対しても、『なぜこういうレイアウトで作ったの?』であったり、『この資料は、何が目的なの?』であったり。

 
そういうWHYの質問を積み重ねていくんです。『じゃあ、ここをその目的で作るとしたら、ここからどうしていくと良いだろうね?』みたいな。

 
それをやって考えさせて、また質問にきたら考えさせて、また戻ってたらもう一回考えさせて・・・・それを繰り返し、頑張ってやっています。

 
そうしていくうちに…最近なんですが、その部下が企画書などの資料を持ってくるときに、私が普段から話していた会社の方針や考え方とのぶれがなくなっていったんですよ。──すごく時間かかりましたけれど。

 
やっぱり『考える癖を持たせること』は大事だな、と思いました。

その時、その部下の方は『楽しく内省して成長』していったのか、それとも、『もがき苦しんで悩んで成長』したのか、どっちなんですかね?
前者の方だと思います。表面上ではそう言ってくれるんで(笑)
苦しめばいいという訳ではないですが、個人的な体験を省みた場合、ものすごく苦しい経験というのをして、もがき苦しみながらそこから何かを得て成長したというのがあります。

 
マネジャーの立場としては、どうすべきなんでしょうね?つまり、『厳しくすることはどうなのか?』という話なんですけど。

 
当然良い場合もあるし、悪い場合もありますけど、皆さんの場合どういう風に使い分けているのでしょう?もしくは、やっているのかどうか、であったり。

 
当然パワハラと言われるのはよくないとして。おそらく皆さんも昔はあったと思うんですよ、若いころ。──徹底的に上司からボコボコにしばかれて、徹夜して…。

 
それを全面的に肯定する訳ではないですが、そこから得ちゃったものって結構いっぱいあったりして。

 
そういった体験というのは若い時、有用なのかどうかわからない。有用かもしれないし、違うかもしれない。それは時代によっても違うだろうし。──そういったところって皆さんどんな風にお考えなのかなと。

結局は、経験した本人がどう取るか…でしょうね。

 
私もそういった経験ありますが、結局また同じような境遇とか場面に出くわした時に、それをいかに活かせれるかによって変わってくるように感じます。

 
反応する人もいれば、全然な人もいるし。そこは正直難しいですね。

 
結局怒るにしろ、怒られないにしろ、『とりあえずやってみてごらん』というメッセージが前提にあるように思います。そこが必要なポイントなのでしょう。そのメッセージに気づいてもらえるかが、重要ですよね。

皆さんの中で『世代のギャップ』を感じられている方はいますか?

 
気づきを与える』というところで、厳しくというか、叱って気付きを得る人と、褒めて育てるじゃないですけど、やっぱり年代によって違うなって感じることってありますか?

全然違いますね。
今入ってきた人たちは、怒られると次がないんです。怒ると叱るは違うと思うんですが、結局若い子からすると怒るも叱るも一緒に取ってしまうので、『こうなんだよ』と教えるしかない。

 
でも上の方はそういう考えじゃないので、『うわー!』って言ってくる(笑)。そしてグシャってつぶれる。

昔は、『部下は上司の背中を見て育つものだ。盗み取って学んでいくものだ』という文脈がありましたよね。──でも、今は違う。
ちゃんと教えないとダメなんです。『なんでそうなるのか』という意図や、上司が思っていることきちんと教えてあげないと、なかなか難しい。

 
新卒だけでなく、入社5年目5年ちょっとくらいのメンバーにもそんな傾向が見られます。『自分が考える環境』というのが必要で、その環境を整える方法は昔のやり方では響きにくくなっているんでしょうね。

 
 
以上(ダイアログ参加メンバー 7名 50分間)
 
 

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