アーティエンスでは、毎年新入社員向けに現時点の社会人としての意識を確認するアンケートを実施しています。今年度(2017年度)も、全51社、455名の新入社員に向けて、アンケートを行いました。
本レポートは、上記アンケートの集計結果と新入社員研修実施時の所感をもとに、2017年度新入社員の特徴や傾向についてまとめております。
新入社員を受け入れる人事ご担当、及びにトレーナー、リーダー、管理職の方々にて、指導・育成の際にご参考いただければ幸いです。
2017年の新入社員の特徴としては、上記に挙げた通り、「自身の成長」、「新しいチャレンジ」に対して高いポジティブ感情を持ちつつも、反面「承認欲求」や「評価されることへの期待や恐れ」を大きく持つ傾向が顕れました。
続いては、実際のアンケート集計結果の内容から、これら傾向について説明していきます。
目次
「社会人になることへの期待」については、「期待が大きい、やや期待が大きい」と答えた新入社員は全体の52%と、過半数を超える結果となりました(前年は43%、9ポイントの上昇)。
特に2017年男性新入社員の「期待が大きい、やや期待が大きい」と答えた割合は57%と、前年の42%を大きく上回る結果となっています。
同質問は2015年より集計を取っており、ここ3年の推移は以下のようになっています。
2015年 : 33% ⇒ 2016年 : 46% ⇒ 2017年 : 52%
2015年 : 53% ⇒ 2016年 : 43% ⇒ 2017年 : 38%
続いては、新入社員が社会人になって、具体的にどのような点を期待しているのかについても見ていきましょう。
上記アンケートで最も多かったのは「やりがいを感じること」で、新入社員の44.1%の方が票を入れています。次いで多かったのは「新しいチャレンジが出来ること」(38.1%)、「沢山の人に出会えること」(35.0%)でした。
社会人になることへの期待の背景には、こういった「やりがい」や「新しいチャレンジ」、「人との出会い」がキーワードになっていることが伺えます。
※ アンケートに記入されたフリーコメントを、テキストマイニング(ワードクラウド)して表示しています。
新入社員の想い描く「3年後の望ましい(こうなりたい)状態」においては、「頼もしいと周囲に言われる」や「先輩・同僚に任される」、「後輩に~と思ってもらえる」といった、【他者からの承認】に関わるコメントが非常に多く見られました。
※ アンケートに記入されたフリーコメントを、テキストマイニング(ワードクラウド)して表示しています。
新入社員の想い描く「3年後の望ましくない(こうはなりたくない)状態」においては、「やりがいを感じられない」や「ただ単に仕事をこなす」、「ただ何となく仕事をしている」など、明確な意思や情熱がなく、機械的・無機的な働き方を挙げたコメントが非常に多く見られました。
続いては、自身の成長のために、新入社員が組織や上司に対してどのような期待や求めるものがあるかについて、見ていきたいと思います。
今回のアンケートにおいて、新入社員が「直属の上司に求めるもの」については「丁寧な指導をしてくれること」(46.5%)と「チャレンジの機会を与えてくれる」(41.0%)でした。
次いで多かったのは、「コミュニケーションを多くとってくれる」(37.2%)、「困ったときに助けてくれる」となっており、集計結果では「上司からのきめ細やかなフォローと手ほどき」を期待していることが伺えます。
一方で、上記の「新入社員が考える、自信のパフォーマンスを向上するための上司・先輩からの指導方法で求める点」でのアンケートでは、「自身の改善点を指摘してくれる」(70.3%)という意見が圧倒的に多く、一概に「丁寧で優しいこと」を求めている訳ではなさそうです。
「丁寧に接してくれながらも、改善点やより強化してほしいポイントにはしっかり指導してくれる」──そんな上司を、多くの新入社員の方々は求めているように感じられます。
ここまでご覧になられて、いかがでしたでしょうか。
再度、冒頭でお話した「2017年度の新入社員の傾向」について触れておきたいと思います。
ところで、なぜ新入社員の方々は、やりがい、新しいチャレンジへの期待、関心を持ちながらも、他者からの承認や評価も併せて求める傾向があるのでしょうか。
推測するに、新入社員の方々は、将来に対してのポジティブ感情は強く持ちつつも、それを実現するための具体的なイメージ・ビジョンを自己の中に描きにくいと感じている為、他者の視点(承認や評価)を(ときに無意識下においても)求めているのではないでしょうか。
実際に、今年の4月に行われたアーティエンスの新入社員研修では、「講師からのフィードバック」や「同グループ内のメンバーからの見られ方」を過度に気にされる受講生(新入社員の方)は非常に多くいらっしゃいました。
では、このような傾向を持った新入社員に対して、私たちはどう向き合っていくべきか──。
ひとつ言えることは、新入社員の方一人一人が、これから自身の「成長後の望ましい状態(=あるべき姿、ありたい姿)」をより明確に描いていく必要がある、──ということです。
社会人になって、人はいつまでも「他者からの承認・評価」に頼り続けることは出来ません。早いタイミングで、自身で考え、判断していく「自律・自走」の働きかけが要求されます。
自律・自走を適切な方向に向けていくためには、自身の「ありたい姿、あるべき姿」が明確になくてはいけません。そして、上司・トレーナーもまた、その為の指導・手助けが求められるでしょう。
上記に紹介した図は、上司・トレーナーが部下(新人)の成長後の望ましい状態を描かせる上で紹介されることの多い、「MUST─CAN─WILLの図」です。
社会人が成長していくうえで、自組織から求められるもの(MUST)と、自身の強みであるもの(CAN)、そして情熱を持てるもの(WILL)の3つを意識していくことが必要で、かつその3つが重なり合う部分を見出していくことがとても大切です。
新入社員の方々も同様です。入社当初は働きかけも弱く、まだ重なり合いもほとんど見られないであろうMUST、CAN、WILLの3つの円が、より大きくなり重なり合う為に、当人たちは意識して努力していき、また上司・トレーナーもまたその働きかけを支援していく働きかけが、将来の大きな成長に繋がっていくのです。
皆様の組織において、新入社員の方々は今後「あるべき姿、ありたい姿」を描いていけそうでしょうか。そして、それは組織や皆さんにとっても望ましいものでしょうか。── 一度、そのような観点から、新入社員の方と対話をされるのも良いかもしれません。
皆様が新入社員の方々の育成・指導をされていくうえで、今回の記事が少しでもお役に立てることを、心より願っております。
アーティエンスのOJT・トレーナー研修は、新人・部下の成長を高めていくためのスキル・思考方法についても学べるプログラムを多数提供しています。ご興味ある方は、以下までお問い合わせください。