コラム

「共創」が働きかけられるときとは、どんなときか

先日、アーティエンスは2017年度新入社員向けの研修(第8回)を迎え、無事に終了しました。

7月の研修内容は、「コミュニケーション・ダッシュ」。職場でのコミュニケーションを円滑に進めていく為の、実践形式のワークショップです。

そこで、研修を終えて皆が帰り支度をされている際に、ある新入社員の方から以下のようなお話を受けました。    

『共創』って本当に大切ですよね。──でも、なんか実態を掴みづらい…、そんなイメージもあります

その方が述べられた「共創」という言葉は、「相手とのコミュニケーションを円滑に、かつ効果的に進めていく為には、共創への意識・働きかけが大切です」──といった風に講義中にも何度か登場しており、今回の研修の学びで重要となるポイントの一つでした。
(※ 言葉の意味については、後述します)

新入社員の方はその後も研修の感想と感謝の気持ちを伝えてきてくれましたが、「では、その共創の実態について、いま一度話し合ってみませんか」という私のさりげない提案には残念ながら乗ってくれず、笑顔で挨拶をされて教室の外へと出て行かれました。

その方が教室を出た後も、「なぜ共創という言葉が、実態を掴みづらいものと感じたのだろう?」というもやもやした気持ちは、しばらくの間、私の意識の片隅に残り続けました。

──今回は、そんな「共創」という言葉と、そして「共創が働くときというのは、どのような時なのか」について、お話していきたいと思います。

1)共創とは?

アーティエンスでは、共創を以下のように定義(解釈)しています。

共創とは

ひとつの目標、ビジョンに向けて、チームまたは組織が互いに信頼しあい、協力して創り上げていくこと。

「頼まれたからやる」「ただ相手の要望に応える」といった行為よりも、更にチーム・組織の一体感が高まった状態での行動。 

共創とは つまり、言葉通り「共に創る」ことにあります。

ですが、ただ一緒に作業すれば良いわけではなく、「信頼しあい、協力し合って」創り上げていくこと──それが「共創」です。

ところで、チームでの日々の活動において、私たちは「ただ一緒に作業すること」と「共創」の違いを、どれだけはっきりと区分しながら、活動ができているのでしょうか。

勿論、「共創が大切だ」と思っている時は、活動する人々は共創への意識を高められるでしょう。

ですが、日々の業務で四六時中「共創」という意識を掲げながら仕事をするというのは、やや無理があるのかもしれません。

要は、自然と、「共創」している状態になる(またはその状態にしていく)ことが大切であり、──そして、それ自体は決して簡単ではないということが、冒頭の新入社員の方の「実態を掴みづらい」という感覚にも繋がっていったのでしょう。

2)共創の「一歩手前」の状態を考えてみる

先に述べたように、「共創」は「チーム・組織の一体感が高まった状態」で行われる共同の働きかけになります。

つまり、単に「一緒にやる」だけでは「共創」ではない、ということですね。

では、その「チーム・組織の一体感が高まった状態」とは、いったいどんな状態なのか──この部分を掘り下げていく必要がありそうです。

私たちは、「チーム・組織の一体感が高まった」と感じられる状態とは、具体的には何がどうなっている状態だと言えるのでしょうか。    

「共同体感覚」という考え

心理学者のフレックス・アドラーは、この「チーム・組織の一体感が高まった状態」を、「共同体感覚」という言葉で説明しています。

「共同体感覚」とは、異なる考え・価値観を持つ人々が互いを認め合い、協和、協調を感じられている状態です。まさに、一体感が高まっている状態と言えそうですね。そして、その「共同体感覚」を得るためには、3つの要素が必要とされています。

共同体感覚に必要な、3つの要素

・他者信頼
・他者貢献
・自己受容

「他者信頼」、「他者貢献」、「自己受容」がそれぞれどのようなものか、ざっと紹介していきましょう。    

他者信頼

言葉の通り、「他者」(職場の同僚やチームメイト等)を信頼することです。ここでいう信頼は、金銭などのやりとりのからんだ条件付きの信頼ではなく、「無条件」で他者を信頼していくことです。

そして、他者を信頼することによって、その相手からも信頼されるようになり、「共同体」の輪が広がっていく──といったイメージです。

他者貢献

続いては、「他者貢献」。アドラーは、「最大の幸せは、皆に必要とされることだ」と伝えていますが、まさに「他者に貢献する」ということは、その組織・チーム内の人々から感謝され、そして必要とされる対象になっていくことに繋がります。

共同体としての一体感を高めていく上で、まずは共同体内部での他者貢献が大切になってくる、ということですね。

自己受容

そして、最後は「自己受容」。自己受容とは、「自分自身は、価値がある存在だ」としっかりと認識することです。

人によっては、この要素が一番難しいところかもしれませんね。ですが、ここまでの2つの要素、「他者信頼」と「他者貢献」を行っていくことで、人は自身の存在意義も強まっていくものです。それは、「ありのままの自分でいいのだという安心感」に繋がることもあるでしょう。

また、変に背伸びせずとも、そのままの自分で共同体の中でいられるという意識を持てることは、とても幸せなことでもあるでしょう。

──ご覧になってお気づきになられた方も多くいらっしゃったことでしょうが、これら3つの要素はひとつの流れになっています。

「他者信頼」することによって「他者貢献」への働きかけが強まり、それらは「自己受容」へと繋がっていきます。そして、それらの働きかけが継続(循環)していくことによって、共同体感覚が育まれていくのです。

「共創」の働きかけが発揮されるのは、「共同体感覚」が強まった状態における組織・チームでの働きかけである──このように説明すると、より納得感を強く持てるように感じられます。

ですが、それでもまだ問題は残ります。

「他者信頼」と言っても、他者を無条件で信頼できないような状況のときはどうでしょうか。そして、「他者貢献」と言っても、貢献できることが見つけられないときはどうすれば良いのでしょうか。更には、それら状況では「自己受容」への働きかけも発揮しきれないでしょう。

そのようなとき、果たして私たちは、共同体感覚を得ていくことが出来るのでしょうか。

4)組織・チームで「共創」を発揮していくために

「共創」は当然ながら、「共」という字のある通り、一人で出来るものではなく、複数の人々とで行っていくものです。そして、人それぞれの考え、価値観は大きく異なります。

例えば、先ほどの「共同体感覚」を持つために必要とされる三要素「他者信頼」、「他者貢献」、「自己受容」を読んだあとに、「簡単だ」と思われた方もいるでしょうし、「難しくて出来なそう」と思われた方もいたことでしょう。

私は、そのときに「簡単だ」と思われた方──つまり、ポジティブに捉えることが出来た方が、どれだけ「難しくて出来なそう」と思ったであろう人々の存在をイメージし、感じられるかが、とても重要であるように感じています。

同じチーム内で、共同体感覚を持つことが「とても簡単」と思っている人と、「とても難しい」と思っている人が混在していては、それこそ真の共同体としての感覚を持つことは困難でしょう。

そして、組織・チーム内で共通の認識・見解を育んでいく為には、互いに今持っている感覚と、その背景となっている想いを伝えあうことが、大切になっていくことでしょう。

「『共創』って本当に大切ですよね。──でも、なんか実態を掴みづらい…、そんなイメージもあります」

冒頭で紹介しました、とある新入社員の方のこの言葉には、「自分一人の働きかけだけで、共創の状態を創っていくことは出来ないのでは」という(恐らくまだ言語化されていない、無意識下の)想いから来ていたのかもしれません。

そして、私たちが自分たちの組織・チームにおいて、「共創」を発揮していくとしたら、まずは私たちが本気になって「共同体感覚」を育んでいき、新入社員を含めて社員・メンバーの考え・価値観をイメージしていくことが、一番に求められるのでしょう。

皆様が自組織のメンバー育成、チームビルディングをされていくうえで、今回の記事が少しでもお役に立てることを、心より願っております。